魔法科高校の音使い   作:オルタナティブ

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お久しぶりです。2024年、初手の三が日からゲロみたいな事件ばかりですがいかがお過ごしでしょうか。
投稿が遅れた理由ですが、『バイト先の繁忙期』『作者が最近一次創作をなろうで本格的に始めた』というのがあります。魔法科アニメ3期の新情報も来ましたし、気長に頑張っていきたいと思います。


第二十九話

 

「ああ、比企谷八幡君。少しいいかね」

 

達也が予備のCADを持って深雪の元に戻り、俺も観客席の方へ向かおうとした時。九島烈が俺を呼び止めてきた。

 

「……どうかしましたか?」

 

「ああ、そう畏まらなくていい。楽にしてくれ」

 

「……はぁ、そんじゃお言葉に甘えて。どうしました?」

 

俺のその態度に目を剥く大会委員らを他所に、九島烈が口を開く。

 

「何、君に頼みがあってな。さっきの工作員だが、君たちや私の圧力に曝されても口を割らなかっただろう。その硬い口を割らせるために君の力を借りたい。精神干渉魔法は法の目が厳しいのでね」

 

「……なるほど。俺としてはダチの試合観に行きたいんすけど」

 

十師族からの頼み事を平然と渋る様に再び目を剥く委員達。なんなら剥きすぎて白目である。

 

無償(タダ)でやれとは言わんよ。……そうだな、()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「──────」

 

その言葉に、一瞬頭が真っ白になった。

 

「……『少女趣味(ボルトキープ)』か?」

 

「ああ。あの変態だよ」

 

うーん……こりゃマジで師匠の知り合いだなこれ。マジか、師匠こんな交流あったんだ。

 

「……そうなると、今度は俺が払う対価が足りなくなりますね。見る限り、あの工作員は恐怖で押さえつけられてる。『精神干渉によって話すという行動が出来ない』のではなく、単純に『後が怖いから話したくない』ってだけなんで精神に干渉すれば一分で吐かせられますよ。一分の仕事でそんだけの報酬支払われたら、こっちがぼったくりっすよ」

 

「……そうか。なら、工作員の尋問に加えて九校戦の後夜祭で何か演奏して貰おうか。これでどうかな?」

 

「……ま、それで良しとしますか。じゃ、ササッと吐かせますね」

 

俺はそう言って工作員の髪を掴み引き上げると、俺らの話が聞こえていたのか怯えた顔を見せる工作員。ま、ワンフレーズで充分だ。

 

「『質問に正直に答えろ』」

 

……うん、しっかりきっちりばっちり精神干渉かかったな。

 

「んじゃ、色々聞かせてもらうとしようか。お前がどれだけ拒絶しようが、お前の意思に反してお前の知る範囲で全て正直に答えちまうから安心して絶望しな」

 

俺がそう言うと、工作員の顔は青通り越して土気色通り越して真っ白になったのだった。

 

 

 

とりあえず色々聞いたところ、以下のことが解った。

 

まず、今回……というか九校戦が始まる前の時点で発生したあの事故含めて今回の九校戦で発生した一連の事件。渡辺先輩のアレや『破城槌』も全部こいつらの仕業だった。

そして、それを仕組んだ奴らの名は『無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)』。九島烈曰く、香港系の国際犯罪シンジケートらしい。んでもって犯行の理由は『資金繰り』。正確にはノルマのために九校戦の結果で賭け事(トトカルチョ)を開き、その元締めをすることで莫大な利益を得ようとしたらしい。んでもって優勝候補であり一番賭けられている一高を潰して大儲け、って算段とのこと。

 

「……なら妙な話だな。もう一高の優勝はほぼ確定だ。昨日までの妨害ならまだしも、今日妨害かけたところで全く意味ねえだろ」

 

「そ、それは……」

 

「『吐け』」

 

「──────一高の選手全員を、棄権させるため、だ」

 

「──────」

 

ぶちぶち、と工作員の頭皮から音が響く。やべ、髪引きちぎっちゃった。

 

「も、もう良いだろ!?知ってることは全部話した、許してくれ!」

 

……ふむ。

 

「嘘だな」

 

「う、嘘なんて……」

 

「確かに今まで言ったことには嘘はない。ま、俺の精神干渉技術とお前の耐性を考えりゃ嘘は言えんだろうがな」

 

「だったら……」

 

「だが、一つだけ。『()()()()()()()()()()()()』だけ嘘だろ?」

 

