エース娘コンバットダービー   作:Jeep53

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私は思ったんです。イベントが無ければ起こせばいいと。(テロリスト並感)
私は思ったんです。おじいちゃんが心から女性になってもいいと。(一部を敵に回す発言)


MISSION 26 「集中強化期間突入」

 『注目ッ!本校はこれより夏休みに入るッ!休みの期間を利用してさらに自分の実力を磨いてくれたまえッ!』

 

私は今、大人数が犇めきあっている体育館で秋川理事長の話を聞いている。登校したら教師が「今日は授業がありません」なんていうものだから何かと身構えたのだが、なるほど、夏季休業に入るための式典が催されるからであったか。ふむ…夏季休業…普段は午後からトレーニングだが、それが一日中になるという訳か。シリウスが言っていた夏合宿も一日中トレーニングできるという話だったが、学園に残るのと合宿に行くのでは何が違うのだろうか。どちらも一日中トレーニングではないか…。ふむ、あとでトレーナーにでも聞いてみよう。彼なら知っているはずだ。

 

『生徒会長のシンボリルドルフだ。これからの夏は君たちにとって有意義な夏になることだろう。ーーー』

 

 生徒会長の話が始まった。6月の最終日とはいえ、こうも人数が集まると暑い。熱に耐えることなど朝飯前だが、周りの子を見るに少しつらそうな子もいる。なるべく早く終わらせてほしいものだ。

 

『ーーーー。最後に、今年の()が終わったとき、自分に心からお疲れ()()()と言えるように不撓不屈の意思をもって精進してほしい。私からは以上だ』

「ふっ」

 

 思わず笑ってしまった。シリウスから聞いた生徒会長は身の丈に合わない理想を持ち、それに向けて奔走する人間離れしたやつと聞いていたが、なんだ、面白い面もあるのではないか。…周囲の温度は5度近く下がった気がするがね。

 

生徒会長が去り際にこちらを見て目を輝かせていたのは気のせいだろう。

 

ーーーーーーー

 

ーその後の生徒会長ー

 

「なあエアグルーヴ、見たか!?」

「…」アタマカカエ

「アルカンジュが笑ってくれたぞ!?」

「(あれは多分会長が求めている笑いとは違います…!)」

 

エや下

 

ーーーーーーー

 

 式典が終わった後、トレーナー室に向かった。もちろん、今後の予定を聞くためだ。夏合宿があることは知っているが、いつからなのか、どのくらいの期間行くのか、用意すべきものは何かを聞いておかねばならない。

 

「トレーナー、入るぞ」

「待ってたよ」

 

トレーナー室に入ると、彼はうっきうきでスーツケースを広げ、荷物を詰めている最中だった。だが、どうみても遊びに行く荷物の内容だ。

 

「あぁ、これ?普通の荷物とは別に遊ぶ用のものも持っていこうと思ってね。アルも用意しておいた方がいいよ」

 

トレーナーは私の不審に思う視線に気づいたのかそう弁明するが、やはり理解できない。遊びに行くのではなくトレーニングに行くのでは?

 

「ん-、時には息抜きも必要ってことだよ」

「せっかく出かけるから、という認識でいいか?」

「いいんじゃないかな。あ、出発は今日の午後2時だから早めに準備しておいてね。はいこれ準備リスト。まとめておいた。必要だと思ったものは自分で追加してもいいよ。このリストは最低ここに書いてあるものを持ってくれば何とかなるよってものだから」

 

そう早口にまくしたてられ、紙を押し付けられる。彼の目は遠足前日の子供のように輝いており、こちらの言い分は何も聞きそうにない。と諦めたところにそう言えば、と彼が付け足した。

 

「夏合宿はクラシック期以上のウマ娘しか行くことができないからうちのチームは必然的にアルだけの参加になるからね。他面子は知り合いに簡易担当をお願いしてきたから大丈夫だよ」

 

ほう、リットたちは行けないのか。まあ私も去年行ってないし、そうなるのか…。少し残念だ。

 

「それで、うちは一人しか行かないからってことで他チームに混ぜてもらうことにしたよ」

 

ほう?どこのチームだろうか。

 

「スピカって言うんだけど」

「テイオーのチームじゃないか」

 

彼女と一緒のトレーニング、か。なるほどこれはいいトレーニングになりそうだ。通常の学園トレーニングでは体験できない事だな。これが夏合宿のメリットか?

