魔法科高校の音使い   作:オルタナティブ

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お久しぶりです。今回は戯言シリーズ寄りです。


第三十九話

 その後、『逃げるなんて酷いじゃねえか』という脅しにより潤さんと《戯言遣い》……もとい、いーちゃんに同行。そのままある場所へと連れてこられた。

 

「一体なんスか、俺ダチの家遊びに行った帰りなんすけど」

 

 荷物見えてる?

 

「何、あたしといーちゃんのとこに同一人物から別々の依頼が来てな。どうやらあたしらを潰し合わせたかったらしいから今からその依頼人をぶちのめしに行くとこなんだよ」

 

「へえ……そりゃまた命知らずな」

 

 俺だったら人類最強の請負人と戯言遣いを同時に敵に回すとか死んでも嫌だけど。

 

「で、俺をこうして拉致った理由は?」

 

「え、見かけたから」

 

 一回死なねえかなこの赤いの。いや死んだらなんかサイヤ人みたいにパワーアップして復活しそうだからやっぱ死ぬな。死ぬなら復活の余地がない形で死んでくれ。溶岩に飛び込むとか、外宇宙に追放するとか……いや生きてそうだな……なんかこう、神座万象シリーズのナラカに触れるとか……いや何かそれでも魔改造されて帰ってきそうで怖いな……。

 

「まあそういうわけで、一緒に潰しに行こうぜ」

 

「えー……行く……」

 

 絶対楽しいだろそんなの。っつーかそれ抜きにしても潤さんといーちゃんを罠に嵌めようとするくらいのクソ度胸持ってる奴の面拝んでみたい。ダーウィン賞*1取れるだろ。双識の旦那や舞織のねーちゃんじゃなくてお前が《自殺志願(マインドレンデル)》を名乗れ。

 

 

 

「そういえば、最近どうだい? 確か……九校戦、だったかで良い成績修めたみたいだけど」

 

「上々っすね。ゲームの技再現したオリジナルの魔法式も結構出来がいいし」

 

「へえ、何のゲーム?」

 

「light作品とかから幾つか」

 

「君さあ」

 

 あそこのゲームって大体規模とんでもない技出てくるもんな。まあ、今んとこ再現済みで実用段階にあるのは『狂い哭け、罪深き銀の人狼よ(Silverio Cry)』を代表とする効果が比較的シンプルなものくらいなんだけど。アレ最上位が核分裂反応とか分子結合の破壊とかだから再現していいかどうかってのがまず来るんだよね。後は惑星破壊サークル……もとい暴窮飛蝗アエーシュマ、その中の曲線バカ(タルヴィード)と直線バカ(ザリチェード)の戒律くらいかな。アレはかなり再現しやすい部類だった。いやまあある程度規模は落としてるけどね? 多分俺が撃ってもち(・)ょ(・)っ(・)と(・)都(・)市(・)ひ(・)と(・)つ(・)ズ(・)タ(・)ズ(・)タ(・)に(・)す(・)る(・)く(・)ら(・)い(・)だし。まあナダレで混ぜこぜにされた後の複合技ならもうちょい威力は上がるが。

 

「さて、着いたな。……どうやらこの面子のカチコミにビビって引き篭ってるみたいだ」

 

「中一切見ずに読み取ってることに関しては俺はもう何も言わねーよ」

 

 今に始まったことじゃないし。

 

「直通ルート開ければいいか?」

 

「おう、頼む」

 

「ん」

 

 となれば……えーと、とりあえず音響定位。それを多元行使して……ん、あそこか。じゃああそこ以外刻(・)め(・)ば(・)い(・)い(・)な(・)。

 

「領域展開『伏魔御廚子』」

 

 最近完成した『領域魔法』。『一定範囲内に異なる魔法式の効果を適用する』という、単体では何の意味もない魔法式。それに別(・)の(・)魔(・)法(・)式(・)を(・)組(・)み(・)込(・)む(・)ことで成立する代物だ。今回組み込んだのは、一条さんちの瑠璃ちゃんを誘拐したゴミ共の殲滅戦にも用いた斬撃魔法である『解』だな。ちなみにこの『領域魔法』、元ネタは漫画『呪術廻戦』に登場する呪術の奥義である『領域展開』なんだが……実は魔法で再現する場合、原作通りの『閉じる領域』だと『範囲指定+外部と遮断する障壁魔法+術式効果適用』なのに対して宿儺や羂索が使った『閉じない領域』だと『範囲指定+術式適用』で済むからぶっちゃけ原作での難易度に対してこっちの方が楽なんだよね。

 