こちとら人間観察は特技で趣味だ。平常ならともかく、こうやって恐怖で怯えてる奴相手なら余裕で見抜ける。何なら見抜こうとせずとも自然とわかる。

 

「……そうだな、『お前が隠していることを話せ』」

 

そうして工作員が話した内容は、驚くべき内容だった。

 

「──────妨害工作が失敗した場合、『ジェネレーター』を会場で暴れさせて九校戦そのものを中止に追い込む予定だ」

 

「……九島さん、『ジェネレーター』って?」

 

「……脳外科手術と薬物の投与で意思と感情を奪い、戦闘中に魔法を安定して行使出来るように調整した生体兵器だ」

 

九島烈のその言葉に、俺は端末で時間を確認して呟く。

 

「……深雪の『ミラージ・バット』は、もう始まったか。となると直に『ジェネレーター』が来るな」

 

時間がない。大至急迎え撃たなければ。俺は工作員の顔面を全力で地面に叩きつけた後、九島烈に向かって叫ぶ。

 

「……悪いが行ってくる!」

 

「ああ、聞きたいことは聞けた。後は任せてくれ。魔法使用やそれに際しての被害に関してもこちらで説明をしておこう」

 

「あざす!」

 

俺はテントを飛び出し、走り出した。会場で暴れさせるってことは被害を大きくするために、下手に抵抗が出来る選手の待機部屋である各校の天幕は狙わないだろう。そう考えると、流れ弾でも人死にが発生しやすい観客席か死者が出た場合の影響が大きいVIP席が狙われる!

 

「……となると重要なのは、『ジェネレーター』の識別か。感情が破壊されてる以上、音使いの精神操作は効かない。なら逆説的に、音使いの精神干渉が効かない奴を探し出せばいい!」

 

走りながら微かに声を出し、すれ違う一般人に片っ端から精神干渉を行う。いない、いない、いない……ああもう、マジで余裕がねぇ!

残り時間も不明な中で近付くタイムリミットに焦りながら会場の通路を走り回っていると、突如少し離れた所から轟音が響いてきた。

 

「……これ、間に合わなかった的なやつ?」

 

……とりあえず、兎にも角にも音の元に向かおう。

 

 

 

音の発生源に辿り着くと、俺は驚いた。というのも、割とここで見るとは想定していなかった顔がそこにはあったのだ。

 

「……積雪さんに、潤さん?何でここに居るんですか」

 

「あ?いちゃわりーのかよ」

 

秒で脅すな。青のカラーボール投げんぞ。赤を中和してやろうか。

 

「昨日の時点で既に会場に来ていましたよ。私は君の試合を観に来ました」

 

「あたしは単純にお祭り騒ぎとか好きだからな。祭りでまで頭使いたくねーから魔法のシステムはどうでもいいが、青春真っ盛りの若人が火花を散らすのは観てて楽しーんだよ」

 

「さいですか……」

 

思ったよりもまともな理由で来てたよこの二人。……あ、よく見るとすぐそこにあちこちへし折られた人間が落ちてる。

 

「……あ、これか?なんか積雪(こいつ)と歩いてたら、いきなり現れて魔法使って襲いかかってきたから仕方なく魔法式を()()()()()両手足と背骨へし折ってやったんだが」

 

「……うん、こいつだ。いや、助かった」

 

「あん?」

 

「かくかくしかじかでして」

 

俺が『ジェネレーター』と『無頭竜』、今回の九校戦での事件について説明すると、潤さんはウンザリしたようなジト目に。積雪さんは同情するような目になった。

 

「うっげー。休みの日にまで面倒事に巻き込まれんのかよ」

 

「……苦労していますね、八幡君。少し前にもテロリストの日本支部を壊滅させたようですし」

 

「何で知ってんの!?」

 

アレ十文字先輩の家が手ェ回して隠蔽したはずなのに。

 

「確かに隠蔽はされていましたが、基本的には魔法関係を含めた『一般の世界』向けのもの。人の口に戸は建てられませんからね、『暴力の世界』に生きている罪口商会(われわれ)を初めとした呪い名や殺し名からすればあの程度の情報規制は意味がありません」

 

「なるほどなぁ……」

 

盲点だった。まあ『暴力の世界』の連中からすれば表の世界の情報規制とかどうでもいいし、逮捕しに来たらそいつ殺せばいい話だもんな。そりゃそうか。

 

「で、『ジェネレーター(これ)』どうするんです?」

 