 

「ちなみに専属契約のスペリオルドーラも合流するよ」

「ずいぶんと大所帯だな。…それでは私はこれで失礼する。また後で」

 

 そう言ってトレーナー室を後にして、自室へと向かう。準備リストにある物はすぐに用意できる。日頃からあまり荷物を広げない癖がここで役に立ったな。プラモ類を除けばほとんど一つのカバンに収まる。それをもっていけばいいだけだ。

 だがまずは昼飯を食べよう。そろそろ12時だ。

 

ーーー

 

 昼飯が終わり、自室につくと、案の定ゴルシがゴルシしていた。もはや彼女の行動は彼女の名前を使うことでしか表現できないのだ。彼女が概念そのものなのだ。今後私が同じような行動をとっている奴を見かけた場合ゴルシしていると表現するであろう。

 

「ゴルシ、何度も言っているだろう。私のベッドの方まで使ってドミノを作るんじゃない」

「おっ?アルも準備か?わりぃ今どけるわ」

 

そう言って彼女はドミノを倒し、亜空間にしまう。もはや見慣れた光景だ。考えるだけ無駄である。

 

 私はドミノがどけられたベッドの上に座り、ボストンバッグを取り出した。中身の確認である。

 

「リストには…ジャージ、制服、私服、水着、被服類ばかりだな。残りは目的地にあるのか?」

「お?あ、アルは合宿初めてか。大体のものは揃ってるし、必要なら買えるから服だけ持ってきゃ何とかなるってもんよ」

 

なるほどな。となると後は私物…携帯端末、インカム、暗視ゴーグル、商店街でカスタムパーツを買った拳銃、予備マガジン、自作フラッシュバン…この位あれば生き抜けるだろうか。

 

「合宿で何するつもりなんだよアル…」

「ん?合宿とは己を高める訓練をするものなのだろう?」

 

それはそうだが、とゴルシは言う。何が不満なのか。

 

「ならばこの位の装備は必要だ。あとは商店街で買ったカセットコンロ、ヤカン、飯盒…その他この位あれば一週間は無補給で己を磨くことができる。先程の口ぶりからして食料は現地調達ができるのだろう?ならばコメをもっていけば解決しそうだ」

「どこの軍隊だよ!?」

「エルジアだが」

「そうじゃねえ」

 

一体何が不満なのか。ゴルシが頭を抱えるのはレアケースだ。写真をとっておこう。

 

「聞きたくねえんだけどよぉ…ゴルシちゃん今用意している以外にもバッグが見える気がするのよ」

「あぁ、あっちはテントや寝袋、ライターや着火剤、ワイヤーロープや固定用のアンカー…まあ色々と入っている。普段は使わないからずっと纏めてあったのだよ。すぐに持っていけるようにな」

「もういい。アタシは何も見ていない。知らないからな」

 

そう言って彼女は予め纏めてあった荷物をもって部屋を出て行ってしまった。さて、準備を再開するとするか。今は…1時か。さっさと準備を終わらせなければ。

 

ーーー

 

 時刻は午後2時。私は準備を終えてトレーナーに先ほど言われていた場所へと向かった。そこにはもうスピカの面々、ドーラが集まっており、私が最後のようだった。

 

「すまない。遅れてしまった」

「おう、大丈夫だ。まだ1時59分だからな」

 

