つまり中等部2年に編入ってことです。
今回はクラスメイトとなる方々との対面の予定です。クラス分けは適当です。アニメ未視聴なもので…学年?分かりません。
ちょっと時間飛びます。
「今日はこのクラスに新しい子が来ます。皆さん仲良くしてあげてくださいね」
廊下にいる私の耳にクラス担任の声が届く。もう少しで私が入るクラスのメンバーとの対面だ。教室の中からはざわめきが聞こえてくる。自分の服装に不備がないかどうかを確かめ、先生の許可と共に入室する。
私は教壇に立ち、室内を見渡す。目を輝かせてこちらを見る者、探るような目つきの者、寝ている者、様々だ。
「自己紹介をお願いします」
先生が微笑んで私の自己紹介を促す。私は先生を一瞥して頷き、口を開いた。
「私はアルカンジュだ。この度このクラスに編入することとなった。至らない点は多々あると思うが、仲良くしてくれると嬉しい」
「と言う事で、編入生のアルカンジュちゃんです!それじゃあアルちゃん、教室の後ろの空いてる席に座ってね」
机と机の間を通り、示された座席に座る。どうやら今から今日の予定について話が始まるようだ。
先生が黒板にチョークを走らせる。
“第2回選抜レース”、と。
どうやら座学の時間は今日はなく、明日かららしい。選抜レースを行うクラスはその日の授業はなくなるというのだ。
先生の話が終わり、待機時間となると生徒たちが私の周りに集まった。そのまなざしは期待に満ち溢れている。私の事が知りたいのだろうか?
「初めまして!ボクはトウカイテイオー!キミのことが知りたいんだ。教えてくれない?」
集団の中心にいる子曰くどうやらそのようだ。周りの子たちも頷いている。
「そうだな。何から話したものか…質問があるなら応えよう」
「えっとそれじゃあ、どこ出身?寮はどっちになったの?同室は?トレーナー決まってる?あとは…」
「ちょっと待ってもらえるか。そんなに一度には答えられない。そうだな…出身は外国とだけ言っておこう。寮は栗東寮というところだ。同室はゴールドシップ、掴み所の無い奴だ。トレーナーは多分未定だ」
同室の名前を口に出した途端、周囲の目が驚きと哀れみを含むものに変わった。ゴールドシップ、貴様はいつも何をしているのだ?
「ゴルシ先輩といっしょか…アルちゃん強く生きてね。あの人拳銃で撃たれてもピンピンしてる人だから」
本当に何をしたんだ…。
ーーーー
あれからしばらく経ち、私たちのクラスはジャージに着替え、運動場に移動した。さて、ここで分からない事が一つある。近くにいる子に聞いてみることにしようか。
「すまないが、ちょっといいだろうか?」
「はいはい、なんでしょ?おや、アルさんじゃないですか」
赤毛のふわふわツインテールの子は軽く笑って手をひらひらと振った。笑っているように見えるが、目は笑っていない。ゴールドシップ程ではないが掴み所がよく分からないと感じた。
「選抜レースとは具体的にどのようなレースなのだろうか。こちらの業界には入ったばかりでな。君の名前と一緒に、よければ教えてほしい。」
その子は一瞬驚いた表情を見せると、すぐ先程の顔に戻って答えてくれた。
「選抜レースはねー、トレーナーさんたちが素質ある担当を見定めてスカウトするためのレースだよ。あ、私はナイスネイチャ。以後よろしくね…まぁ、しばらくしたら居なくなるかもだけど」
「なるほど、そのようなレースなのだな。ありがとう。…だが、居なくなるかもとはどういうことだろうか?」
ナイスネイチャは一瞬顔をゆがめた後、口を開いた。
「私は…一応ここには居るけど勝てるなんて思っちゃいない。
力なく笑ったナイスネイチャは準備運動をしているクラスメイトを指さす。
「トウカイテイオーを見ておくといいよ。嫌でも才能の差が分かるはずだから。それじゃ」
そう言い残すと、ナイスネイチャは行ってしまった。
年長者として何か助言ができればいいと思ったのだが、私には何もできなかった。
私は改めて周りを見渡す。トウカイテイオーとその周りは恐らく速いウマ娘達が集まっているのだろうか、表情がみな明るい。が、少し離れたところで集まっているウマ娘たちの表情は暗い。ナイスネイチャは一応トウカイテイオーのグループに居るようだ。……一人なのは私だけか。
「アルカンジュ!」
甲高い声が響く。顔を上げるとトウカイテイオーが私に対して手招きをしている。
私は小走りで彼女のもとへ向かった。
「なんだ?」
私がグループに近寄ると、トウカイテイオーがビシッと私を指さして言った。
「宣戦布告。ボクの背中を拝みながらゴールさせてあげようと思って」
「…待っているといい。必ず追いつく」
私の返しに獰猛な笑いを浮かべたトウカイテイオーだったが、やってきた担任に頭をポンと叩かれて肩を跳ねさせた。
「ライバル関係はいいことですが、そろそろ出走ですよ?ゲートに集合してください」
「はーい」
「…」
担任に促され、ゲートに収まる。ゲートは好きだ。戦闘機のコックピットのような閉塞感が心地いい。
ーーー集中。コースのその先を見据える。
ガシャン!という音と共に目の前の鉄板が消える。地下レース場の時のように好スタートを切れたと思ったが、クラスメイトのほとんどが私の前にいることからどうやらまた私は出遅れたようだ。なぜだ?
