エース娘コンバットダービー   作:Jeep53

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AC乗りには3種類のやつがいる。軽量で空飛んでる奴、重量で厨アセン使ってる奴、ガッチガチのタンク使ってる奴。あいつは…


個人的にミハイは軽量逆関節だと思います。

名前の件、決定しました。

ノースフライト→サテリット

フランス語で衛星の意味です。ミハイの周りを飛んでいたから合っているのではないかと思います。一応元馬は居ます。


だらだらとした日常回です。めっちゃ間延びしていることをお詫びします。久々に出す話がこれでいいのだろうか、オチがない…。

次はまじめな話かきます。


MISSION 40 「クリスマス・イブ」

 12月24日。それは前の世界から変わらない記念日の前日、クリスマスイブだ。昨年のこの日はゴルシに連れまわされたが今年は違う。彼女は彼女でチームで予定があるらしい。振り回されることはないだろう。

 現在時刻は午前10時。いつもよりかなり遅めに起きた私は今ようやく出かける準備を整えたところだ。服は普通のもの、昨年買ったものだ。他にも数着持ってはいるが、予報曰く寒い今日にはこれが丁度であろう。行く先も商店街だ。浮くことはない。

 万全な準備を終え、あとは出掛けるだけだというのになぜか落ち着かない。悪い予感がするとかそういう訳ではないのだがな…。

 

 いや、自分の感情に言い訳するのはやめにしよう。楽しみなのだ。浮かれているのだ、私は。最近は特にそうだ。前世を終えた時点とは真逆の姿となった今の私を心から受け入れ始めている。いや、とっくのとうに受け入れているのかもしれないな。

 もちろんだが私と彼は生徒と教師、男女の関係に発展することは断じてない。あくまで彼は私の「走りたい」という欲を正しい方向に導いてくれる指導者だからな。その辺りは弁えている。

 だが、出掛けることを楽しみにしてしまうのは致し方ないことだと思う。私やチームのために尽くしてくれている人物との外出を楽しみにしない奴はいない。そういうことだ。

 

「…さて、行くか」

 

 時計を見てみれば集合時間はもうすぐとなっていた。部屋から出て、鍵を閉める。ゴルシはもうチームのところへ行ったため私が最後だ。寮の廊下を歩いていると見知った顔と出会った。

 

「アルちゃんやっほー、これからお出かけ?」

 

 マヤだ。彼女も私服だ。私と同じく出かけるのだろう。

 

「おはようマヤ。そうだ、出かけるんだ。そっちもか?」

「うん!私はトレーナーちゃんとちょっと遠くまで!そっちは?」

「商店街だ。せっかくのクリスマスだし外食をと思ってな」

 

 彼女はそれを聞くと何かを思いついたようだった。直後、悪い顔になる。

 

「もしかして~、トレーナーさんとでぇと?んふふふ」

「…そうだ」

 

 彼女はちょっと驚いた表情をした。素直に答えたことがそんなに意外かね。

 

「それでは、失礼するぞ。そっちも楽しむといい」

「あ、うん。頑張ってね!応援してる!」

 

一体何を応援するというのだ。まぁいい。集合はトレーナー室で近いため、時間には間に合いそうだ。

 

ーーー

 

 ドアをノックしてトレーナー室に入る。彼はもう先に来ており、こんな日にもかかわらず仕事をしていたようだ。

 

「全く、仕事熱心なのは感心だが今日くらい休んだらどうだ?体を壊してしまうぞ」

「やぁアル。おはよう。体なら大丈夫だ、頑丈さには自信がある。少し待ってくれ、この書類を仕上げたら出掛けるとしようか」

 

一瞬だけ目線をこっちに向けた彼はまたすぐに視線を落とし手を動かし始めた。全く仕事熱心な男だ。前世で空を飛びまわっていた私とは違うタイプの人間だな。人と関わる職業の特性上精神がすり減り易いことに加えて彼はかなりの善性の持ち主だ。いつか壊れてしまうのではないかと心配になる。

