魔法科高校の音使い   作:オルタナティブ

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九校戦編最終回です。


第三十一話

次の日の朝。小町を見送った後、俺たちは本来なら帰るためにバス前で点呼を取るのだが……俺だけはある人に呼ばれてある場所に来ていた。ちなみに小町曰く『彼女さん期待してるよー!』だと。シバくぞ。

 

「うーっす」

 

「ああ、来たかね」

 

俺がやって来た場所──────それは、俺たちが泊まったホテルのロイヤルスイートルーム。……まあ要はダントツでお高い部屋だ。

そして俺を呼んだのは、他でもない九島烈だった。

 

「なる早で済ませてくださいよ。会長とかに頭下げてこっそり抜け出してきたんスから」

 

「何、時間は取らんさ。一つ君にお願いしたいことがあってね」

 

……俺に頼み事?そりゃまたなんつーか……。

 

「……俺じゃなくても良くね?」

 

「いやいや、君に頼むのが一番早いのだよ。何せ君以外だと少々手間だし……何より時間がかかる。長期的に見てはいるが、早いに越したことはない内容でね」

 

「ふーん……で、内容は?」

 

俺がそう聞くと、九島烈は少し悩ましげにしながらも俺への頼み事を明かしたのだった。

 

「───────────────」

 

「……なるほどね。そりゃ確かに俺がやるのが一番早い」

 

「───────────────」

 

「……いや、それはこっちでどうにかしよう。それくらいなら懐もそこまで痛まないからな。代わりと言っちゃなんだが……」

 

俺に『仮装行列(パレード)』を見せてくれ

 

「……………………………さすがに厳しいのだが」

 

……まあ俺の要求も大概だからなあ。仕方ないか。

 

「じゃあそれに加えて……俺への貸し一つでどうよ」

 

「……五つだな」

 

「……二つで!」

 

「五つだ」

 

「三つ!」

 

「……仕方ない、四つでどうだ」

 

……まあそれが妥協点か。

 

「んじゃ四つで。じゃ、悪いけど早速頼むぜ」

 

その言葉と共に、俺は九島烈からの『依頼』の『対価』を受け取るのだった。

 

 

 

俺がバスに戻ると、どうやら後は俺が来るだけだったらしい。会長から説教を受けた。受けたのだが……。

 

「ねえ八幡くん、聞いてる?」

 

「どうでもいいんすけどその説教ポルノグラフィティの『アゲハ蝶』のイントロより短いっすか?俺早く座席につきたいんですけど」

 

ぶん殴られた。とりあえず拳を額で受け止めたことで悶絶する先輩を横目に席につきバスが発進。発進して暫くしてから、ふと雫が話しかけてきた。

 

「……何かあったの?」

 

「ん……まあな」

 

結構長引くタイプの頼み事されちゃったしな。マジでどうしよう。

 

「何かあったら言ってね。手伝うよ」

 

「あー……うん。俺としては巻き込みたくないが俺の頭の問題で巻き込むことになるかもしれん。ただ間違いなく『話を通して了承を得て』からになるのでいきなり巻き込むとかは絶対にないから安心してくれ」

 

……マジでどーすっかな。俺一人だと普通に限界がある案件だからなぁ。

 

「……そっか。まあ、それまで待ってるよ」

 

「おう、サンキュな。……まあ、今月中に『それかあ~~~~~』となるとは思うが」

 

「本当に何をする気なの?」

 

長引く面倒なことです。

 

 

 

暫くバスに揺られていると、雫がふと欠伸をした。

 

「……ふわ、あ……」

 

「……どうした、眠いのか?」

 

昨日は割と疲れるようなイベントはなかったと思うが。

 

「昨日は後夜祭の演奏で興奮してたからね……大分夜更かししちゃった」

 

俺のせいだった。……そういや、テンションぶち上げるだけ上げて『下げる』『落ち着かせる』とかはしてなかったな。そりゃテンションも戻らないままだわ。興奮状態だと眠気とか来ねえもんな。

 

「ッスーーーーー……」

 

「……で、皆を散々寝不足にしたくせに一人だけぐっすり眠ったらしい八幡は何をしてくれるの?」

 

「固くて申し訳ありませんが(わたくし)めの膝をお使いください雫様……なのでどうか愚かな私のやらかしについてはどうか他言なされぬよう……」

 

バッグから寝巻きを取り出し、適当に巻いて枕代わりにして膝に乗せる。

 

「よろしい。じゃあおやすみ」

 

「ごゆっくりお休みくださいませお嬢様……」

 