「とりあえず九島さんに報告、回収──────いや」

 

そこまで言ったところで、俺は言葉を止めて通路の先に目を向ける。すると、そこからは気持ち悪いほどに無表情で、感情の音が微塵も感じられない男たちがぞろぞろと出て来た。

 

「……増援ですか」

 

「雑魚がうじゃうじゃとしつけぇな」

 

「雑魚は雑魚だから数が多いのを許されて、雑魚は数が多いから雑魚であることを許されるもんだよ」

 

「お前それヘルギフテリアン*1の前で言えんの?」

 

「……無理だな」

 

雑魚と言うには強過ぎるわアレ。

 

「ま、二人とも下がっててくれ。今回二人は観戦しに来た『客』なんだから」

 

「……いや、折角だしあたしも暴れるよ。『ミラージ・バット』も何試合か見逃してるし、鬱憤晴らさせろ」

 

「……では、私は邪魔にならないように後ろに下がっていましょうか」

 

積雪さんがそう言って後ろに下がったのを確認した後、俺と潤さんは『ジェネレーター』の大群と相対する。

 

「そんじゃ先制行くか──────AAAAAAAッッッ!!!!!

 

俺の『衝撃を与える音波』の先制攻撃が炸裂。予め耳を塞いでおいた潤さんは無事だが、『ジェネレーター』共は無防備なまま直撃。即座に両耳の鼓膜が破裂し、三半規管にダメージを与える。

 

「んじゃあたしも行くかッ!」

 

その言葉と共に、潤さんが瞬く間に肉薄。回し蹴り一発で『ジェネレーター』一体を壁にめり込ませる。……壁の方もかなり頑丈なはずなんだけどなぁ。この建物。魔法でぶち抜くならまだしも、ただの蹴りでぶち抜けるものだったっけ。そんなことを考えながらも、CADを操作。『伸地迷路(ロード・エクステンション)』で摩擦を奪うことで態勢を崩させ、ダメ押しで移動魔法で首を引きちぎり殺害する。……初めて人の形をした生き物を殺したが、そんなに罪悪感湧かねぇな。大量殺人しに来たと分かってるからか、はたまた改造で感情と思考を奪われたこいつらがもはや人ではないと無意識で考えているからか。……まあごちゃごちゃ言っても詮無きこと。潤さんを背後から不意打ちかまそうとしてるアホ『ジェネレーター』を吹き飛ばし、全方位からの加重で圧縮しぶっ殺す。そしてエリカから誕生日に貰ったサーベル型CADを握り、魔法式を構築。

 

術式装填(インストール)、『紫の女神(ネプテューヌ)』」

 

「──────『クロスコンビネーション』ッ!」

 

CADを振るい、『ジェネレーター』に四連撃を叩き込む。更に切り上げで宙に浮かせ、跳び上がっての大上段からの振り下ろしで地面に叩きつける!

 

「──────排除」

 

しかし、その言葉を洩らした後に一体の『ジェネレーター』が俺と潤さんの間をすり抜け、積雪さんへと走っていく。

 

「……あ、辞めた方が」

 

「寄りにもよって『罪口』に……」

 

──────呪い名、序列二位『罪口商会』。その行動理念は『武器商人』。

 

「……おや」

 

『ジェネレーター』が積雪さんに魔法を行使するが──────その魔法の悉くが、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()あらぬ方向へと飛んで行った。

 

「……仕方ありませんね。私自身は手荒な真似は苦手なのですが」

 

そう呟いて、積雪さんが『ジェネレーター』に歩いて接近。『ジェネレーター』は先程の事象を『対抗魔法により弾道を逸らした』と判断したのか、自身の腕に『高周波ブレード』を行使。近接攻撃で確実に殺害を果たそうとする。……が。

 

「『罪口商会』は、そういう次元じゃねぇんだよなぁ……」

 

その攻撃は全て、積雪さんが一歩たりとも動くことなく『攻撃の方から逸れていく』。突き、なぎ払い、振り下ろし、切り上げ。その一切が積雪さんを避け、届かず、髪一本、細胞一つすら傷つけられない。

 