 無言の時間が流れる。聞こえてくるのは彼が手を動かす音と、紙をめくる音だけだ。私は壁にもたれかかり、彼の仕事が終わるのを待つ。別に苦ではない。こんな何気ない平和な時間が過ごせていることに感謝しよう。

 しばらくして彼が手を止めた。ペンを置き、伸びをする。

 

「っ、あぁ~…。待たせてごめんアル。今終わったよ」

「構わん。ちょうど予定していた集合時間だ。早く来たのは私なのだからトレーナーが気にすることはない」

 

時計は11時を指していた。約30分ほど待ったことになるな。…実をいうと、この何でもない時間が最近は日常の楽しみの一つだったりするのだ。ここの部屋は居心地が良い。何も話さずに人と人が同じ空間にいると、普通は居心地が悪くなるものだが、トレーナーに限っていうとそれがない。

 その空気感をしみじみとかみしめているとトレーナーの準備が終わったのか、彼が近づいてきた。

 

「お待たせ、行こうか」

「あぁ」

 

トレーナーが先導して歩き出す。私はその一歩半ほど後ろをついて歩く。別にトレーナーと並び歩くのが嫌という訳ではない。このくらいの距離が心地よいと感じただけだ。トレーナーからは何も言ってこないので彼にとっても嫌ではないのだろう。

 商店街までは徒歩だ。最近は車での移動が多かっただけに新鮮さがある。校舎から出ると12月の冷たい風が私たちを襲う。思わず身震いするが、まぁそこまでではない。防寒対策はばっちりなのだ。

 だがトレーナーはそうではないようだ。普通にスーツを着込んでいるだけであり、手袋やマフラーなどの防寒具を身に着けていない。見るからに寒そうだ。

 

「トレーナー、その恰好では寒いだろう。…防寒具などは持っていないのか?」

「そうだね…持ってる奴はもう小さくなっちゃって…」

 

恥ずかしそうにそう言う彼の鼻の頭は若干赤かった。

 

「となると、最初の行き先は決まったな」

「…?」

「防寒具だ。買いに行こうじゃないか」

 

ーーー

 

 「いらっしゃいませー」

 

店員のあまりやる気のなさそうな店員の声に歓迎されながら入ったのは去年ゴルシに服を買ってもらった店だ。防寒具コーナーも充実していることは事前にリサーチ済みのため問題ない。

 

「おしゃれな店だね、わざわざいいのに。俺は我慢できるよ」

「人の好意は素直に受け取っておくものだトレーナー。それに、私もちょうど防寒具を新調しようと思っていた頃合いでな?丁度良かったという訳だ」

「…そう?ならいいけど」

 

嘘は言っていない。実際リサーチ済みなのも自分が買う予定だったからだ。さて、探すとしようか。

 

「なんでそのオレンジのマフラー戻したの?その服に似合う色だとは思うけど」

「マフラーは動くとき邪魔になってな…。ネックウォーマーなら少し動いてもほどけることはないのだが」

「なんで動く前提なの!?」

 

トレーナーに言われてハッとした。そうだ、別にマフラーを巻きながら走るわけではないじゃないか。普段使いする分には別にマフラーでもなんでも構わない。確かにそうだ。

 

「トレーナーの言うとおりだな。それではマフラーを買うとしよう。アンタも同じものでいいな?」

「えっ」

 

先ほど買おうと思ったものを二つ手に取ってカゴに入れた矢先、トレーナーから間抜けな声が発された。

 

「なんだ、私と同じものでは不満か?なら選びなおすとしよう」

「あいや、別に…いいんだけど…」

「ならいいだろう」

 

トレーナーは”マジかコイツ”というような目で私を見る。

 

「こんなおじさんとおそろいとか嫌じゃないの?」

「…はぁ、まだおじさんという年齢でもないだろうに。私は気にしない。むしろチーム感があっていいと思うぞ?…そうだな、リットたちにも買っていこうか?」

「そ、そうだね…。となると買うのは5つかな」

 

