魔法科高校の音使い   作:オルタナティブ

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バイク初運転です。正直スペックバカ盛りしてますが、やっぱりバイクなので移動用とか各章終盤の大ボスとの決戦でしか使えないし使わないような過剰スペックなので大丈夫です。大丈夫か?本当に?


第三十四話

達也を一発蹴り飛ばした後、俺は『三つ首の神喰狼(ケルベ・フェンリル)』と共に第三課敷地内にある広場のような場所に来ていた。牛山さん曰く、ここは室内だと使いづらいものとかの試運転をする際に使うらしい。万が一CADが不調を起こした時のためにライダースーツとヘルメットをお借りし装着、そして『三つ首の神喰狼』……名前長いな。とりあえず略して『リル』としておこう。『リル』に跨る。少し離れた所には研究員の方々が待機しており、万が一事故が発生した時の対処魔法の用意や記録の観測のための装置などを抱えている。

 

「比企谷八幡、準備OKです」

 

『あいよ、じゃあ想子を流して起動してみてください』

 

耳につけたインカムから牛山さんの声が聞こえてくる。俺はその言葉に従い『リル』のハンドルを握り、グリップ横のスイッチを押し込み想子を流す。

 

「……思ったより想子を吸われるな」

 

……ちょっと絞るか。というわけで想子の流出を意図的に下げ、必要な分のみを流し込むようにする。

 

『違和感はありませんか?』

 

「んー……今んとこは無ェっすね。思ったより消費が大きいですが、これは初めて使うからですし。慣れれば自然回復の自己補完で完結出来る範囲かと」

 

『なるほど、ありがとうございます。じゃあまずはシンプルに運転だけしてみましょうか』

 

その言葉に従い、ハンドルを捻る。それにより車両用加速術式──────わざわざこのためだけに開発したらしい──────が起動、タイヤが回転を始め『リル』が前進し始める。と言っても今はあくまで試運転、そこまで速度は出していない。……精々時速10kmといったところだろう。

 

『テツ、ジャイロ力増幅の魔法は?』

 

『ちゃんと起動してます。これなら『術式解体(グラム・デモリッション)』でも飛んでこない限り転倒は起きないでしょう』

 

『術式解体』が飛んでくるってどんな状況だよ。

 

『良し。じゃあ比企谷さん、そのまま加速していってくれ。その車両用加速術式は()()()()()()()()()じゃなくて()()()()()()()()()()()だから、一気にやるとハンドルを取られる。ジャイロ力増幅でコケはしないが、念の為気をつけて』

 

「うっす」

 

そう言って、更にハンドルを捻る。少しおっかなびっくりな操作だが問題なく作動し、更なる加速が行われる。当然『ループ・キャスト』が採用されており、ハンドルが捻られる度に行使中の魔法が解除、出力だけが変更され継続行使されているし……出力変動はハンドルの回転角を参照しているから、自分で加速度の演算定義をする必要がないので脳への負担もほとんどないのがありがたい。

 

「……うん、何となく慣れてきた」

 

更に捻り、一気に加速!ジャイロ力を調整し姿勢制御、 更に障壁魔法を曲線を描くように展開することでジャンプ台を構築。それに乗り上げ、車体ごと跳躍し空中で縦軸と横軸で同時回転、ハリウッド映画のカースタントも顔負けのアクションを行う!

 

『上機嫌だな』

 

「達也……さっき思いっきり蹴ったのに何でピンピンしてんだよ」

 

『外傷がないだけで消化器が衝撃でシェイクされて普通に気分悪いが』

 

「お前がふざけたこと言うのが悪いんだよな……」

 

まあいいや。で、次は何すればいいんだ?

 

『走行機能は問題ない……なんで、今度は他の魔法を問題なく使えるかの確認ですな。……そうだな。お嬢、お願いできますか?あのバカども、取れるデータに熱中しすぎて多分頼んでも手につかねえんで』

 

『いいですよ、お任せください』

 

その言葉と共に深雪が一歩前に踏み出すと、空中に無数の魔法式が展開される。……いきなり大量の同時展開かあ。

 

「っし、来い!」

 

『では……行きます!』

 

「障壁魔法、展開!」

 

その言葉と同時に、俺と『リル』の周囲に半球(ドーム)型の障壁が展開される。飛来する『ドライ・ブリザード(亜音速のドライアイス弾)』は障壁に炸裂しては弾かれ、周囲に落ちては定義破綻と改変の終了により霧散していく。

 

「何万発撃ち込まれてもビクともしねえよピッピロピ~~~~~~~~~」

 

『お兄様』

 

『『術式解体(グラム・デモリッション)』』

 

次の瞬間、障壁が消し飛ばされた。

 

「おああああああああああっ!?!?!?」

 

咄嗟に外敵迎撃用として登録されている凍結魔法を行使し、弾丸の運動エネルギーを抑制、減衰させて『ドライ・ブリザード』が俺に届くことなく地面に落ちるようにする。あっぶね……。