……『罪口商会』の特性。それは『武器に究極的に愛されること』。一般的な感性を持つ人間が愛する者を傷つけたがらないように、あらゆる武器が『罪口』の人間を愛し、『罪口商会(愛する者)』を傷付けないように自ら避けていく。それは魔法という代物においても例外ではなく、あらゆる攻撃魔法が届かなくなる。……俺の『悪霊の聴覚』での感覚から見るに、『罪口商会』の人間が持つ遺伝性のBS魔法だ。正確には『保有者が武器として認識するものの干渉を遮断する』という効果。流石に俺の『千変万華卿』でも、そもそも魔法としての技術体系化が出来てないBS魔法までは模倣出来ないからなぁ。いや、出来ない訳じゃないんだけどさ。俺の『千変万華卿』は魔法式を模倣する能力だ。内容を把握する必要はないし、効果を分かってなくても猿真似くらいなら問題なく出来る。だが、人がよく分からないものに恐怖を覚えるように、俺のスタンスとして『明確な魔法式・起動式の内容とまでは行かなくとも、どの系統・無系統魔法をどのような形で連携・組み合わせて行使しているのか』を理解していない魔法は使わないようにしている。過程を理解せずに使って事故って死にかけるとか勘弁願いたいからな。

 

「……折角です。新作の実験台になってもらいましょうか」

 

積雪さんがそう言って『ジェネレーター』に足払いをかけ、倒れ込んだその背中を踏みつける。そして懐から──────えっ何それは。

 

「かつて妹が造り上げた『自殺志願(マインドレンデル)』の()()()()()、『七七七(アンラッキーセブン)』。それを元に私が完成させた、『失敗作』──────『八二三五四三(デッドリー・シン)』。試し斬りと行きましょう」

 

その一品は、背筋が凍るほどに精緻な代物だった。七対の刃の一つ一つに七枚の刃があり、更にその一枚にもっと小さな七枚の刃が備え付けられている。しかし、『芸術作品であり武器にはなり得ない』なんて露ほども思えない。武器を振るう担い手ではなく、()()()()()()()殺意を放っているかのような感覚。それを右手で握り、刃をそっと『ジェネレーター』の首筋に当て──────。

 

しゃきん。

 

そんな心地良さすら感じる金属音とともに、どさり、ごろりと音が響く。断面が露出すると同時に血が噴き出ていく。断面を見るに……うわ、血管や気管どころか脊椎までぶった切られてる。しかも椎間板の部分じゃなくてしっかり骨の部分で。見る限り刃毀れもしてないし……またとんでもない武器を作ったな。俺のそんな考えを他所に、積雪さんは『八二三五四三』を少し眺めると、残念そうに首を横に振った。

 

「……これではいけませんね。この程度では二百度ほど斬れば血脂で斬れ味を損ないます。欲を言えば()()()()()は斬れ味を落とさずに使える一品に仕上げたいのですが」

 

そう呟きながら、『八二三五四三』に付いた血を丁寧にティッシュで拭き取って懐にしまった。……アレでまだ不満なのか。

 

「……『ジェネレーター』とやらも全員殺せたことですし、私たちはそろそろお暇しましょうか。お構い無しに歩いているだけで、本来なら私も潤さんもあまり昼日向を堂々と歩ける人間ではありませんからね」

 

「そーだな。コイツら全部お前が倒したことにしていいから、あたしらのことは黙っててくれ。休みの日まで面倒事に巻き込まれたくねえ」

 

そう言って、積雪さんと潤さんは去っていった。……これどうしよ。会場の壁に蜘蛛の巣みてぇな罅入れてめり込んでるのと首ぶった斬られてるのまで俺がやったことにされても困るんだけど。……とりあえず九島さん呼ぶか。

 

 

 

九島さんの手配で後処理も終え、俺は九島さんに連れられて大会本部のVIPルームに来ていた。……わ、部屋にあるもん全部高級品だ。マジのVIPルームなんだな。いや疑ってるわけじゃねぇけどよ。

 

「ここなら早々人は寄って来ん。君の師のことを話すなら、無闇に人の多い場所で話すのはまずかろう」

 

「……配慮ありがとうございます」

 

九島さんがスタッフに暫くこの部屋に立ち入らないように指示し、第三者を排して。……『二代目少女趣味()』と『トリック・スター(九島烈)』の会話は始まった。

 

「……奴と出会ったのは、確か四年ほど前のことだった」

 

四年前……となると、俺とはもう出会ってんな。そりゃ俺を見て俺の師匠と繋げられてるんだから当たり前だけど。

 

「若い頃、国防陸軍の軍人として活動していた頃に様々な国と戦った。その中の一つの国が、数年前に刺客を送り込んできたのだ」

 