そういって彼はマフラーを5つ手に取りカゴへと放り込む。オレンジと黒の二色のマフラーは私たちチームソルのマフラーとしてはこれ以上ない適任だと思う。黒が大部分なことに加えてオレンジも目に優しいレベルの発色故、悪目立ちすることはないだろう。

 

「あとは手袋か?トレーナー、希望する色はあるか?」

「色?別に俺は何色でも…」

「はぁ…そうか。なら勝手に選んでおこう」

 

もうちょっと彼には自我を出してもらいたいものだ。悪いとは言わないが、聞かれたことに対しなんでもいいは一番よくない返しだと前世の妻に教わった。なんでもいいばかりではモテないぞトレーナー。

 若干呆れつつ黒色の手袋を手に取る。サイズ、防寒性共に問題はなさそうだ。モフモフというよりは私の勝負服についてきた手袋に近いスリムタイプだがここまで暖かいとは。最近の技術はすごいな。

 

「あれ、オレンジじゃないの?」

「防寒具すべてがオレンジでは見た目的にちょっと主張が強いかと思ってな」

「そのくらいの主張の強さならいいとは思うけど、ま、アルが選んだのなら俺はいいと思うよ」

「…そうか。トレーナー、手のサイズはLで大丈夫か?」

 

トレーナーに手袋を渡し、サイズを確かめてもらう。大丈夫そうだ。手袋のサイズは4つがS、一つがLといったところだな。

これらもカゴに放り込んでレジに向かう。

 

「金は俺が出すよ」

「うん?私が出すつもりだったが…」

「俺が出しておけば後でチームの備品として請求できるからね!」

 

妙なところでせこいな、こいつは。

 

ーーー

 

 買ったばかりの防寒具を着けてぬくぬくと暖まっているトレーナーにつき歩く。時刻は昼食には少し早いといった時間帯だが、どうやらこれから飯に連れて行ってくれるらしい。行先は秘密というが、まぁ、商店街の店並びはもうほとんど覚えているので大体どこへ行くかはわかる。

 

「店長、今空いてる?」

「おーう空いてるぞー」

 

連れてこられたのはいつぞやゴルシに連れられてきた定食屋だ。トレーナーと鉢合わせた場所でもあるな。

 

「アルちゃんも一緒か!?久しぶりだな!」

 

あの時から何回か来てはいるが今回の来店は久しぶりだ。

 

「久しぶりだな、店長。元気なのは相変わらずのようだ」

「元気と飯の旨さだけが取り柄みたいなもんだからな!」

 

現在の店内は昼よりは少し前ということもあり閑散としている。が、全く客がいないわけじゃないので私が来店すると少しだけ騒がしくなった。

 

「まぁこうなるわな。事前に連絡くれりゃ貸し切りにしたってのに」

「それは悪いだろう。大丈夫だ。慣れているし、想定よりも静かだ」

 

まぁ気になるほどでもなければこちらに突撃してくる奴らもいない。民度は高いな。

 

「それで、注文はどうするんだ?お二方」

 

カウンターに座った私たちに店長がほかの料理を作りながら話しかけてくる。

 

「私は日替わりランチだ。トレーナーは?」

「俺もそれでいいかな」

「あいよ!日替わりランチ2つ!」

 

しばらく暇な時間が来る、そう思い店内にある壁掛けのテレビに目をやる。そこにはレースの様子が映されていた。はて、テレビでやるほどの大きなレースは今開催されていただろうか?

