エース娘コンバットダービー   作:Jeep53

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ーMISSION STARTー

ーーー有マ記念に勝利せよ


毎度のことですが史実は跡形もなく壊れます。ダイユウサクごめんね。


MISSION 39 「有マ記念」

 有マ記念。”暮れの中山レース場と言えば有マ記念”と言われるほどに人気のあるこのレースはURAが年末に中山レース場で開催する一大イベントだ。出走するためにはファンによる投票が必須な珍しいレースであり、その選定方法の結果その世代で最も注目されたウマ娘たちが一堂に会することが多い。だが、外国で活躍した外国のウマ娘や地方のウマ娘はどれほど人気があっても出走が適わないレースでもある。出走資格は中央トレセン学園に所属しているウマ娘のみに与えられるのだ。*1

 

ーーー実力者が集うこのレースで、勝利の女神は誰に微笑むのだろうか。

 


 

 深呼吸。レースに向けて昂る心を抑え込み、冷静を保つ。菊花賞の敗北から一か月以上、今日この日のためにトレーナーとトレーニングに励んできた。身体能力は菊花賞のころからさらに上がったといっても過言ではない。それに、今回の私の武器は身体能力だけじゃない。あぁ、実に楽しみだ。

 

「気合十分、って感じかな?大丈夫?どこか体に異常はない?」

「あぁ、大丈夫だ。問題は…ない」

 

トレーナーは苦笑した。どうやら闘志を抑えきれていないみたいだな。いかんな。

 

再度深呼吸。ゆっくりと、深く。波立った心を鎮めるように。いつもはできているのだ。できない道理はない。

 

「お、いつも通りに戻ってきた?すごいねアル。やろうと思ってできることじゃないよ?」

「これが私の強みだ」

 

…とは言ったものの、領域のトレーニングを開始してからというものの、前よりも感情が分かり易く表に出ることが多くなったような気がする。私の心の奥にある思いを現実に反映させるからだろうか?

 

「さて、作戦だけど…。まあ、いつも通りだ。後ろから自分のペースで追走、最終コーナー抜けるくらいで領域展開だ。その時点で前にいる機体を墜とす。これだけだね」

「代り映えせんな」

「できるんなら逃げを打ってもいいよ?」

「残念だが無理だ。逃げの走り方を知らないからな」

 

そうだな…。いつも追い込みばかりではファンも飽きてしまうかもしれん。

 

「トレーナー、このレースが終わったら先行でも走れるように特訓してくれ」

「本気?」

「何、試してみたいだけだ」

 

『まもなく出走時間です。出走者は準備をーーー』

 

おっと時間だ。そろそろ行かないとだな。

 

「うーんじゃあ、一応メニューは組んでみるよ。ただ走りにくいと思うよ?」

「メインの戦法にするわけじゃない。あくまで基礎を知りたいだけだ」

 

『アルカンジュさん?お時間ですよー』

 

ドアの外から職員に言われてしまった。私は慌てて部屋を出た。

 

ーーー

 

 私が地下道へと着くころにはもう既に全員がそろっていた。見たことがある顔に見たことのない顔、様々だ。大体のメンバーは殺気立っており、とても剣呑な雰囲気が漂っている。約一名を除いてだが。

 

 さて、そろそろパドックに呼ばれる頃合いだ。恒例の確認といこうか。

 

『一枠一番、メジロマックイーン』

 

今レースで私が一番楽しみにしている相手だ。安定した先行策を得意とするお嬢様だ。毅然としたレースでの態度は好感が持てる。実力は申し分なく、チームの練習とはいえあのテイオーにも普通に勝つだけの実力を持ち合わせている。他と一線を画していると言っても過言ではないだろう。ファン投票堂々の1位だ。

 

『二枠二番、ミュージックタイム』

 

初対戦。過去レースでは差し策を執っていた。

 

『二枠三番、ヤマニングローバル』

 

初対戦。こちらは過去レースで先行策を執っていた。

 

『三枠四番、ダイタクヘリオス』

 