そんなことを悠長に考えている暇もなく、レースは進む。このレースは2000m、この前と同じだ。焦ることはない。
最後尾のウマ娘の後ろにピタリと着く。君の走りはどんな走りだ?教えてくれ。
「例の編入生、出遅れましたね…それもかなりの出遅れです」
「スカウトによる編入らしいですが…あれはだめかもしれませんね。フォームが整っていない」
「最後尾に何とか追いつきましたが…追いつく過程で無駄にスタミナを消費してそうですね」
レースを観ているトレーナーたちの間でそんな声が上がる。どうやら俺と他数名以外はアルカンジュを見限っているようだ。いやまあ、仕方ないのだ。彼女のフォームは劣悪そのもの。スタートも毎回失敗する。だが、俺の眼に間違いはないはずだ。きっちりと正しいことを教えれば彼女は化けるはずだ。それにまだデビューしていないこの時期に粗削りではあるがマーク技術を習得、その後垂れてきたウマ娘らを回避且つ速度を上げてぬかす技術も体得している。磨けば磨くほど光りそうなウマ娘、俺はそう思っている。
「小林君」
「あ、東条さん。ご苦労様です」
背後から声をかけられて振り返ると、そこには学園内でも有数の実力を誇るチーム、リギルのトレーナーである東条ハナさんがいた。
「とんでもない原石を拾ってきてくれたわね。多少無理な加速をしても一切疲れた様子を見せてない。さらに…ほら」
東条さんが指さす先のアルカンジュは何やら口を動かしているのが見て取れた。
「ささやき技術まで持っているみたいじゃない。フォームが完璧だったらシニア級連れてきたのかと錯覚しそうよ?どこで見つけてきたの?」
「あはは…あまり大きな声では言えないんですが違法レースでちょっと。彼女は初出走で、違法レース最多連勝記録持ちに勝ったんですよ。これはいけると思いまして。理事長に無理言って編入手続きをしてもらいました」
「違法レースって貴方…はぁ、程々にしなさいよ」
呆れたような表情の東条さんは目線をレースに戻した。レースは大詰め、最終直線に差し掛かろうとしていた。
そろそろ最終直線だ。一位はトウカイテイオー、二位は…名前は分からない。三位も分からない、四位はナイスネイチャ…なんだ、結構好走しているじゃないか。五位も分からない、そして私は六位。
「…ッ、うぅ…」
五位のウマ娘が後ろに流れていく。違法レースの奴らよりかは長く持ったか。
マーク対象を変更し、ナイスネイチャの真後ろにピタリとつけ、足音をわざと大きくたてる。こうするとちょっと怯む奴が多いのだ。案の定、ナイスネイチャも一瞬ビクッとなり、わずかに外へとヨレる。
そのタイミングを見逃さず、内側に入り込む。ナイスネイチャの顔が歪んだのが見えた。
「先に行かせてもらうぞ」
「…ッ」
そのままちょっとだけ加速し、前へ出る。残りは二人、一人はすぐ目の前だ。
ナイスネイチャを抜かした時の加速を殺さず、外側へ体を振って二位のウマ娘をパスする。実に簡単な作業だった……ここまでは。
問題はトウカイテイオー、彼女は結構先まで行ってしまっている。スパートで追いつけるといいのだが。
私は体を思いっきり前に倒し、地面をいつも以上に丁寧に、力強く踏み込む。途端に速度が上がるのが体で感じられる。が、
(追いつけない…だと!?)
トウカイテイオーとの差が縮まらないのだ。なぜだ?スパートの方法が悪かったのか?
