魔法科高校の音使い   作:オルタナティブ

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たった数話でお気に入り件数150越えという様にありがたく思いながらもつまんないのは書けないな……とプレッシャーがかかる今日この頃。どうも、最近チェンソーマンにどハマりした作者です。どうにかしてチェンソーマンネタを突っ込もうかと考えてますがあんま思いつかないっすね。出来そうなのはアニメ12話でやってたようなサムライソード戦後の金玉蹴り上げ大会くらいか。


第四話

 

放課後。昼休みに未然に防がれた逃亡を再度行おうかと考えたが、そうすると今度こそ殺されそうな気配がしたので大人しく向かう。司波妹と共に教室を出て途中で司波兄と合流という形だ。

 

生徒会室に到着したので、ドアをノックして司波兄から入る。

 

「失礼します」

 

三人で入り、まずは一礼。俺だけ軽い会釈みたいになってるけど。

 

「司波達也です」

 

「司波深雪です」

 

「え?あー、比企谷です」

 

生徒会室に入ると、中では各自が仕事を行っていた。

まずは俺ら三人に七草先輩と渡辺先輩が気付き、手をあげる。

 

「よっ!来たな」

 

「いらっしゃい深雪さん、達也君と比企谷君もご苦労様」

 

そのとき、奥にいた長身の男子生徒が俺達に厳しい視線を向ける。その視線には敵意が含まれていた。お?喧嘩か?そして段々と近付いてきて、

 

「副会長の服部刑部(ぎょうぶ)です。司波深雪さん、比企谷八幡さん、生徒会へようこそ」

 

()()()()()()()()()()歓迎の文句を垂れた。

 

司波妹は態度に思うところがあったのか、少しムッとしている……が、抑えたのか一礼した。七草先輩もあの態度には思うところがあったのか少し苦い顔をするが、今は触れるべきではないと判断したのか中条先輩へと指示を出し、服部先輩が司波兄を無視し席に戻ろうとした瞬間──────

 

「ちょっと失礼」

 

ぐいっ

 

「いだだだだっ!?!?!?」

 

俺が両目の瞼を無理やりこじ開けた。先輩はすぐさま振り払うと、俺を睨みつける。

 

「……っ、何をするんだ!」

 

「や、俺と司波妹は見えてんのにその間にいる司波兄のことは見えてないっぽいんで。若年性の緑内障なのかなって」

 

「くっ……」

 

「ふくっ」

 

俺のその言葉に、微かに笑い声を漏らす二人。言わずもがな七草先輩と渡辺先輩である。

 

「ふふふ……早速だけど、あーちゃん、お願いね」

 

「……はい」

 

そして中条先輩は指示通りに司波妹を壁際の端末へと誘導する。中条先輩は流石に笑わなかったな。こりゃ俺のいきなりな失礼ムーブに焦りが勝ったっぽい。

 

「じゃあ、あたしらも移動しようか」

 

「何処にっすか?」

 

「風紀委員本部だよ。色々見てもらいながらの方が分かりやすいだろうからね」

 

「え、俺も?」

 

俺がそう聞くと、先輩は何を言っているんだと言わんばかりに答える。

 

「君は教職選任枠だろう。当然だ」

 

「……うっす」

 

そして俺と司波兄が渡辺先輩についていこうとしたとき。

 

「渡辺先輩、待って下さい」

 

服部先輩が渡辺先輩を呼び止めた。

 

「何だ?服部刑部少丞(しょうじょう)範蔵(はんぞう)副会長」

 

「フルネームで呼ばないで下さい!」

 

……フルネームなんだ、あれ。仮名とか諱の類なのかな。

 

「じゃあ服部範蔵副会長」

 

「服部刑部です!」

 

「そりゃ名前じゃなくて官職だろ。お前の家の」

 

「今は官位なんてありません!学校には『服部刑部』で届けが受理されています!……いえ、そんなことが言いたいのではなく!」

 

「じゃあなんだ?」

 

服部先輩は司波兄の方に視線を向け、冷静に言った。

 

「その一年生を風紀委員に任命するのは反対です」

 

「というと?」

 

渡辺先輩の言葉に、服部先輩は続ける。

 

