魔法科高校の音使い   作:オルタナティブ

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どうも、新しいスーパー戦隊が想像よりもずっと王道で面白かったので一年間楽しめそうな作者です。ライダーも面白いから今年は良い年です。

……いや、前作と前々作がトンチキしまくってただけだな?


第十一話

 

「ん、達也」

 

「……八幡か」

 

「何でお前いんの?九校戦選手って訳じゃないだろ」

 

「……先輩と深雪に頼まれてな。エンジニアとして参加することになった」

 

「あー……三年生は三連覇の為に本気で来てるみたいだしな。理論一位、深雪のCADのメンテもしてるお前が呼ばれない道理はねぇか」

 

そう言って、納得いったように頷く八幡。

場所は部活連本部・会議室。九校戦に際して生徒会や風紀委員会、部活連といった生徒上層部によって決定した選抜メンバーが集められていた。

 

「……せめてもの救いは、深雪が会議に参加しないことか。言いくるめてくれて感謝する、八幡」

 

「いいって。立てば爆薬座ればドカン、歩く姿は核弾頭。走り出したらこの世の終わりと語られた俺にかかれば簡単なもんだ」

 

「凡そ人間に対して使う表現じゃないだろうソレ」

 

なお、「立てば爆薬(ry」を言ったのはどこぞの戯言遣いであったりする。

 

「……ま、『お兄様を悪し様に言う輩がいればコレでガッとやってください』って言葉と共に鉈を渡されたが」

 

「鉈」

 

その言葉と共に渡されたぺっかぺか、新品未使用の綺麗な鉈をどこからか取り出す八幡。妹の行動に頭を抱える達也だった。ちなみに鉈を取り出したのは特撮あるある「どこからか取り出した変身アイテム」みたいなアレである。深く考えたら負けだ。

その後参加者が揃ったことで会議が始まり、参加の内定が決まっているメンバーの紹介が始まった。当然『異分子(二科生)』として注目が集まってしまい、反対意見が続出。……これは完璧に余談なのだが、達也が会議室に八幡と共にやってきた際に森崎がそれを目敏く見つけ、

 

「おい、司波達也!何故お前がこんな所にいるんだ!ここは九校戦に選ばれた生徒しか入ることを許されていないんだぞ!」

 

なんて言ってきた。しかし態々寄ってきて叫んだせいで八幡の耳にそれなりのダメージを与え、それにキレた八幡によって顔面に蹴りを入れられたことで現在は内定が決まっていない一年生の席で伸びていたりする。骨は折られていないので実質無傷。

 

「……意外だね」

 

「ん?何がだ?」

 

そう呟いた雫に反応する八幡。

 

「いや、前に達也さんのことが悪く言われて私が色々言った時に乗っかったから。今回も何か言うのかなと思ってたんだ」

 

「んー……言わねぇかな。本人がいない場所なら本人の知らないところで名誉が損なわれてるわけだから友として言い返しはするが、今回は本人がいる所での悪口だからな。それは達也本人が買う喧嘩だ。本人を差し置いて買っていい喧嘩じゃねぇ」

 

「……色々考えてるんだね」

 

「考え無しの馬鹿って言ってる?」

 

「そんなことないよ」

 

そうして会議が紛糾していると、見兼ねた克人が口を開いた。

 

「───要するに、だ。司波の技能がどれほどのものか分からない、ということで問題が紛糾している。なら、彼の技能を実際に確かめてみればいい」

 

「確かにその通りだが、具体的にはどうする?」

 

「実際にCADの調整をやらせてみればいい。何だったら俺が実験台になるが」

 

克人のその言葉に、反対の声が相次ぐ。仕方ない。

そもそもCADは何の調整もなしにすんなり使えるようなものではなく、アスリートやアーティストなどが自分の適性や癖に合った道具を使用するように、魔法師の使用するCADも個人で異なる最適化が必須となる。

魔法師はCADに格納された起動式を読み取って自身の魔法演算領域に取り込む。それはCADと自分の精神を直結させるようなものであり、無論CADの調整が本人と合っていなければそれによる弊害として精神ダメージを負うことになる。そのダメージは良くて魔法効率の低下。悪ければ幻覚症状などを負うほどのものであり、最新の高性能なCADほど要求される技術が跳ね上がるのだ。

反対の言葉に対して真由美が立候補するも、身内が生徒会にいる以上身内贔屓と取られる可能性もある。同様に友人関係であるが故に八幡や雫、ほのかは立候補出来ず、他の反対派の生徒は言わずもがな。賛成派であっても自分のこれからを左右しかねない試験に尻込みし、立候補する者は居なかった。そんな中、一人の立候補者が。

 

「その役目……俺にやらせてください」

 

