夕方。何故かエリカとレオがいなかったので、俺たちは千代田先輩と五十里先輩と共に帰路についていた。
「……なるほど、そういう動機だったか」
俺が奴から聞き出した内容を伝えると、達也は納得顔で頷いた。
「何それ、単なる逆恨みじゃない!」
「……って言うより、八つ当たり?」
憤慨する光井の隣で、理解に苦しむとばかりに雫が首を捻っている。二人にとって今の話は、納得できる要素が欠片も無かった。
「八つ当たりせずにいられなかったんだろうね……」
「きっと、お姉さんのことが大好きなんでしょうね……。平河さんがやろうとしたことを認めるわけにはいきませんけど、気持ちだけなら、少しは解る気がします」
対照的に、同情混じりの言葉を漏らしたのは幹比古と美月の二人だった。一科生と二科生で見事に割れた感想を達也は興味深く思ったようだが、もちろん面白がっている素振りを見せたりはしなかった。
「だがそれなら、放っておいても問題なさそうだな」
そんな達也が口にしたのは、それをどう思うか、ではなく、これからどうするか、ということ。
「それ以上は聞き出せなかったんだろう? 八幡」
「ああ、完全に空振りだ。向こうが上手なのか、平河千秋が良いように使われる阿呆なのか……まあその両方と置いたとしてだ。向こうは情報を殆ど与えていない、このルートから深掘りは実質不可能と言っていい」
……まあ、一応分かったことはあるのだが。それをここで言うと流石に危ないからな。
「一先ず、平河姉妹の件についてはこれで終いで良いと思う。脅しもかけといたし、恐らくあの女の協力者も期待してない。これで見切りもつけてるだろ。口封じに殺されるほどの情報も持たされてなかったから、正真正銘終わりだ。それに……むしろここからが本番だろ?」
俺の言葉に達也が頷くのを見て、先輩方の顔色が変わる。
「……そういうこと?」
「ちとヤバげなのが」
俺がそう言うと、先輩二人と幹比古が周囲に目を走らせる。不審な人影は発見できなかったようだが、微かな場の揺らぎ──────意図しない想子の波紋──────を、五十里と幹比古は感じ取ったようだ。
「……やっぱり護衛を付けようか?」
空間に広がる揺らぎではなく、五十里先輩の顔に浮かんだ揺らぎによって、達也の指摘が思い込みでないことを確認した千代田先輩がそう問い掛けた、が。
「いえ。七草先輩クラスの知覚能力が無ければ、あれの尻尾を摑むのは難しいでしょうから。それに、護衛に関してはコイツがいます」
そう言って俺の肩を叩く達也。風紀委員長に抜擢されるだけの実力を理解しているのか、まだ僅かに不安そうながらも先輩たちは納得したようだった。
その翌日。俺はエリカに呼び出されたことで、学校をサボってある場所に来ていた。
「そこ、想子がブレてんぞ。それじゃあ豆腐すら斬れねぇよ」
訪れた先は、エリカの実家……千葉家の剣道場。どうやら今回達也が関わっている案件が大規模なものになると予想をつけたらしく、戦う力──────厳密には、
「とりあえず、レオが習得予定の『秘剣・
「人がアホほど苦戦してる横で二回か三回練習して完成されんのクソ腹立つけどな」
「魔法をあっさり再現されるのってこんなにイラつくのね」
すまん、その気がなくても勝手に覚えるんだ。使うのが任意なだけで。後結局人間の身体も、視点を拡張して見てみれば広義の楽器みたいなもんだからな。筋肉に力が籠る音、踏み締める音、重心移動により地面が擦れる音……そういうのを、間隔など含めて記憶して再現すれば
「……にしても、刃を引き伸ばす補助術式は入ってるはずなんだけどね。八幡、どう思う?」
「想子の動きに無駄が多いんだよ。エリカもそうだが、剣士なんて瞬間火力と継戦能力がものを言う役どころだ。そこを疎かにしといて何言ってんだって気分」
仕方ない、こうなったらカリキュラム変更だ。
