キサラギ職員様よりまた支援絵をいただきました!対Gスーツ姿(未登場、というか多分出せない)のアルカンジュです。ありがとうございます!
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こういうの好きです。
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投稿してから言うのもなんですが、訳分からんテンションで書いた謎回となってるので読まなくても結構です。なんでこれを書いたのか自分でも分からなくなってます。何でも許せる方のみお読みください。書いた張本人の私ですら「なんだこれ」となっています。
時刻は午後7時。あたりもそろそろ暗くなり始め気温も下がってくるころだ。そんな中、私は今。この国の伝統衣装である”ユカタ”*1とやらに袖を通そうとしている。着付けをしてもらっている最中なのだ。
「やっぱり元がいいと似合うわねぇ!」
合宿場にやってきた妙齢の着付け師の女性は私を見てニコニコとそういった。
「ダービーに勝利した子の着付けなんて初めてだわぁ」
そう特別なことでもないだろうに…。まぁうれしそうなのでヨシとするか。
「それはそうと…このユカタとやら、すこし通気性が良すぎやしないかね?」
「あらま、浴衣はそういうものよ?あきらめなさいな」
そういうものなのか…。普段ズボンを履いているだけに心配になるな。何も履いていないように感じる。それに…
「走りにくそうだな…」
「アルカンジュちゃん、浴衣は走るものじゃないのよ~」
そういうものなのか…。異国の文化は慣れないが、郷に入っては郷に従えという言葉もあることだ、慣れるしかあるまい。
「はい、おしまい!あらぁ~!やっぱり別嬪さんねぇ!」
着付け師はポンポンと肩をたたいてくる。
この国の妙齢の女性特有のこのテンションはどうも対応しにくい。こちらが何もせずともどんどんと踏み込んでくる感じは少しばかり苦手である。
「それとアルカンジュちゃん、今日の盆祭りは
「…?了解した」
変質者でもいるのだろうか。命知らずだな。
「アル、準備できた?うわ、きれーい!」
ドアを開けてテイオーが入ってきた。彼女は着付け師と同じテンションで私の周りをうろうろし始める。もちろん彼女も浴衣姿であるが、器用に動いている。慣れているのだろうか?
「テイオーさんそんなにはしゃがないでくださいまし。アルカンジュさん、テイオー、そろそろ行きますわよ」
「はーい!」
「うむ」
廊下からマックイーンが私たちを呼んだ。私の着付けが一番最後であり、他全員はもう既に祭りの会場に行っているはずである。トレーナーは仕事があると言っていた。少しくらい休めばいいものを…。
着付け師に礼を言い、一度部屋によって必要なものをとってから合宿場を出る。月が出ており、涼しい風が吹きわたっている。実に心地よい。祭りにふさわしい気候だといえるだろう。
「ねぇねぇマックイーン。お祭り会場はどこ?」
「あちらの神社の境内ですわ。階段が少しばかりつらいですが、頑張りましょう」
マックイーンが指さしたのは合宿中階段ダッシュに使っていた神社。あの階段をこの格好で登らなければならないのかと考えると眩暈がしそうだ。
つづら折りの階段をようやく登り切り、鳥居をくぐったその先には、境内中に張り巡らされた提灯や、たくさんの光輝く出店からなる祭りの光景があった。
「これは…すごいな」
「意外と大きいお祭りですのね。さ、回りますわよテイオー」
「ちょ、ちょっと待ってよぉ!」
練習できた時はあまり広いとは感じず、むしろ狭いなと思っていたこの境内がこのように装飾されただけで無限の広がりを持つように見えてくるのはなんと不思議なことか。このまま奥に行けば無限に出店が続きそうな雰囲気がある。人も多いな。そこそこ有名なお祭りなのかもしれない。
出店の種類も多い。りんご飴、たこ焼き、焼きそば、ヨーヨーすくい、射的、わたあめ…その他にもかなりの種類が立ち並んでいる。価格は…ちょいとばかし高い気がするがね。
「おや…?」
考え事をしていたらいつの間にか一人になってしまっていた。テイオーとマックイーンは…見当たらん。まぁそこまで広くない境内だ。すぐに会えるだろう。
独りで気楽に回るのもいいものだ。誰にも邪魔されず、屋台を見て回ることができる。腹はすいていないから飲食はしない。出店の店主よ、許せ。
お面の屋台、それに群がる子供たち。射的の出店で盛り上がる青年たち。金魚すくいの店の前で店主とそれと同じくらいの年齢のおやじが談笑している。かき氷屋で盛り上がっている女学生、くじ引きをやりたいと親にせがむ小学生くらいの子。おぉ、またわたあめの屋台か。こっちも人気だな。
それにしても店が多いな。いつまでこの道は続くんだ?もう十数分は歩いたと思うが。……おや、音楽が聞こえる。笛の音と太鼓の音の軽快なリズムだ。お囃子というやつだろうか。祭りも最高潮といったところなのかね?
