次の日。朝を近所のコンビニの惣菜パンで済ませて学校に向かう。アレだな、人がいるならともかく自分だけだとどうしても『飯……まあ適当でええやろ』って思ってしまうな。師匠が生きてた頃は良く作ってたのに亡くなってからはめっきり作らなくなっちまった。
「あ、比企谷」
「……北山か。光井も」
学校付近まで来ると、昨日知り合ったクラスメイトの姿が。とりあえず会釈。
「おはよう」
「お、おはようございます!」
「ん、おはよう」
挨拶もそこそこに凡そ100m弱の学校までの道を歩いていると、ふと北山が質問をしてくる。
「そういえば、比企谷ってどんな魔法が得意とかあるの?」
「あ?」
「ほら、なんか得意なことがある人って雰囲気が『そういうこと得意そう』って感じになるでしょ」
「あー……」
覚えはある。めっちゃある。バイオリン弾いてそうだなと思ったらマジで弾いてたとか。
「ただ比企谷ってそういう雰囲気が分かりづらいから。なんか得意な魔法とかあるのかなって」
「言い草失礼な気もするが……まあいい。つっても俺は大抵出来るぞ。裏技使ってるが」
「えっ」
「本当に!?」
「出会って一日弱だがお前らが俺をどう思ってるのか大体わかったよ表出ろ」
「ここ表だよ」
「そうでした……」
まあ筆記ヤバかったけど。基本的に俺は魔法式の構築って直感的にこなしてるから理論を書けと言われても『えいって感じで骨組み作ってソイヤッって感じで大体完成させてフタエノキワミアーッて感じで形を整えてる』って書いたら説教されるし。
「強いて言うなら……振動系魔法を基準に独自開発した変則広域干渉型魔法か。完成した時は師匠に『僕も大概変わり者な自覚はあるが、君はその上を行くな。頭おかしいんじゃないのか』って褒められたし」
「褒められたのそれ」
「師匠式の褒め言葉だよ」
「それが褒め言葉になるんだ……どんな人なの?」
「天然で思い込みの激しい変態」
師匠の親戚曰く『内臓を抉って、その小腸を身体に巻きつけるのが趣味のベジタリアン』。
「「キャラが濃ゆい」」
事実だぜ、残念ながらな。……っと、そんなことを話してるうちに学校に到着だ。授業ダルいな。というわけでカット。
放課後まで意識を飛ばしていると、気付けば日が傾き空は青から薄らと橙に染まりつつあった。教室にも人が殆ど居ない。やっべ、寝過ぎたか?
「……ん?」
窓の方を見ると、校門前で人だかり。野次馬しよ。
「よっ」
近付いてみると知人二人……要は北山と光井のことだな。っつーかこの二人以外知人と呼べる奴がこの学校にいない。それはそうとして脳裏になんかコーヒー淹れるの下手そうな地球外生命体っぽいのを浮かべながら二人に話しかけると、驚いたような顔をして振り向く。
「どしたよこれ。通行の邪魔でしかないが」
「あー、かくかくしかじか」
「しかくいムーブと。なるほどね」
新入生の主席である司波深雪が二科生である兄とその友人と帰ろうとしたら一科生のプライド高い連中の邪魔に遭ったと。
「比企谷」
「なんだ北山」
「どうにかして」
「無茶振りが過ぎんか?」
俺をなんだと思ってるんだ。
「そもそも人に頼み事するんなら対価くらい用意しろ」
「MAXコーヒー奢るから」
「雫、そんなので買収される人なんて……」
「しっかたねぇな……忘れんなよ」
「いた!?」
「ふざけて言ったのにまさかアレ愛飲する人類がこの世に居るとは……」
マッカンのことこき下ろし過ぎでは?訴えて勝つぞ。
「あ、でもマジで手ェ出しそうになってるとかまでは傍観するからな」
「流石に完璧に部外者だもんね」
というわけで眺めること数分。一科生の一人が、激昂して魔法を使おうとする──────頃合いか。
紡ぐは『支配』。殺し名とかならともかく、表の世界の一般人相手ならばワンフレーズで充分だ。そっと息を吸い──────
「動くな」
そのたった一単語で、その場を支配した。
(──────なるほど、凄まじいな)
俺、司波達也は動けない身体を他所に漠然とそんなことを考えていた。
妹である司波深雪にお近付きになろうとする一科生──────兄としては腹立たしいことこの上ない──────に帰路を妨害されていたが、一科生の一人が魔法を使おうとした瞬間に響いた声により俺を含めた一切が停止した。魔法によるものかと思ったが、痕跡は一切なし。魔法無しの純粋な技術となると……聞いたことがある。『音使い』というやつだろう。だが聞いた限りではたった4文字の短い音節だ。それだけでここまで縛るとなると……世界屈指の使い手だろう。振り払おうとした瞬間、続けて縛りが与えられる。