 

「アル?何見て…あぁ。あれは海外のレースだ。と言ってもグレードは高くないものだけどね。個々の店は有料回線契約してまで四六時中世界中どこかのレースを流しているんだ。な、店長?」

「おう!俺はレースが好きだからな」

 

なるほどな…。

 

「グレードは高くないとはいえちょっとした映像から得られることも多い。アルは映像を見て何か気づいたことはある?」

「そうだな…。ぱっと見の所感ではあるが、脚が深くまで食い込んでいるように見える。だが晴れているという点で重バ場ではないだろう。故に海外の芝は柔らかいないし丈が長い可能性がある。走るのにパワーが必要そうだ。そしてコース形状が日本のように一定ではない…のか?これは。露骨に急なコーナーや坂がある。作ったというよりかは、自然に合わせて切り出したようなコースだ」

「そこまで分かんのかよ…!もう俺の教えることないじゃないか」

「はっはっは!教え子が優秀だとトレーナーは大変だな!ほいよ!日替わりランチ二つお待ちどう!」

 

頭を抱えたトレーナーを豪快に笑い飛ばしながら店長が目の前にお盆を並べる。今日の日替わりメニューは唐揚げ定食のようだ。

 

「クリスマスだっちゅーことで照り焼きチキンでも出そうかと思ったんだがよ、照り焼きのソースが切れちまってたんで急遽今日は唐揚げだ。同じ鶏ってことで許してくれや」

 

店長は愛嬌のある笑みでそう言った。

 

「言わなきゃバレなかったんじゃ…?」

 

私もそう思う。

 

ーーー

 

 笑いあっていたトレーナーと店長が話し出したのを見計らって視線をテレビに向ける。

 

 相変わらず海外の番組を映している。だが、今度はレースではなく各国の現在の様子のような映像が流れている。流石に流すレースがなかったか。クリスマスだものな。移されているコースはダート…だが砂というよりかは土か?いや、砂か。珍しい、ダートコースの内側に芝コースか。面白い。所在地はアメリカか。オーシアの競馬場もこんな感じだったのだろうか?

 次に移ったのはこれまたダート。なんだ、海外はダートが主流なのか?場所は…UAE、UAEか。どこだ?あぁ、変わってしまった。後で調べるとしよう。

 おぉ、今度は芝か。場所はイギリス。だが先ほどのレース場同様芝の丈が長い。なるほど、最近のメニューにパワートレーニングがやたらと多いことがこれで分かった。

 

 海外でのレースはパワーとスタミナがモノを言う、ということだな。日本の走り方ではまず勝てないということだろう。

 

 まぁ、海外へ行くのはまだ先の話だ。地道に適応させていこうじゃないか。

 

『現在のフランスの様子です。------』

 

…?なんだか、今、画面に見覚えのあるものが映ったような…。どこかで見た…誰だったか…。懐かしい気がしたが、気のせいだろう。

 

ーーー

 

 「小林!またアルちゃん連れてきてくれよな!」

「気が向いたらなぁ!」

 

わざわざ店の前まで出てきて見送ってくれた店長を背に私たちは商店街のメイン通りへと戻ってきた。正直言って本日の予定はもうない。トレーナーと一緒に昼飯を食べに来ただけなのだ。後することはウィンドーショッピングくらいしか残っていない。

 

「さて、どうする?トレーナー」

「とりあえず見て回ろう。気に入ったものがあれば買ってあげるよ。クリスマスプレゼントだ」

 

ほう。そう来たか。ならば遠慮なく選ばせてもらうとするか。中身は大人でも金銭事情は子供だからな。こういう時にたからずにいつたかるというのだ。

 賞金?ほどんど貯金に回しているよ。生憎と私は賞金の大半を募金などにつぎ込む善性は持っていない。いつか賞金で自分専用の機体を買うのが最近の夢だったりするからな。

 前世では軍隊所属故、壊れたら次、壊れたら次というようにポンポンと戦闘機がわいてきたものだが今世は違う。私はただの一般人だ。何故か特殊銃免許を持っているだけの一般人が持っている程度の金では戦闘機は買えないのだ。故に大金をためる必要がある。目標はやはりSu-30SMか。無理だろうがね。いっそ引退したら自衛隊にでも入ってやろうか?