とても元気な子だ。誰に対しても分け隔てなく接するその人となりはとても良いものである。私としては直接喋ったことはないから正確な評価とは言えないが。過去レースでは逃げ策を執っていた。逃げ切られないように注意が必要だ。確かファン投票では4位だったか。

 

『三枠五番、ナイスネイチャ』

 

正直、このレースに私の世代で私以外に出る奴がいるとは思ってもみなかった。おそらく今回も先行策を執るだろう。前回は一撃で終わったが、今回はどうだろうか。ファン投票は5位だ。正直脅威だとは思っていないが、前回はそう考えていたマヤに足を掬われたのだ、警戒はしておこう。

 

『四枠六番、プレクラスニー』

 

初対戦、過去レースでは先行策だった。特筆事項はない。

 

『四枠七番、メインキャスター』

 

初対戦、過去レースでは差し策を執っていた。

 

『五枠八番、ダイユウサク』

 

初対戦、過去レースでは差しまたは先行だった。

 

『五枠九番、オースミシャダイ』

 

初対戦、追い込みだ。早々に潰すか、抜かすかするとしよう。

 

『六枠十番、フジヤマケンザン』

 

初対戦、先行策。特筆事項はなし。

 

『六枠十一番、プリンスシン』

 

初対戦、先行策。

 

『七枠十二番、ツインターボ』

 

通称ターボ師匠。青い髪が特徴の元気な子だ。大逃げをかますことで知られているが、ほとんどはスタミナが尽きてバ群に埋もれる。地下道で一人はしゃいでいたのもこいつだ。

 

『七枠十三番、オサイチジョージ』

 

初対戦、差しだったか。

 

『八枠十四番、メジロライアン』

 

マックイーンと同じ名家の出にして筋肉バカ。上流階級らしい振る舞いの中に見え隠れする筋肉愛は素晴らしいものだ。見た目通りのパワーと、マックイーンにも引けを取らないスタミナが武器だ。差し策を過去は執っていた。ファン投票は2位だったか。

 

『八枠十五番、アルカンジュ』

 

ゆっくりと地上へと出る。年末の冷たい空気を吹き飛ばすような熱気に包まれた観客席から、歓声が沸く。だがこの歓声にも、もう慣れた。私への期待度は高い。それに応えるとしよう。

 

『アルカンジュが出てきました。観客席の盛り上がりはかなりのものです。ファン投票3位、すさまじい人気です!』

 

今回の私は3番人気。良くもなく、悪くもない。良いほうではあるが。

 

 帽子をとって一礼。いつもならこれだけだが、今回はこれだけではない。

 

『おぉっと、アルカンジュ、不敵な笑みを浮かべた!これはダービーの再現か!?』

『自信の表れかもしれませんね。注目しましょう』

 

客席がより一層沸き上がる。

 

『ーーーー年、有マ記念。暮れの中山レース場はすごい盛り上がりを見せています!芝2500m、バ場状態は良!天候も晴れ、絶好のレース日和と言えるでしょう。今回の人気を振り返っていきましょう』

 

好条件だ。これ以上ないくらいにな。全力を出せそうだな。

 

『3番人気は十五番、アルカンジュ!』

『今年のダービーの覇者にして強力な領域の持ち主です。好走を期待しましょう!』

 

 相も変わらず私は大外枠。追い込み故スタートにそこまで気を遣わずともいいのが幸いだ。だが適当にスタートをして一位を獲れるほど易しいレースではない。集中。ゲートが開くのを待つのだ。

 

『2番人気は十四番、メジロライアン!』

『今年の宝塚記念の覇者!自慢の筋肉で1着を狙いに行きます』

 

『そして堂々の1番人気は一番、メジロマックイーン!』

『昨年の菊花賞、今年の春天、秋天を1着で飾った名優!このレースでもその実力を発揮できるのか!?』

 

『各ウマ娘、ゲートイン完了しました』

 

ーーー来る。

 

ガコン!