それは先日のブランシュの一件で八幡や達也、克人と共に戦った2年生。桐原武明であった。そうして桐原のCADを調整することに決定し、九校戦の際に実際に使われる調整機と同じものを使用して調整が始まった。

 

「……課題は、競技用CADに桐原先輩のCADの設定をコピーし即時使用可能な状態にする。但し、起動式そのものには手を加えない……で、問題ありませんね?」

 

「それでお願い。……どうしたの?」

 

達也の素振りに首を傾げる真由美。それは頷くものではなく、首を横に振るものだったからだった。それを見た八幡は、思考を開始する。

 

(達也のあの素振り……類推するに、普通なら不味いことなんだろうな。競技用のCADに設定をコピーすることは。俺はそういうのに詳しくないが……少なくとも、あいつが躊躇うような素振りを見せるくらいのことなのは間違いない。では、何故不味いのか。……イマイチわからんな。こういう時は別のものに置き換えよう。例えばCADを楽器、達也が調律師として考える。異なるCADということは異なる楽器……ああいや、どちらかっつーとコントラバスとチェロやバイオリンのような規格や音域が異なるものか。あくまでCADという括りから外れているわけじゃないからな。……ん?ちょっと待て)

 

(()()()()()()()()()()()?)

 

そして八幡は更に考え込む。音楽家である八幡は、自分の使う楽器の調律も自分でこなしている。セブンスコードシリーズも、CAD部分こそ出来ないので積雪経由でトーラス・シルバーに依頼しているもののの、楽器部分に関しては問題なくメンテナンスが出来る。だからこそ、周囲の魔法工学に疎い生徒らが気付かなかった問題点()に行き着いた。

 

「……なるほどな。そういうことか」

 

「……?」

 

合点がいったかのように頷く八幡を見て首を傾げる雫。解答編は達也の調整が終わってからなのでしばし待て。

さて、達也の方はというと。丁度キーボードのみでの調整を始めたところであった。その様子に「時代遅れ」「何をやっているのか」という声が飛ぶが、注目しなければならない点を間違えている以上失笑を免れないであろう。

 

「……へぇ、凄いね。1年に完全マニュアル調整できる人間がいるなんて」

 

「あれって、啓もやってくれてるよね?」

 

「僕のする調整はあそこまで手際が良くないよ。一つ言えるのは、この場において彼のやっている作業の意味を理解できる人間は……数えた方が早いくらいだろうね」

 

そんな会話をしていたのは2年生である五十里啓。と、その隣にいた同じく2年生の千代田花音であった。達也が行ったのは間違いなく高い技術を要求する代物ではあったのだが……見る者の多くに「所詮二科生」という視野狭窄と偏見のバイアスがかかっていたが故に、達也の腕前を真に理解出来た者は僅かであった。なお八幡も達也の腕前は「なんかすっげー」くらいしか理解出来ていない。達也の素振りから要求されているものの難易度をやや逆説的に理解し、それをこなしているから高く評価しているだけで達也がどんな技術を使っているのかに関しては殆ど理解していないのだった。

 

「───終了しました」

 

調整は難なく終わった。

元々起動式を弄らない前提だったため、それほど時間が掛からないものだったらしい。早速調整の終えた競技用デバイスを桐原が身に着け、CADを操作する。彼が起動するのは得意としている振動系近接魔法『高周波ブレード』。それを竹刀に纏わせる。

些かの引っ掛かりもなくスムーズに竹刀の周囲を魔法式が展開し、その展開状態を確認しながら桐原が軽く振る。起動により高周波の耳障りな音が響き、覚悟していたとはいえ普通に気色悪い音により顔を顰める八幡。桐原が魔法の展開を終えて『試しが終わった』と判断して克人が問いかけた。

 

「桐原、感触はどうだ?」

 

「問題ありませんね。普段使っているものと、全く違和感がありません」

 

克人の問いかけに即答する桐原。

それが彼の個人的な事情による過大評価でないことは周囲の人間が理解している。4月の新入生勧誘週間の一件は殆どの人間が知っているため、達也と桐原の関係もある程度は聞き及んでいることだろう……殆どの人間は中途半端にしか知らない事実だが。それを抜きにしても、CADを順調に作動させたことは誰の目から見ても明らかだ。……尤も、魔法をスムーズに発動できたという結果だけしか分からない人間もいたりするのだが。

 

「一応の技術はあるようですけど、当校の代表を務めるだけのレベルとは思えません」

 

「仕上がり時間も平凡だ。あまりいい手際とは言えない」

 

「やり方が変則的すぎる。それなりに意味はあるのかもしれませんが……」

 

達也の作業の意味を理解出来ずに批判する生徒らに、あずさが声を上げた。

 