 

 そんな他愛もないことを考えながら商店街をめぐる。煌びやかな装飾が私たちを照らすが、興味を惹かれるものは少ない。なぜなら年頃の女子であれば反応するようなものの大体が私の興味の範囲外だからである。

 

「ま、アルならこうなるとは思ってた。よっし、行くか!」

 

 ウインドーショッピングの反応があまりよくないのは想定内だったのか、トレーナーは突然私の手を引いて歩きだした。若干の速足に一瞬つっかるも、持ち直す。なんだかこうして手を引かれて、誰かに先導されるのは新鮮でいいな。

 そうして着いたのはいつかの模型店。ガラスサッシ一面に所狭しと張られたホビーのポスター類の上には、『本日特売日・ビンゴ大会開催』と書かれた手書きのポップが風に揺られていた。

 

「トレーナー…」

「なんだい?」

 

先導していたトレーナーが振り返る。そんな彼に私は一言、満面の笑みで言ってやった。

 

「分かってるじゃないか」

 

ーーー

 

 店内に入ると一気に周りの圧迫感が強くなる。何のことはない、模型類が天井近くまで積み上げられているだけのことだ。そして何より暖かい。ストーブ特有の温かい空気が私たちの身体を包む。

 

「いらっしゃーい…おっ、その顔は…!」

「久方ぶりだな、店主。表のポップを見た、ビンゴ大会はまだやってるか?」

「おうよ!ちょうど始めようと思ってたところなんだよ。トレーナーさんも一緒にやってきな」

 

そういって店主は私たちを店の奥へと招き入れた。この先は店の常連が良く入り浸っているスペースだ。案の定、何人かがいるようだった。

 

「おい皆!このむさくるしいビンゴ大会を盛り上げに来てくれた方がいるぜ!」

「むさくるしいとは何だむさくるしいとは」

「誰が来たってんだよ。良いから始めようや」

 

店主の身体に隠れて私のことは見えていないようだ。

 

「お前ら後悔しても知らねえからな、ほら!」

 

と言って店主は体を横にどかす。私の視界にストーブを囲んでビンゴ用紙を手にした常連の男性陣がいた。常連とはいっても私は直接喋ったことがないし目線を合わせたこともないので実質初対面だ。

 

「どうも、知っているかは分らんが私はアルカンジュ。表のビンゴ大会の文字に引かれてトレーナーとやってきた。混ぜてもらえるかな?」

 

常連は目が点になっていた。後ろではトレーナーがため息をつき、店主は笑いをこらえて…あ、こらえきれずに吹き出した。

 

「うおおおおおおお本物だぁぁぁ!?」

「なんでこんなところに!?クリスマスだってのに!?」

「俺明日死ぬんじゃねえか?」

「サインください!!」

「(絶句)」

 

ふむ、どうやら自分の知名度は思っていた数倍高いらしい。街中では視線すら感じないからそんなものかと思っていたが。*1

 

 『準備はいいか!?愉快なビンゴ大会の始まりだ!!!』

 

5人ほどいた常連の男性陣は阿鼻叫喚の様相を呈していたが、店主の一喝でビンゴ大会が始まることとなった。

 

「俺も参加するの?この空気に…?」

 

一方トレーナーはただただ困惑していた。

 

ーーー

 

「次!13番!」

「お、あった」

「うーん、ない」

 

ビンゴ大会、始まってからは静かなものだった。店主が番号を引き、読み上げ、それを抜くだけの時間だからだ。だが勝負は白熱している。何故か?

