魔法科高校の音使い   作:オルタナティブ

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九校戦、開幕。
投稿遅れてすみません。
なにぶん進学などで色々と忙しかったもので。これからはなる早で投稿するようにします。


第十四話

九校戦の開幕式も終え、九校戦初日。俺はいつものメンバー、略していつメンと小町、そして達也たちのクラスメイトらしい幹比古と集まってプログラムについて話していた。苗字呼びしようとしたらなんか嫌だったらしくて名前呼びに。謎の居心地の悪さがあるのでこっちも名前呼びしてもらうことになった。小町が『お兄ちゃん……成長したね……ホロリ』なんて言うからチョップしておいた。

 

「今日は何の試合だっけ」

 

「確か……本戦のスピード・シューティングとバトル・ボードだね」

 

「じゃあ生徒会長と渡辺先輩か。優勝候補だな」

 

「うん。新人戦では私とほのかが出る競技だし、見逃せない」

 

「そうなんですね、頑張ってください!」

 

「頑張る」

 

北山も光井もやる気満々だな。俺も会場の熱気に少々浮かれそうになる。

 

──────スピード・シューティング。

生徒会長が出場する競技であり、30m先の空中に打ち出されるクレーを魔法で撃ち抜くなどして破壊する競技だ。5分の制限時間にランダムに打ち出されるため、速度と精密性が求められる。

予選では破壊したクレーの数を競い、予選を勝ち抜いた決勝トーナメントでは自分と相手のクレーが入り乱れる中を狙い撃つ対戦型になる。

そのため要求される技量も高いのだが……ま、生徒会長にゃ関係ねぇか。

 

「来たな」

 

「ああ」

 

俺たちの視線の先には、今回のスピード・シューティング優勝候補──────七草真由美生徒会長の姿が。

 

『一高の七草真由美だ!』

 

妖精姫(エルフィン・スナイパー)……!』

 

ん?ちょっと待て。

 

「なあ達也、観客席から聞こえてくる『エルフィン・スナイパー』って何だ?」

 

「ああ……確か先輩に付けられた異名だったはずだ。正確な狙撃能力とその美貌から、とのことだ」

 

「へー……自称してんの?」

 

「本人は嫌がってたと記憶しているが……」

 

「まああんなの自称してたら恥ずかしいことこの上ないが」

 

……あ、睨まれた。なんで分かるんだよ。きっしょ(メロンパン感)

 

まあ、そんなことがありながらも……遂に、競技が始まる。クレーが射出され、宙を舞う。そして競技のルールとして制定されている『エリア』にクレーが入った、その瞬間──────

 

『おおっ!』

 

クレーが粉砕された。観客席からもどよめきの声が上がる。

 

「速い……有効エリアに入った瞬間、即座に撃ち抜いてる!」

 

「しかも動作に無駄がない。そのお陰で、普通なら複数のクレーを同時に狙わなければならないような間隔での発射であろうとそのラグよりも早く対処出来るから『常に1つのクレーに集中出来る』。ある種の芸術みたいな模範解答だぞ、コレ」

 

……だが、これと同じことを出来るやつが世界に何人いるか。そんなことを考えながらも、競技終了。結果は……

 

『第一高校、七草真由美さんの成績……パーフェクト!スコア100!』

 

その放送に会場が歓声を上げる中、深雪たちが呟く。

 

「弾丸は……ドライアイスの亜音速弾ですね」

 

「そうだな。だが真に驚くべきはその精度だ。知覚系魔法を併用し、情報処理しながらも100%の命中率」

 

「確かに、肉眼であの射撃は無理」

 

その声を余所に、俺は試合中に()()()()()()()()()()()()()()のことを考えていた。そんな中、小町が訊いてくる。

 

「お兄ちゃん」

 

「へい」

 

「あの……七草さん?のやってたことがさっぱり分かんないんだけど」

 

「あー……会長が使ったのは4系統8種のうちの『収束』『発散』『移動』の3つを使用した系統魔法『ドライ・ブリザード』だな。『収束』で空気中の二酸化炭素を集め、『発散』で相転移による三態変化を強制的に起こしドライアイスを生成。その際に熱力学第一法則により『二酸化炭素という常温の気体』が『ドライアイスという冷たい物質』に変化することで生成過程で放出された熱エネルギーを運動エネルギーに変換。その運動エネルギーで移動プロセスを組んで『移動』でドライアイスを撃ち出す魔法だ」

 

「……もうちょい詳しく!」

 