「おー、両面宿儺じゃん。え、『胎蔵遍野』とかも出来んの?」

 

「出来る出来る。『蓋棺鉄囲山』とかも出来るぞ。『嵌合暗翳庭』とか『自閉円頓裹』は無理だけど」

 

 術式効果の再現が出来んからな。

 

「まあそれはそうとして、あの残った部屋に野郎が居る……あ、部屋が二階にあったせいで部屋の外枠ごと地面に落ちて崩れた。潰れてねーよな?」

 

「潰れてたら息吹き込んで膨らませればいいだろ」

 

 そんなカートゥーンアニメの世界観じゃないんだから。そう考えながら部屋の残骸を掘り返し、アホを引っ張り出す。

 

「……で、これどうすんの?」

 

「正直ぼくとしては依頼の手付金とか経費だけ拝借すればそれでいいんだけどね」

 

「ボコる」

 

 なるほどね(諦め)。……ボコってる間ネトフリで何か観るか。

 

 

 

「満足満足」

 

 怖……俺がネトフリで『超かぐや姫!』*2観てる間ずっとボコってたぞこの赤いの……相手死んでんじゃねえの?

 

「っし、スカッとしたし打ち上げで飯でも行くか。いーちゃん、友連れてこい」

 

「身重の奥さん連れて来させようとするのやめてくれません?」

 

 ん、友ちゃん妊娠中なのか。

 

「おめっとさん。産まれたら言ってくれ、出産祝い贈るわ」

 

「ありがとう、でも君は出禁予定だからよろしくね」

 

 何で???

 

「ヒント:友の機械操作能力✕ぼくの無為式=?」

 

「理解」

 

 機械類触っただけで壊すのな、致命的に。というよりこのバカ二人のが掛け合わされば、それはもはや『機械類全般に致命的なまでに憎悪される』と呼べる領域だろう。CADに触れば暴発し、自動運転機能付き車両に乗ったら最後自殺突撃で他の乗客ごと殺しに来る。……技術の進歩で機械化、電子化が進んだ現代では本当に殺人的な特性だろうな。

 

「まあうっかり機械触っちゃってUSNA(アメカス)とかのミサイルが飛んでくる事態になったとかになるようなら何時でも連絡してくれ。今はまだ核弾頭まで行かれるとキツいが巡航ミサイルくらいならどうにか出来る。物心つくまでには水爆でも対応できるように頑張るわ」

 

「頼もしいなぁ……」

 

 現時点でも攻撃が音速超えてなきゃ余裕で対処できるけど。音速の攻撃の対応は音楽家の嗜みだ。

 

「知らない文化だ」

 

「でも師匠は出来たぞ?」

 

「零崎一賊(さつじんき)の中でも最も禁欲的(ストイック)で強靭な理性を持つ人を引き合いに出されても……」

 

 まあそれはそう。

 

「というか零崎の人たちと連絡取ってるんだね」

 

「たまにだけどな。つっても生き残ってんのが人識と舞織と、後は軋識の旦那くらいしかいないんだけども」

 

 人識と舞織はこの前電話した時は函館にいるっつってたな。軋識の旦那は……あの人殺せる奴の方が少ないし無事だろ。零崎兼元"仲間(チーム)"あるいは"一群(クラスタ)"あるいは"領域内部(インサイド)"あるいは"矛盾集合(ラッセル)"あるいは"集団(メイト)"あるいは"同士(パーティ)"あるいは"軍団(レギオン)"だし。

 

「まあ潤さんがせっかく飯誘ってくれてんだし行こうぜ、奢ってくれんだろ」

 

「ん???」

 

「そうだね、何食べに行く?」

 

「んー……焼肉とか寿司はやめとくか。友ちゃんへの手土産が用意しづらいだろ。妊婦さんに生魚はまずい気がするし」

 

 となると……お高いイタリアンとかフレンチか?

 

「友はそれ以前にジャンクフードとか、熊肉の缶詰とかが好きだからなぁ……」

 

「うーん……まあフライドポテトとかは妊婦さんでも食いやすいらしいけどさ……」

 

 胎児の分も合わさって血液量が増えるから、それによって不足しがちなミネラルや油分を効率的に補えるし。かと言って、旦那が良い飯食ってきて土産物がジャンクフードのフライドポテトは予後悪いだろ。

 

「最悪友ちゃん連れてきて四人で高い飯食いに行くか、三人で夜マックアホほど食って土産に持ってくかの二択だけど」

 

「……ここから京都まで往復して、友ここまで連れてくるの出来る? 帰路は普通にぼくと潤さんが送ればいいけど」

 