 簡単なことだ。景品が思っていたよりも豪華なのだ。一列揃えたら貰えるコーナー、二列揃えたら貰えるコーナー、三列以下略とあるのだが、一列コーナーに定価3000円ほどのプラスチックモデルキットが複数個鎮座しているのだ。店主曰く在庫処分だという。二列コーナーは5000円相当、三列コーナーに至っては最高額50000円のものもある。これは福袋式で中は見えないがね。

 ちなみにだがもらえるわけではない。その商品の75%オフクーポンがもらえるのだ。50000円のものが12500円で買えるのだ。みんな真剣になるというものだ。もちろん私の狙いは50000相当の品だ。

 

 そうやって私が50000円相当の品に思いを馳せていると段々とゴールが近づいてきた。現在私のビンゴカードは一番左下の数字が呼ばれれば三列揃うというなんとも都合の良い穴の開き方をしている。残りの数字は02だ。

 

「次は…30!」

「おっ、あったあった!リーチだ!」

「俺は一列揃ったけど保留だ」

 

…大丈夫だろうか?常連たちは次々に番号に穴をあけている。

 

「次、04」

「うーん…」

「あ、あった。俺もリーチ」

「トレーナーさんがリーチか。アルカンジュちゃんどうだい?」

「リーチではある」

 

………。不安だ。

 

「次は……ありゃ?玉詰まっちゃったかな?出てこないや」

 

ちょっと待ってくれと言って店主がガコガコとマシーンを振る。

 

「お、治った。えーっと、次は…02!」

「!!よしっ、ビンゴだ!」

 

思ったよりも大きな声が出てしまい少し後悔するが、常連たちには気にした様子が見られないのでホッとする。

 

「おおっ!アルカンジュちゃんおめでとう!どれにするんだい?」

 

私は縦、横、斜めと綺麗にそろったビンゴシートを突き出して宣言した。

 

「50000円相当のものが欲しい!」

 

ーーー

 

 トレーナーは約束通りその福袋を私へのクリスマスプレゼントとして買ってくれた。中身はトレーナー室で後で確認しようという運びとなった。ビンゴ大会が終わった後は惜しまれながらも模型店を後にし、現在はまた商店街を歩いているところだ。時刻としては大体午後3時ころだ。思ったよりも模型店に長居してしまったな。

 さてこれからどうするか。夕飯には早すぎるし、何より腹が空いていない。かといってもう買うものはない。ウインドーショッピングも楽しいのだが如何せん二人とも趣味の幅が違う。そうだな…。

 

「トレーナー、ここは早めに切り上げて学園に帰るのはどうだろうか?福袋の中身も気になることだしな」

 

そういって袋を掲げてみせるとトレーナーはしばし考えるようなそぶりを見せた。

 

「そうだね、そうしようか。夕飯は…どうする?別に予約とかはしてなかったけど…」

「学食のスペシャルメニューとかはどうだ?外食に引けはとらないと思うが」

「それいいね、採用だ」

 

ーーー

 

 無事学園のトレーナー室へとたどり着いた私たちはそれぞれソファの対面に座って一息つく。いくら現役のウマ娘と言えど普通に疲れる。トレーナー室に備え付けられているソファはそれなりに柔らかいもののため疲れた体にとても効く。

 

「あ゛ぁ~、いやー、楽しかったね。アルはどう?」

「私も楽しかった。ありがとう、トレーナー……さて」

 

私は福袋を持ち上げ机の上に載せた。

 

「お楽しみの時間だ。開けてみようじゃないか」

 

袋の封を切ると、中には結構な数のものが入っていた。

 

「これは…なんだ?トレーナー」

「ゲームの購入権だね。ここに書いてあるギフトコードを入れるとダウンロードできるって仕組みだと思う。何のゲームかは…書いてないね?お楽しみってことかな」

 

一つ目は何やらゲームのギフトカードのようなもの。後でゴルシが持っているパソコンにでも入れさせてもらおうか?それとも自分も賞金の一部でパソコンでも買ってみようか。

 

「次はプラモか。これは……!?」

 

衝撃が走った。その箱絵に描かれていたのは戦闘機、だがこの世界においては存在が確認されなかった前世での()()()()()……に、酷似した機体。残念ながらそのまんまという訳ではなさそうだ。

 

「お、確かこれはVRウマレーターの中にあったゲームの機体じゃなかった?UMACOMBATとかいう…。プラモになってたんだ」

 