(…おかしいな)
ふとそう感じた。いくら何でも道が長すぎる。一度立ち止まってみようとするが、後ろから来る人の波に押されて止まることができない。
なんとか路肩に移動し、一息吐く。そして再度見渡すが、後ろはどこまでも続いているかのような通ってきた出店通り、前は同じく続いている出店通り…。
「妙だな…?」
いくら出店が大量に出ているとはいえこんなに連なっているのはおかしい。境内の大きさにあっていないではないか。曲がりくねってはいたが180度のカーブはなかった。つまりつづら折りに店が展開されているわけでもない。どういうことだ…!?
「…ッ」
考えるために視線を足元に落として思わず息をのんだ。私の影が揺らめいている。それに、周りの店舗とは違う方向に影ができている。今度は逆に上を見上げると、光源となるはずの電灯や提灯はなく、空にあるはずの月もなく真っ黒であった。なのに屋台周りは祭り特有であるオレンジ色の明るさを保っている。
いやな汗が全身から吹き出し、急に足元が覚束なくなる。どういうことだ。いったい何が起こっている?
自分の常識の範疇外の出来事に驚きよろめいて出店の支柱にもたれかかった時、支柱がやけに大きな音を立てて軋んだ。
「あぁ、すまn…」
すまない、と言いかけ、口を噤む。
店主の顔が認識できない。まっすぐに目を見ているはずなのに顔に靄がかかったようにその顔を認識することができない。それにこちらの声が聞こえていないかのように手は作業を続けている。そして、その手はうっすらと透けている。
(マズい。ここは来てはいけない場所だ。今すぐに離脱せねば…!)
本能的にそう思い、竦む脚に鞭打ち、何とかもと来た方向に歩き出す。得体のしれない恐怖によってか、足取りはフラフラであったが確実に一歩ずつ戻っていく。
そして気づく。人の流れが一方方向であることに。皆が私と逆の方向へ、先ほどまで私が進んでいた方向へと進んでいくのだ。そして、そのどの人の顔も先ほどの店主の様に認識ができない。喧騒はやかましく響いているが、そのどれも聞き取ることができない。私の知っている言語ではない。群衆の影は異常なほど薄く、私の影とは別の方向に生成されている。先ほどまで認識できていたはずの出店の店名までもが未知の記号によって示されている。ずっと見ているとどこか吸い込まれそうな記号だ。
(早く、一秒でも早く逃げなければ)
焦る気持ちをそのままに、足早にヒトの波をかき分け、元居た場所を目指して歩いていく。
お囃子のテンポが上がる。ドラムロールが加速するように。
小太鼓と縦笛のリズムが最高潮に達したとき、スッとお囃子がやんだ。それと同時に、見慣れた文字で店名が書かれており、しっかりと電灯もある出店通りに出た。
「……」
脚の力が抜け、その場に膝をつく。周りが不思議そうな顔でこちらを見る。いやな汗がじっとりと体中に湧き出ており、とても気持ち悪いはずなのだが、どっと押し寄せる安心感故にそれすら気にならない。
「あれは…一体…」
一分少々そのままでいたのだが、さすがに付近の視線に堪え切れずに、私は出店の裏に回り、付近にある木にそのままもたれかかった。さわやかな風が揺らす梢を見上げる。その隙間からは煌々と輝く月が見え隠れしていた。耳に届く喧騒もちゃんと理解できる。
「戻って…これたのか…」
「嬢ちゃん。ほれ、これでも飲みな」
先ほどの出店通りでの私を見て心配したのか、付近の出店のおやじがわざわざこちらに来てラムネを開封して手渡してくれた。
「…助かる」
もらったラムネを飲みながら一息つく。ラムネの甘さが全身に染み渡っていくようだ。
その時、私の耳に先ほど聞いたような音楽が聞こえてきた。小太鼓と、縦笛の音楽だ。
「ッ、あの音楽は?」
「え?知らんのか?……あぁ、お前さんトレセンの学生さんかい?」