そう言って笑うのはスピカのトレーナー、沖野だ。どうやら彼の運転する中型バスでの移動になるようだ。トレーナーが三人、ウマ娘が九人。バスの座席はちょうど12席。余裕はない。

 そのため助手席…つまりは沖野トレーナーの隣に誰が乗るかでスピカ連中が喧嘩をしている。愛されているな沖野トレーナーは。

 

「アルもだれの隣に乗るか決めてきなよ」

 

そう言ってトレーナーは私にあの騒がしい輪の中に入るよう勧めてくる。

 

「私はトレーナーと乗るつもりだ。決める必要はない」

「え゛」

 

トレーナーが固まった。なんだ、おかしい事を言ったわけでもないのに。

 

「いや、さ、同年代の友達と隣の方がいいでしょ?こんなおじさんよりさ」

「まだそんな年齢じゃないだろう。私は気にしないぞ。それにアンタが隣だと安心できるのでな」

「…それは卑怯だって」

 

決まりだな。席は一番後ろを貰おうか。おや、ドーラもトレーナーの隣を獲得したのか。

 

「あれが…正妻の余裕…」

「すごい…」

 

何か言われている気がするが、気にしない。今世では自由に生きると決めたのだ。何をしようと文句は言われようと気にしない。

 …最近、本格的に男であった感覚が消えてきている。最初は抵抗感しかなかったが、感覚が染まるのはどうやら止められないようで、それを知ってからは諦め、開き直ることにした。以前の記憶はもっているが、以前の私ではない。新しい生き方を選択しても罰は当たらないはずだ。…はずだ。

 そして、トレーナーと一緒に居ると安心する。…この自分の気持ちが何なのかが分からないほど人生経験は浅くないが、立場上はっきりと自覚しないように、表に出さないように努めている。まだこの気持ちを言葉にする時ではない。

 話が逸れに逸れたが、今回の目的は夏合宿だ。どんな試練が待ち受けているか、今から楽しみである。

 

ーーー

 

 座席が決まってからの動きは単純かつ迅速だった。大型バスにあるような荷物室はないため全員で荷物を抱えてバスに乗り込み、上の網棚に載せる。そして席に座れば後は沖野トレーナーが勝手に運転してくれる。バスはトレセン学園を出発し、快調に走っていた。見慣れた街の景色を走り抜け、だんだんと外の景色は知らないものへと変わっていった。

 

「そろそろ高速乗るぞー」

 

 沖野トレーナーが若干眠そうな声でそう言った。出発からもう既に30分ほどが経過しており、特に異常もない。景色もそこまで感動できるものでもないし眠くなるのは当然のことだろう。居眠り運転だけはやめてほしいがね。

 スピカの面々はお互いの談笑を楽しんでおり、眠る気配はない。ドーラとそのトレーナーはうとうととしている。よくこの喧騒の中で眠れるな、君たちは。私のトレーナーはというと、なぜだかガチガチに固まって眠ろうとも喋ろうともしない。そんなに私の隣が緊張するのだろうか。

 

「なあトレーナー。合宿場についたらまずは何を?」

「ん?あー、そうだな、部屋の割り振りを決めて、今日は特に何もないかな。本格的なトレーニングは明日からだから」

「ほう、泊まるところがあったのか。てっきり野宿かと思っていたぞ」

「アル?どんなトレーニングを想像していたの???」

 

 トレーナーに聞かれ寝袋等の方の荷物の中身を説明すると、トレーナーは眉間を抑えた。

 

「そっか、そうだな。うん。初めてだもんな。しっかり説明しなかった俺が悪い。本格的なトレーニングとはいっても学園で普段やっていることの強化版のようなものなんだ。だからそんな軍の訓練のようにやるわけじゃないんだ」

「なんだ、そうだったのか。勘違いして一週間は山籠もりができる装備を持ってきてしまったぞ」

 

 トレーナーはそれを聞いて苦笑いした。

 

「アルはぶれないねえ。肩の力がちょっと抜けたよ」

「なぜそんなに緊張しているのだ?」

 