 

 

『スタートしました!』

 

目の前の鉄板が消えると同時に飛び出す。だがその私のさらに前を行く影がすぐわきから飛び出した。

 

メジロライアンだ。

 

彼女は先行策だ。それに外枠だから速力を出して好位置を獲りに行くのは分かる。だがこのウマ娘は何かが根本的に違う。そう感じた。

 

 だがそれに臆するほど私の精神は柔ではない。上等だ。叩き潰してやる。最終直線での楽しみが増えた。

 

『トップは十二番ツインターボ!やはりこのウマ娘が行きました!2番手はダイタクヘリオスです!』

『予想通りといった感じでしょうか。ツインターボのスタミナが最後まで持てばいいのですが』

 

 やはりそうなるか。だがこれまでのレースと明らかに違うことが一つある。

 

イイデセゾン以上のハイペースがいるというのに、誰もその逃げのペースにつられていないということだ。やはりシニア級やそれ以上のウマ娘ともなると自分の走りというものを解っている奴が多い。これは、手強いな。()()()()()()()()()()()

 私は私の走りをする。それだけだ。

 

 まずは私の目の前を走るオースミシャダイ。大舞台に緊張しているのかうまく走れていない。このまま後ろにいると先頭に追い付けなくなる。軽く速度を上げてパスする。問題はない。

 

『十五番アルカンジュ、抜かしに入った!』

 

速度を保ったまま前を走るダイユウサクに肉薄する。差しだから、コーナーだからと速度を抑えて温存しているようだな?遅い。どいてもらおう。

 

『アルカンジュが早くも速度を上げていますね。領域は使っていないようですね』

『今八番ダイユウサクを抜かして13番手に浮上しました。いつも通りですね』

 

 有マ記念のコースはコーナーから入る。そこから正面へ抜け、一周半だ。一回目の正面で差し連中は抜いておこうか?それとも様子を見るべきか。

 

『十二番ツインターボ、正面直線の中ほどを快調に飛ばしていきます!』

 

 …なんだと?こっちはようやく第4コーナーを抜けようというところだぞ?いくら何でも離れすぎではないか。

 他の走者もそう思ったのか、目に見えて差し追い込みの後方組に動揺が走る。中にはペースを急に上げ始める走者もいる。

 

『二番ミュージックタイムが速度を上げた!掛かってしまっているのでしょうか?』

『恐らくそうでしょう。ツインターボと後続との差は異常なほどありますからね』

 

 冷静さを欠くと終わりだ。レースでは集中を切らした奴から墜ちていく。特にコーナーの多いこのレースはな。

 

『順位を振り返っていきましょう。トップは依然として十二番ツインターボ!第1コーナーに差し掛かっています。2番手は四番ダイタクヘリオス。差は5バ身といったところでしょうか。さらに4バ身ほど離れて三番ヤマニングローバル、そのうしろにピッタリとつくのは一番メジロマックイーンと十四番メジロライアン。メジロが並んでいます!その後ろ1バ身五番ナイスネイチャ。追走、六番ブレクラスニー。1バ身離れて十一番プリンスシン。並んで十番フジヤマケンザン。半バ身離れて十三番オサイチジョージ。前との差が詰まってきた、二番ミュージックタイム。その後ろ七番メインキャスター、さらにピッタリ後ろ、十五番アルカンジュ。1バ身離れて八番ダイユウサク、後ろにポツンと九番オースミシャダイとなっております』

『今回のツインターボは良く伸びますね。これはひょっとするとあるかもしれませんよ?いまだにペースが落ちません』

 

 あれだけの速度を出しながらペースを保っているのか。はっきり言って異常だな。奴の体の中はどうなっているのだ?冷静を欠いたら負けだといった自分が冷静を欠きそうだ。ダイタクヘリオスでも異常なハイペースだというのに。

 まぁいい。私は私の走りを。今日この時のためのトレーニングを積んできたのだ。焦りでそれが不発に終わるなどという不甲斐ない結果だけは避けなければならない。

 前を走るのはメインキャスターか。掛かったミュージックタイムを風よけに速度を上げている。ならば私もその恩恵にあやかろうか。

 ぴったりと後ろに着かれたことを嫌がったのか、メインキャスターの走りの軸が若干ブレる。こいつはいかん。このまま後ろにいるとあおりを食らって速度を落としかねない。パスさせてもらおう。

