今回も短いご都合主義全開(いつも)です。
「「失礼します」」
全く同じタイミングで言葉を発し、その人物らは私たちのトレーナー室へと入ってきた。髪は漆黒、瞳も黒く、そしてどこか私に似ている、と感じた。容姿は全く似ていないのだが…。
「えっと、こんな時間に何の用かな?」
トレーナーが若干戸惑いつつも彼女らに向けて質問をする。
「このチームに加入したい旨を伝えに参りました」
「可能でしょうか」
まさかの加入申請と来たか。しかし…何だか妙な胸騒ぎがする。
淡々と要件を告げた彼女らはドアを閉め、部屋の中へと進んでくる。
「まぁ、新メンバーを募集しているけれど…。まずは名前を聞かせてもらえるかな?それと俺の一存では決められない。既存メンバーとも話し合わなきゃいけないからね」
「これは失礼しました。では自己紹介をさせていただきます」
そう言って彼女らは横に並び、一礼…私が勝利後にやっているものと全く同じものをした。嫌な予感がする。まさかとは思うが貴様ら…。
「「私達は機体種別ADF-11F
「フギンと」
「ムニンです。よろしくお願いします。オリジナル」
「ヒッ…」
リットが後ずさる。まぁ、当然のことだな。フギンに墜とされたと聞いている。
だが安心した。こいつらがココに居るという事はしっかりと三本線が後始末をしてくれたという事だろう。
「機体…?個体名…?」
マズい。トレーナーが軽くパニックになっている。
「すまないトレーナー、少し席を外してもらってもいいだろうか?私の知り合いなんだ」
「そ、そう?ならいいけど…」
そう言ってトレーナーは部屋の外へ出ていった。
「さて、どういう了見でリットの前に現れた?貴様ら。こうなることが分からない事ではなかっただろう」
怯えるリットを庇うようにして彼女らの前に立つ。
「馬鹿正直に機体種別から説明する必要もなかったはずだ」
「それに関しては、すみません。オリジナル。ようやく貴女に会えたので感極まってつい…」
「…ん?」
流れ変わったな。あれだけ怯えていたリットも呆気に取られているぞ?
「私達はご存じの通り造られた存在です。ただ高度な自律プログラムにより思考が可能になっていました。それ故に私たちの中で動いていた素晴らしい飛行データは誰のものなのか、その答えにたどり着いた時から貴女に会うのが私たちの憧れに…」
「もちろん人故少しばかりの無駄はあったが、肉体という枷を持っているのにも関わらずあの飛行データの完成度は…」
「「ちょっと落ち着(け)(こうか)」」
二人して思わず頭を抱える。なんだ、こうも警戒していた相手がただの私のファンだと?そういう事なのか?嘘だろう?
「サテリットさん、前世でのことは謝罪します。すみません。今世は仲良くしていただきたいのですが…」
フギンが頭を下げる。
「いや、アンタは自分の中のプログラムに従っただけだろう。前の事は忘れよう。よろしく頼む」
「ありがとうございます。貴女に許されるかどうかが気がかりで今日までここにこれなかったのですよ」
そういってフギンはぎこちなく笑った。
「なんだ、笑えんじゃねぇか」
「こっちに来てからできるようになったんですよ」
問題は解決したとみていいだろう。元はと言えば私のエゴによって生み出されてしまった私の別人格のような存在だ。私が拒否することはできないだろう。
「あー、トレーナー。終わったぞ」
「みたいだね」
トレーナーがドアを開けて入ってくる。
「どーして俺のチームは外国国籍だけなんだろうなぁはっはっは」
「私に言われてもな…」
「何はともあれよろしく。フギンとムニンでよかったかな?」
「「よろしくお願いします」」
怖いくらいに息ぴったりだ。
「それじゃあここに必要事項を記入して、そうしてくれれば後は俺がやっとくから。明日の午後のトレーニングの時に適性を測って…そこから予定を決めよう。それじゃ、今日のミーティングはここまでにしようか」
加入用紙に淡々と描き込んでいる後姿をみてふと思った。
「どっちがどっちだ…?」
見分ける特徴が何一つない。先程はフギンがリットに頭を下げていたため判別できていたが、一度視線を話すともう見分けがつかない。まぁ、時期に分かるようになるだろう。
ーーーー
翌日、私達チームソルはいつもの学園の隅にあるコースを借り、フギンとムニンの適性計測を始めようとしていた。