「レオ、エリカ。お前たちにはあるものを覚えてもらう。これが出来れば従来の、そしてこれから新たに使う魔法も……それら全てを含めて、お前たちの実力は今までと別の領域に立つことになる」
想子の任意操作……これで何か変わればいいが。
「まずそもそも、想子ってのは魔法の発動に必要な非物質粒子だ。物理的性質は一切持たないが、自分のものとして確かに存在している以上は必ず操作出来る」
そう言って、来る時にホームセンターで買ってきた鉄パイプを三本。一本ずつエリカとレオに投げ渡した。
「俺の実力はこの聴覚に大きく依存しているが、技術はこの想子操作を根幹としている。これをある程度まで修めることが出来たら、魔法の発動速度や精度……複数の魔法の同時発動に、新たに覚える魔法の習熟速度も大きく跳ね上がるだろう」
俺は鉄パイプを握ると、鉄パイプの形をなぞるように想子を放出し象る。
「二人とも、俺と同じように想子を鉄パイプに帯びさせてみろ」
そう言うと、二人が鉄パイプの周囲に想子を展開。特有の淡い光が鉄パイプを包んだ。
「その状態で、軽く鉄パイプを振り下ろしてみろ」
振り下ろされる鉄パイプ。が、しかし。
「はいダメ。想子を置き去りにしてる」
鉄パイプに帯びさせた想子は、最初の位置のまま。
「想子は非物質だ。例え今みたいに武器やらに纏わせたところで何の物理的性質もないから威力は変わらないが、非物質であるが故に周囲の影響を受けない。だから今のように、ただ振るだけでは
「……なあ八幡、もしかして」
「ああ。お前たちには最低限、
欲を言えば無意識レベルで出来て欲しいが、さすがに厳しい。まあ意識的にでも出来れば戦闘としても実用段階だろう。
「安心しろ、ちゃんと褒美もある。それを修め終えて、レオが『薄羽蜻蛉』を習得したら……俺からも二人に魔法を伝授してやる」
教える魔法は三つ。エリカには塩試合おじさん……もとい『
「……っつーわけだ。俺とレオ、エリカはちょくちょく空けるわ」
『ああ、解った。……こちらとしてもその気遣いは有難いよ』
「今回、相手が相手だからなぁ……
その日の夜、俺は自宅で達也に連絡を取っていた。
『にしても、大亜連合だとよく分かったな?』
「催眠療法の応用だよ。平河千秋に相手の言動を再現させた。そうしたらビンゴだ、相手のイントネーションに大陸訛りがあった」
『本当にお前の
達也の呆れた声が聞こえてくる。実際万能だからなこれ。
『……にしても、発動速度と精度の向上。複数魔法の並行発動難易度も低下するとなれば、覚えない理由もないな。今度深雪にも教えてやってくれるか?』
「良いぜ、教えない理由もねえしな。というか俺としても先日の選挙のアレも相俟って割と急務な気がしてならんし……」
『ああ……』
そう言って二人揃って頭を抱える。何せ一番その被害を受けている
「真面目に将来大丈夫か? あんま言いたくないけどキレてあの暴発するの、俺に負けず劣らず文明社会向いてねえよ?」
『お前は厭世的なだけだからな……他者への被害が予測不可能という点でも、深雪のそれは少々危うい』
……なお、深雪はその制御能力の大半をあるものに割いているためどうしてもそれを不得手とするのだが。俺がそれを知るのは、もう少し先の話であった。
『……そうだ、八幡。一つ質問なんだが』
「ん? どしたよ、達也が質問なんて珍しい」
『魔法関連ではないんだが……音楽関連でな。如何せん俺が調べられる範囲では情報が少なく、その分野に詳しい八幡に聞きたい』
「音楽関連ね……まあ言ってみろ。大抵のことなら答えられるぜ」
『ああ。三年ほど前に、深雪……そして俺たちの母親とで沖縄に行ってな』
「三年前の沖縄? ……沖縄海戦の時期か」
確かアレも、今回の一件に関わっていると思しき大亜連合による襲撃だったか。いや、待てよ? 確かその時期──────
『ああ。その際にある音楽家と会ってな。色々と助けて貰ったんだが……その後、調べても足取りが掴めなくてな。音楽家として名が知れていて顔の広いだろう八幡なら何か知っているかと思ったんだが』