「魔法の発動を禁止」「手に持ったCADを地面に放り捨てろ」「直立し、動くな。呼吸だけしていろ」
三つの縛りが魔法を使おうとしていた一科生……森崎たちを更に締め上げ、その声に従ってCADを地面に放り捨てた後に直立し動けなくなった。俺たちの方は……『手に持ったCAD』に当てはまらなかったおかげでただ直立しているだけだったが。どうにかしようと思えば出来る程度だが、ここは下手に騒ぎを起こさない方がいいだろう。
「危ねぇなオイ……校則違反どころか普通に法律違反だぞ。馬鹿共が」
そう言って
「っ、これを解け!」
「やだよ。せっかくお前らが犯罪行為やらかすのを止めてやったのに、何様だお前」
男は面倒臭そうに頭を掻きながら吐き捨てる。その態度に更に苛ついたのだろう、他の一科生が叫ぶ。
「
「
……ちょっとふざけてないか?あいつ。
「頭冷やして考えろよ馬鹿。冷やす脳みそもないかもしれんが馬鹿。入学時の成績こそ良かったが入学早々犯罪やって退学になった差別主義者の一科生と入学時の成績こそ奮わなかったが差別に負けずちゃんと課程修了して卒業した二科生。どっちを取ると思ってんだ馬鹿」
凄い『馬鹿』と連呼するな。語彙力どうなってるんだ。気付けばそんなくだらないことを考える程度には気が緩んでいた。
「そもそもお前らが引き抜こうとしてたやつは今年の新入生の総代……学年一位なんだろ。優秀な奴に劣った奴が従うべきってんなら、より優秀な一位の言うことなんだからお前らはそれに従って大人しく諦めろよ。そんな
どうしようもないほどに正論だった。一応被害者側であるこちらがほんの少しだけとはいえ同情してしまうほどには正論の滅多打ちだった。
「……あ、咄嗟とはいえ纏めて『縛ってしまって』悪いな。ここで解いたらあの馬鹿共も纏めて解けそうだから、ほんと申し訳ないが風紀委員あたりが来るまでもうちょっとこのままで居てくれ。詫びはするから」
と、こちらに謝意を述べた後。再び一科生たちを正論で殴り始めた。ちょっとあいつ楽しそうだぞ。そんな蹂躙が続いていると、昨日の入学式の日にも会った生徒会長が駆け寄ってくる。
「何を……って、どういう状況?」
「あ、風紀委員の人ですか?とりあえず動けなくしといたんで、今から解きますけど念の為捕縛の用意だけお願いします」
「え、うん……?」
その後、風紀委員長までやって来て事態が面倒な方向に向かいかけたが……なんとか俺の誤魔化しにより事なきを得た。過剰なまでに正論で殴り倒されていた向こうに同情したのもあるが。
「なんだ、突き出されて処罰を受けた方が面白かったのに」
そう呟いたのは勿論俺、比企谷八幡。ちなみに諸悪の根源な一科生は「僕はお前たちを認めないぞ」なんて三下じみた捨て台詞吐いて逃げて行った。石投げといた方が良かったか?
「……あのっ!光井ほのかです。庇ってくれてありがとうございました」
そんなことを考えていると、光井が礼を述べていた。
「森崎君はああ言っていましたけど、お兄さんが大事にならないように収めてくれましたし」
「……どういたしまして。でもお兄さんはやめてくれ。俺のことは達也でいい。それに、俺が何かしなくてもそこの彼がどうにかしていただろう」
え、俺?俺に任せるのはやめた方がいいぞ。誰も幸せにならないからな。具体的に言うとあの一科生共は軒並み処罰受けて下手すりゃ退学コースだったし。
「はい、達也さん。比企谷君も、ありがとうございます」
「ん……まあ雇われたわけだし、やることはやるさ」
マッカンは命より重いからな。妹とかじゃない限り大抵の奴とマッカンを天秤にかけたらマッカンを取る自信がある。
「それで、あの……私たちも皆さんとご一緒しても、良いですか?」
男……司波達也の返答は肯定だった。
え、俺も一緒なの?……まあいいか。
帰り道を歩きながら話していると、司波達也が妹のCADのメンテをしている話から赤い髪の少女……千葉エリカが武装一体型のCADを使っており、兜割りという高等技術の要領で使用している話になり、挙句魔法科高校には一般人は居ないという話になった。戦闘民族式マジカルバナナか?