俺は雫様に膝を差し出すのであった。

そしてしばらくすると、談笑していた深雪と光井が俺と雫様に話を振ろうと振り返ってこちらを向き……愚かで情けない私めとその膝で眠る雫様を視界に入れた。

 

「……あれ、雫寝ちゃったの?」

 

「ああ。だからちょっと声のボリューム抑えめで頼む」

 

「わかりました。……にしても、こうして見るとお似合いですね」

 

「何がだよ」

 

「仲良さげで……何も知らなければ恋人に見えますよ?」

 

恋人、ねぇ……。

 

「ないない、俺みてーなクズがつり合う相手じゃねえよ」

 

もっとマトモなやつ探した方がいいって。

 

「いやまあ確かに比企谷くんはろくでもないけど……そこまで卑下する必要もないと思うけどなぁ」

 

ああろくでもないのは認めちゃうんだ。いやまあ別にいいけど。

 

「……ところで、雫が枕にしてるその紺色のモコモコって何?クッションか何か?」

 

「いや、俺の寝巻きを丸めたやつ。これ着て寝ると寝心地いいんだよ」

 

「あー、あの妖怪サメパジャマ」

 

「妖怪サメパジャマ!?」

 

なんつー言い草だテメェ。

 

「今回の九校戦の参加者の間で噂になってたよ、ホテルを彷徨う謎の二足歩行のサメがいるって」

 

「二足歩行のサメ」

 

どんなバケモンだよそれ。いや俺なんだけど。

 

「三高の一条君と吉祥寺君が襲われたとか夜な夜な人を食い荒らしてるとか鉢合わせると死ぬとか後ろ姿を見ただけで成功で1D10、失敗で1D100のSANチェックをする羽目になるとか」

 

「俺ァどこの旧支配者だ」

 

凡そ人に対する扱いじゃねえぞオイ。どうなってんだ。

 

「……本当に殺ってたりしないよね?」

 

「やるかバカ」

 

本当に俺をなんだと思ってるんだお前らは。

 

「……雫も寝ちゃってるし、静かに何か遊ぶ?」

 

「俺トランプ持ってるよ。やる?」

 

「何で持ってるのよ……」

 

「友達と何かするとか初めてで……結局忙しくて一度も鞄から出さずに終わったから……」

 

「何で友達との交流とかその方面でだけ幼児になるの?」

 

誰が幼児だ。ちゃんと16歳だわ。

 

「……例えば雫が通り魔に襲われました。どうする?」

 

「殺す」

 

「θが60°の時のsin,cos,tanの値は?」

 

「√3/2,1/2,√3」

 

「じゃあ友達とお泊まり会をしました。夜は何する?」

 

「スナック菓子と業務用アイス食べてパーティゲーム」

 

「やっぱりここだけ幼児なんだよね……」

 

「友達居ないのを拗らせるとこうなるのかしら……」

 

「聞こえてんぞ」

 

失礼だな君たち。

 

「別にいーんだよ、昔がどうだろうと。今はお前らが友達(ダチ)だし」

 

「……そういうところズルいわよね」

 

「普段死ぬほどふざけてる人がさりげなく言う破壊力ったらないよ。私今ギャップ萌えの何たるかを理解したもん」

 

俺に萌えを見出すな。

 

「じゃあ、八幡が持ってきたトランプで遊びましょうか。ババ抜きでいいわよね?」

 

「ボッコボコにしてやんよ」

 

「血祭りに上げるね」

 

「ほのかまで汚染されてる?」

 

 

 

「……ん、ん……」

 

目が覚めると、もふもふの感触。……あ、そうだ。八幡の膝で寝てたんだった。身体を起こし、今バスはどの辺りだろうと周りを見回し……半泣きのほのかが目に入った。

 

「雫~~~!」

 

「……何があったの?」

 

目を八幡と深雪に向ける。深雪は申し訳なさそうに、八幡は楽しげに言葉を返してきた。

 

「いや、雫が寝てる間に3人でトランプしてたのよ」

 

「そしたら光井が馬鹿みてえに弱くて」

 

「あー……ほのか、結構顔に出るからなぁ」

 

なになに……ババ抜き5連敗、七並べ4連敗、大富豪6敗。……なるほど。

 

「雫……私の仇を取って」

 

「仇とか言われても、ポーカーフェイスの欠けらも無い光井が悪いと思うんすよ。負ける方が難しいレベル」

 

「偶にわざと手を抜いて勝たせようとしてもシンプルに間違ったカード引いて行って勝手に負けるのよ」

 

「俺が見た中だとマ~~~~~ジで最弱」

 

手心って知ってるのかなこの2人。

 

「……仕方ない。ほのか、任せて。仇は必ず討つ」

 