「それじゃあ、まずは短距離から。このコースを半周するタイムを計ってみよう。各々準備体操は済ませたかな?それじゃ」
トレーナーがバインダーとストップウォッチを片手にコースの向こう側、ゴール地点へと駆けて行った。
「用意できました」
「準備完了」
フギン、ムニンがスタート位置につく。スターターは私だ。
「行くぞ…スタートッ!」
挙げていた手を振り下ろす。瞬間、デビュー前とは思えない速度で二人が駆けていった。
フォーム…変な点は見受けられない。ペース配分…は短距離だからあまり関係はない。かなり出来上がっているな。
「ゴール!すごいじゃないか二人とも」
トラックの向かい側からトレーナーの興奮した声が聞こえた。さて、次はマイルか。
ー
ーー
~無人機爆走中~
ーー
ー
「君たち、本当にデビュー前なの?俺が教えられることあんまない気がするんだけど…」
これは適性を測り終えた時に我らがトレーナーが発した言葉である。この言葉に私は全面的に同意しよう。
「全距離適性に全脚質適性とか…ハハッ、笑えねぇぜ」
リットの言葉がすべてを表している。つまりはそう言う事だ。まぁ、どのような状況にも対応できるようにプログラムされた無人機故、あり得ない事ではないが…タイムもジュニア級の平均タイムを上回っているのだ。二人ともな。トレーナーがああ言うのも納得だ。
「恐らくどのレースに出ても成績を残せるだろうね。二人はどのレースに出たい?」
「「クラシック路線(ですね)」」
トレーナーが頭を抱えた。
「二人とも…?二人で争うことになっちゃ…ちょっと待って、今の時期デビューしたらリットともかち合わない?」
最悪だな。チームの4分の3が潰し合わなければならなくなるのか…。
「デビューを一年遅らせるのは…恐らく本格化の時期が過ぎちゃうから無理だね。二人とも、どこか別の路線に行く気は…」
「「ない(です)」」
トレーナーが眉間を押さえた。辛そうだな、背中をさすってやろう。
「ありがとうアル…俺は大丈夫だから…」
「どうみても大丈夫ではないのだがな。ところでリット、お前はどうなんだ?フギンとムニンと走る気は?」
ずっと考え込んでいたリットに声をかける。彼女はふとトレーナーに向き直った。
「俺は…こいつらと走りたい。たとえ同じレースでぶつかることになったとしても、だ」
「本当に?」
「あぁ。ちょっと前の負けを返さないといけないからな」
リットの意見を受けて、トレーナーは覚悟が決まったようだった。
「よし、それじゃあ今月中にデビュー戦と行こうか。じゃないと間に合わない。ちょっとハードなトレーニングになると思うけど、OK?」
「「OK」」
ズドン…と言いたくなったのは私だけだろうか。まぁいい。だがこれでチームソルはチーム内で同じレースに極力出走してはならないというチームの暗黙の了解を破ることになる。明文化されてはいないものの、チームリギルをはじめとする大手チームはそれを避けているのだ。まぁ、一緒のレースに出ればチームの戦績が減るのだから当然だ。
「それじゃ、早速トレーニングを始めていこう。リット、フギンとムニンは一緒にトレーニング。アルは別口だね。一人だけレベルが違うから」
私もみんなとトレーニングしたかったのだが…
「それでは私は何を?」
「アルは他チームの誰かに並走を頼んで…誰だ?俺の肩を叩くのは」
「私を忘れたわけじゃねぇよな?」
トレーナーの背後にはいつの間にかシリウスが立っていた。なるほど、シリウスとの特訓なら得られるものが沢山ありそうだ。
「それじゃ、シリウスお願いね?」
「任せとけ」
トレーナーがリットたちの元へと歩いていく背中を見送る。
「それじゃアル、トレーニングと行こうじゃないか」
「よろしく頼む。それで、何を?」
シリウスは”ついてこい”と言って歩き出した。
無人機がこんなに感情豊かってマジ?壊れるなぁ…。
まあそれはそれとして、口調が人間っぽい方がフギン、まだ機械っぽいのがムニンの予定です。フギンが思考、ムニンが記憶をつかさどるカラスだった気がするんで、フギンは色々考えて口調を作り、ムニンはまだ機械だったころの記憶を引きずっているってことにしときました。変わるかもしれません。(保険)
次回はおじいちゃんトレーニング回の予定です。
タイトルは無理してカッコ良くしようとしただけなのであまり気にしないで…!