「私は、司波君の代表メンバー入りを支持します! 想子波特性の原データを直接読み取って、自動最適化を使わずに完全マニュアル調整を行いました。そして、デバイスのキャパの許す限り想子波特性の測定結果を反映させる技能は確かなものです!」

 

「……それは確かに高度な技術かもしれないけど、出来上がりが平凡なものだったら意味がないんじゃあ……」

 

「見かけは平凡でも、中身は違います!あれだけ安全マージンを確保したうえで効率を低下させないことはすごいんです!」

 

「落ち着いて、中条さん。不必要に大きな安全マージンを取るより、その分を効率アップに向けるほうが大事だと思うけれど?」

 

「……それは、その……きっと、いきなりだったから……」

 

そう口篭るあずさ。それを横目に、何かに八幡が気付いたことを察していた雫が口を開く。

 

「……比企谷」

 

「ん?」

 

「私は余りよく分からなかったんだけど……達也さんがした作業って、どんなものだったの?」

 

「んー……」

 

少し考え込む八幡。しかし部屋中の視線が自分に集まってきたのを理解したのか、仕方なさげに口を開く。

 

「後で説明しようかと思ったが……まあいいか。じゃあ説明する前に……昔会ったろくでもない奴風に言わせてもらうか」

 

八幡はそう言って視線を集めると、改めて口を開き──────

 

「耳かっぽじって聞いてくれよ?」

 

「ちょっと複雑で」

 

「馬鹿にはわかんねーと思うから!」

 

にっこりと嘲るように微笑んで、そう言った。

 

 

 

「まず問題だけど……生徒会長、達也がやったのは『起動式を弄らずに競技用CADに元々桐原先輩が使ってたCADの設定をコピーし、すぐに使える状態にする』でしたよね」

 

「え?……ええ。そうよ」

 

八幡はそれを再確認すると、自身の推察を述べ始めた。

 

「ぶっちゃけ達也がどんな技術を使ったかはこの際置いといていいんですよ。俺も理解してないですし」

 

「なのでちょっと自分が分かりやすいものに置き換えますね。じゃあ、楽器に例えましょう。楽器。なので達也は調律師です」

 

「これを達也がやったことに対して同様に置き換えると、『コントラバスを調律して音域をバイオリンと同じものにしろ』って感じですかね。ちなみにコントラバス、チェロ、ヴィオラ、バイオリンの中で一番音域が低いのがコントラバス。一番高いのがバイオリンです」

 

「確か九校戦に使うCADは性能に制限がかかってるんですよね。じゃあこの例えもそんなに的外れじゃないでしょう。下手な調律じゃあ演奏中に弦が切れたり……下手すりゃぶっ壊れる。さて、ここでCADに戻しましょ。使ってる最中にぶっ壊れたらどんなことになるやら。少なくともオートの調整ではヤバかったでしょうね。……そういうことでいいんだよな?達也」

 

そう言って話を達也に投げる八幡。それに達也は頷くと。口を開く。

 

「ああ。……下手をすれば設定の噛み合わせによる起動障害が起きて、使用者に多大な精神ダメージが入ったでしょう」

 

……その言葉がトドメだった。その後、副会長である服部の賛成発言や駄目押しの克人の発言により、達也の九校戦代表入りが決まったのだった。

 

 

 

 

 

「うに~~~~~~~~~~」

 

そんなどこぞの青色サヴァンのような奇声を上げて突っ伏す俺。場所は生徒会室。九校戦代表も決定し九校戦に向けて生徒らへのメンバー発表などの発足式も終わって、俺は必修の授業以外は全部公休扱いにして練習をしていた。深雪や北山、光井はちゃんと必修以外の授業に出席してるけどな。真面目ぇ。放課後も九校戦の練習もあってか一緒になんかする時間もないからかあんまりつるまなくなってきたし。

 

「ぐったりしてるわねぇ」

 

そう言って紅茶を淹れ、こちらに寄越してきたのは生徒会長。他にも生徒会室には渡辺先輩や十文字先輩がいたりする。普通なら萎縮するらしいけど……ま、俺別にどうでもいいしな。

 

「にしても、比企谷がそんなに悩むとは珍しいな。どうした?」

 

「や、九校戦で使う魔法に関して悩んでるんスよ。オリジナルで作ってるんですけど、いまいち上手くいかなくて」

 

「オリジナルで?また大変なことしてるわね」

 

「もうちょいで完成するんですけどね。あ、十文字先輩。良ければ完成したらお相手お願いしても良いですか?」

 

「問題ない。俺でよければ相手になろう」

 

「ありがとうございまーす」

 

そう言って、再びペンを走らせる俺。しばらくして時計を見ると、ある事に気付いた。

 