おやじは納得顔で頷き、少し考えてから話し始めた。
「えぇとな、あの音楽はこの地域ではなくなったご先祖様に向けて演奏する音楽なんだ。今日は夏祭りつっても盆祭りだからな、ご先祖様のためのお祭りなんだ。だからああして演奏してるんだよ」
「…実はさっき、妙な空間であれに似た音楽を聴いてね」
途端に、おやじの纏う雰囲気がガラリと変わった。
「おい嬢ちゃんそりゃ本当かい!?」
「あ、あぁ。そうだが…」
「詳しく聞かせてくれないか。ちょっとばかしマズいかもしれん」
おやじはどこか焦りを含む真剣な表情でそう言った。私は思い出せる限りのことを話していく。出店があり得ないくらい並んでいたこと。空は星も月もなく、照明もなかったこと。影のこと。顔のこと。
話していくうちに、おやじの顔がどんどんと険しくなっていく。話が終わった後、おやじはゆっくりと口を開いた。
「嬢ちゃん、それはな、おそらく死後の世界に続く道だ。道の先まで行っちまってたら戻ってこれなかったぞ。…いや、途中から戻るのにも相当な精神力が必要なんだ」
「死後の世界…か。にしても、なぜそんなことが分かる?」
「後で説明する。今は神主のとこにいかねぇと。立てるか?」
おやじの手を借りて立ち上がる。小走りで駆けだすおやじの後ろをついていく。もうふらつきはしない。出店の後ろを抜け、神社の本殿へと向かう。本殿の縁側に上がり、裏手にまわって扉を開けた。
「神主ぃ、帰還者が出た!今大丈夫か!?」
「帰還者…!?何年ぶりでしょうか。どこの誰です?……おぉ、若い」
(精神年齢はおそらくアンタより上だがね。)
出てきた神主はおやじよりも年をくっている男性だった。そして、私を見てから少し考え、何かに気づいたようだった。
「もしかしてダービーに勝ったアルカンジュさんだろうか?」
「そうだが…」
「あぁ、あの!どっかで見たことあると思ってたら…」
どうやら神主は私のことを知っていたようだ。そしておやじも言われて気づいたようだ。意外と有名人なのだな、私は。
そして神主は何やらいろいろと書かれた御札を差し出した。
「なにかあったら、これが頼りになるはずです。一回あちらに行った者はあちらのモノに好かれやすいのです。どうか、お気をつけて。あと現実問題、ダービー勝利者にこれ以上の被害が起こっては取り返しのつかないことになってしまうので本当にお気を付けくださいね?」
「あぁ、分かった。受け取っておこう。ところで先ほどおやじから死後の世界までの道だと聞いたが、何故わかる?」
「私自身経験したことがあるからですよ。あそこの雰囲気は現世のものとそうじゃないものが入り混じっているのです。よってこちらとあちらの狭間のような空間であると仮定しているのです」
とんだ厄介ごとに巻き込まれたもんだ。変な空間の次はこんな東洋のオカルトじみた御札がでてくるとは。まぁ私自身オカルトの塊のような存在であるし、あの空間を経験したことも事実だから信じるしかあるまい。
神主とおやじに礼を言い、神社本殿を出て合宿所へと向かう。今日はもう疲れた。さっさと風呂に入って寝たいものだ。とりあえず御札は……どうしたものか、浴衣にポケットは存在しない。とりあえず手持ちのまま部屋に帰るとしようか。
ーーー
その後は特に何も起こらず、いつも通りの日常だった。飯を食い、風呂に入った。あとはもう部屋に戻って寝るだけである。
「あ、アル、トレーナーさんが手招きしてるよ」
「うん?」
風呂場からテイオーたちと戻る途中、テイオーが私のトレーナーを見つけた。やや薄暗い照明の下、トレーナーは声を発するわけでもなく、ただ手招きしている。
「ふむ、何かの相談だろうか。先に部屋に戻っていてくれ」
「分かったよ。消灯時間には戻ってきてよね!」
トレーナーの元まで歩き、彼の前に立つ。