「……その音楽家の名は?」
いや、まさかな。だが……あまりにも、
『████』
「……マジかよ」
その名を聞いて、俺は天を仰いだ。運命ってのはマジに因果なものだな、オイ。
『……知っているのか?』
「音楽家の世界で、俺以上にその人を知ってる奴ぁいねえよ」
そう、それ即ち。
「その名前は──────二年前に死んだ、俺の師匠の名前だ」
……零崎曲識。こんなところで、師匠の名前を聞くことになるなんて思ってなかったよ。
そして更に時は経ち、日曜日。休みではあるがコンペの本番まで一週間となり、生徒らは普通に登校している。当然達也も登校しており──────途中でFLTに顔を出したらクラッキングのカチコミ真っ最中だったり尾行されていたりと色々あったが──────今日の作業に取り掛かる。今日は雨が降っており屋外活動が出来ないので室内だ。
「一応聞くが、屋外作業の間魔法で雨を逸らし続けるとか……」
「校庭全域とか三時間が限界だわ殺すぞ」
何となくの質問に対してカチキレ返答を受け、『それでも三時間は出来るのか……』と困惑・戦慄しながら隣を歩く
「なあ達也、この前話したことだけどよ」
「……ああ」
それは、比企谷八幡の師について。生前の師のことについて、一体何を……誰と、何処まで話せばいいのか。それを、お互いが迷っていた。
比企谷八幡は、師が属した暴力の世界。そして共に並ぶ、合計四つの「裏の世界」について。
司波達也は、自分たちの正体・素性。四葉の憎悪と怨念が作り上げた『
何も考えず全て教えられるなら、どれだけ気が楽だろうか。互いに相手の秘密を知らぬが故に、明かした時の拒絶が恐ろしい。
「ま、今はいいや。とりあえず目下の問題はコンペだ、俺らの個人的事情なんざ後回しにしたって然程問題ねえだろ?」
「……そうだな」
その言葉に意識が少しマシになったのか、小さく苦笑する達也。そう話しながらも、二人は実験棟に到着した。
「お帰りなさいませ」
ガレージにいる「人間」は彼らのみだが、二人の入室から一拍遅れて、彼を出迎えた「人影」があった。黒を基調とした膝下十センチのバルーンスリーブワンピースにフリルのついた白いエプロン。白のストッキングに黒のローファー。頭にはこれまたフリルのついた
「一年E組、司波達也」
「一年A組、比企谷八幡」
苦笑を浮かべたまま、達也は短く名乗った。出迎えた「少女」が半秒ほど直立姿勢で動きを止め、その後、深々と腰を折る。動きを止めたのは声紋認証に要した時間。顔認証と声紋認証により、達也たちはようやくこの部屋のセキュリティをパスしたことになる。
「コーヒーをご用意・致します」
「俺は自前でジュース持ってきたから、達也のだけでいいぞ」
「かしこまりました」
少しぎこちない口調と少しぎこちない動作。だがその「ずれ」は、注意して観察しなければ気にならない程度。
──────彼女の名前は「3HタイプP94」。ロボ研では、その型番を縮めて「ピクシー」と呼ばれている。ロボット研究部に所属するHumanoid Home Helper、3Hと呼ばれる人型家事手伝いロボット。それがこの「少女」の正体だった。どうも当代のロボ研三年生にHARの大手メーカーの関係者がいるらしく、AI改良目的のモニター用に貸し出されているのだ。
通常3Hの外見は二十代後半の女性に設定されているが、この個体は校内で違和感を少なくするという目的から十代後半の外見に設定されている。確かに、一高の制服を着せて教室に紛れ込ませても、黙って座っている限り「無表情な女子生徒」で通りそうだ。その上に「クールビューティーな」という形容詞を付けることも可能だろう。……だが。
「フェチズムが透けて見えるなぁ……」
「透けるというか単体で鎮座してるだろ」
