そう言えば、この時空の元になっている1992年のフォワ賞について調べたんですよ。なんと4頭しか出走していなくてですね。どうしましょう。しかも詳細データがなくて勝ち馬しかわからなかったんですよね。動画もなかったのでもうどうしたものか、といったところです。
全て架空にしちゃってもいい……ってコト?!
投稿遅れてしまいすみませんでした。これからも不定期です。
宝塚記念を終えてから約2週間が経った。次のレースが海外、フランスになることも世間に通達を終え、渡航は間近となっていた。
フランスへと行くのは私とトレーナー、二人だけ……の予定だった。
何も難しい事じゃない。予算があまり捻出できないから行く人数を二人に抑えてあとは現地の協力を仰ぐ予定だったのだが、理事長から提案され承諾したクラウドファンディングの成果が目標額の数倍集まったことで日本側からスタッフを派遣することが可能になっただけのことだ。
正直私もトレーナーもフランス語は話せるので二人だけでも何ら問題はなかったのだが、世間の方々のご厚意で頂いた予算を十分に使わないのは失礼であるということで急遽海外遠征チームが組まれた。
よって、最終海外遠征チームは以下のようになる。
「チームソル全員に、追加でサポートスタッフチームが1チームか。当初の2人と比べると随分と大所帯になったものだ」
「リットは菊花賞があるからお留守番になるけどね。フギンとムニンが着いてくることになるかな。サポーターとしてだけど」
サテリットことヴィトは絶賛クラシックロードをライバルたちと駆け抜けている最中なので海外に行くことはできない。私が海外に言っている間の指導はチームリギルが担当するとトレーナーは言っていた。
「実質走るのは私だけか。私一人のためにありがたいことだな」
「アル、君はもう少し自分の価値を理解した方がいい。もう少し自慢げでもいいんだよ?」
分かってるつもりなのだがね。
「日本が未だ成し遂げられていない実績に挑戦するんだろ?こうもなるさ。俺はいけないけど、応援してるよ」
「ありがとう、リット。菊花賞も頑張ることだ」
「言われずとも」
ふむ、リットのタメ口もなかなか板についてきたな。ふとしたところで敬語が出ることはまだあるが…まあ、許容範囲内だろう。
「そう言えばなんだけど…リットって最初はアルに対して敬語だったよね?なんでタメ口になったの?」
ふとトレーナーがそう聞いてきた。
「いや何、この国では先輩というものは年齢が下の者に対して敬語を使わないと聞いてな。郷に入っては郷に従えとはこの国の言葉だろう?」
私がそう返すとトレーナーは苦笑いで言った。
「別にそんなことないんだけど…。使う人も全然いるけどね。そしてその条件に当てはめるならアル達が俺に敬語を使ってないことがおかしいことになっちゃうよ」
「「あっ」」
私達はかなりの衝撃を受けた。リットの敬語割合はまた増えた。
ーーー
それからまた数日たち、フランスへ向けて出発する日となった。現在は羽田空港の国際線ターミナルに来ている。大きな荷物はもう預け終わり、あとは自身が飛行機に乗り込むのみとなっていた。
報道規制でもされているのだろうか?ターミナルは普段と同じ様子で別段特別めいた様子はない。余計な気を遣わずにいられるのでありがたいな。
そう思い搭乗口を目指すべくエスカレーターを上がり終えた私の目の前には人だかりができていた。どうやら何もなしには飛行機には乗れなそうだ。
「うれしそうだね、アル」
「それはそうだろう」
そこには、『頑張って!』『必勝』などをはじめとする横断幕を掲げた人が沢山いたからだ。中でも商店街の人たちの気合の入りようはかなりのものだ。
「アルカンジュさん、お時間よろしいでしょうか」
そう言って近づいてきたのはテレビ局のアナウンサーだ。どうやら全国局の方のようだな。いつもの府中ケーブルテレビではない。
「構わない」
「ありがとうございます。それでは、凱旋門賞に向けて一言、お願いします」
アナウンサーは目を輝かせながら私にマイクを向けてくる。
「ふむ…それでは一言の前に一つ。今回の私の海外遠征費用のクラウドファンディングに関してだ。目標額を超える金額が集まったと聞いている。おかげさまで海外遠征は充実したものになるだろう。この場で感謝を伝えておきたい。ありがとう」
私が思ったより喋ったことに驚いたのか、珍しいものを見たような顔をする人が数人見られる。
「そして…あぁ、そうだな。金が集まったから、とかそういう訳じゃないから先の発言とは分離して聞いて欲しい。…結果は持ち帰る。心待ちにしていたまえ」
「ありがとうございます!頑張ってくださいね!」
そういってテレビ局は下がっていった。その後は観衆の声に手で応えつつ、奥へと進む。保安検査場の前にも1集団居るようだ。…見たことのある顔触れだな。
「やっほーアル、このボクが見送りにきてあげたよ!」
集団から飛び出てきたのはテイオーだ。
「やあ、テイオー。相変わらず元気なようで何よりだ。…ところで、ここは一応飛行機に乗る人しか入れないと記憶していたのだが」
「あ、それね、報道陣が結構奥まで来ちゃったからって空港の人が気を利かせて中まで入れてくれたんだ。一緒に行くわけじゃないよ?……残念?」
「いや、道中うるさくならないようでホッとしたところだ」
「あーっ!?ひどい!!」
ぶーぶー言ってるテイオーをあしらいながら進む。見送りに来てくれたのはテイオーと…マヤ、マルゼンスキーにシリウス、ドーラにマックイーン、ネイチャ、ツインターボ、リット、ヒシスピードもいるな。基本的に学園で良く喋る連中だ。……ゴルシは居ないんだな。
「アルちゃん、マヤ達応援してるから!頑張って来てね!はいこれ、寄せ書き!」
差し出されたのは…QRコード…?