「京都かぁ……」

 

 現在地は長野の山間部。コイツら石川にある一条家から俺が東京まで帰る途中にエンカウントして連れて来やがったからクソ辺鄙な所なんだよなここ。

 

「……………法を無視していいなら……」

 

「よし、やれ」

 

 おう。というわけで飛行術式を勝手に魔改造した高速飛行術式で、いーちゃんの自宅まで時速三百キロでフライアウェイ。その間にいーちゃんに『俺が迎えに来る』という旨を連絡してもらう。場所は昔遊びに行ったことあるから解るし大丈夫だ。そうして一時間ほど都市上空を飛行して、京都市内にある高層マンションへ到着。するとエントランスには既に黒髪に右(・)目(・)だ(・)け(・)が(・)青(・)い(・)女性──────友ちゃんが降りて来ており、こちらに手を振っていた。

 

「うに、おひさだねはーくん」

 

「おう。最後に会ったのは結婚式の時か?」

 

「そのはずだよー。僕様ちゃんといーちゃんの結婚式の時に演奏してもらった時以来」

 

「そうだ、妊娠おめでとさん。欲しいもんあったら今度いーちゃん経由でもいいから教えてくれ、送り付ける」

 

「丁寧にどうも。その時はお言葉に甘えさせてもらうねー」

 

 そんなことを言いながら、友ちゃんを載せて長野へと再飛翔。『ファランクス』で友ちゃんを保護、迫撃砲をカートンでぶち込んだってビクともしない完全防御状態で連れていく。

 

「ほい到着」

 

「うにー……考えてみれば亜音速で空を飛ぶのって中々の新体験だね」

 

「潤さんは経験ありそうだけどな。想影真心にぶん殴られた時とか」

 

「ん? 試してみるか?」

 

「遠慮しときマース……」

 

 喰らったところで別に死なねえけど好き好んで喰らうもんでもない。そんなこんなで俺たちは潤さんが見つけた店──────中華料理店へ。潤さんが選ぶだけあってちゃんと美味く、舌の肥えた友も満足な出来だった。……あ、マジ? ここの料理長に師事してた人の中に佐代野弥生さんいんの? 鴉の濡れ羽島の? そりゃあ美味いわ。

 

「さて、飯も食ったし解散だな。八幡も付き合ってくれてありがとな」

 

「潤さんがまともに御礼を言う……? そうか、遂に世界大戦勃発か……大破壊(カタストロフ)も遠くないな。今のうちに第二太陽(アマテラス)から降り注ぐであろう星辰体(アストラル)に適応する準備しとかねーと」

 

 いざという時のために第二冥月(タルタロス)を構成する『闇の竪琴、謳い上げるは冥界賛歌(Howling Sphere razer)』の完成を急いだ方がいいかもしれん。あでもこれだと皆死ぬか……じゃあ天奏……いや俺にあの無限出力向上は無理だな……うーん、やっぱ人奏しかないか?

 

「お前マジであたしのこと何だと思ってんだ?」

 

「俺が後一年本気で鍛え上げてようやく勝ちの目が見えてくる化け物」

 

 一年ありゃまあ……行けるが。俺の戦闘スタイルって無限大に等しい程の無数の小技で攪乱し続けて生まれた隙を突く代物だから、潤さんみたいな小(・)技(・)が(・)通(・)ら(・)な(・)い(・)相(・)手(・)だ(・)と(・)詰(・)む(・)んだよね。だから潤さんに勝つ場合、根本的に戦闘スタイルから術理まで構築し直さなきゃいけないわけで。勿論そういった時のために『小技に頼らない魔法式』も用意してあるんだが……何せ元が元だ。メインの攪乱と比較するとどうしても余芸の類になるのが難点だな。現状では本(・)家(・)本(・)元(・)の(・)完(・)全(・)再(・)現(・)止まりだし。

 

「寧ろ一年で哀川さんに対応出来るのが驚きなんだけど……」

 

 ま、理論さえ構築できたら実用段階に持ち込むまでは俺の耳で幾分ショートカット出来るからな。これがなきゃ千年あっても出来る気がしない。元々これ抜きだと俺雑魚だし。そうでなくても俺が師匠への師事もあって使いこなせてるだけで、普通にこの能力って産業廃棄物未満のクソなんだから。

 

「……まあいいや。兎に角、元気そうで何よりだよ。それじゃ」

 

「おう。またな、戯言遣い」

 

 そうして、一日だけの久方ぶりの交流は終わった。特段意味なんてない、これがあったところで世界は何も変わらない一日だけの記録。だがまあ……こういうのもたまには良いだろ。