「……普通はエネルギーってのは『高いところから低いところ』に移動する。だが魔法によって常温の二酸化炭素を低温のドライアイスにに変化させて弾丸を作るんだが、エネルギーの総量は変わらないっていうルールがあるからな。ドライアイスを作る際に二酸化炭素から奪った熱が余るんだよ。で、運動したら身体が温まるだろ?それは運動エネルギーが熱エネルギーに変換されてるから起きるんだが、今回はその逆。ドライアイス生成の際に余った熱エネルギーを運動エネルギーに変換して、そのエネルギーを使いぶっぱなしたわけだ」

 

「はえー……お兄ちゃんって頭いいんだ」

 

「殴るぞ」

 

俺は静かにため息をついた。その後も予選が行われ……最終結果として、会長は予選をトップで通過。決勝トーナメントへ駒を進めるのだった。

 

そして、次に始まったのは渡辺先輩の試合。

『波乗り』とも呼ばれる競技、『バトル・ボード』は全長3kmのコースを三周して『一番早くゴールした選手が勝ち』というどこまでもシンプルな競技だ。

魔法は『他の選手の直接的な干渉』や『ボードそのものへの攻撃』は禁止となっており、場合によってはマキバオーのOP曲並に追いつき追い越し引っこ抜くことになる。何を引っこ抜いてんだよ。

 

謎にエリカが不機嫌そうなのを横目に、達也が光井に話を振った。

 

「新人戦の準備は大丈夫か?ほのか」

 

「はい!」

 

元気よく答える光井だったが……なんか急に意気消沈し始めた。何?

 

「……でも、達也さんに調整してもらえないんですよね。深雪と雫は二種目とも担当が達也さんなのに……」

 

「……どうしたんだ?ミラージ・バットは担当じゃないか。バトル・ボードの方は八幡とのツーマンセルで練習と作戦立てに付き合ったし……」

 

「い、いえ。あの……」

 

急にやってきたかと思ったらいきなり連れてかれてびっくりしたよね。別に良いけどさ。気分転換になったし。

 

「……お兄様」

 

「達也さん、そういう問題じゃないと思います……」

 

「達也君の意外な弱点発見ね」

 

「朴念仁……」

 

「流石に小町もマズいと思いますよ……」

 

女性陣から袋叩きだな。……俺も何もわからんかったけど、黙っとこ。多分口に出したら俺も叩かれる。そうこうしていると、ついに渡辺先輩の試合だ。先輩が出てくると、観客席から黄色い声援が飛んでくる。

 

「うっわ……」

 

「凄い人気ですねー……」

 

エリカも小町も揃ってやや引き気味である。そりゃそうだ。

 

『用意──────スタート!』

 

開始と同時にスタートダッシュを決める渡辺先輩。優勝候補というのもあり周囲から妨害の魔法が飛んでくるが、器用にその全てを回避していく。

 

「……ほう。硬化魔法と移動魔法のマルチキャストだな」

 

「硬化魔法?俺の得意魔法だ。どこに使ってるんだ?」

 

達也の呟きに反応するレオ。硬化魔法は……ああ、そういうことか。

 

「自身とボードの相対位置の固定だ。これならボードからの転落もない。更にボードと自身をワンセットとして移動魔法を行使し、コースの変化に合わせて持続時間も設定している。……しかも加速魔法と振動魔法も併用しているな。常に3,4種類のマルチキャスト……はっきり言って、高校生のレベルを超えている」

 

「お兄ちゃん、説明」

 

「とにかくクソやべぇ」

 

「おっけ完璧に理解した」

 

「お前たち……」

 

あ、達也が頭抱えた。ちなみに波乗りの予選は問題なく渡辺先輩が首位で抜けてたな。

 

 

 

それから暫く経ち、所用で席を外していた達也が戻ってきた。

 

「もう満席か……凄い人気だな。……幹比古はどうした?」

 

「ああ、なんか体調崩したみたいで部屋に戻ってったよ。こんなクソ騒がしくて熱気の凄い場所にいたらそりゃ体調崩すわな」

 

「そうか……皆は大丈夫なのか?」

 

「五月蝿さで俺がキレかけたくらい」

 

「それは大丈夫と言うのか……?」

 

まあいいだろ。ほら、会長の試合始まるぞ。

 

試合運びだが、序盤はお互い膠着状態。2人とも着実に点を重ねていっているな。……そんな中、試合が動いた。

 

「っ、破片が!」

 

「移動魔法だろうな。クレーを破壊し、その破片をぶつけて別のクレーを破壊。同一材質であるが故に強度も同一であるから出来る手法だ。相手も中々に上手いな」

 

相手選手はクレーの残骸を操作し、複数のクレーを破壊することを選んだようだ。悪くない。

 