「アルさんにコメントを送りたい人を学園内から募った結果…色紙程度では書ききれず…全員分をまとめた電子ページにまとめることになったんです。…頑張って来てくださいね」
困惑している私にドーラが補足した。なるほど、そういうことか。
「ありがとう。感謝する……うおっ」
「ハァイ、アルちゃん!リギル代表は私よ!」
マルゼンスキーにハグされた。苦しい。離してくれ。
「あっとごめんなさい。苦しかったかしら。……本当はルドルフも来たかったみたいなんだけど忙しくって。寄せ書きの中にはリギルからのメッセージもあるから、ぜひ見てちょうだい。…無事に帰ってくること。いい?」
「あぁ分かった。ありがとう」
「よぅ、アル。結果期待してるからな。頑張れ、それだけだ」
「シリウスちゃん、もうちょっと素直に。ね?さっきまでそわそわしてたんだから」
「マルゼンスキー、お前っ!……はぁ、頑張って、無事に帰って来てくれ。いくらあっちの芝に近い条件でトレーニングしたと言ってもあっちの芝じゃあない。だいぶ違うんだ。気を付けて走れ」
経験者の言葉は重いな。
「了解した。肝に銘じておこう」
「あぁ、それでいい」
次に出てきたのはマックイーンだ。
「すごいメンツですのね…。アルさん、スピカ代表、そして一個人として参りました。頑張って来てくださいまし。応援してますわ」
「ありがとう。マックイーン。……ところで、ゴルシは居ないのか?」
「ゴールドシップさん…私も探したんですけどいらっしゃらなくて…」
「そう…か。分かった、ありがとう」
ゴルシは一体どこに行ってしまったんだ?
「アル!!カノープスを代表してこのツインターボが来たぞ!!!」
「こらターボ、声が大きすぎるよ」
次はターボとネイチャか。
「がいせんもんしょう?だっけ。頑張れ!!」
「アルさん、頑張ってくださいね。応援してますから」
「あぁ。ありがとう」
ターボの頭をなでる。かわいいものだ。おっと、リットが出てきたか。
「アル…いや、キング。頑張って来てくださいね。こっちも頑張るんで」
久々のキング呼びか。懐かしいな。
「菊花賞、私みたいに負けるんじゃないぞ」
「ははっ、頑張りますよ。まぁ…だいぶと怖い存在がいるんですけどね」
「ミホノブルボンか?無敗三冠を望む世間の声もわかるが…お前ならできると思うぞ?」
そう言うとリットは首を横に振った。
「違うんですよ。ライスシャワーです。あれはステイヤーだ。菊花賞で本分を発揮してくると思うんです」
「…そうか。私からは頑張れとしか言えない。私とお前では戦法が違うからな」
「分かってますよ。無事に帰って来てくださいね。前世の二の舞は御免です」
小声で言われた最後の言葉に驚き周りを見るも、特に気にした者はいないようだった。
「アル…お前の部下、ちょっと危なっかしすぎないか?」
「危なっかしいのはまぁ、そうだが。今は部下じゃなくてチームメイトだ」
「そうだったな。すまん。で、だ。チームサイクロプス代表として来た。頑張って来いよ。それと、こっちは別口の報告だ。…そうだな、サテリットには伝えておいてくれ」
なるほどな、前世関係か。
「了解だ。感謝する」
書類を受け取り、集まった友人たちに向き直る。
「見送りありがとう。待っていてくれ、吉報を届けよう」
そう言って先に進んでいたトレーナーの方を目指して歩きだす。
「せーのっ」
『頑張れ(ーっ)!!』
振り返り、手を振る。随分と期待されたものだ。胸が高鳴るな。
「アル、人気者だね」
「あぁ、誰かさんの指導のおかげでここまで来れたからな。行こうか」
待っていたトレーナーと合流し、搭乗口を目指す。
「フギンとムニンはもう乗っているんだったか?」
「うん。まだデビュー前だからね。大きなメディア露出は避けたかったんだ」
なるほどな。そういうものなのか。
そのまま広い空港内を進み、やがて搭乗口へと到着した。
だが、なんだか狭いような気がする。
「トレーナー、なんだか通路が狭くないか?私の記憶だと、国際線はもう少し広いところのような気がするのだが」
「あぁ…えっとね、当初は普通の国際線で行く予定だったんだけど、クラウドファンディングで集まったお金が多すぎて、今回の旅の諸々を最上級にしたみたいなんだ。だから…」
苦笑いでそういうトレーナーが指さした先を見ると、国内線の機体をもう一回り小さくしたような機体がそこに鎮座していた。