 

「何すんだ達也ァ!」

 

『深雪の頼みだからな』

 

「限度があんだよ!っ、『エリア・ブレイズ』!『コールド・エンド』!」

 

小規模の爆発で弾丸を吹き飛ばし、凍結魔法で残った弾丸を停止させる。

 

『そのまま運転、迎撃魔法との並行使用を試してみてください』

 

「見えてます?この状況見えてます?」

 

発進するけど。ハンドルを捻り加速。それに合わせて『進路を塞ぐ弾丸』『体勢を崩そうとする弾丸』『車体そのものを狙う弾丸』『それらから意識を逸らすために()()()()()()()()()()()()()()()()弾丸』が入り交じって飛んでくる。

俺は射出位置と角度からそれら全てを見極め、進路を塞ぐ弾丸を吹き飛ばし、体勢を崩す弾丸を躱し、車体を狙う弾丸を障壁魔法で阻み、当たらない弾丸は全て無視する。

 

『それでは……()()()()()()()()()()()()()()、行ってみましょうか』

 

「は?」

 

そう呟いた瞬間、周囲が暗くなる。咄嗟に上を向くと……目測で直径2mはありそうな、巨大な氷塊があった。

 

「あの……深雪さん?」

 

『何でしょうか』

 

「もしかしなくても怒っていらっしゃいます?」

 

『そんなまさか。でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()のでしょう?』

 

「ぐう怒っとるやんけ草も生えんわ」

 

『それでは射出(シュート)♪』

 

「ああああああああっ!?!?!?」

 

すぐさま迎撃……あ、ダメだ。デカすぎて運動エネルギーが半端ない。『エリア・ブレイズ』で吹き飛ばそうとしても力負けするし、万が一拮抗出来ても変に予測できない方向に飛んだら悲惨だ。『コールド・エンド』に至っては重力加速度によって運動エネルギーが補充され続けるから無意味。うーん死んだかもしれん。

 

「まあどうにかするが」

 

前輪を持ち上げウィリーの姿勢に。その状態で車体を回転させ、車体前部の狼の頭部の意匠を氷塊に向ける。よし、借りるぞ雫!

 

「『フォノンメーザー』ッ!」

 

この狼の頭部型のユニットは、レーザーとかの遠距離攻撃魔法の砲身にもなっている。まあハンドルと前輪の車軸の回転の都合上、前方120°~150°くらいが砲門向けられる限界だけど。放たれた熱線は氷塊を貫き、その熱で内部から吹き飛ばす。あっ破片飛んできた。仕方ないので今度は逆ウィリー。後輪を持ち上げて、排気のマフラー──────なおそもそもの話魔法で動くので本来ならマフラーなど必要ない──────を破片に向ける。

 

「『バースト・テイル』!」

 

その言葉の後、マフラーから大量の炎が噴き上がり氷の破片を瞬く間に溶かしていく。そうして一通りヤバい方向に飛んでいきそうな弾丸を消し飛ばしたところで機能実験は終了。俺の精神へのフィードバックがないかやCADに異常がないかの検査が入ったのだった。

 

 

 

「検査終了、比企谷さんにもCADにも異常は見られませんでしたよ」

 

違和感とかはなかったし問題ないとは思ってたが、こうしてちゃんと専門家(スペシャリスト)に太鼓判を押されたら肩の荷が降りるもの。少し安堵した俺に、改まった様子で牛山さんが話しかけてきた。

 

「……それでは、比企谷さん。一つ商売……契約の話なんですが」

 

契約?なんじゃらほい。

 

「実は今人手不足でしてね。うちのCADのテスターをして欲しいんでさあ。給料は……とりあえず名目上『三つ首の神喰狼』譲渡の代金として天引きするんで向こう一年はこれくらい、んでその後はこんなモンですかね」

 

……マジか。差っ引かれてなお東京の最低賃金の2倍くらいあるぞ。差っ引きが消えれば更にその3倍か。どうなってんだこれ。

 

「実は『三つ首の神喰狼』の起動に失敗してうちの元々居たテスターの大半が入院してまして」

 

「そんなヤバいの使ってたの俺?こっわ」

 

その事前連絡もっと早く欲しかったかな。

 

「トンチキCAD作っても問題なく使えそうだし、何なら坊ちゃんから聞きましたが自分で魔法の開発も出来るみたいじゃないですか。引き込むメリットがデカそうだと判断した次第です」

 

「まずトンチキCAD作るのやめろや」

 

採算度外視にも限度ってものがあるんスよ。

 

「うーん……要はバイトか」

 

 

 

 

 

よろしくお願いしまーす!!!!!