「……そう言えば、比企谷だったか」
戦闘民族式マジカルバナナとかいう謎のパワーワードに困惑していると、司波が話しかけてくる。
「ん?ああ、そういや悪かったな。相手と言い合う必要があったとはいえ、ウィードなんて差別用語を使ってしまったのは事実だ。その点に関しては正直に謝罪するよ」
「それに関しては別にいいんだが……お前って、あの『比企谷八幡』か?」
「『あの』が『どの』比企谷八幡かは知らんが、俺は比企谷八幡だぞ」
ゲシュタルト崩壊しそう。
「二年ほど前から様々な演奏のコンクールで優勝している比企谷八幡だな」
「ああ、それは俺だ」
師匠居なくなってちょっと寂しさあったから日本各地のコンクールに出て優勝かっさらってたんだよね。直近だと5ヶ月ほど前にドバイで優勝して賞金
「さっきの技術もそれか?」
「ああ。二年前に死んだ師匠から教わったんだよ」
今生きてる中で最強の音使いである自信はあるが、師匠より上かって言われたら……まあ『まだ敵わない』としか言えんな。流石にあの人を越えるには経験が圧倒的に足りない。
「なるほどな……」
「ところで司波達也」
「何故フルネームなんだ……で、どうした」
「明日色々と改めて聞かれそうなものだが、どう予想するよ」
「……まあ、呼ばれるだろうな。少なくとも魔法無しで拘束していたお前は」
「明日サボろうかな……」
ちょっと落ち込みながら帰ることとなった一日だった。
現実だとドバイで優勝賞金10万ドルのコンクールなんてやってませんがそれはまあフィクションということで見逃してください。
余談ですが達也は非魔法的洗脳手段に対して耐性がありますが、八幡や師である曲識が使用する音の干渉は感情に働きかけて肉体の主導権を奪うようなものなので耐性をすり抜けた扱いです。どうせチートお兄様なので直ぐに対処法身につけるだろうしそもそも敵対する予定は微塵もないので。『大きな戦争』時代に無銘だった哀川潤を『少女趣味』じゃなかった頃の曲識が操ったみたいに協力プレーする可能性はありますが。
今作における『音使い』の技術の定義
曲を聴いた時に落ち込んだり高揚したりなどの感情に与える影響を応用し、相手の肉体の主導権を奪う技術。
そのため精神干渉耐性を持っていればある程度の防御は可能だが、達也のような「洗脳耐性」では防げない。精神すら支配に置く洗脳とはまた異なるため。
また、事前に洗脳や薬物投与などで『音で影響を受ける感情そのもの』を破壊されていた場合は音の干渉を受けない。逆に言えば、ほんの少しだけでも情動を持つならば干渉可能。
比企谷八幡
師匠の零崎曲識の遺産を継いでからは孤独を紛らわすように世界各地のコンクールに参加しては優勝をかっさらっていた。現在貯金総額9桁。
北山雫
マッカン1本で八幡を仲裁に雇ったはずだったが普通にこき下ろしててびっくりした。仲裁って何だったっけ。ちゃんと
八幡への認識→やべえ奴だとは思ってたけど案の定だった。どうやって動き止めてたんだろう。
光井ほのか
原作通り好意の矢印は達也に向いた。
八幡への認識→結構火力高めの毒吐く人。すごい。語彙力が死んでるからうまく説明出来ないけどなんというかすごい。
司波達也
原作主人公。裏の面があっても
八幡への認識→現状警戒程度に留めるが、深雪に危害を加えるようなら消す。
司波深雪
原作ヒロイン。達也と違い音使いのことは知らない。
八幡への認識→クラスメイト。場を収めるのに助力してくれた点は感謝してる。
森崎
不遇が確定してる奴。
八幡への認識→クソムカつく奴。心ん中フォートナ○トの暴言厨キッズ並の荒れよう。
4000文字書いたのになんか本編の内容薄い気がするなあ……。
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氷柱倒しで一条将輝と全面戦争!
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他の競技に出て格の違いを見せてやれ!