「プライベートジェット…なんだよね。今回のフランス遠征」
「本気か?URA…」
「目標金額の数倍に達したって会見で言った後も増え続けたらしい。URA職員が締め切らずに放置したらあり得ない金額になったと聞いているよ」
「ありがたいを通り越して怖いんだが」
私はあきれながらプライベートジェットを見やる。細身の機体はすらっとしていて美しい。戦闘機ほどの洗練されたデザインではないが、こういった機も私は好きだ。
ふと目が合ったコックピットの機長らしき人物がサムアップしてきた。
(フライトは任せろ、ということか?)
こちらもサムアップで返す。慌てているな。反応されたのがそんなに意外か?
「アル、行こうか」
「もう時間か?分かった、行こう」
トレーナーの先導でプライベートジェットの中に入る。通常の旅客機と比べて小さいが内部はゆとりをもって設計されているため、道中苦労することはなさそうだ。
座席は8つほど。それぞれが大きく、見ただけで座り心地が良いことが伝わってくる。通路も広く、すれ違うことも可能だ。前方がコックピット、後方がCA等の居住区間になっているらしい。よく見る構成だ。フギンとムニンはもう後ろの方の座席に座っており、しきりに周りを見渡している。そうか、航空機に
私は比較的前側、外の景色が良く見える席に座った。予想通りふかふかの大きな座席に背を預け、目を瞑る。
「アル…なれるの早いね?俺緊張でそんなにリラックスできないんだけど…」
「トレーナーであるアンタが緊張してどうする。すぐ慣れるさ」
通路を挟んで反対側のトレーナーは落ち着かないようだ。背もたれに背を預けることをせず、背筋を伸ばしている。視線も色々なところをさまよっており、誰が見ても緊張状態であることが分かる。
「まぁ、プライベートジェットでの移動なんて今回が最初で最後だろう。存分に楽しんでおいた方がいい」
「なんでそんなに余裕なんだ…」
前世での経験の差だな。このくらいのプライベートジェットは
そうこうしている間に機体は飛行場を移動していく。その動きは軽快だ。
『この航空機は、メジロ航空564号、シャルルドゴール空港行きです。まもなく離陸いたします。シートベルトを締め、席をお立ちにならないようお願いします』
なるほど、これはメジロ家の機体か。学園割で安くしてもらったのか?
『このフライトは合計飛行時間約16時間で目的地に到着します』
機体が加速を始める。
『燃料補給等の中継地点への着陸はありません』
浮遊感と共に車輪と地面が奏でていた騒音が消え去る。随分と心地よい離陸だ。
それにしても燃料補給なしか。優秀な機体なんだな。
ーーー
離陸からしばらくたったころ、CAの一人が私に近づいてきた。
「お客様、お飲み物などはいかがですか?」
窓の外をボーっと眺めていた私は違和感を覚えた。
至って普通の質問だ。そう。質問内容は至って普通だ。何の違和感もない。
私が違和感を覚えたのは声だ。そう、
恐る恐る声をかけてきたCAの方に首を向ける。そこには…
「お客様~?」
「ゴルシだとっ!?」
茶化すような、悪戯っぽい笑みを浮かべた
私の声で寝かけていたトレーナーも飛び起きた。同じように驚いている。
「お、お前なんで…」
「なんでってそりゃおめー…現地でいろいろとサポートするために決まってんだろ?他よりちょっと近い場所でサポートさせてもらうけどな」
私があっけにとられているとトレーナーが質問を投げかける。
「ゴールドシップ、沖野トレーナーにはちゃんと許可とってきたんだろうね?」
「あん?あたぼーよ。アタシが”ちょっとフランス行ってくるぜ!”って言ったら”おうちゃんと帰って来いよ~(激似)”って言ってたぜ」
「ぜっっったいに許可とれてないよそれ」
トレーナーは顔を覆って現実逃避した。その後、携帯で連絡を始めた。
「それはそれとして見送りにアタシが来なくてちょっと凹んだろ~来てやったぞ~?」
「………叩き出してやろうか」
「ごめん、ごめんって!手首ひねり上げないで!死ぬ!」
謎の恥ずかしさから手が出たが私は悪くない。こんなことをするコイツが悪いのだ。
「手首がおさらばするかと思ったぜ…まぁ、真面目な話フランスでのトレーニング相手だよアタシは」
「許可は?」
「取ったって言ったじゃんかよ」
「さっきの以外ではどうだ」
「……………てへ☆」
やはりコイツはヤバい奴なんじゃなかろうか?