「過去……二科生(ウィード)を風紀委員に任命した例はありません」

 

服部先輩の言葉に、渡辺先輩は眉をつり上げる。

 

「二科生をウィードと呼ぶのは禁止されている。私の前で使うとは良い度胸だな」

 

「取り繕っても仕方ないでしょう。それとも全校生徒の三分の一以上を摘発するつもりですか?風紀委員はルールに従わない生徒を実力で取り締まる役職です!実力で劣る二科生(ウィード)には務まらない!」

 

服部先輩のある種傲慢とも言える主張に渡辺先輩は先輩として、司波兄が風紀委員に相応しいと確信した理由を言い返した。

 

「確かに風紀委員は実力主義だが、実力にも色々あってな……達也君には起動式を直接読み取り、発動される魔法を正確に予測する目と頭脳がある」

 

「まさか!?基礎単一工程の起動式だってアルファベット三万字相当の情報量があるんですよ!?それを一瞬で読み取るなんてできるはずがない!」

 

そう。普通ならできるはずがない。それがこの世界における魔法師(俺たち)の一般常識である。実際俺にも正規の手段じゃ無理だし。

 

「常識的に考えればできるはずがないさ。だからこそ、彼の特技には価値がある」

 

普通の魔法師には使う魔法を発動前の段階でなど分かる訳がない。なるほどその通りだ。だが仮に、それが分かる魔法師がいたら──────

 

「彼は今まで罪状が確定できずに軽い罪で済まされてきた未遂犯に対する強力な抑止力になる。それに……私が彼に委員会に欲する理由がもうひとつある」

 

「お前の言うとおり当校には、一科生と二科生の間には感情的な溝がある。一科の生徒が二科の生徒を取り締まり、その逆がないという構造はこの溝を深めることになっていた。私の指揮する委員会が差別意識を助長するのは私の好むところではない」

 

「…………っ!」

 

服部先輩は歯噛みすると、七草先輩の方を向く。

 

「会長!私は副会長として司波達也の風紀委員就任に反対します。魔法力のない二科生に風紀委員は務まりません。この誤った登用は必ずや、会長の体面を傷つけることになるでしょう。どうかご再考を!」

 

そのとき服部の主張に異議を申し出る声が上がった。

 

「待って下さい!」

 

他でもない司波妹だった。

 

「兄は確かに魔法実技の成績が芳しくありませんが、それは評価方法に兄の力が適合していないだけのことなのです!実戦ならば兄は誰にも負けません!」

 

「司波さん」

 

服部先輩が司波妹に話しかける。

 

「魔法師は事象をあるがままに、冷静に、論理的に認識できなければなりません。不可能を可能とする力を持つが故に、社会の公益に奉仕する者として自らを厳しく律することが求められています。魔法師を目指す者は身贔屓に目を曇らせることがあってはならないのです」

 

「お言葉ですが私は目を曇らせてなどおりません!お兄様の本当のお力を以てすれば……」

 

「深雪」

 

司波妹の前に司波兄の手が翳される。すると司波兄は司波妹を一瞥したあと、服部先輩の正面に移動した。

 

「服部副会長、俺と模擬戦をしませんか?」

 

「…………なに?」

 

おわ、こいつ中々度胸あるな。真っ向から喧嘩売りよった。そして全員の視線が集まる中、服部先輩の身体がブルブルと震え……叫んだ。

 

「思い上がるなよ、補欠の分際で!」

 

「ふっ」

 

罵倒を受けたにも関わらず、司波兄は困ったような表情を浮かべ、苦笑した。

 

「何がおかしい!」

 

「先程……ご自分でおっしゃっていたではないですか。魔法師は冷静を心掛けるべき、でしょう?」

 

「く……」

 

「ハーーーーーーッwwwww」

 

言い返されたのが面白くて思わず甲高い引き笑いを上げてしまい、全員の目がこっちに向く。アッス、ゴメンナサイ……。

 

「……俺は別に風紀委員になりたい訳じゃないんですが……妹の目が曇っていないと証明するためならば、やむを得ません」

 

「……いいだろう。身の程を弁えることの必要性を、たっぷり教えてやる」

 

そうして、司波兄vs服部先輩の模擬戦が決定された。帰っていいか?