と、トレーナーは言う。そうか、あのゲームの中にはこいつがあるのか。

 

「X-02、か。大陸戦争でも起きるのか?そのゲームは…

「…?アル、何か言った?」

「いや、何でもない。作るのが楽しみというだけだ」

 

残念ながら改良型のS型ではなかったが、見た目はほぼ同じだ。愛機を再現するのは難しくないだろう。今後の楽しみが一つ増えたな。

 

「次が最後みたいだね。これは…旅行券?模型屋の福袋の中に旅行券ってどゆこと?」

 

トレーナーがチケットを2枚取り出して呟いた。どうやら豪華に包装された旅行券が入っていたみたいだ。

 

「まぁ悪いものではないだろう。それはトレーナーが保管しておいてくれないだろうか?私では紛失してしまいそうだ」

「そう?じゃあ大事に保管しておくね。どうやら温泉旅館のペアチケットらしいから、使いたくなったらいつでも言ってくれ。その時渡すよ」

 

 目ぼしいものはプラモとゲームか。ゲームはあまりやらないからな…。そうだ、ゴルシにあげるとしよう。

 

ーーー

 

 さて、一通りやることは終わったが夕飯まではまだあるな。トレーナーには今のうちに渡しておくか。

 

「ところでトレーナー、実は前もってプレゼントを買っておいたんだ。受け取ってくれるか?」

「お、本当?いやあ嬉しいねえ」

 

 私はニコニコと笑うトレーナーに細長い箱を渡す。今日のために菊花賞くらいから発注していたものだ。先日ようやく届いたものである。

 

「万年筆だ。受け取ってくれるか?」

「これすげー高いやつじゃないか!?えっ、いいの?…あ、俺の名前まで彫ってあるじゃん、かっけぇ!」

「日ごろから世話になってるからな。感謝の印として受け取ってくれると嬉しい」

 

それに、私がトレーナーから受けた恩は万年筆程度じゃ返しきれないほどあるからな。

 

「いやー、万年筆って大人っぽくてあこがれてたんだよな!ありがとう!」

「…ふっ、これからもよろしく頼むよ」

 

万年筆をこねくり回してはしゃぐ姿はさながら新しい玩具をもらった子供のようだ。すこし、なんというか。庇護欲のようなものが湧いてきてしまいそうだ。

 

 ふと耳にトレーナー室に近づいてくる3つの足音が飛び込んできた。これは…

 

「おっ?帰って来てたんですかトレーナーに…アル」*2

「おかえりなさいオリジナル。デートは楽しかったですか?」

「プレゼントを、所望」

 

上から順にサテリットとフギンとムニンか。彼女らは手にクリスマスツリーやそれの飾りを持っており今から飾りつけをする予定のようだ。

 

「デ、デートではないよ!?お出かけだ」

「ふむ、楽しかったぞ。そして今から飾りつけか?私も手伝おう」

 

そういってムニンの持つ飾りの袋を一つ受け取った。

 

「それと、プレゼントは手袋及びマフラーだ。チームでおそろいのを買っておいた。というかトレーナーが買ってくれた」

「「オリジナルと…おそろい…!?」」

「相変わらずブレないね…」

 

トレーナーは苦笑いだ。サテリットは早速手袋の着け心地を試している。早いな。

 

「これからチームのレースの応援とかはそれを付けていこうかなと思ってね。気に入ったかい?」

「「ええそれはもう」」

「一体感があっていい感じですね」

 

満足してくれたようで何よりだ。さて、飾りつけといこうか。

 

ーーー

 

 「ところでトレーナー、夕食はどうするんだ?俺はてっきり外で食ってくるとばかり」

 

飾りつけもある程度終わったところでリットが口を開いた。

 

「学食のスペシャルメニューをみんなで食べようかと思ってね?どう?」

「「賛成です」」

 

満場一致のようだ。

 

 

ーーー

 

 