「フランスでのトレーニングはフランスの奴らとやれば良いだろう」
「なんだよアタシじゃ不満か?」
「違う、お前じゃ慣れてないだろう。洋芝に」
「気合で慣れるんだよ!!」
何言っているんだろうこのルームメイトは。
どう反応したものか思案していると、連絡が取れたのかトレーナーが話しかけてきた。
「沖野先輩からメッセージなんだけど…”そんなことだろうとは思った。悪いが世話を頼む”……分かっていたのなら止めてくださいよ…!」
「担当が担当ならトレーナーもトレーナーだな。相応にぶっ飛んでいる」
「まぁアタシを止めても無駄だと判断したんだろうな。良い判断だと思うぜ」
私の遠征中はチームスピカにはひと時の平穏が訪れるって算段か。全く、私のことを何だと思っているのだろうか。全く頭が痛い。
「そうだ飲み物の話だったな。紅茶をもらえるか?」
「げ、私を使う気かよ」
「CAなんだろう?」
だが、ゴルシが遠征に同行することとなって、少しだけ、ほんの少しだけ、うれしく思っている私がいた。
ーーー
もらったコードをスキャンし、ページにアクセスする。程なくしてページが表示される。
「ほぉ…」
てっきり私はダウンロードページに飛ばされ、そこからPDFでも落とすものだと思っていたのだが…。どうやらちゃんとしたページを作成してくれたようだ。ページ作成者は誰だろうな?まぁ、誰かの知り合いだろう。*1
ーーアルカンジュ応援一言メッセージーー
ご武運を。戦果を期待しています。 サテリット
…
アルがいない間の日本は任せて!頑張って! トウカイテイオー
油断禁物!アルちゃんなら勝てる! マヤノトップガン
ケガなどしないよう、お気をつけて。頑張ってください。 スペリオルドーラ
アルさんならやれます、頑張って! ナイスネイチャ
ターボエンジン全開だ! ツインターボ
頑張ってくださいね。日本の悲願、貴女ならできると信じております。 メジロマックイーン
…
…
…
おフランスのレースも、かっ飛ばしましょ!! マルゼンスキー
お前ならやれる。頑張れ、アル。 シリウスシンボリ
生徒会長として、また一ウマ娘として学園より応援しているよ。頑張ってくれ。私のお婆様も頑張って欲しいと言っていた。 シンボリルドルフ
鬼神のごとき活躍、期待している。 ヒシスピード
着いてくぜ!! ゴールドシップ
…
…
…
祈願ッ!吉報を心待ちにしている!! 秋川やよい
凱旋門賞、頑張ってくださいね! 駿川たづな
遠征中のサテリットなら任せなさい。心おきなく凱旋門賞に挑むように。 東条ハナ
ゴルシのことは任せた。頑張れ。 沖野
…
…
フランスでも頑張れーー!みんなでテレビ越しに応援してるからなーー! 商店街一同
…
やはりこう言ったメッセージというものは嬉しいものだ。いついかなる場所でもその効力は変わらない。見知ったメンツからのメッセージはもちろん、私に憧れている、などと書いてあったメッセージもあった。おそらく入ったばかりの子からのものだろう。学園中からの募集でここまで集まるとはな…。私の人気は思ったよりも高いのかもしれない。
フランスでの初戦までは調整期間がある。なんとしてでも勝ち、応援してくれている人たちに報いなければ。
だがまだフランスまでは遠い。ひと眠りするとしよう。
筆者にフランスの知識がなさ過ぎて死んでしまいそうです。
そして投稿頻度が終わってる。もう少し何とかできないものか。
あとオルフェーヴル好き。(無関係)