私の問いにトレーナーは少し考えるそぶりを見せ、答えた。

 

「アルの隣ってこともあるけど、自分の担当との合宿が初だからってことも大きいかな。サブトレーナー時代に来たことはあるけど担当と来るのは初めてで、しかも本格化の伸び盛りなものだから、うまく指導できるか心配でね」

「おい小林ぃ、担当にそんな悩みいうんじゃねえよ。アルちゃんが不安になっちまうだろうが」

 

運転席のほうから沖野トレーナーの声が飛ぶ。まあ普通のウマ娘に対してなら言うべきではないが、まあ中身が私だからな。問題はあるまい。

 

「大丈夫だ沖野トレーナー。彼の気持ちはよく分かる。それに支えあうのも担当とトレーナーとしての関係の一つだろう?」

「そりゃそうだが…ま、アルちゃんがいいならいいさ。小林もアルちゃんにあんま頼りすぎないようにしろよ?」

「わかってますって先輩」

 

 その会話ののち、しばらくすると会話が途切れ途切れに、終いにはなくなってしまった。皆寝てしまったのだ。合宿が普通のトレーニングのようなものならばチームスピカのまだ話したことのないメンバーとも、そしてテイオーやドーラとさらに仲良くなることができるかもしれない。真っ当な友情を楽しむチャンス到来である。実に楽しみだ。

 

 車内が静かになってから大体半刻ほどが過ぎたころだろうか。バスは高速道路を降り、一般道へと入った。車どおりは少なく、牧歌的な風景が広がっている。だいぶ遠くまで来たようだ。

 ふと隣を見ると、トレーナーも寝てしまっていた。連日の業務で疲れているのだろう。普段見せてくれる顔とは違う若干幼さが漂う寝顔に思わず笑みがこぼれる。

 

「ふっ…お疲れさま、だな」

「アルちゃんが慈愛の神みてぇな表情してやがるぜ…」

 

 バックミラー越しに沖野トレーナーが何かを言っているが気にしない。

 そうしていると、バスは小さめの峠を越え、下り坂に入った。

 

「よっし、そろそろだぞお前ら!起きろお!」

 

沖野トレーナーの号令で面々が目を覚ましだし、バスは窓から見える施設…だいぶボロいが…に向かっていく。

 

 施設に到着することには皆起床し、降車の準備を終えていた。トレーナーたちが受付で手続きをし、案内の人についていくと部屋の前に案内された。先頭を歩いていた沖野トレーナーが振り返った。

 

「さぁ、ここの三部屋で別れてもらう。分け方は各自で話し合って決めてくれ。トレーナー陣は向こうの部屋で泊まるから、何かあったら呼びに来るんだぞ」

 

そういってトレーナーたちは去っていった。さて、どうやって部屋割りを決めたものか。

 

「はいはーい!ここは順当にくじ引きでどうかな!?」

「テイオー…くじ引きなど持ってきているわけがないでしょうに」

「あるぞ?ほれ」

 

テイオーが提案、見るからにお嬢様のウマ娘が呆れたように言った瞬間、ゴルシが亜空間からくじ引きを取り出した。

 

「さっすがゴルシ!分かってるじゃん!」

「よせやい照れるぜ」

「なんであるんですの…?」

 

スピカの面々はもう気にも留めていないようだが、ドーラは宇宙を背負って思考を停止させている。初見で亜空間はインパクトが強すぎたか。よしよし、大丈夫だぞ。あれが平常運転なんだ。

 

「…アルカンジュ、撫でるのをやめてくれませんかね…」

 

よかった。再起動したようだな。

 

「よぉし引こうぜ!くじは9本、それぞれの先に色が塗ってある。同じ色が同じ部屋って寸法だ!行くぜぇ!」

『せーのっ!』

 

ゴルシの合図でくじを引いた。




さて、同室の組み合わせどうしようかな。
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