メイド服が全てを台無しにしている。八幡は呆れ混じりに、達也は心底どうでも良さそうに呟く。コーヒーを用意するために動くピクシーを眺める八幡を横目に見ながら、達也がふと呟いた。
「……八幡お前、そういう趣味か?」
「ばっか、俺はどちらかっつーと大正モダンな古き良き喫茶店の和装女中服の方が……って何言わせんだお前」
「お前が自爆しただけだが」
男子高校生らしい軽口を叩きながら、端末を立ち上げる達也。そこから少し離れたところで適当な椅子をかっぱらって八幡が座り込む。骨伝導イヤホンをつけた状態で携帯端末を起動、ゲームを始めていた。普段は通常のワイヤレスイヤホンなのに、耳を塞がない骨伝導にしているのは何かあった時音ですぐ察知出来るようにだろう──────それを悟りながら、達也は作業を始めた。
そうして作業を続け、一時間ほどしたところで。
「……ん」
八幡が突如立ち上がる。そして次の瞬間、ある
「創生せよ、天に描いた星辰を。我らは煌めく流れ星」
「詠唱省略、
次の瞬間、室内が猛烈な突風に曝される。
「八幡、どうし……っ!」
そこで達也も気付いた。自分が、唐突な友人の奇行に
「家を出てから飲んだのは、コーヒー……」
だが、達也は既にコーヒーに異物混入がされていないことを確認している。ましてや自分で飲料を用意した八幡がこの蛮行に出ている時点で、そも飲料が問題ではない。そして今八幡が起こしている
「そうか、ガス!」
その言葉に頷く八幡。そして風を操作し、大気を一点に凝縮させる。人間が触れれば無限の鎌鼬により、刻まれるどころか
「……ガスの収束か」
「正解。換気システムで外に排気してもいいが、俺にはガスの成分がわからん。万が一濃度次第では致命的な代物だった場合、排気先に人がいたら昏睡事故すら起きかねないからな。一旦ガスの大半を集めて俺たちの安全を確保させてもらった」
念の為室内を走査する達也だが、残留するガスも人体に無害な程度。仮に害があったとしても『もしこの後授業があれば眠気と悪戦苦闘する羽目になるだろう』といったくらいだ。
「空調システムに・異常が・発生しました。マスクを・お使いください」
とそこに、二人に近付いたピクシーの声が響いた。その手には防毒マスク、ゲル状高機能素材を組み込んだ代物である。
「……何に備えてんだよ、ロボ研は」
「全くだ」
だが特につけない理由もない。二人が大人しくマスクを受け取り装着すると、ピクシーは言葉を続けた。
「角膜が・汚染される・おそれがあります。手を引いて・外へ・誘導します」
「……言語ソフトを改良して欲しいな」
「言ってる場合か?」
どうやら最新型3HであるP94には災害時対応までプログラムされているらしい。それとも、ロボ研が「育成」した成果だろうか。睡眠ガスが目を傷つける種類のものではないことを達也は知っている……にも関わらず、彼は言われたとおり目を閉じた。しかし、外へは向かわない。
「ピクシー、強制換気装置を作動。避難時の二次災害を警戒し、俺はここに留まる。監視モードで待機。救助の為の入室に備え、排除行動は禁止する」
続けざまに下された達也の命令を、P94は受け入れた。
「二次災害回避を・合理的と・認めます。強制換気装置を・作動させます」
空調システムとは別系統で設置されている、災害時対応の強制換気システムが作動を始めた。3Hの本分はホームオートメーションの音声対話型インターフェイスとしての機能。小型燃料電池を動力源とする二足直立のフレームは、力仕事に向いていない。挙句人型という制約から搭載できるセンサーにも限りがあり、余り高度な精密作業もできない。
何故なら3Hの開発コンセプトは単体で稼働する人間以上の力や精度を持つ労働力ではなく、人がストレス無くホームオートメーションを使用できるように作られたインターフェイスなのだ。
「八幡」
「おう、釣り野伏だろ?」
話が早くて助かる、と頷く達也。意思疎通を瞬く間に終えると、達也はマスクを外して元いた場所に戻り目を閉じて身体の力を抜く。そして八幡は飛行魔法を発動し、出入口真上の天井に張り付いた。