 

 

 

 

 

「ルールを説明する。相手を死に至らしめる術式並びに回復不能な障碍を与えるような術式は禁止。直接攻撃は相手に捻挫以上の負傷を与えない範囲であること。武器の使用は禁止。素手による攻撃は許可する。勝敗は一方が負けを認めるか、審判が続行不能と判断した場合に決する。双方開始線まで下がり、合図があるまでCADを起動しないこと。ルール違反は私が力ずくで処理するから覚悟しろ。以上だ」

 

実技棟の演習室に移動し、中心にて向かい合った司波兄と服部先輩の側で渡辺先輩がルールを説明する。その言葉の後に二人が開始線に立ち、司波兄は拳銃型のCADを握る右手を床に向け、服部先輩は左腕のCADに右手を添えて渡辺先輩の合図を待つ。

 

そして場が静まり返り、静寂が訪れたその瞬間……

 

「始め!」

 

二人の模擬戦の火蓋が切って落とされた。──────が、その決着は一瞬でついた。

 

 

 

「……勝者、司波達也」

 

合図された次の瞬間には司波兄は服部先輩の後方に回り込んでおり、先輩にCADを向けていた。そして、その発動された魔法を受けて先輩の身体は崩れ落ちたのだ。……マジか。クソ速ぇなあいつ。視界の端で追うのがやっとだったぞ。ああ、いや。そうじゃねぇ。速さも凄かったが、俺が一番驚いたのはもっと別の部分だ。

 

「……いい()だ」

 

「……? 比企谷君、どうかしましたか?」

 

俺が感動に打ち震えていると、司波妹が俺の様子を見て不思議に思ったのか尋ねてきた。

 

「いや、お前の兄貴すげぇなって」

 

「ふふっ、そうでしょう。私のお兄様は体術だって──────」

 

「あ、そこじゃなくて。まぁそこも凄かったが個人的には別んとこが気になってな」

 

俺がそう言うと、司波妹は首を傾げた。

 

「別のところ……ですか?」

 

「ああ。お前の兄貴がぶっ放した想子の波。俺はそんな多くの魔法師に出会ってきた訳じゃねぇが、あそこまで綺麗な()出せる奴は初めて見たぞ」

 

「……音?」

 

俺たちがそんなことを話していると、模擬戦を終えてCADをケースに納めている司波兄に渡辺先輩が声をかける。

 

「今の動きは……自己加速術式を予め展開していたのか?」

 

先輩の問いに倒れた服部先輩を介抱していた市原先輩と中条先輩も耳を傾ける。司波兄は試合開始の合図直後に既に服部先輩の後方に回り込んでいた。周りからは瞬間移動と見間違えるほどの速力であり、それは明らかに生身の肉体では出せる領域の速度ではなかった。

 

「……そんな訳がないことは、審判をしていた渡辺先輩が一番良くお分かりだと思いますが」

 

だが奴はそんな可能性を一蹴した。

 

後に聞いたところ、先輩は審判としてCADがフライングで起動されていないかどうかや司波兄が別のCADを隠し持っていないかも想定して、両者の想子の流れを注意深く観察していた。

 

「しかし……あれは」

 

「魔法ではありません。正真正銘、身体的な技術ですよ」

 

その言葉を聞いてもなお訝しむ先輩方に対して、司波妹が言ってのけた。

 

「あれは兄の体術です。兄は、忍術使い・九重八雲先生の指導を受けているのです」

 

「……………誰?」

 

や、マジで知らねぇ。

 

「知らないのか!?あの忍術使い、九重先生を!?」

 

「知らん」

 

誰だそいつ。

 

「じゃああの攻撃に使った魔法も忍術ですか?私には、サイオンの波動そのものを放ったようにしか見えなかったのですが」

 

七草先輩は司波兄の使った魔法のメカニズムが気になって仕方ないらしい。まあそれもそうだろう。サイオンの波動と言っても、別に殺傷性などがあるわけではない。そもそも物理的性質を持っていないのだから。……では、何故服部先輩は気絶したのだろうか。……色々と知覚できる俺だからそんな知恵回んなくても分かったが、そうじゃなきゃ相当な知識がないとわかんねぇだろこれ。

 

