魔法科高校の音使い   作:オルタナティブ

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一条家お泊まり回です。数話続きます。


第三十六話

「えーっと……このあたりで待ち合わせだったか」

 

俺は達也から貰った『リル』を早速かっ飛ばし、東京から遠く離れて石川にまで来ていた。

 

「……あ、いた。おーい」

 

俺がそう声を掛けると、待ち合わせ場所にいた2人の青年が振り向く。

 

「お、八幡。長旅お疲れ待てなんだそのバイク

 

やっぱツッコミ入れたくなるよなこれ。

 

「まあちょっとな」

 

「その『ちょっと』が凄く気になるんですが……」

 

「……まあいい。さて、改めて」

 

 

 

「ようこそ、一条家へ」

 

そう、俺は九校戦の際にした約束で石川に……正確には将輝の家、一条家に遊びに来ていた。

遊びに来たのだが──────。

 

 

 

「さて、比企谷君。歓迎したいのはやまやまなのだが……まず話をしよう」

 

初手尋問マジ?

 

「おい将輝」

 

「おう」

 

「なんだこれ」

 

「パクリの詰問」

 

理解。俺が一条家の『爆裂』パクったからそれについての案件ね。

 

「困ったな、俺が悪いみたいじゃん」

 

「『みたい』も何も普通にお前が悪いが」

 

「貴方やってることどれだけとんでもないか分かってます?」

 

そこまで言うかお前ら。

 

「コピー能力持ちって技の練度がどうしても本家より劣るのを複数の複合で補うから存在を許されるのであって、発動速度とか本家越えの代物にした上で組み合わせで攻めてくるのクソゲー過ぎるんだよ」

 

「お前それ星のカービィの前で言えんの?」

 

「アレコピーの究極系だから例外」

 

「カービィ64で二種類のコピー複合出来んの超楽しかったよな」

 

「それには心から同意するけど今その話主題じゃねえんだ。良いから俺の親父に詰められろ」

 

(´・ω・`)そんなー。

 

「では改めて。一条家当主をしている、一条剛毅だ」

 

「ご丁寧にどうもありがとうございます、比企谷八幡です。しがない音楽家をやってます」

 

「将輝から話は聞いているとも。『俺に並ぶ新たな戦友(ライバル)』だとね」

 

「えっ」

 

「何だよ八幡」

 

「戦友って言われても……九校戦で俺に二敗した雑魚魔法師が?」

 

「おい殺すぞ」

 

「ごめん冗談冗談。ちゃんと俺も将輝と真紅郎のことダチだと思ってるって。ゆーあんどあい、ふれーんず」

 

わざとたどたどしい日本語訛りの英語で言われたことで、俺に割と本気のグーパンと蹴りを入れてくる2人。それを咳払いで途切れさせ、一条さんが話を続けてくる。

 

「……で、その将輝曰く『爆裂』を模倣したらしいが……」

 

「え?あー……まあ使えるっちゃ使えますよ。干渉力の問題で将輝ほどの威力は出ねーでしょうけど*1

 

「む……そうか」

 

「ああ、そんな気にせんでください」

 

「お前が原因だけどな」

 

「将輝シャラップ。そっすね……ああ、じゃあ契約とかします?『テロなどの緊急事態や、自己の命に危機が迫っている状況以外での『爆裂』の使用を禁ずる』とか」

 

「……良いのか?」

 

「構いませんよ。どうせ俺、この耳のおかげで半分無限に近い手札があるんで。そん中の一枚に使用条件つく程度なら痛くも痒くもないです」

 

手札5枚のうちの一枚をピーピングハンデス*2されたら痛いけど、手札500枚ある中で1枚ハンデスは別に誤差だしな。

 

「……余り家と関係のない者に干渉するのもと思い悩んでいたが、その提案に乗らせてもらおう。一応対外的な証明のために契約書を書いておきたいのだが、構わないかね?」

 

「はい。いやあ、俺のせいで手間かけさせちゃってすみません」

 

「気にする事はない。才能故に天狗になっていた節のある将輝の鼻っ柱をへし折ってくれたのだ、むしろこちらが感謝したいくらいだ」

 

その後、製作した書類を相互に確認。判を押して俺は『爆裂』を緊急事態以外では使わないということになった。まあそんな緊急事態になることなんてそうそうねえから大丈夫だよな!(フラグ)

 

俺のやらかしによる話し合いも終わり、改めて迎え入れられた俺。将輝に自室に案内され、菓子とジュースを3人でつまみながら雑談に興じ始めた。

 

「で、妹さんはどこに?」

 

「今は母さんの頼みで買い物に出かけている。『客人が来るから』って理由でな」

 

「なるほどね」

 

「ちなみにその客人がお前ってことは伝えてない。サプライズドッキリだ」

 

「ちょっと楽しくなってきたな」

 