 

『十五番アルカンジュ、七番メインキャスターを加速して抜き去った!二番ミュージックタイムに迫る!』

『焦っているようには見えませんね。何か策があるのでしょう』

 

 策などないさ。自分が被りそうな不利益を可能な限り避ける走りをしているだけだからな。

 そろそろコーナーか。前を走るオサイチジョージは適正スピードだがその前のフジヤマケンザンは若干オーバースピードか。となると第1コーナーでは前の二人が壁の様に立ちふさがる可能性が高い。抜かす手段は大外だがそこまでする必要はない。

 おそらくだが二人はコーナーで互いを意識しながら走るはず。そして二人して消耗するはずだ。その消耗分はコーナーを抜けた後の立ち上がりに響く。私が仕掛けるべきはそこ、故に今は少し間をとって静観するのが正解だ。

 

『集団が第1コーナーに入ります。ほとんど縦一列、十番フジヤマケンザンと十三番オサイチジョージ、五番ナイスネイチャと六番ブレクラスニーが横並びです』

『接触などがないといいのですが』

 

 やはりな。外に膨らんだ前がいれば突っ込みたくなるものだ。潰しあえ、利を得るのは私だ。

 そしてちらりと視界に移るのは悠々と先頭を飛ばすツインターボ。見たところ疲れは見えない。何故だ…!?

 

『まもなく第2コーナーを抜けて向正面に入ります。順位を振り返って行きましょう。トップは変わらず十二番ツインターボ!これまでのレースとは何かが違いますね。2番手は4バ身離れて四番ダイタクヘリオス。3バ身ほど離れて上がってきた一番メジロマックイーン、若干後ろ、十四番メジロライアン。半バ身離れて三番ヤマニングローバル。後ろ迫って五番ナイスネイチャ。立ち上がりで負けた六番ブレクラスニーは1バ身ほど後ろです。十一番プリンスシンが続いて、ここに十五番アルカンジュです。コーナー立ち上がりで見事な抜き去りを見せました。その被害者は先ほど競り合っていた十番フジヤマケンザンと十三番オサイチジョージ。アルカンジュの1バ身ほど後ろにいます。懸命に追走、二番ミュージックタイム。その後ろーーーーーー』

『アルカンジュの仕掛けるタイミングは完璧でしたね。彼女の実力なら大外から強引に抜くこともできたでしょうが、それよりもスマートにキメて見せました』

 

 この直線でナイスネイチャまでは迫っておきたい。でないと逃げ切り勝ちされる可能性が出てきてしまう。仮にツインターボが垂れても今度はメジロのお二方だ。先行策としては完璧な場所に居続けている。

 おっと、どうやらナイスネイチャが一つ順位を上げたようだ。私も行くとしよう。ここらの連中は放っておくとこの前のマヤの様にぶり返しかねない。確実に仕留める。

 私は目の前のプリンスシンから垂れてきたヤマニングローバルまで届く領域を展開する。作り出す空は晴天。三回目の登場だ。

 

”…!?”

 

 領域内に動揺が走るのが感じられる。正直これだけでもいい気がするが、念には念を、だ。

 兵装を切り替える。短い電子音の後、HUDは3機同時ロックが完了した旨を伝えていた。

 

「FOX3」

 

翼下でパージの短い金属音が響き、直後白煙を噴出しミサイルが標的に向かって飛んで行く。回避できるものならしてみるといい。自機の輪郭すらあやふやなほどに自己定義ができていない貴様らには無理な話だろうからな。

 程なくして3つの爆炎が上がり、私の後方へと飛んでいたモノが流れていく。

 

(ふむ…4AAMも便利だな)

 

『おっと!十一番プリンスシン、六番ブレクラスニー、三番ヤマニングローバルが一斉に落伍した!上がってきたのは十五番アルカンジュだ!』

『領域が出ましたね。一気に3機は初めてですね。彼女も成長しているのでしょう』

 

 前が開けた。差があるということだ。私の一つ前を走るナイスネイチャはメジロライアンに肉薄している。なんだ、やるではないか。今の君を私と初めて会った時の君に見せてあげたいくらいだ。同世代のキラキラにはかなわない?才能がない?笑わせる。十分、いや十二分に()()()()()()ではないか!