そんな私の心の中を見透かし、あざ笑うかのようにトウカイテイオーは一瞬だけ振り返り、私を見て、笑った。
ーーー君じゃボクには追い付けない。
そういわれている気がした。上等だ、絶対に
焦りが生まれていた心が落ち着きを取り戻し、口元には笑みが浮かぶ。
ただ前を、ゴールを見据えてさらに足の回転数を上げた。思ったように速度は乗らないが、確実に速度は上がっている。その証拠に、トウカイテイオーは私のすぐ横にいる。
「トウカイテイオー、来たぞ」
「!…まだまだぁ!」
「再加速…だと…!?」
だが、自信満々なだけある。彼女は私がようやく出しているスピードよりもさらに上のレンジを持っていた。みるみるうちに差が開き、ゴールが迫る。
結局、順位が覆ることはなかった。私は負けたのだ。
ーーー
ゴール板の向こうで寝転がって荒い息をしているトウカイテイオーを覗き込む。
「大丈夫かね?随分と苦しそうだが」
「な、なんでそんなに余裕なのさ…いくら、負けたからと言ってそんなに悠長にしゃべる余裕ってないと思うんだけど…?」
「私なら平気だ、持久力には自信がある。それより、素晴らしい再加速だった。負けたよ。完敗だ」
私がそういって手を差し出すと、トウカイテイオーはそれを掴んで立ち上がる。
「へへーん、何て言ったってボクは強いからね。…でも、正直追いつかれたときは焦ったよ。さっきまで結構後ろにいたと思ったのにいつの間にか隣にいるんだもん、びっくりしちゃった」
「次は負けないぞ。若い者には負けっぱなしは性に合わん」
「……アルちゃん、同い年だよね…?」
トウカイテイオーの疑問の声を軽く流し、周りを見るとトレーナーの人垣ができていた。驚いて隣にいたトウカイテイオーに聞くと…
「え?当たり前じゃん。選抜レースはウマ娘をスカウトするためのレースだもん。あ、もしかしてこの場でスカウトするものじゃないと思ってた?」
だそうだ。この場でスカウトだったのか。私たちが離れると、途端にスカウト合戦が始まった。一位のトウカイテイオーにはトレーナーが蟻のように群がっている。二位の私のところには一人だけが来た。ここ数日で見慣れた顔、小林だ。
「お疲れさま、アルカンジュ。という訳で担当になってくれるかい?」
「アンタ、脈絡が無さすぎるぞ?何がという訳だ。私よりトウカイテイオーのスカウトに行った方がいいんじゃないか?」
「とんでもない。俺は君の素質がトウカイテイオーにだって負けないレベルだと確信している。君なら絶対レースで活躍できる。トウカイテイオーに勝ちたいとは思わないのか?」
勝ちたいと思わないわけがない。この私を実力で負かしたのだからな。このまま引き下がるのは私の性分に合わない。小林は続けた。
「俺なら君を、トウカイテイオー以上の実力を持つウマ娘に育て上げられる。それに担当トレーナーがつかないウマ娘はよほどの例外を除いて学園を去る運命にあるんだ。だから…」
「よろしく頼む」
何だと?学園を去らねばならない?足が速ければいいんじゃないのか?トレーナーが付かなければこの衣食住が完全にそろっている楽園から出て行かなければならないというのか?それは困る。日銭を稼いで生活するのは嫌なんだ。正直レースで勝つことも重要だが、それよりも衣食住を保つことの方が今の私にとっては重要だ。
「ハハハ…相変わらずの即答だな。レースよりも学園に食いつくとは。それじゃあ、担当になってくれるという事でいいんだな?」
「あぁ、構わない。これからよろしく頼むぞ。若造」
「アルカンジュ、君本当に中学生だよね?時折実家のじいちゃんを相手にしているように感じるんだけど…」
「…気のせいだ」
「そっかぁ…」
私は顔をそらす。これから話し方には気を付けるとしよう。ないとは思うがもし正体がバレたらただでは済まないだろうからな。
その後少しばかり小林と話していると担任が集合の合図をかけ、全員を呼ぶ。皆が集まったのを見計らって担任は話し始めた。
「選抜レースお疲れさまでした。今日のレースでトレーナーが付いた人はトレーナー室へ行って書類を書いた後、明日のトレーニングからはトレーナーの指示に従って行動してください。それ以外の人たちはこれまで通り全体指導を受け、次の選抜レースに備えるように。それでは今日はここまでになります。解散!」
解散の合図を受け、トレーナーが付いたものはトレーナーのもとへ、そうでないものは寮または教室へと去ってゆく。
トレーナーのもとへ行く少数のウマ娘の中に、ナイスネイチャの姿を見た。どうやら彼女にもトレーナーが付いたようだ。彼女は何事に対しても斜に構えて予防線を張る癖があるようだが、実力はある。今回は4位に終わったが、才能を見抜いてくれたトレーナーがいたようだった。
ーーー
「それじゃ、行こうか」
小林に連れられ、部屋に入る。事務作業用の机椅子、おそらく作戦を立てるためであろう名が机と椅子複数、ホワイトボードにちょっとした棚。まぁ概ね予想通りの部屋だ。
「これにサインしてくれ。ウマ娘の名前でいい。書きさえすれば完了だ」
「これでいいか?」
私がササッと書き、渡すと小林は書類を念入りに確認し、手を差し出した。
「これで大丈夫!これからよろしくな」
「あぁ。改めて、こちらこそよろしく頼む」
差し出された手を握り返す。が、
「痛い痛い痛い!ちょっ、握る力強いって!?」
「す、すまん、力加減に慣れていなくてだな…」
「どうやら走りのテクニックとかそういう応用の前に力の制御とか走り方とかの超基礎的なところからのトレーニングが必要みたいだ。おーいてぇ…」
どうやら私はこの体に十分に慣れるところから始めなくてはならないらしい。
お久しぶりです。リアルの方に余裕が生まれたので執筆を再開しました。
今回は前半と後半で書いた時期が違うので、読みにくいかもしれません。ご了承ください。
ミハイおじいちゃん、スタミナとかパワーとかあるのに、使い方が全然分からない状況。恐らく次回で
ではまた