「正確には忍術ではありませんが、サイオンの波動そのものという部分は正解です。あれは振動の基礎単一系魔法で、サイオンの波を作り出しただけですよ」

 

「しかしそれでは、はんぞーくんが倒れた理由が分かりませんが……」

 

「酔ったんですよ」

 

「酔った?一体、何に?」

 

首を傾げる真由美に、達也は淡々と説明する。

 

「魔法師はサイオンを、可視光線や可聴音波と同じように知覚します。予期せぬサイオンの波動に曝された魔法師は、実際に自分の身体が揺さぶられたように錯覚するんです。その錯覚によって激しい船酔いのようになったということです」

 

理論上は可能である。実際魔法師見習い、魔法に触れ始めた子供が想子の波動により嘔吐などの体調不良の症状を晒すことはそう珍しい話では無いのだから。

 

「そんな、信じられない……。魔法師は普段、日常生活でも常にサイオンの波動に曝されて、サイオン波に慣れているはずよ?無系統魔法はもちろん、起動式や魔法式だってサイオン波動の一種ですもの。その魔法師が立っていられないほどの強いサイオン波を一体どうやって……?」

 

だが七草先輩はどうやら納得できないらしい。それは何故か。魔法師は想子を身に纏っている状態に近い。……しかも、四六時中。つまりその影響で、多少の強い波動を食らったとしても酔うことはないはず。だが実際に先輩は気を失っている。そんな七草先輩の疑問に答えたのは──────

 

「「波の合成」ですね。……おや、比企谷君も解っていましたか?」

 

「まあ、はい。これでも音楽家なんで。音を初めとした波動に関しては一家言ありますよ」

 

俺と市原先輩だった。

 

「振動波の異なるサイオン波を三連続で作り出したんです」

 

「んでもってその波動を、丁度先輩の位置で重なるように調整して合成。通常よりも強い波動……三角波みてぇな波動を作り出した。調律っつー面では、さながら和音のようにな。一歩間違えれば互いに減衰、弱め合う不協和音になりかねないっつーのに……良くやるよ」

 

「お見事です、市原先輩。比企谷もよく分かったな」

 

「音楽家が波長に関する知識で負けちゃ駄目だろうよ」

 

俺がそう言うと、市原先輩が更なる疑問を司波兄に投げかける。

 

「それにしても、あの短時間でどうやって?それだけの処理速度があれば、実技の評価が低いはずがありませんが」

 

市原先輩の疑問に苦笑で答える司波兄だったが、その手元を覗きこんでいた中条先輩が代わりにその答えを示してくれた。

 

「あのぅ…、もしかして、司波君のCADは『シルバー・ホーン』じゃありませんか?」

 

「シルバー・ホーン?あの謎の天才魔工師トーラス・シルバーのシルバー?」

 

七草先輩の問いに、中条先輩は元気良く答えた。

 

「そうです!フォア・リーブス・テクノロジー専属、その本名、姿、プロフィールの全てが謎に包まれた奇跡のCADエンジニア!」

 

中条先輩は司波兄の周りをチョロチョロと動き回りながら説明する。

 

「世界で初めてループ・キャスト・システムを実現した天才プログラマー!」

 

めっちゃテンション高ぇ。

 

「シルバー・ホーンというのは、そのトーラス・シルバーがフルカスタマイズした特化型CADのモデル名で、ループ・キャストに最適化されているんです!」

 

……リスとかの小動物感あるな。

余談だが、ループ・キャストってのは魔法に関するシステムのことだ。

簡単に言うと『同じ魔法式を連続で発動する』ためのもの。従来は再度起動式から構築し直さなければならなかったが、この発明により魔法の連続発動速度は一気に短縮。簡単に言えば魔法の世界に革命が起きたって訳だ。

 

「でもリンちゃん。それっておかしくない?」

 

「ええ、おかしいですね。ループ・キャストはあくまでも全く同一の魔法を連続発動させるためのもの。それでは振動数の異なる波動を作り出すことはできないはずです」

 

「振動数を定義する部分を変数にしておけば可能でしょうけど、座標・強度・持続時間に加えて、振動数まで変化するとなると……」

 

そこまで言って、市原先輩は目を見開いた。

 

「……まさか、それを実行しているというのですか?」

 