「何の用かね?今日私は疲れているのだが」
「そう邪険にしないでくれよアルカンジュ。明日のトレーニングで話したいことがある。ついてきてくれ」
(…ほぉ…)
そういってトレーナーは廊下を歩きだす。私もそれに付き従い、歩き出す。廊下の角を曲がり、テイオーたちが見えなくなったところで私は立ち止まる。
「…何の真似だい?アルカンジュ」
私はトレーナー…いや、トレーナーらしきナニカに銃を向ける。こんなこともあろうかと持ってきていたのだ。というか神主に死後の世界云々と言われてからずっと持っていたのだがね。
「動くな。アンタは、誰だ?どうも私のトレーナーじゃなさそうなんでね」
「なんてことを言うんだアルカンジュ」
ナニカは慌てたような口調でそう言う。
薄暗い廊下、先ほど経験したあの空間のような恐怖感はない。まだここは現世のようだ。
「それを下ろしてくれないか。アルカンジュ」
「そういう訳にはいかないのだ。アンタが誰なのかが分かってない」
ナニカはため息を吐いた。ため息をつきたいのはこっちだというのに。
「一体なにが気にくわないんだい?アルカンジュ。俺はいつも通り…」
「それだよ」
拳銃を握る力を強め、言葉を紡ぐ。
「
「!…クソッ!お前らそういう関係かよ!」
ナニカが振り向いた。その顔はやはりというべきか、私には認識ができないものであったが…。悔しそうな表情をしているということだけは分かった。姿かたちももうトレーナーのものではない。
「担当ウマ娘を愛称で呼ぶことは普通だバカ者」
二発の銃声が響く。一発は頭部を、もう一発は心臓を狂いなく打ち抜いた。が、血は飛び散らず、変な靄が空中に舞った。
「ふふふ…ハハハハッ!俺に拳銃など効か………ぬ?」
一瞬だけ不敵なセリフを吐くもののナニカは急激に固まる。そして私が撃ち抜いた銃創からはどんどん靄のようなものが出続けている。
「直前まで神主にもらった御札に包んでおいた弾丸だ。まさか効果があるとはなぁ」
ドサリと倒れこんだナニカに対し煽るように上から覗き込む。もちろん銃は構えたままだ。
「銃刀法違反の犯罪者め…」
「よくしゃべる怪異だ。そんなに死に急ぎたいのかね。いや、もう死んでいるのかもしれんな」
私が再度引き金に指をかけるとナニカは慌てたように口を開く。
「ま、待ってくれ。俺はアンタを驚かそうとしてただけなんだ、冗談だったんだ」
「こういう言葉を知っているか?全員が笑えない冗談はもはや冗談ではない、というものだ」
そういって私はポケットからもらった御札を取り出す。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。話せばわかる!」
「問答無用!」
「ギャァァァァァァ‼」
ナニカの額にあたる場所に御札を張り付けると、そいつはサラサラと消えていった。これにて一件落着、といったところだろうか。いやはや、大変な一日であった。早く戻って休むとしよう。消灯時間も迫ってきているしな。
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後日神主聞いて分かったことだが、私が対処した奴は神主も手を焼いていた奴だったようで、地元ではかなり危険視されていたらしい。あそこで私が情けをかけて逃がしていたらもっと大変なことになっていただろうと神主は話していた。
この盆祭りの数日後、合宿が終了して私たちは学園に戻ることになった。自身の能力向上にもつながり、町の役にも立てたと考えれば十二分の収穫があった合宿だったといえるだろう。秋のレースが実に楽しみである。
なんだこの回(困惑)
実は前半は友人との深夜テンションのノリ、後半はおじいちゃんに銃を撃たせたかっただけでできた話だったりします。
次回はまともなお話に戻ります。オチが雑とか言わないで(小声)