「刺客……」

 

「しかも、幼い少年少女に洗脳教育を施し……『ジェネレーター』に酷似した人間兵器としてな」

 

……『ジェネレーター』。感情を制御し、支配し、掌握する『音使い』である俺からすればあまりにも歪んで矛盾していて破綻している存在。俺が『身内至上主義』とも言えるほどに他人に興味が無いから平然としているが、きっとまともな感性を持つ人間であれば嫌悪しているだろう。

 

「その襲撃の際に居合わせたのがあの男だった。驚いたぞ、魔法師でもない一般人のはずの男が少女を爆殺しておったのだからな」

 

爆殺……ってことは、衝撃波による共振破壊か。俺も出来るし、師匠なら余裕だろ。

 

「それに目をつけて、後処理も終えた頃に接触を図った。それが奴との唯一の対面であったな」

 

「……そっすか。ま、自身の矜恃の問題で『少女しか殺さない』ってだけで、本来なら理由なく手当たり次第に人ぶっ殺したくなる『殺人鬼』ですからね。そんな師匠になんか暴れ散らして人殺そうとしてる少女なんて如何にもな大義名分与えたらそりゃ殺しますわ」

 

「うむ。まあ、奴と話したのは奴が何者なのか。後は……魔法師なのを知って、君のことを語った程度か。交流こそその一度きりだが、あのような男、忘れたくとも忘れられんよ」

 

それはそう。……で、『俺のこと』か。

 

「良ければでいいんですが……その、師匠の語った『俺のこと』って?」

 

「……何、対したことではないさ。魔法師としての素養が高い少年を弟子にしたことを教えて貰っただけだ。……ああ、後。こうも言っていたな」

 

「──────」

 

 

 

「『僕のような人間には勿体ないほどの、根の真っ直ぐな愛しい弟子だ』」

 

「とな」

 

……そうか。そう言ってたのか。……アホ師匠め。変態、重篤妄想罹患者、ロリコン。

 

──────俺からしたら、それこそ俺なんかには勿体ねぇ人だっての。純真で、純粋で、純愛の。初恋を貫き通して、恋に生きた殺人鬼。

生まれたその瞬間から『想子の音』に狂わされた俺を救ってくれて、色々なことを教えてくれた。アンタに救われた俺からすれば、貴方こそが──────。

 

……いや、辞めよう。これは俺の胸の裡にしまっておくものだ。軽々しく思い浮かべていいものでもなく、口に出すなんて以ての外だ。……まあ、師匠が生きている内にこの言葉を伝えられなかったのだけは心残りか。

 

「……ありがとうございます、九島老師」

 

「そう畏まらんでも良い。奴に命を救われた恩を、奴の言葉を君に伝えるという形で返しただけだ」

 

備え付けのモニターでは、『飛行魔法』を使った深雪が『ミラージ・バット』決勝を勝利、優勝という形で制していた。

 

 

 

「……今回はありがとうございました。何つーか……師匠が死んだのも受け入れてたと思ってたんすけど、理解してただけでまだ納得出来てはいなかったみたいです」

 

「無理もない。既に魔法師として戦いに赴き、命の奪い合いに身を投じている『一条将輝(クリムゾン・プリンス)』のようなタイプならまだしも、今日初めて人を殺したくらいに死と縁遠かったのだ」

 

そう言った後、改めて先程のことについて念押ししてくる。

 

「……先程の尋問で知ったことは、無闇に人に話すことでない。それは理解しているだろうが、念押しだけしておく」

 

「分かってますよ。こんなもんバラしたら大混乱間違いなしです」

 

「なら良い。後夜祭の演奏、楽しみにしておるぞ」

 

その言葉を最後に、俺と九島烈の交流は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っつーわけで今回の一連の事件は『無頭竜』って奴らの仕業らしいぞ」

 

「お前人に話すなって言われたんじゃないのか?」

 

まあ秒で達也にバラしたが。師匠についてのことは除いて、工作員に吐かせた内容を全部達也に伝えておいた。

 

「言われたのは『無闇に人に話すな』だ。俺はちゃんと誰に話すか考慮して熟慮した末にお前なら大丈夫だろってことで話した」

 

「最悪過ぎるだろこいつ……」

 

俺と達也の泊まっている部屋にて、達也が頭を抱える。どうしたんだろうか(すっとぼけ)。

 

「……俺は『ジェネレーター』皆殺しにしてスッキリしたからな。ここから先は『お前の喧嘩』だ」

 

