エース娘コンバットダービー   作:Jeep53

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久しぶりの投稿で申し訳ありません。ようやく時間が出来たので再開します。お楽しみいただければ幸いです。

前回のあらすじ
フランスのウマ娘テネーブルと模擬レースを行い、勝利


MISSION 48 「とある休養日」

 「休暇だと?」

 

とある日の朝、貸し与えられているトレーナー室へと入った私はトレーナーから告げられた言葉に疑問で返した。

 

「そう。休暇。走りの方はかなり仕上がってるから数日くらいは大丈夫だろうと思って。ほら、アルってこっち出身なんでしょ?知り合いとかいるんじゃない?久々に会って話すのも良い息抜きになると思うな」

 

トレーナーは書類から目を上げてそう言った。そう言えばフランス出身ってことにしていたな。すっかり忘れていたが。

 

「そうか。ではありがたく休暇をもらうとしようか。まぁ、知り合いが休みかどうかは分からんがね」

「じゃあこうしよう、今連絡してみて相手が都合がいい日を休暇にするというのはどう?」

「なるほど、それでいこう」

 

 私はイエローサーティーンに連絡を飛ばす。”休暇をとれそうだが、会える日はあるか”と。既読には時間がかかるかと思われたが、その心配とは裏腹に送った十数秒後には既読がついた。

 

”俺は今日でも大丈夫だ”

 

「連絡がついた。今日でいいらしい」

「そう?じゃあ今から休暇ってことで。たのしんでおいで。その間私はゴルシたちのトレーニングを見ておくから」

「あぁ、感謝する」

 

 トレーナー室を後にして、自室に向かう。流石に制服では外出できないため、着替える必要があるのだ。自室に戻り、私服を引っ張り出す。といってもそんな大層なものは持ち合わせていない。軽めの夏用ジーパンに適当な白い半袖シャツを着て、その上にベージュ色のシアーオーバーサイズシャツを羽織るだけである。キャップと一応サングラスも持っていこうか。

 日本のトレセン学園の制服を着ていなければ私が私だとは分からないようで、廊下ですれ違う現地のウマ娘にも物珍しそうな顔はされなかった。ここに来てから初めての経験かもしれない。随分と過ごしやすい。

 学園の門のところで守衛に外出届を提出する。守衛は私が外国籍ということをみて驚いたようである。

 

『嬢ちゃん日本の娘かい。大丈夫か?1人で街に出て』

『心配ありがとうございます。大丈夫です。国籍こそ日本ですが出身はこちらなので』

『あぁなるほどな。道理で年齢にしては背が高いと思ったよ』

 

そう笑って守衛は外出届を受理した。これで私は外に出ることができる。確かに、あまり気にしていなかったがこちらの学園は背が高い人が多い気がする。私は中等部ではかなり高いほうだが、こちらだと普通くらいだ。

 スマホに通知が来る。イエローサーティーンからだ。

 

”カフェで待ち合わせだ。場所はここで”

 

短いメッセージと、カフェの住所が送られてきた。この場所は…ここから程近い大通りに面した場所だ。裏路地でないから治安の心配をすることはないだろう。

 

ーーー

 

 程なくして、カフェに到着する。彼女は…いた。テラス席にてこちらに手を振っている。

 

『ここに着いた日以来だな、ミハイ。元気だったか?』

『元気だとも。面白い毎日だよ』

 

着席しながらそう返す。彼女は通りすがりの店員にモーニングセットを2人分頼んだ。

 

『今の君にとってここはアウェーだからな。ハブられて大変かと思ったが』

『まぁ確かに、アウェーではあるな。最も、私に言わせればこの程度かといった感じだがね』

『ハハッ、強いな』

 

モーニングセットが運ばれてくる。コーヒーと、クロックムッシュだ。…些か量が多い気もするが…。ウマ娘用はこんなものか。

 

『さて、聞きたいことが沢山あるんだが…いいか?』

『1つずつにしてもらおう。前のように捲し立てられては答えられんからな』

『そうだな…じゃあ、前世のことだ。俺が墜ちた後、あの世界はどうなった?』

『大陸戦争で、エルジアは敗北した。…まぁ、それは分かっていたと言わんばかりの顔だな』

『当たり前だ。俺が墜ちる前から敗色濃厚だったんだ。あの後から盛り返せるとは思わないな』

『エルジアが降伏した後も、それを認めない若手将校などが集まって”自由エルジア”を名乗って武装蜂起したこともあったな。新型機まで持ち出して…というか私の試験機体(X-02)を持ち逃げして本格的な武装蜂起だったんだが、オーシアのリボン付きがいただろう?あいつに全機してやられたと聞いている』