 

『まもなくトップが第4コーナーに入ります!トップは依然として十二番ツインターボ、だが苦しいか!?段々と速度が落ちています!差を詰めていくのは四番ダイタクヘリオス、その差は2バ身!その後ろ一番メジロマックイーンは第3コーナーを抜けるといったところ、十四番メジロライアンは若干離されています。その後ろを猛追するのは5番ナイスネイチャ!1バ身ちょっとはなれて十五番アルカンジュ、不気味に息をひそめています。その後ろーーーーー』

 

 ナイスネイチャ、君は強い。前を走るメジロの連中に迫りつつもまだ余力を残しているのだから。

 メジロの二人、君らは強い。お互いに競り合いつつも消耗せず、余力を残して好位置をキープし続けられるのだから。

 ダイタクヘリオス、君は強い。一人自分のペースを保ちつつ終盤になっても衰えを見せないのだから。

 ツインターボ、君は…強い。こんな大舞台で自分という存在を貫き通せるのだから。少し無理がある気はするがね。

 

 

 

だが

 

 

 

勝つのは、私だ

 

 


 

 

 『さあいよいよ最終直線に入ります!トップは……!?!?雷鳴!?』

 

実況に合わせ、さあこれから!と私が意気込んだ途端、耳を劈くような雷鳴が鳴り響いた。叩きつけるような豪雨が私の戦意を削いでいく。

 

(何これ!?どういう……あぁ、アルさんですかぁ…!)

 

取り乱しかけた私だが、自分が戦闘機に乗っているということが分かって一瞬で納得できた。これは同期の領域の中なのだろう。蒼天以外が使えるのは知らなかったなぁ。

 

(にしたって…どこよ?ここ)

 

豪雨で最悪な視界の中、かろうじて読み取れる情報は地上スレスレ、下は森。そして見たこともないほど大きな岩の柱がそこら中に聳え立っているのだ。現に目の前に迫っている。…え?

 

「うわぁ!?あっぶな!」

 

何とかその巨岩を回避し、姿勢を立て直す。前には追っていたメジロライアンと思しき機体も見える。

 

ビッ、ビッ…

 

 そして、最悪な音が聞こえ始めた。

 

 また、目の前には岩の柱。

 

ビーーーーーッ!

 

「情報量がっ、多いっ!」

 

それが私が最後に発した言葉だった。

 

 

 

 


 

 

 「撃墜確認(Splash one)

 

今、私は奇岩地帯の間を縫うように飛んでいる。ここは、菊花賞の後よりトレーニングをはじめ、私が手に入れた領域内第二の場所、インシー渓谷。前世で、かの三本線、トリガーと初めて相まみえた場所である。場所も、天候も完全再現だ。

 さて、感傷に浸ってはいられない。ナイスネイチャは今墜とした。残りは4機だ。

 アフターバーナーを焚いて速度を上げる。スタミナは温存してきた。存分に噴かすことができる。程なくしてロックオン圏内にメジロライアン、およびメジロマックイーンの機体を捉えた。

 短い電子音で兵装が切り替わる。射程も長く、威力も高い4AAMは悪天候をものともしない。一瞬にしてロックが完了した。

 避けられるものなら、避けてみろ。

 

「FOX3!」

 

 貴様らに余裕があるのならばな。ないだろう?機体の制御で手一杯のはずだ。

 程なくして二つの爆発が……いや、一つだ。メジロライアンの撃墜を確認した。

 

「…撃墜確認(Bandit down)

 

メジロマックイーン…やるではないか。どうやって…あぁ、なるほど。

 

 


 

 

 (なんなんですの…!噂には聞いていましたけれど、ここまでとは聞いてませんわ!)