「やべぇな深雪、俺ら殺されるかもしれん」

 

 

 

……深雪には何とか勝てた。勝てたんだけど……。

 

「俺の勝ち」

 

「何でそんな強いの?今までトランプて遊ぶ相手なんていなかったのに」

 

「なあ何で今刺した?何で今不意打ちで言葉のミサイル撃ち込んで来たの?」

 

「……一応聞くけど、音での暗示とか催眠とかの反則はしてませんよね?」

 

「お前らには使ってねーよ」

 

「……お前ら()()?」

 

「あやっべ」

 

「……結局何してたの」

 

「……自己暗示で無表情に固定してました……マジでそれだけです……光井のボロ負けに関しては俺関係なくシンプルに光井が雑魚なだけです……」

 

……なるほど。

 

「とりあえず一人一発ずつ殴っとこうか」

 

「お慈悲を!!!!!」

 

慈悲はなかった。

 

 

 

「ようやく東京に帰って来れ……どうしたんだ八幡」

 

「いや……何でもねえっす……」

 

3人にシバかれて微妙にボロボロな俺。それを見て達也が困惑するも、俺の後ろの3人を見て黙り込んだ。

 

「……まあ、お前が何かやらかしたんだろう」

 

正解。まあそれはさておき、改めて点呼を取り全員が揃って東京に戻ってこれたのを確認して解散。俺たちは各々帰路につくのだった。そんな中、達也が声をかけてきた。

 

「……八幡、明日暇か?」

 

「ん?あー……暇だな。何かあったのか?」

 

「いや何、お前の誕生日に贈るものが持って来れなかったからな。明日にでも渡そうと思って」

 

「別にいーんだけどな、祝ってもらっただけでありがてえし……」

 

「まあそう言うな。結構面白いものを手に入れたんだ」

 

……面白いもの、ね。ちょっと興味が出てきた。

 

「オーケー、明日空けとくよ。待ち合わせ場所とかはあるか?」

 

「ああ、それなら……そうだな。少し遠いんだが、──────って所で明日の午前11時で待ち合わせだ。大丈夫そうか?」

 

……ここから大体公共交通機関乗り継いで2時間前後ってとこか。まあいいか。

 

「おう、じゃあ明日11時に。またな、達也、深雪」

 

「ああ、また明日」

 

「また明日」

 

俺たちはそう言って別れ、各々の家へと向かうのだった。

 

 

 

第二章 九校戦編 ビートハートビートの激闘

 

──────これにて閉幕




というわけで九校戦編はこれで終わりです。帰るだけなのでそこまで長くはなりませんでした。

今回の章でプッシュしたことは『魔法師としての八幡の強さ』です。
ブランシュとの戦闘を描く『入学編』では魔法師ではない『音楽家の』、『音使い』としての八幡の力量を描いたので、次の『九校戦編』では『魔法師としての強さ・技術』を重視しました。なので実は競技では『音使いの精神干渉・波動による物理攻撃』は全く使っていません。『原初の咆哮(プリミティブ・ロアー)』も『人が恐怖・不快感を覚える不協和音の放出』を『魔法で増幅しただけ』ですし、氷倒し決勝でもやったのは『ブラフによる極わずかな思考停止』による時間稼ぎだけ、マジで音使いの技術なしで『氷倒し』と『モノリス・コード』優勝を収めています。
そして次回から始まる新章『夏休み編』で全面に出すのは『交流』です。
司波兄妹や将輝と真紅郎、雪ノ下や葉山といった知人との交流と僅かなおふざけをメインにした、章単位でのちょっとした箸休め回になります。

それでは、また次回。

──────夏休み。九校戦にて二つの競技で優勝を収めた八幡は、何の気兼ねもなく一ヶ月弱の休みを謳歌することを心に決めていた。

「お前それを俺に寄越すのはいいと思ってんのかよ」

だがしかし、事前の口約束によりねじ込まれる予定。

「うっす」

「──────」

「あ、倒れた」

石川に行ったり赤いのに拉致られたり大忙し、休まる暇もない。

「ったく、せっかくの夏休みなんだぞ。ゆっくりさせてくれっての」

「まあまあ、そう言ってられないだろう?」

同窓会にプライベートビーチ、楽しくも穏やかでない日常。

「それでもまあ──────悪かねえな」

この夏、比企谷八幡の史上最も濃密な夏休みが始まる──────!

魔法科高校の音使い 第三章 夏休み編
デイ・ホーリー・デイの日常

「なあ二人とも、ちょっと──────ってのをやるんだけど参加する?」

「やろう」

「乗った」

近日公開。
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