 

それを聞いた彼女は笑った。

 

『俺で勝てなかった相手に勝てる道理はないだろうに』

『それもそうだ』

 

お互いに苦笑する。

 

『リボン付きはその後どうなったんだ?お前は武装蜂起に参加しなかったのか?』

『捲し立てるなと言っておろうに。…リボン付きに関しては分からん。情報がないのだ。そして私は負けが見えている参加しなくてよい戦いに参加はしない』

『確かにな。その後はどうなったんだ』

 

彼女は身を乗り出すように聞いてくる。

 

『…私より先にこの世界に来た奴に聞いたりしなかったのか?』

『まぁ、聞いてはいるが情報の提供口は多いに越したことはないからな』

 

コーヒーを一口飲む。

 

『まず、エルジアはもう一度王国になった。王政復古を行ったんだ。その後環太平洋戦争が起こって、終わった。これは正直エルジアはあまり関与していなかったからな。省かせてもらおう』

 

クロックムッシュを一口。美味いな。

 

『その後、オーシアがユージア大陸復興の基盤として自国主導で”国際軌道エレベーター”の建設を始めた。そしてそのエレベーターの防衛用にアーセナルバードという大型無人機母艦を2機配備、IUN-PKFとして多数のオーシア軍を派遣してきたんだ。捉えようによっては侵攻ともいえる。エルジアとオーシアの仲は次第に悪くなっていった。ついにエルジアはオーシアに宣戦布告して戦争を始めたのだ。無人機を用いてな』

『無人機か…何度聞いても慣れないな』

『大まかな顛末は置いておくとしようか。戦争が起こって、私は実験飛行隊に配属されることになった…と言うよりも、配属してもらった』

『実働隊ではなく実験隊を望んだのか?』

『実働隊はもう代替わりしていたことに加え、私は実験隊にいた期間の方が長い人間だからな。本来なら退役していてもおかしくはない年齢だったが…』

 

一息つく。

 

『私は、まだ、飛んでいたかったのだ』

 

コーヒーを飲む。

 

『私が我儘を言った結果、上層部は私を無人機の改良のためのデータサンプルをとる飛行隊、第68実験飛行隊ソルの配属とした』

『ほー、良かったじゃないか。飛べたんだろう?』

『あぁ、飛べたさ。最初は嬉しくて仕方なかった。こんな老いぼれのフライトデータなんて、と考えていたからな。だが、だんだん怖くなっていったんだ』

『何が?』

『空が、私の居場所が、だんだんと人ならざるモノに支配されていっている感覚がしだしたんだ』

『あぁ…こっちに来たオーシアの連中も言ってたからな。段々と無人機が高性能になっていったって』

『軌道エレベーターの周りには2機のアーセナルバード、スクランブルで出ていくのは有人機ではなく無人機、それもトラックに積載したコンテナからだ。目に見えて有人機は減っていった。そして、シュローデル…あぁ、ソル隊お付きの研究者だ。シュローデルが自身で相手の動きを学習し、戦いの中で成長していくUAVを開発した。他ならない私のデータを使ってな。自己を複製するよう大陸各所の施設に命令を送れる能力付きだ』

『ADF-11Fだったか?聞いたことがある』

 

クロックムッシュを食べる。

 

『元はと言えば私の空を飛びたいというエゴから生まれたようなものだ。だが、私にはどうすることもできなかった。敵のエースに託すしかなかったんだ。……そうだ、敵のエースが面白い奴だったのだ』

『へぇ、どんな?』

『三本線に関しては私より詳しい奴がいるはずだ。私からは…そうだな、あり得ない機動で大量の戦果をたたき出している化け物と言っておこうか。私もそいつとの一騎打ちに負けてね。気が付いたらこの世界だ』

『なるほどなぁ…んで、結局そのUAVは撃墜されたんだもんな?俺はそう聞いているが』

『あぁ、そうだ。三本線がやってくれたのだ。今となっては私のチームメイトだ』

 