 時は流れ私たちチームソルの面々は食堂へとやってきた。夕飯時である今の時間帯、普段は混んでいるはずだがクリスマス故外食する娘も多いのだろう、まばらに座っている程度であっさりとチーム分の席を確保することができた。

 

「それでは、スペシャルメニューを頼んできます。トレーナーさんたちはここで待機を」

「注文、任せて」

 

席に着くや否やフギンとムニンの二人が注文口へと駆けていき、あっという間にお目当てのメニューを人数分そろえてきた。

 メニューとしてはまぁ一般的なものだ。一人分で区切られているためそこまで大きな料理はない。一人分のチキン、ミネストローネ、ローストビーフにステーキ……待て、肉が多くないか?主食としてはグラタンやパスタなどだ。サラダも大きめのが付いている。ボリューム満点だ。

 トレーナーのはヒト用に量が調整されたものだが、多いようだ。現に彼の顔は引きつっている。

 

「この量食べるの…?食べる前から胃もたれしそうな量なんだけど…?」

「案ずるな、残したらその分は食ってやる。安心して残せ」

「アル…あのね…いや、何でもない」

 

なんだトレーナー、その諦めたような目は。

 

ーーー

 

 その後無事スペシャルメニューを完食してグロッキーになったトレーナーをトレーナー寮まで送り届け、現在私は自分の部屋に帰ってきたところだ。トレーナー寮と生徒寮はかなり離れているため門限ギリギリの到着となってしまった。

 

「お、アルおかえり。楽しかったか?」

 

先にかえって来ていたゴルシはベッドに寝転がりながらパソコンをいじっている。あぁ、そうだ。ゲームの購入権とやらをあげるんだった。

 

「楽しかったぞ。それと、中身は分からないが今日買った福袋の中にあったゲームの購入権とやらだ。私はパソコンを持っていないのでな、プレゼントだ」

「こ、心がこもってねーなー!?ま、もらうけどよ」

「あとこれは普通にプレゼントだ。ほれ、私とおそろいの手袋とマフラーだ」

「それを先に渡せよ!?」

 

ゴルシは喜んでそれらを受け取ってくれた。喜んでもらえたのならば何よりである。

 

「あ、アタシからはこれな、ゴルシちゃんグッズの中の一つ、私モチーフのキーホルダーだ。実をいうとそれは非売品なんだ。大事にしてくれよ?」

「いいのか…?ありがたく貰っておこう。通学カバンにつけておく」

 

私がカバンにキーホルダーを付けるのを見届けた彼女はマフラー類を丁寧に仕舞い、ゲームの購入権をいじり始めた。

 

「こりゃあれだな、ギフトカードだ。個々の数列を入力するとゲームがもらえるっつー仕組みのやつだ。にしてもタイトルも何も書いてないのは不気味だな。なんだろーな、これ」

 

そう言って彼女はカタカタとコードを入力していく。しばらくしてダウンロードが始まる。

 

「うげ、結構デカいな。タイトルは…アーマードコア6?なんだそりゃ?」

「知らないな。後日一緒にやってみないか?」

「いいなそれ。にしても知らねえゲームだな。初めて聞くのに6ってなんだよ。検索してもヒットしないぞ?」

「正体不明のゲームか。ワクワクするではないか」

 

この後消灯時間が迫ってくるのに気が付いた私は爆速で風呂へと向かったが結局間に合わず、同じく門限に間に合わなかったテイオーと一緒に寮長にこってり絞られることとなった。

*1
話しかけてこないだけでめっちゃみんな気にしてる

*2
未だにアル呼びに抵抗があるヴィト




オチはない。AC6をやるおじいちゃんが見たいなと思っただけ。

ミハイは後日テイオーとかにもなんかプレゼント渡してる。

ちなみに更新が遅れた理由はACⅥにてミハイイメージのアセンでクリアを目指していたからです。ワーム砲積めないワーム戦で一生沼ってます。

完全なる深夜テンションによる書上げなので後々変更する可能性があるかもしれません(保険)

次はまじめな話かきます。
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