「(前に
当時は魔法もないのに、純粋な筋力で壁と天井に張り付く人類がいたことに柄にもなく驚いたことをよく覚えている達也であった。
そして、待ち人はすぐにやって来た。ガスが取り除かれた後も目を閉じたまま神経を研ぎ澄ませてジッと座っていた達也は、誰かが足音を忍ばせて入って来たことに即座に気がついた。予めピクシーに入室チェックを行わないよう命じておいたのは、誰かがこっそり忍び込むことができるお膳立てだったのだから、達也たちとしては来てもらわなければ期待外れなのだが。
「司波?」
聞き覚えのある上級生の声。達也が眠っているかどうかを確かめ、仮に起きていたら言い訳ができるように……という配慮なのだろうが、このタイミングでこの部屋へ入ってきたこと自体が不自然なのでこのアリバイ作りは中途半端と言えるだろう。達也は無論、狸寝入りを決め込んだ。
「司波、眠っているのか?」
もう一度達也に声を掛け応えが無いことを確認して、侵入者は何かを探す素振りを見せた。しかしすぐに、侵入者の視線はデモ機へ固定された。端末でなかったのは、ロックが掛かっているのを見て早々に諦めたのか、それとも最初から直接データを吸い出すつもりだったのか。達也が薄目を開けて見ているとも知らず、監視モードのピクシーに映像を記録されているとも知らず、そして何をとち狂ったのか某
「関本さん、何をしているんですか」
そこへ不意に、出入口から掛けられた声に、侵入者がビクッと身体を震わせ慌てて振り返った。
「(……ここまでか)」
達也が心の中でこう漏らしたのは、愉快な独り相撲が早くも幕引きとなったことを惜しんだからだが、当事者たち──中断させた方とさせられた方──は、そんな人の悪い娯楽など全く知ったことではなかっただろう。
「千代田、どうしてここに!?」
「どうして、ですか? あたしがここに来たのは保安システムから空調装置の異常警報を受け取ったからですが、関本さんこそ、どうしてここへ来たんですか? 手に持っているそれは何です?」
「バカな、警報は切ってあったはずだ……!」
余程動揺しているのか、それとも極端に予想外の出来事に弱いのか。そんな不用意すぎる一言を漏らした関本を、花音は鋭く睨みつけた。
「そうですね。警報は自動ではなく手動で届きましたから」
警報を送ったのは達也ではなくピクシーだ。機械が自分の判断で行ったことだから、これも「自動」の一種なのだが……まあそれは花音の知るところではない。それよりも、だ。
「しかし、聞き捨てのならないことを言いましたね、今」
関本がうっかり自白した内容の方が重要だった。
「警報を切ったとは、どういうことです?」
犯罪者が常に理性的で合理的な行動を取る、ということは無い。むしろ犯罪行為中は過度の緊張から、普通ならあり得ない凡ミスをしでかしてしまうものだ。だから何時間も何日も後から、事後的にしか動くことのできない捜査当局が犯人を特定できる手掛かりを得たりできるわけだが、今、関本はまさに犯罪者が陥る心理的陥穽に足をとられていた。どうにか誤魔化すための言葉を練ろうと頭を回す関本が周囲に視線を走らせ──────次の瞬間、天井に張り付いていた
「──────ひっ」
「えっ? ……うわっ」
関本の動揺に反応し、同じ方を向いた花音がドン引きの声をあげる。さすがにこれ以上張り付いていても仕方ないので飛び降りる八幡。
「……さて、関本先輩。一体どんな理由でこのような凶行を?」
無理無理無理ここから元の雰囲気戻せんって。花音は心の中でそう叫んだ。
面白かったら感想くださると励みになります。
『
ライブラ・オブ・ジ・アストレア。
気流操作魔法。鎌鼬やら突風による妨害・攻撃などは序の口であり、竜巻や果ては積乱雲を作り出し雷撃を叩き込むなど、そのレベルは『天候操作』の領域にまで突入している。