その言葉に目の前のイエローサーティーンは驚いた様子だ。

 

『チームメイト…って、この前のアイツらが!?…っあぁ…無人機って言ってたのはそう言う…。納得したよ』

『私の境遇に関しては分かってくれたかな?』

 

私の言葉に彼女は頷いた。

 

『次はそっちのターンだ。フランスに関して俺が答えられることは答えよう』

『ふむ…とはいってもあまり無いのだよ。シャンティイトレセンの人たちには良くしてもらっているし、差別も流せる程度。凱旋門賞については予習済みだ。あぁ、そうだ。こっちのレース統括機構も変革したんだろう?実際あのあとどうだったんだ?』

 

私の日本ダービーの後、日本のURAに変革が起きたと同時にフランスのレース統括機構にも同様の事が起こったと聞いている。最も、起こったという事実しか知らないため内容を全く知らないのが現状だ。

 

『あー、あの時か。と言ってもな…内容自体はURAの変革と大して変わらないはずだ。血筋しか考えていない派閥が検挙されて入れ替わったくらいだ。その派閥はトレセン内部まで牛耳っていたんだが、現在はほぼ一掃されている。現にトレセンは過ごしやすいだろ?』

 

なるほど、内容は似たものだが、フランスはトレセンまで派閥の支配下だったのか。道理で過ごしやすいと感じたわけだ。

 

『ほぼ一掃、ってことはまだ居るのか?』

『実質全滅さ。その派閥のトップの娘がトレーナーとして在籍してるくらいだし、彼女は外国チームにも優しいと聞くからな。いろんな噂はあるにせよ、何とかやってるみたいだ』

 

そう言って彼女は笑った。変革を経てシャンティイトレセンは大分と住みやすい環境になっているらしいな。

 

ーーー

 

 その後イエローサーティーンと他愛ない話を終え、帰路に就く。私としてはもう少し彼女といたかったのだが、急な仕事が入ったと言って足早に去っていってしまった。フランスにいる間にもう1回くらいは会えるだろう。

 守衛さんに挨拶しながらシャンティイトレセンの門をくぐる。、今は時間からしてトレーニングの時間だろう。思ったより数時間早く帰ってきてしまった。トレーナー室で時間でも潰そうか。

 

『あら、アルカンジュさん。こんにちは』

『こんにちは、アリアスさんか。出張の帰りかね?』

 

無駄に広い廊下で偶然にもアリアスさんと出会った。スーツ姿の彼女は手にパンパンに膨れたビジネスバッグを提げており、いかにも今帰りですといった具合だ。

 

『そうよ。忙しくて困っちゃうわ。でも、今日はこれで仕事は終わり!』

 

そう言って彼女は笑う。

 

『そうだ、アルカンジュさん。今ここにいるってことは今日は休養日ってことよね?』

『あぁ、そうだ』

 

それを聞いた彼女はパンッ、と手を打った。

 

『丁度いい!これからトレーナー室で一緒にお茶でもどう?いい茶葉が入ったの』

『ありがたいが…先日の一件の後だ、あまり私を良く思わない奴もいることだろう』

 

それに今はイエローサーティーンとお茶してきた帰りだからな。普通に少し休みたいのもある。

だが、目の前の彼女にはそんな気持ちは伝わらないようだ。

 

『大丈夫よ!彼女たちも根は良い子たちだから。最近ちょっとスランプで荒れてたのよね』

 

彼女は私の背中を押して歩き出す。この押しの強さは外国特有だ。行くしかあるまい。

 日が差し込む廊下を歩き、彼女のトレーナー室へ到着した。抱えているチームが大きいからだろうか。その部屋は大きく、そして豪華だった。現在私たちが借りているトレーナールームの2倍以上はあるだろう。内装もそこはかとなく豪華なものが多く、トレーナー室と言うよりかは来賓室と言った方がしっくりくるレベルだ。

 

『みんな、今帰ったわよ!』

『おかえり、トレーナー。……なぜお前が…?』

 

 部屋の中には複数人のメンバーがおり、真っ先に私を見つけて顔をしかめたのはテネーブル、件のレースの相手だ。彼女だけじゃない。見たことのある顔ばかりだ。部屋中の空気がピリピリしている。正直、こんな空間にはいたくないのだが、アリアスさんのメンツのためにも居なければいけないな。いやな空気だ。