「会長は……予選と変わらずだな。これどうなんだ?八幡」

 

「……普通は手法を変えるな。手札ってのは見せないことに価値がある。既にバレてる切り札なんざ無意味だからな。だがそれでも変わらず使うってことは、『そもそもそれしかない』か『対処されてもどうにかなる』か……もしくは、『対処出来ないか』だ。ほら、会長が動くぞ」

 

俺がそう呟くと同時に、ドライアイスが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「今のは……」

 

「知覚魔法『マルチスコープ』。これに死角という概念は存在しませんから」

 

「そして、七草会長は全方位から撃てる。弾丸(バレット)そのものではなく、それを撃ち出す『射出台(バリスタ)』を作り出す魔法……『魔弾の射手』。ドライアイスを撃ち出す『ドライ・ブリザード』などの魔法と組み合わせることで無類の力を発揮する、十師族・七草真由美が得意とするAランク魔法だ」

 

達也のその言葉に、俺はふと言葉を洩らした。

 

「『魔弾の射手』……『Der(デア) Freischütz(フライシュッツ)』か。アレと同じ末路を、会長が辿らなきゃ良いがな」

 

「……八幡、『アレ』とは?」

 

俺が洩らしたその言葉に、達也が反応する。

 

「オペラだよ。カール・マリア・フォン・ウェーバーが作曲した、悪魔が作った『魔弾』にまつわる全3幕のオペラ。物語は最終的に大団円で終わるんだが……最後の魔弾は『()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』んだよ。……会長が、自分の大切なものを撃ち抜いてしまうようなことが無いといいが」

 

そう呟く俺の視線の先には、本戦優勝の賞賛と歓声を浴びながら笑顔で手を振る会長の姿があった。

さて。……()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

その日の夜。各々就寝までの暇を潰していた俺と達也のところに、訪問者がやってきた。

 

「お兄様、今よろしいでしょうか」

 

「……深雪か。構わないぞ。八幡も構わないか?」

 

「ん、いいぞー。ソシャゲの周回してただけだし」

 

俺がそう言うと、部屋に深雪が入って来た。

 

「……で、どうしたんだ?確か、会長の祝勝会をしていたはずだろう」

 

「はい、その祝勝会で雑談をしていたのですが……どうやらエンジニアの手が足りないらしく。お兄様のお力を借りてはどうかという話になったんです」

 

「……なるほどな」

 

どうやら、バトル・ボードの男子側の調子が微妙に悪いらしい。……この前の襲撃が原因だろうな。それで本調子ではない男子側の為に担当エンジニアとのマンツーマンの調整をさせることにした結果、手が足りなくなったとのこと。

 

「……ふむ。俺は構わないが……八幡」

 

「ん?」

 

「明日は確か氷倒し(アイス・ピラーズ・ブレイク)の予選だったな。お前はそれを見に行く予定はあるのか?」

 

「あー……一応見に行くつもりではあるが、ぶっちゃけ十文字先輩とか千代田先輩とか、一高(うち)から出る人らは俺のやり口と全然違うからな。フィールドがどんな感じかの確認だけ出来りゃいいから、最悪見に行かなくてもそんなに問題はないぞ」

 

「なるほど。八幡、一つ頼まれてくれるか?」

 

なんじゃらほい。

 

「CADを調整しても、使用者の精神状態が悪ければ真価は発揮できないだろう。集中させてやってくれ」

 

「蟹でも食わせとけよ」

 

「……いや、食うのに集中させてどうするんだ。演奏で試合に集中出来る精神状態にしてやってくれ」

 

「あ、そゆこと?」

 

「他に何があるんだ……」

 

うーん……精神状態(こういうの)って、緊急事態でないなら無理に弄らない方がいいんだけどなぁ。ま、いいか。

 

「男女両方か?」

 

「男子優先、可能なら女子もで頼む」

 

「任せろ、一通り調子上げといてやるよ。赤叡智使ったくらいにな」

 

やる気二段階上げである。

 

「お兄様、八幡さん……ありがとうございます。では、会長に報告して来ますね。おやすみなさい」

 

「おやすみー」

 

「ああ、おやすみ」

 

深雪が部屋を後にしてからしばらくして、俺たちは手早く風呂を済ませて就寝するのだった。




どうも、3ヶ月も放置してたカス作者です。これからギア上げて行きます。

そう言えば今は第二巻にあたる第二章なんですが、第3章は夏休み編なんですよね。とりあえず小旅行は行くとして……何しよっかな。いーちゃんと友でも出そうか。

それはそうとして2章が終わったらおまけとして『もし八幡が他の競技に出てたら』みたいな感じのやつも書こうかな。
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