短い事に加え、文章力も落ちていると思うので、生暖かい目で見ていてください。
トウカイテイオーの骨折。そのニュースは瞬く間に全国に広がった。テレビで何度もトップを飾り、昼間のワイドショーで再三放送され、日本国民の内でそのニュースを知らないものはいないと言っても過言ではないであろう。
骨折のニュースにおいて、必ずと言っていいほど出てくる『なぜトウカイテイオーは骨折したのか』という話題。
ことが起きた次の日、URA主導でチームスピカの記者会見が行われた。
チームの発表としては、
ーー『もともと足の関節が柔らかく、ハイスピードに長く耐えられる脚ではなかった』
ーー『いつもはセーブして走っていたが、一生に一度のダービーという舞台で興奮してセーブの枠から外れた負荷をかけてしまった』
というものだった。つまるところテイオーの自滅として発表したのだ。
事実、テイオーの脚はもともと脆く、長くはもたないと評されており、それを承知で走っていたと本人から聞いている。さらに骨折の具合からして自滅である、と医者から言われている。とも言っていた。このことはテレビで放送もされた。
だが、それでは納得しない奴らは居るというものだ。
記者会見での『アルカンジュの領域の影響ではないのか』という質問、これに対しテイオーは『一切ない』と述べた。そう、本人はそう言っている。が…
『この件に関してコメンテーターの○○さん、どう考えますか?』
現在、休日のトレーナー室のテレビには夕方のワイドショーが流れている。
『そうですね、公式発表ではアルカンジュの領域の影響はないとされていますが私としては何らかの影響は少なからずあったように思いますね』
『それはなぜでしょうか?』
『領域の中とはいえミサイルをコックピットにくらって無事なわけないじゃないですか』
何の説得力もないコメンテーターの意見に司会がもっともらしく頷いた。全く頭が痛くなる。
テレビから目を離し、手元のスマートフォンでSNSを開く。私自身のアカウントはないためDMが来るという事はないが、トレンドには私の名前が載っており、様々な根も葉もないことが吹聴されている。
『アルカンジュはテイオーの見舞いにすら行ってないらしい。何か後ろめたいことがあるのでは?』
面会謝絶なだけだ。ビデオ通話だってしている。
『ミサイル当たって無事なわけなくね?他の子もケガしてんじゃねえの?』
私のミサイルはスタミナを削るだけだ。
『テイオーの記者会見これ言わされてるでしょ。本当はアルカンジュのせいなんじゃないの?』
彼女はそういった人ではない。
一般人にとどまらず、人気インフルエンサーもこの騒ぎをより大きく騒ぎ立てるので個人の憶測がまるで事実の様に広まっている。
全く、嫌になる。こうなってしまうのが分かっていたらあらかじめアカウントを作っていたというのに。
今、世間は私を擁護する少数派閥と批判する派閥に分かれている。その擁護側も私がテイオーにけがをさせたという前提のもと喋っているので、全く擁護できていない。もはや骨折した張本人など置き去りに、私に関する話題が独り歩きしている状況だ。
「アル!ようやくだ!記者会見の日程が決まった!明日だ!」
トレーナーが部屋のドアを勢い良く開けて入ってくる。本当に、ようやくだ。今更私が何を言っても遅い気がするがね。
現在はダービーが終わってから一週間後。私もできる事ならすぐにでも記者会見を行いたかった。だがここまで私の記者会見が行われなかったのはURA上層部が私の反対派、“寒門の出である私が名家の親戚にあたるテイオーに勝つことをよしとしないクズども”で占められていることに他ならない。
理事長やトレーナーはすぐに行動を起こそうとしたが、そのクズどもに抑え込まれ、行動ができなかったのだ。彼らは悪くない。腐っているのはURAだ。こういったことは珍しくないらしく、過去何度もURAによる裏工作で寒門出身がレース引退を余儀なくされている。その手法は多岐にわたり、どれもあくどいものが多い。
今回私に対しては記者会見を私が何を言ってもマイナスにしかならない時期まで伸ばし、ごく自然な世論の流れによって私をレース界隈から追放しようとしているのだ。私の領域の武装がホンモノではないことを恨めしく思う。
今現在、テイオーも自身のSNSで世間に正確な情報を広めようとしているのだが、効果はない。URAによる世論操作と陰謀論好きなネット住民のおかげで私はトレセン学園での立場も失いつつある。
「ようやくか…だがもう遅いな」
「…すまない」