「多変数化は処理速度としても、演算規模としても、干渉強度としても……この学校では評価されない項目ですからね」

 

司波兄は、そう自嘲気味に言い捨てた。

 

「…………」

 

……すると。

 

「……実技試験における魔法力の評価は、魔法を発動する速度、魔法式の規模、対象物の情報を書き換える強度で決まる。……なるほど、テストが本当の力を示していないとはこういうことか……」

 

ようやく目覚めたのだろう、服部先輩が起き上がってくる。まだダメージが残っているのだろう、ややふらついている。そんな疲労困憊の状態で司波妹の前に歩いてくると、司波妹に話しかけた。

 

「……司波さん」

 

「……はい」

 

「さっきはその……身贔屓などと失礼なことを言いました。目が曇っていたのは、僕の方でした。許して欲しい」

 

そして頭を下げた。司波妹はそれに対し、

 

「わたしの方こそ、生意気を申しました。お許しください」

 

そう言って服部先輩に頭を下げる。その謝罪を受けた先輩は踵を返すと、ソッと演習場を出ていった。……しかし。

 

「失礼します!」

 

入れ替わりになるかのように入ってきた者の顔に、俺は思わずげんなりした。

 

「……何の用かしら?森崎駿君」

 

入ってきた男子生徒、森崎は室内に司波兄妹がいることに驚くが、それはまた別の話と捉えたのだろう。俺を睨みながらも七草先輩に強い口調で質問した。

 

「生徒会長、どうして教職員枠の推薦が僕ではなくその男になっているんです!?」

 

「ああ、そのことね。知っているだろうけど、風紀委員というのは学校の治安維持を務める組織なの。そして数が多すぎるせいで取り締まりきれず事実上有名無実化しているだけで、校則において二科生を差別する『雑草(ウィード)』呼びは違反行為として扱われているわ。学校の治安維持を行う側が積極的に治安を乱すなんて言語道断。比企谷君にはそんな差別意識もなければ腕も立つもの。ぴったりよ」

 

……なんか評価高くね?まぁあんなこと(初の入試実技満点)すれば高いか。

 

「くっ……おい、比企谷!」

 

あ、俺の事敵視してるのに名前間違えずに呼んでくれた。これだけでちょっと評価高い。まぁマイナス多過ぎてカス同然だけど。

 

「何だよ」

 

「僕と勝負しろ!僕が勝てば、風紀委員の推薦を僕に譲れ!」

 

こいつ無茶苦茶言ってね?生徒会からの推薦なら兎も角、教職員枠の推薦ならまず教職員に話通せよ。

 

「……………(「これどうしろと?」という意味合いの視線とハンドサイン)」

 

「……………(「いい案があるわ」という意味合いの視線とハンドサイン)」

 

……仕方ねぇ。この場は生徒会長に任せるか。

 

「分かりました。では森崎君と比企谷君の模擬戦を執り行い、勝者に風紀委員への推薦枠を贈呈しましょう」

 

前言撤回。あの女一回ぶっ飛ばした方が良いかもしれん。

 

 

 

 

 

「とりあえずCADだけ教室に置きっぱなんで取りに戻らせてください」と言って演習室を抜け出し、教室に戻る。はぁー………(クソデカため息)マジでどうしてくれようか。

 

教室に到着。デカい楽器ケースを持って演習室にリターン。……司波兄が一撃で服部先輩沈めたわけだし、俺も一撃で終わらせたりした方がいいのかな。よし、そうしよ。

 

「お待たせしましたー」

 

俺が持ってきたデカい楽器ケースに、今日の朝に見ていなかったメンバー……生徒会組と森崎が二度見してきた。

 

「……それは?」

 

「俺のCADっすよ。バカでかいんで取り回しは地獄です」

 

俺はそう言うと、ケースを開けて中からコントラファゴット型CAD……『セブンスコード:ドルチェ』を取り出す。それを見た司波兄が、今朝よりも大きな反応を示した。

 

 

 

「お兄様、どうかなされましたか?」

 

「……深雪。あのCAD、俺が前に依頼されて造った代物だ」

 

俺のその言葉に、深雪は微かに驚いた様子を見せる。

 