 

「というわけで、これからテスターのバイトとして参加する比企谷八幡です。改めて宜しくお願いします」

 

牛山さんとの握手と共に迎え入れられ、早速『リル』の使用感についての確認が始まった。

 

「八幡、使い勝手はどうだった?」

 

「んー……問題なし。かなり使いやすかったぞ」

 

『パラレル・キャスト』前提ではあったけどな。

 

「なるほどな……ありがとう、結構いいデータが取れたみたいだ」

 

「あ、でも一つだけ不満があるんだけど」

 

「……内容は?」

 

「俺九校戦で十文字先輩の魔法聴いて模倣(コピ)ったんだよね」

 

「ああもう大体察した」

 

「今入れてる障壁魔法抜いて『ファランクス』にしようぜ」

 

「採用」

 

楽しげに『リル』に搭載する魔法式について話し合う俺と達也、研究員の姿を、深雪が微笑ましく見守るのだった。




三つ首の神喰狼(ケルベ・フェンリル)
この度無事(?)八幡の愛車になったモンスターバイク。
第三課の研究員曰く『我らがお姫様』『愛し子』『最高最凶傑作』『鋼鉄の厄災』。あくまで迎撃などの自衛前提の魔法を多く搭載しているが、ガチの殲滅・侵略用編成にした場合搭乗者次第では空母とかとタメを張れる。そんなもん作るな。
実は『パラレル・キャスト』をフルスペックの行使に要求している通り、『三つ首の神喰狼』そのものが複数のCADを合体・連動行使することで動作する代物。他のテスターがダウンしたのはシンプルに無理やり動かそうとしてキャパオーバーを引き起こし脳が軽く焼けたため。2ヶ月後には普通に復帰してきた模様。
また、ロマンドカ盛り構成にしたことで通常の『バイクモード』以外にも形態が存在する。ここまで来るとそもそも使用者が存在する前提で作ったのか疑わしくなってくる。
カタログスペックは以下の通り。
タイプグレード:Four Leaves Magic EXtra HIGHWAY
モデルチェンジ区分:汎用型CAD・特別限定フルカスタム
仕様:単独対軍侵攻用戦術級二輪車*1
全長:2375mm
全幅:942mm
全高:1450mm
ホイールベース*2:1650mm
最低地上高:120mm
シート高:825mm
車両重量:280kg
乗車定員:2名
サイドカー:接続可能
気筒:8
排気量*3:5042cc
最高速度:1200km/h*4
登録魔法式
二輪移動用加速魔法*5
横転防止用ジャイロ力増幅魔法
接触事故防止・移動経路確保用防壁魔法→防壁魔法『ファランクス』
外敵迎撃用射撃魔法『ドライ・ブリザード』
外敵迎撃用焼却魔法『エリア・ブレイズ』*6
外敵迎撃用凍結停滞魔法『コールド・エンド』*7
前方攻撃用超音波照射魔法『フォノンメーザー』
後方迎撃用火炎放射魔法『バースト・テイル』*8
その他快適に運転するための外気温操作魔法や雨を弾く防水反射魔法、路面が水浸しになっていたり凍結していても安定して運転するための魔法や風に煽られることを防ぐための風向操作魔法に迎撃・自発攻撃・防御・加速など数百の魔法

というわけでバイク回はこれで終わりです。次回一度イベントを挟んでから一条家回に入ります。

*1
八幡らの悪ノリにより記録されている起動式が凶悪になった結果、一般車両どころか軍事用の車両も真っ青なクソやばになってしまった。一応名目上は一般用移動二輪車。嘘つけ。

*2
前輪軸と後輪軸の距離

*3
魔法で動作するため排気ガスというもの自体が存在しないが、『仮面ライダーW』のマシン『ハードボイルダー スタートダッシュモード』ばりに気筒から炎を噴射しての攻撃や加速が可能なため暫定的に記載する。

*4
それ以上の速度を出すとシンプルに車体が耐え切れず自壊するため。硬化魔法などで補強した場合はそれ以上の速度も出せる。

*5
タイヤの回転速度を増幅させる魔法であり、その性質上干渉する範囲が車両全体ではなくタイヤの軸に限定されるため通常の加速魔法よりも消費が少ないようになっている。

*6
指定範囲内の気体に干渉し、範囲内の酸素量を意図的に低下させた状態で発火、小さな炎を生み出してそこに低下させた酸素量を逆転させ、大量の酸素を圧縮流入させることで人工的に小規模のバックドラフト現象を引き起こす魔法。当初は擬似的な燃料気化爆発(サーモバリック)を引き起こそうとしていたが『あくまで迎撃用なのにこの火力はさすがに不味くない?』という一言によりこちらに落ち着いた。別に全然落ち着いてないしそこのリミッターを思いつくなら初めからこんなもん作るなとは八幡の談。

*7
分子運動の減衰により運動エネルギーを抑制することで、飛び道具を無効化する魔法。

*8
車両後部のマフラーから火炎放射を放つ魔法。走りながら使用することで当て逃げならぬ焼き逃げが出来る。最悪か?

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