「あ、すみません。モノリス・コードの練習の予定時間が近いんで失礼します。紅茶ありがとうございましたー」

 

そう言って生徒会室を出る。向かった先はある部活が使用している施設。

その部活の名は『コンバット・シューティング部』。使用施設である訓練場は広い空間になっており、その訓練場の室内は基本的に広い空間となっているが、不規則に配置された太い角柱と意図的に落とされた照明、そして床に散らばる廃材オブジェクトによって擬似的な迷路になっている。それらはコンピューターによって位置を変えることができ、それらの隙間を擦り抜けて如何に早くゴールに辿り着くかを競う。それがコンバット・シューティングだ。しかも各所には自動銃座が設置されており、そこから発射されるゴム質のペイント弾に当たると失格となってしまう。自動銃座の場所を読んでそこを避けるか、あるいは読んだうえで反撃するか、あるいは発射されたペイント弾を避けるか。そういった、モノリス・コードに必要な瞬時の判断力を養うのには最適な施設と言える。

 

「失礼しまーす」

 

そう言って入室。すると、丁度ブザーが鳴り響いた。……またやってんのか。

 

「よう」

 

「……比企谷か」

 

疑似迷路から出てきた青年、森……森……えっと、なんだっけ。森なんとかに声をかける。

 

「……ランダム設定ですら、このザマだ。この調子では、モノリス・コード優勝なんて……」

 

そう吐き捨てる森なんとかを横目に、障害物をランダム設定。疑似迷路を再構築し、突入。さて、ウォーミングアップがてら行くか。

指を鳴らしながら走り出す。勿論格好を付ける意味はない。

コウモリやイルカ、は超音波を使い周囲の把握を行う。これを『反響定位(エコーロケーション)』と言うのだが、俺が今やっているのもソレだ。

指を鳴らし、その音の跳ね返りで壁の向こうの様子も探り当てる。……向こうに自動銃座が2つ、逆方向なら1つか。よし、ならばこっちだ。再び駆け出し自動銃座に視認された瞬間、照準が合わせられペイント弾が射出される。だが音で銃身の角度や方向まで察知していれば、どこを狙っているかなど手に取るようにわかる。即座にローリングして回避し射程圏内を突っ切った後、ブレーキの時間も惜しいため壁を蹴りピンボールのように速度をそのまま方向転換。回避が難しい弾は移動系魔法を利用した障壁魔法により防御。そもそも何処からどう撃たれるかはわかるんだから走る必要はないんだけどな。まあこういうのは急ぐもんだ。なので走っていこう。

そうして走り抜け、ゴールに到着。ゴール地点のディスプレイを操作し迷路の機能を停止させ終了。そしてスタート地点にのんびりと戻ってくると、それを見た森なんとかが呟く。

 

雑草(ウィード)共とつるんでいる奴なんかに……」

 

蹴るぞボケ。その後部活動の時間となり、間借りさせてもらいながら何回か練習をこなした後本日の対モノリス・コード練習は終わりとなった。

そして、次の日。

 

「─────────!」

 

「ぬう……ッ!」

 

「っく、があっ!?」

 

「これは……!」

 

遂にオリジナル魔法が完成したので、十文字先輩と服部先輩、桐原先輩という今回のモノリス・コード本戦に出場する先輩3人に御相手をお願いしたんだが……この3人にここまで通用したなら、本番でも問題ないだろう。

 

「御相手ありがとうございました」

 

「いや、俺達もフォーメーションの再確認になった。こちらこそ礼を言おう」

 

「中々に強力だったぞ。会頭にもこれほどの効き目があったんだ、新人戦ならまず猛威を奮うだろうな」

 

「ありがとうございます。あ、それでなんですけど……本番で俺が使うまで、他の先輩や達也たちには秘密にしてもらってもいいですか?」

 

「む……それは構わないが。理由を聞いても?」

 

「『その方が楽しいから』……ですかね?」

 

「……ふっ。ならば皆には黙っておくとしよう。楽しみにしておくぞ、比企谷」

 

「アザーーーッス!!!」

 

そうして練習を続けていき、8月1日。遂に、九校戦の為に開催地である富士演習場へと向かう日が来た。




比企谷八幡の秘密
実は、仮面ライダーやスーパー戦隊、ウルトラマンの玩具に毎月万単位で金を突っ込んでいる。自宅の一室は買い集めた玩具の保管部屋。

司波達也の秘密
実は、八幡の無意識の精神干渉の影響で八幡が近くにいると感情が表に出やすい。

次回、九校戦開幕です。次回は……八幡の新たな『セブンスコードシリーズ』や、俺ガイル側のキャラクターのお披露目ですかね?

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