「お兄様が?……確かに、楽器とCADの複合などお兄様クラスの技術が必要かもしれませんが」

 

……本当に、そんな代物を使いこなせるのだろうか。そんな言葉こそ声に出すことは無かったが、その考えは俺も同じだった。

 

「ああ、お兄様。そういえば、先程のお兄様の模擬戦に対して比企谷君が気になったことを言っていまして」

 

「……気になったこと?」

 

「はい。お兄様のサイオンの波動に対して、『綺麗な音』と言っておりました」

 

「……音、か」

 

……比企谷八幡。深雪以上の魔法の技術を持つ者。見せてもらうぞ、その腕を。

 

 

 

 

 

軽く鳴らし、チューニングを行う。よし、こんなもんか。

 

「……遅い」

 

「うっせぇな。お前がいきなり来るから態々取りに戻って調律までしなきゃいけなくなったんだよ。文句言うんじゃねぇ」

 

下痢が止まらなくなる曲を演奏してやろうか。

渡辺先輩が先程の司波兄と服部先輩の模擬戦と同じルールを説明し、俺と森崎は開始線に立ち何時でも始められるように構える。

森崎は腰のホルスターに収められたCADに手を添え、俺はドルチェを持ってリード……吹き口を口元に持ってくる。

 

作詞・作曲、比企谷八幡。

 

作品ナンバー97──────

 

 

 

 

 

「始め!」

 

『慟哭』。

 

決着は先程の模擬戦のように、一瞬でついた。

 

 

 

 

 

まるで爆弾が眼前で爆発したかのような、腹の底まで響く重い衝撃。

実際に受けてなお、『これが一人の、楽器から放たれた代物である』とは俄には信じられない規格外の一撃。

壁沿いにいた俺たちですらこうなのだ。より近い場所にいた渡辺先輩は更に酷い有様だろう。……よく見ると今にも嘔吐しそうな酷い顔色だ。そして、一番哀れなのは森崎だ。発生源である比企谷を除けば、最も近い場所にいたのが森崎である。視線を向けると……ああ、やはりな。気絶している。CADを抜くことすら出来ずに一瞬で意識を刈り取られたようだ。

 

「うぐっ……お兄様……」

 

「大丈夫か、深雪」

 

吐き気を催している深雪を介抱しながら比企谷を睨む。すると、俺の視線に気付いたのだろう。辺りを見渡し、気絶した森崎と中条先輩を除いた全員の酷い有様を見ると申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「すんません……詫びとして一曲どうぞ。気分の悪さを抑える曲です。作詞・作曲、比企谷八幡。作品ナンバー27、『晴天』」

 

そう言って、再びコントラファゴットを吹く。今度は先程の爆発音じみた音ではなく、突き抜けるかのような蒼空を思わせる清々しい旋律。たちどころに……というほどではないが、少しずつ先程の衝撃による不快感が収まっていく。……なるほど、これが『音使い』か。凄まじいな。

 

「おえぇ……ま、まあ。文句なしの瞬殺だったわけだし、これで比企谷君の風紀委員入りにケチが付けられることは無いわね!」

 

「うぐ、た、確かにな。改めて、おえ、歓迎しよう」

 

「や、落ち着いてから物言ってくださいよ。昼に自分で風紀委員やりますって言ったんだから逃げはしませんって」

 

まだ吐き気が抜け切っていない様子の七草先輩と渡辺先輩に対してそう気遣う比企谷。と言ってもこの惨状を作り出したのは比企谷なんだがな。

その後、5分ほどかけて復活した先輩方により俺たちに生徒会や風紀委員の仕事についての説明が為され、この日は帰宅という流れになった。

 

「……比企谷」

 

「ん?」

 

帰り道。当然ながら帰る時間が同じとなった俺たち兄妹と比企谷は、同じ帰路についていた。そんな中、俺は気になったことを確認するために比企谷に声をかけた。

 

「大した質問ではないんだがな……深雪から聞いたんだが、『音』がどうとか言っていたらしいな」

 

「あー……そんなことも言ったな」

 

……誤魔化すかと思っていたが、あっさり肯定されて少し拍子抜けした。変わった内容だったから深入りされたら困る内容なのかと思っていたんだがな。

 