トレーナーが顔を曇らせ、そう呟いた。
「なぜトレーナーが謝る?アンタは悪くない」
「……なぁアル。こんなことは言いたくないんだが…」
トレーナーが言いよどむ。
「分かっている。私の今後の進路だろう?間違いなく
「…そうだ」
このままURAの思惑に乗せられてすごすごと学園を去るのは癪にさわる。何かしてやりたいところだが、生憎とこちらにはなにも攻撃札がない。明日の記者会見でどれだけ自分に掛けられた疑惑を晴らせるか、だな。完全に晴れることはないだろう。
「そこは私が何とかする。トレーナーは今後の自分についてを考えた方がいい。この世論のせいで少なからずアンタも非難されているのだからな」
「でも!」
「私の事は私でやる。いいか?」
そうだ、私が去るにしてもトレーナーへのダメージは最小に抑えなくてはならない。どう考えても明日の記者会見で私が学園に残る道はない。世論とは怖いもので、一つの事よりさらに大きく、重要度が高い事件が起こらないとずっとかき消せないのだ。
ここでさらに大きいことを起こそうとするのは愚行。失敗するのがオチだ。成功しかけてもURAに阻止されるだろう。悔しいが成す術がない。
「…アル。君は確かに周りと比べて大人びていていろんなことがしっかりとできる。でも何事も一人で背負わないでほしい。君は一人じゃないんだから」
「…そうだな。ありがとう、トレーナー。……もう日も落ちてきた。私はこれで失礼する」
何か言いたげなトレーナーを背に部屋を出る。
夕日が差し込む廊下を視線に晒されながら歩く。前からよく話していた友人…マヤやチームスピカの面々、ナイスネイチャやツインターボ以外は話しかけてこなくなった。世論的には妥当である。人間という生き物の本質を今世でも見ることになるとは。
そう言えば、ゴルシは一週間前から姿が見えない。心配である。が、彼女なら大丈夫だろう。同室がいないというのは寂しいがね。
寮に着いた。前までは謎の安心感を覚えていた自室だが、ここ一週間は何も感じない、ただ寝るだけの場所と化している。ゴルシもいないしな。
カバンを放り出し、ベッドにダイブして腕で目元を隠す。はぁ…全く…
「どうしたものか…」
「困ってるみたいだな、ミスターX」
驚いて跳ね起きると、入り口に
彼女は部屋に入ってくると、肩にかけていたカバンを下ろして私の対面に腰を下ろした。
「一つアドバイスだ。ミスターX。アンタはもっと他人を頼ることを覚えた方がいい」
「トレーナーにも言われたよ。確かにそうかもしれない。だが貴様らに何ができる?精々声明を発表する程度じゃあないのか?しかもそれは自身に飛び火するリスクを負うことになる。それに此度の騒動が大きくなるように仕向けているのはURAだ。それの傘下でしかないトレセン学園の一生徒ができることは何もないぞ」
「誰がトレセン学園内部で何とかすると言った?落ち着け、視野を広くしろミスターX。何も全世界が敵に回ったわけじゃないんだ。外部にもアンタをしっかりと見て理解してくれている者はいる。今日はその中の一人からの伝言と…この小包を届けに来た」
ヒシスピードに言われてハッとした。昔から周りが敵だらけだったせいで失念していた。少ないが目の前のコイツの様にトレセンにも今回の事を正しく理解して味方してくれている奴らはいる。トレセンに居るなら外部に居てもおかしくない。
…が…やはりダメではないか。私を理解する連中がいたところで世論はどうにもならない。私は戦争ごとに世論の強さを見てきた。覆ったことなどほとんどなかったのだ。
「それで?私への伝言を託した変わり者は誰だ?」
私は自嘲気味に、吐き捨てるようにヒシスピードに問う。
どうせ無理だ、という思考にのまれていた私の耳に飛び込んできたのは…
「
「…何だと?」
「そう言えば伝わると聞いている。“この情報が役に立てば幸いだ”だとさ」
前世で縁の深かった、あいつのコールサインだった。
「そうか…。やはりお前も来ていたか…それで、何を」
持ってきたのだ。と、問いただそうとした瞬間、窓ガラスを盛大に粉砕しながら何かが突っ込んできた。
「よぉ~、アル!革命起こそうぜ!お前
私たちの間に転がり込んできたのは、ここ一週間姿が見えなかったルームメイトだった。
黄色の13がミハイの知り合いだといいなぁ、という私の妄想の末に生まれた設定が含まれております。
ちなみにこの世界の組織の関係は
URA
↓
トレセン
となっています。まぁ、どこの世界線も同じだとは思いますが、一応。
さぁ、おじいちゃんを救うべく革命を起こしましょうか。