 

『そこで偶然会ったからお茶に誘ってみたの。気まずいのは分かるけどそんな顔しないの。仲良くするべきよ』

『…チッ』

 

彼女は舌打ちをして部屋から出ていった。まぁこうなるだろうとは思っていたが、予想通りだな。いいんだ、露骨にいやそうな雰囲気を出してくれている方がまだマシと言うものだ。

 

『ごめんなさいね、アルカンジュさん。今お茶を用意するから、そこに座っておいてくれる?』

『あぁ…分かった』

 

 アリアスさんは戸棚から2つ筒を取り出してお茶を入れていく。お気に入りと来客用だろうか。

 

『はいどうぞ、そんなに高級なものじゃないけど…』

『…ありがたくいただこう』

 

出してもらったものに口をつける。変なにおいなどはせず、味も普通だ。…疑うのは嫌だが、生い立ちのせいで疑ってしまうのが癖になっている。特にこの空気では疑うのも無理はない。

 

『すまないが、私は腹芸が得意ではなくてね、聞きたいことがあるのなら率直に言ってくれると助かるのだが』

 

ならば、切り出してしまおう。ここはフランス、いわば敵地。そこをホームとする大チームのトレーナーが先日のお詫びなどという理由で招き入れるはずがない。それも選手単体で。そんな暇はないはずだ。

 

一瞬驚いたような表情をした彼女だったが、ティーカップを置いて私に向き直って不敵に笑った。

 

『あら、そんなふうに思われてたの?心外ね…。でも』

 

彼女はティーカップを置いて、こちらを見た。

 

『そう言うなら、少し聞かせてもらおうかしら』

 

やはりな。予想は正しかった。目が笑っていない。

 

『貴女、どこから来たの?』

 

彼女の目はこちらの心を見透かすようだった。

 

『…日本だ。知っていることだろう』

 

『えぇ、そうね。でも貴女、生まれはこっちなんでしょう?日本の学園のプロフィールには、そう書いてあった。それにしては変なのよね』

 

彼女は紅茶を一口飲んでこちらを真っすぐ見た。

 

『貴女ほどの実力者だったら大なり小なり記録は残るはずなのよ』

 

『こちらで生まれて、日本で育ったという事も考えられるだろう?』

 

『その経歴でそこまでフランス語が上手くなる訳がないわ。それに、貴女の記録、日本にもないじゃない』

 

言葉に詰まる。正直、この世界における私の在り方というものは未だによく分かっていない。イエローサーティーンや、ヴィトらがいることからそう言うものだと受け止め、考えないようにしていたからだ。

 

『ある日突然現れて、スカウトを経て学園に編入、そこから情報が充実してくるの。逆に、それまでの情報は全くと言っていいほどない。出生記録があるだけ。不自然だと思わない?』

 

『…良く調べたんだな。他の連中は私たちなど気にも留めないみたいだが』

 

何とか言葉を絞り出す。ここで回答を間違えると何かしらの悪影響が出かねない。最悪の場合だけは避けなければ…。平静を装い、この場を切り抜ける必要がある。

 そう身構えていると、彼女が声色が少し弱くなった。

 

『今でこそそこそこの大きなチームになっているけれど、お父様がいなくなってから、私と、私の周りへの視線は厳しいものになっていったからかしら、チームとして、どんなことをしてでも実績を残さないと私たちはここに居られない気がしているの』

 

お父様…か。

 

『なるほどな、アリアスさん。アンタが旧派閥の()()()()か』

 

『えぇ、その通りよ。だから、どんな相手でもちゃんと調べるようにしているのよ。特に、革命の引き金(トリガー)となった貴女に関してはね』

 

声色が毅然としたものに戻った。

 

『でも、何の情報も出てこなかった。分かったのは、貴女の戦績と、強さの大体の指標くらい。弱みなんてものは全く出てこなかった』

 

弱み…?