*1:
自らの愚かな行為によって「死亡する」もしくは「生殖能力を喪失する」ことで劣った遺伝子を抹消し、「人類の進化に貢献した」人物に対する皮肉として贈られる賞。進化論者であるチャールズ・ダーウィンにちなんで名づけられた。

*2:
上映時間約二時間半。




比企谷八幡
音楽関連に関しては自分が世界最強最高であると言ってはばからないし実際曲識が死んだ現代では本当に最強。具体的には半年に一回くらいのペースで鴉の濡れ羽島から招待状が来るくらいには最強。なお来るタイミングが基本的に長期休暇外なので殆ど断っており、中三の春に半月だけ居たくらい。数年後、青色サヴァンと戯言遣いの娘……もとい『誇(矛)らしき盾』こと玖渚(くなぎさ)盾(じゅん)の『初恋のお兄さん』になり、戯言遣いと元青色サヴァンの頭を悩ませるのはまた別の話。
星辰光は出す予定だが、間違いなく出ないのは界奏たる『天地宇宙の航海記、描くは灰と光の境界線(Calling Sphere bringer)』。
理由? いやだってアレ「相互了承の元、相手の固有能力を借り受ける」って代物だけどコイツ無許可でパクって我が物顔で使えるから……割と素で界奏のウルトラ上位互換だから……。

戯言遣い
いーちゃん。戯言シリーズ主人公。CV.は実は意外と魔法科側にはいない梶裕貴。妻である友の胎に子供がいるので請負人活動はちょっぴりセーブしている。存在するだけで周囲で事件事故が頻発するある種究極のトラブルメーカー体質《無為式》の持ち主だが、所詮は物理法則の範疇の事件事故なので哀川潤や比企谷八幡といった道理を越えた領域に片足以上踏み込んでいる人種であれば問題なく対応可能。魔法科サイドで言えば、この体質に巻き込まれてなりふり構わず生き残るのみであれば十師族や百家相当の暴力性能があれば余裕で可能。当然雫やほのかも問題ない。
 ただし発生する事件事故の詳細次第では情に訴えかけられ鈍る可能性があるため、巻き込まれて確実に生還出来る保証があるのは十師族かそれに準ずる実力者に限られる。現時点で本作に登場している学生陣で言えば八幡、達也、深雪、将輝、真紅郎、隼人、雪乃、真由美、摩利、克人がこれに該当する。なお、この面々は『情に訴えられても鈍らない割り切りが出来るもしくは情に訴えられて鈍ったとしても問題ないだけの暴力性能を持つ』というだけであり、レオやエリカ、雫にほのかといった他の面々でも余程のことがなければ生還率は90%を越える。あくまで上記の面々は『何があっても詰まない』だけ。

玖渚友(くなぎさとも)
戯言シリーズより。かつては青髪の天才、サヴァン症候群と分類される病状を持つ埒外の技術屋だったが、時間軸的には戯言シリーズ本編後なのでその才能を放棄し只人となっている。パソコン系の技術や知識は少し残っているが、今では電子マネーのタッチ決済すら覚束無い程。

玖渚盾(くなぎさじゅん)
戯言遣いと玖渚友(青色サヴァン)の娘。まだ母親の胎内。父親の《無為式》と母親がかつて保有していた機械操作の才覚をおよそ考えうる限り最悪の形で受け継いでおり、それらが組み合わさった結果として『究極の機械音痴』の特性を得ることとなる。その度合いは真の意味で『触っただけで壊れた』レベルにして『ありとあらゆる機械製品から憎悪される』レベルであり、触れた機械全てが自己のシステムの範疇で可能な限り盾を殺しに来る。例えば自動運転機能が搭載された車に乗ると『制御不能の暴走車になる』どころか『何故かオートで線路上や崖先といった搭乗者に死の危険が発生する場所を目的地として設定しその通りに暴走する』レベル。なお、盾が高校生になる頃にはどっかの八幡(バカ)がとんでもない超越者になっているのでなんら問題ない。具体的には仮(・)に(・)達(・)也(・)が(・)デ(・)ィ(・)オ(・)ー(・)ネ(・)ー(・)計(・)画(・)で(・)金(・)星(・)に(・)追(・)放(・)さ(・)れ(・)て(・)も(・)八(・)幡(・)が(・)一(・)人(・)で(・)金(・)星(・)ま(・)で(・)行(・)っ(・)て(・)連(・)れ(・)て(・)帰(・)っ(・)て(・)来(・)れ(・)る(・)レ(・)ベ(・)ル(・)。
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