「……俺の喧嘩、か」

 

「ああ。俺はもう手出しするつもりはないが、この情報を手に入れたお前がどうするかはお前の勝手だ。ま、人手が欲しかったら言えよ。力貸すぜ。んじゃ俺は晩飯食ってくるわー」

 

俺はそう言って部屋を出るのだった。今日の晩飯何かなーっと。

*1
特撮ドラマ『仮面ライダーリバイス』に登場する怪人。主役ライダーの最強フォームであるアルティメットリバイスには敵わなかったが、サブライダーの中間フォームであるホーリーライブを一撃で変身解除に追い込むほどの力がある。終盤で大群で仮面ライダーたちと戦った。




哀川潤
『戯言シリーズ』に登場。作中最強。作者はこのキャラクターについて「いくら盛っても良い」と思っている。本人談の『魔法式を殴り壊した』発言だが、やってることは基本的に『接触型術式解体』のそれ。実は、曲識の遺言で八幡の後見人を務めている。ただしたまに顔出して元気かどうか確認して、ついでに依頼に巻き込んであちこち荒らしている程度。八幡を助けるようなことはよっぽどの自体にならなければしないようにしている。
司波達也と本気で殺し合った場合、無意識とはいえ『接触型術式解体』が出来るので達也を二十四時間ぶっ続けで殴り殺せれば勝てるし、その前に『分解』を喰らったら負ける。ただそれはそうとして何だかんだで哀川潤なら『分解』食らっても復活して勝ちそうな気もする。

本編オリジナル設定
呪い名序列二位『罪口商会』の特性『武器に愛され、武器から傷付けられない』は罪口商会の遺伝性BS魔法。正確な効果としては『保有者が武器として認識している道具・手段による干渉を遮断する』というもの。そのため攻撃性の魔法すらも『罪口商会』の人間を傷つけることは出来ないが、『裏切同盟』の一人である罪口摘菜が『人間失格』零崎人識に殺害されたように、『MIDフィールド』のような『殺傷能力等を持ち合わせているが攻撃系ではない』魔法であれば危害を加えられる。

比企谷八幡のスタンス
模倣だけなら聴けば出来るが、BS魔法など『正確な仕組みを理解していない魔法』は模倣はしても余程のことが無ければ使わない。
例として、『ニブルヘイム』を模倣した場合、その魔法の性質としては振動・減速により領域内の分子運動を抑制しあらゆる物体を比熱や(フェーズ)を考慮せず均一に冷却するものだが、『千変万華卿』はその性質を問わずに魔法式をコピーする。そのため比企谷八幡は『旋律』として魔法式の情報を獲得出来るが、比企谷八幡が『ニブルヘイムは振動・減速の系統魔法で分子運動に干渉して物体を冷却する魔法』であると理解するまでは使用しない。これは単純に『結果だけではなく仕組みまで知ってから使うべき』というスタンスによるものであり、そのため比企谷八幡はある程度魔法分析学も重視している。なお一番手っ取り早いのは達也に『精霊の眼』で情報丸々理解させて説明してもらうこと。分かりやすく言えば「使うだけなら操作マニュアル見ればいいけどなんかバグった時が怖いから仕組みとかの説明書も読むべきだよな」という考え。

オリジナル魔法・武器

術式装填(インストール)紫の女神(ネプテューヌ)
どこぞの超次元の主人公な女神の技を擬似再現する状態。ガチの女神化は出来ないが、技の再現は「ハード」系のような物理法則どころじゃないもの以外は大体可能。

八二三五四三(デッドリー・シン)
妹が製作した『七七七(アンラッキーセブン)』を元に積雪が製作したシュレッダー鋏。積雪が手ずから鍛造した鋼鉄を材料に丁寧に研磨されており、そこらの鉄程度なら容易く斬り裂くほどの切れ味を持つ。一つの刃に七枚の小さな刃が、さらにその中の一つの刃にさらに小さな七枚の刃が……と、『精巧な芸術作品』とも言えるほどの構造により人間の骨肉を砕き斬る殺傷力をもたらす。名前の元は『七つの大罪』と『七の七乗』。



ちなみに八幡が達也に『無頭竜』のことを伝えましたが、一連の事件の犯人が『無頭竜』である確信を得ただけで時系列的にはこの後小野遥によって『無頭竜』のアジトと構成員のデータを貰うので実は殆ど意味がなかったりします。悲しいね。

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