 

私は今かろうじて潰されずに発動できている自らの領域で雷雨の影響をカットし、全速走行を続けていた。背後から来たミサイルも何とか回避することに成功した。豪雨の影響を受けないとはいっても戦闘機には乗せられており、完全に彼女の領域に抵抗できているかと言われたらそんなことは全くない。むしろ間一髪のところで飲み込まれていないだけであった。

 

(雷の影響を受けなくなったとはいえ脳のリソースが走り以外に割かれすぎていますわ!このままでは…)

 

『調子はどうかね、マックイーン嬢。夏合宿以来だな』

 

突如として無線から声が響く。どうやら共通回線で彼女が喋りかけているようだ。私もつられて回線を開く。

 

「誰かさんのおかげで最悪ですわ!一体どうやったらここから抜けられますの!?」

『簡単な話だ。着順問わず私がゴールすればいい。もちろん、私は1着を狙うがね?』

 

 その時、前方でまた雷が落ちた。と同時に何かが落伍してきた。

 

『たーぼ…げんかい…』

 

ツインターボだ。落雷にあたってしまったようだ。

 

「貴女…!雷まで操って…」

『濡れ衣はやめてもらいたい。雷は私にも制御することが』

 

彼女が話し終える前に私の後ろに雷が落ち、共通回線から嫌なハウリング音が流れる。

 

『…こ…ようにだ。制…は不可…だ』

「なんでピンピンしてるんですのーー!?」

『…の経験…差だ』

 

雑音が混じっているとはいえ彼女に目立った被害はなさそうだ。理不尽だ。

 

ビーーーーッ!

 

突如としてロック警報が鳴り、私がマズいと気付いた時にはもう手遅れだった。

 

『再戦を楽しみにしているぞ、マックイーン嬢』

 

衝撃が機体を襲い、途端に速度が出せなくなる。頭上を悠々と黒灰色とオレンジの機体が飛んで行く。

 

あぁ、私は負けたのか。

 

 


 

 

撃墜確認(Tango down)

 

 マックイーンを墜とし、速度を上げる。直後、残る最後の目標であるダイタクヘリオスを発見した。だが彼女はもう減速しており、わざわざ交戦を仕掛けるほどの脅威とはなり得ない状況だった。そしてゴールは近い。ならばやることは一つ。

 アフターバーナーの噴射量を上げ、さらに加速する。スタミナはまだある。ダイタクヘリオスの機体がぐんぐん迫り、後ろに流れていった。

 

『うぇっ!?速度ヤバすぎっしょ!!』

 

彼女の驚いた声を背後から受けつつ、ゴール板を越える。

 

 

 

 

私の、勝ちだ。

 

 

 

 

ーーー

 

 ゴールした瞬間に領域が霧散する。そこにはもう豪雨はなく、良く晴れた冬の空があるのみであった。

 私はウィナーズサークルまで歩き、観客席に向かって一礼した。

 

会場は沸いた。

 

ーーーー年 有マ記念 結果

 

1着 15 アルカンジュ 2:30.6

2着 1 メジロマックイーン 2

3着 5 ナイスネイチャ 1.1/4

4着 4 ダイタクヘリオス クビ

5着 14 メジロライアン 1/2

*1
史実では地方馬が出走可能になったのは1995から。2006まで外国産馬はジャパンカップ優勝者のみ出走が可能だった。2007からは国際競争となり外国枠も6枠に増えた。




ーMISSION ACOMPLISHEDー



各キャラ機体イメージ
メジロマックイーン:YF-23
メジロライアン:F-15
ナイスネイチャ:Mig-29
ダイタクヘリオス:F-16
ツインターボ:F-104


ノースフライト…実装決定されちゃった…どうしましょう。まあ、変えなければいけないのは決定なのですが…。他に空に関連する名前の馬さんいらっしゃいましたら教えていただけると幸いです。
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