 

『だから、貴女達に優しくして、テネーブルたちの暴走を待った。こっちのレースの様子を知れば少しは調子を崩してくれるんじゃないかと期待して、ね』

 

『それは、トレーナーとしてどうなんだ…?』

 

彼女は不思議そうな顔をした。

 

『このくらいじゃ問題にはならないわ。問題になるようなら言わないわよ』

 

言われてみればそうだ。いったん日本の常識を捨てる必要があるかもしれないな。

 

『…ゴホン、それでも、貴女は調子を崩すどころか勝ってしまった』

 

雰囲気が変わる。だが、害意は感じない。

 

『日本との違いなんてものじゃ貴女は揺らがない。だから、正々堂々叩き潰すことにするわ。私たちの持てるすべてを使って、貴女を墜としにかかる』

 

そう言い切った彼女の眼は澄んでいた。

言いたいことはいろいろあるが、今は応えておこう。

 

『望むところだ』

 

私の言葉を聞いた彼女は雰囲気を柔らかくし、笑った。

 

『あの模擬レースが仕組まれていたものだったとは、意外と強かな妨害をしてくるものだな。私でなかったら危なかったかもしれない。…一つ気になるのだが、正々堂々挑んでくるという事は私を潰す算段があったという事だろう?だというのに妨害工作をしたのはなぜだ?』

『簡単な事よ。情報がほとんどない貴女という不確定要素を無くしたかっただけ』

『なるほど、その通りだな』

 

 あ、そうだ。と彼女は付け足してこう言った。

 

『さすがに私も体に影響が出るような妨害工作とかはしないし、紅茶はちゃんとした物だから、安心して飲んでちょうだい。それと、テネーブルの適正は短距離で、フォワ賞には出ないわ』

 

適性合ってない奴をけしかけるとは…洋芝に慣れていない奴だ、と舐められていたのだろうな。

 

『そうか、それではお茶はありがたく飲ませてもらおうか。フォワ賞、楽しみにしている』

 


 

 「そういう時は連絡してって言ってるでしょ!!」

 

その後、日が沈んだころ、私はトレーナー室でトレーナーから少し怒られていた。

 

「そういう時こそ俺を頼ってくれれば良かったのに…!」

「だ、だがトレーナー、無事何事もなく帰ってこれたではないか」

「日本基準では大有りだよ…!はぁ…まぁ、アルがいいならいいけれども…」

 

トレーナーは額を押さえてうつむいた。私はあの場の雰囲気に流されていたが、考えてみると他国のチームにほぼ意図的に妨害工作を働くというのは普通に危ない事である。

 

「それに、アルのことを徹底的に調べたってことは領域のことも普通にバレているし、どういう走り方をするのかもバレているってことになるよ。テネーブルは走らないし…相手の情報は、聞き出せた?」

 

失念していた。どうしたものか、トレーナーの目が見れない。

 

「聞き出せなかったんだね…。仕方ないよ、敵のホームで、トップに色々聞かれて…。まともに答えられるわけないよ。…でもまぁ、アルが緊張しちゃうのは珍しいね。アルもまだ子供だってことかな」

「子供扱いはやめてもらおうか。私にも尊厳と言うものはある」

「ごめんごめん」

 

そう言って彼は笑い、その次に真剣な表情を再度作った。

 

「でも、本当にどうしようね。おそらくこちらの手の内はほぼバレているとみていいと思う」

「だが、私の動きに対応できるとは限らない。見ただけで対応できるのであればそいつは天才だ。…大丈夫だトレーナー、フギンとムニンもいるのだから。きっと上手くいくだろう」

 

口ではそう言うが、正直相手の実力が未知数であるがゆえに安心はできない。私の中に不安は残るし、彼もまだ不安そうな顔をしている。

 

「…やるしかないのだから、全力でやってくるとしよう。相手が誰であろうとな。明日から全力でトレーニングだ」

「…そうだね。それなら俺は、情報収集に勤しもうかな。できる限りの情報を集めてくるよ」

「あぁ、頼む。私はもう部屋に帰るとしよう」

 

トレーナー室を出て、廊下で一息つく。

 私は、感知できていないだけでやはり異国の地に緊張しているのだろうか。以前であったらあのくらいの状況などいくらでもあったというのに。

 この緊張は、本番までには取り除いておかねばなるまい。相手に手札がほぼすべて見透かされている状況で、私はどれだけやれるのだろうか。




書いては消し、書いては消しを何度か繰り返したものですので、一応チェックしましたがもしかしたら口調や表現等が不自然な箇所があるかもしれません。そう言った場合は指摘していただけると助かります。

皆さん、今年はお疲れさまでした。来年もよろしくお願いします。
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