こういうの俺大好きだよ。ドッキリ仕掛けられるのも好きだけど仕掛けるのはもっと好き。

 

「もうそろそろ帰ってくると思うが……」

 

その時、玄関の扉が開けられる音が聞こえてきた。続いて小学生くらいの足音が響いてくる。

 

「あ、帰ってきたっぽいな」

 

「八幡お前よく聞こえたな?」

 

「僕らにはさっぱり聞こえなかったんですが」

 

「耳いいからな」

 

これバレたら女性陣に殺されるから絶対言わないけど、やろうと思えば足音や空気の流れる音、音の反射とかから身長体重だけじゃなくスリーサイズまでわかるし。絶対言わないけど。命が惜しいから。

そんなことを考えていると、足音がこちらに近付いてくる。恐らく将輝の母……一条家夫人に言われて、客人に挨拶しに来たのだろう。足音がこの部屋の扉の前で止まると、ノックが三度行われる。

 

「失礼しま──────」

 

「うっす」

 

部屋に入ってきた途端、俺を見てフリーズする少女。髪色も将輝と似てる……ちょっと一条家夫人に似てるかな。将輝より髪の色味がちょっと明るい。

 

「──────」

 

「あ、倒れた」

 

「瑠璃ぃぃぃぃ!?」

 

「八幡、これ大丈夫なんですか?」

 

「オタクは得てして不意に供給を受けるとこうなる生き物なんだよ。……で、瑠璃ちゃんどうする?」

 

「とりあえず八幡、瑠璃ちゃんを膝枕しましょう。推しに膝枕という特大のファンサされた時の反応を見てみたいです」

 

「採用」

 

「人の妹を玩具にするな」

 

将輝の必死の静止により膝枕はキャンセル。とりあえず将輝のベッドに寝かせたところ、15分ほど経って目を覚ました。

 

「大丈夫か、瑠璃?」

 

「お兄ちゃん……良かった、幻覚だった」

 

「何が?」

 

「八幡さんがお兄ちゃんの部屋にいるのが」

 

俺幻覚扱いなの?ワロス。

そして更に15分くらいかけて俺が幻覚の産物ではないこと、マジで将輝の家に遊びに来ていることを説明した。

 

「なんでこんな辺鄙なところに?」

 

「瑠璃お前自分の家を『辺鄙なところ』って言うのやめろや」

 

「石川なんて辺鄙なところでしょ!?」

 

「加賀友禅とかあるだろ!?」

 

「他は?」

 

「……………」

 

「何で加賀友禅が出て輪島塗出ねえんだよ」

 

ほんまコイツら。

 

「ひ、一先ず瞑想がてら走ってきます!」

 

そう言って瑠璃ちゃんは部屋を出ていった。

 

「愉快な妹だな」

 

「アレがデフォルトじゃないからな?一応言っとくけど普段はもっと落ち着いてるからな!?」

 

いやまあそれは分かってるよ。デフォでアレだったらさすがに俺も怖い。

そうして暫く3人でゲームしたり新しい魔法考えたりしていると、妙に憔悴した様子で一条家夫人が将輝を呼びに来た。将輝が部屋を出て少しすると、真っ青な顔で将輝が戻ってきた。

 

「……とりあえず全部端折って結論から言うぞ」

 

「おう」

 

「どうしました?」

 

「瑠璃が誘拐されてさっき誘拐犯から電話が来た」

 

ごめんもう一回言ってくんねえかな。

*1
魔法科高校の劣等生(げんさく)では将輝は『無意識に展開される情報強化(エイドス・スキン)を爆裂以外で突破するのは難しい』という描写がある。八幡の場合は干渉力が更に劣るので、『爆裂』でも極小規模にまで範囲圧縮をしなければ突破不可能。そのため将輝のように複数人を纏めて吹き飛ばすような芸当は出来ない。なお、その代わりに情報処理演算の規模が遥かに将輝を上回っているので将輝でも難しい『地下水を対象とした爆裂』が可能なのでそこそこ相互互換性能だったりする。また、身体に対しての『爆裂』が効かないだけで適当に相手の腕を引きちぎるなりして体外に出た血を対象として『爆裂』を行使することは可能だが、それをやるくらいなら普通に相手を千切り殺した方が早いのであんまり意味はない。

*2
カードゲーム用語。ピーピングは『覗き見る』という意味の英単語であり、ハンデスは『ハンドデス』の略。要は『相手の手札を見てその中から捨てさせる』という意味。




次回、誘拐犯死す──────!

一条家
基本的には原作と同じで、第一研により開発された魔法師の一族。
表向きは日本海の海底資源採掘会社を家業としている。
八幡の影響で次期当主でもある将輝の実力が伸びつつあり、他の十師族からも『この調子なら向こう60年は一条が師補に落ちることはまず有り得ない』と目されている。
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