「で、その『音』というのはどういうことなんだ?」

 

俺の問いかけに対し、比企谷は数秒ほど考え込む。……その様子は、『話すかどうか』というよりも『どう言語化しようか』といった雰囲気だった。

 

「んー……ま、別に良いか。別に知られたところで困ることじゃねぇし」

 

比企谷はそう言うと、言っていた『音』についての説明を始めた。

 

「つっても、お前の『魔法式の読み取り』とそう変わんねぇよ。まァ俺の方がちょっと劣化版だけどな。簡単に言えば、俺は魔法式や起動式を『音』として知覚出来る耳を持ってんだよ」

 

……『魔法式を音として知覚する耳』。それはまるで、俺の持つ『精霊の眼(エレメンタル・サイト)』のようだった。

 

「それは……また凄まじいな」

 

「そうか?結構使い勝手悪いぞ。音として知覚するせいで普通にしてると人の話し声とかの他の音に紛れちまうし……多分、お前が持ってても上手く使いこなせないんじゃねぇかな」

 

「聞いている限りでは中々便利そうだが」

 

「そうでもねぇよ。だって考えても見ろよ、魔法式を聞き取れるっつっても……そうだな、例えば別の対象に魔法を使ったら魔法式は変数の部分でほんの僅かに変化するだろ?お前みたいな『視認する』ならまだしも、俺みたいに『聞き取る』場合は変化が小さ過ぎて基本わかんねぇんだよ。例えるなら……そうだな、『普通に演奏した曲』と『大半は同じだけどたった一瞬だけ通常の音階にシャープつけて半音上げた曲』を一回ずつ聴いてどこがどう違うのかを一発で当てろって言ってるようなもんだ」

 

想像の数百倍くらい使い勝手が悪かった。俺の『眼』について知っている深雪も驚いている。……確かに、俺の持つ『眼』よりはずっと使い勝手が悪いだろうな。

 

「あ、俺ん家こっちだから。また明日」

 

「ああ、また明日」

 

「また明日、お会いしましょう」

 

そうして俺たちと比企谷は別れて家に帰った。

不意打ちだったとはいえ俺や深雪の自由を即座に奪える音使いの技術の高さと深雪以上の実技成績。しかし、自分の能力を気軽に明かす謎の振る舞い。深雪の安全に対して不安になりながら、俺は深雪と共に家へと向かうのだった。




初戦闘(なお一瞬で終わる)。自分でも思うけどギリギリ詐欺じゃないってだけで限りなく詐欺だなこれ。

現状を死ぬほど適当に表すと

達也(なんだこいつ……深雪以上に魔法が上手いから敵になるかなと思ったら俺を賞賛したり自分の能力明かしたり……マジで敵になるか味方になるかわかんねぇ。なんだこいつ)

八幡(別に知られたところで損するわけじゃないし別に隠してることでもねぇから明かそ。え、差し金?マジで何の話?)

こんな感じ。達也は死ぬほど疑って勘繰って怪しんでますけど八幡には探られて痛い腹が何にもない、強いて言うなら師匠が殺人鬼ってくらいしかないガチ一般人なので傍から見ると笑えることになってます。

『仮称:地獄耳』
比企谷八幡の持つ特異体質。
本文にて示された通り、『魔法式や起動式を音として知覚する』特殊な聴覚。
達也の持つ『精霊の眼』に似通った部分こそあるが、基本的には完全下位互換。
魔法式などを音として知覚出来るだけであり、『精霊の眼』のように物体のエイドスを読み取れるわけではなくあくまで出来るのは『魔法式や起動式の知覚』のみ。挙句、その性質上情報を読み取るのではなく『音として受信する』だけなので相手が魔法を完全に行使して初めて『どの音がどの魔法なのか』を判別できる。
八幡が言った通り、基本的には『ちょっと聞こえる音が多いだけ』の大したことの無い能力。

ただし、八幡の場合はその力を応用し魔法科世界においては最強最悪クラスの裏技を成立させている。

次回は部活勧誘期間の見回りです。次回がいつ投稿されるかは分かりませんが、なるはやで執筆したいっす。

九校戦……出場競技はモノリス・コードとどれ?

  • 氷柱倒しで一条将輝と全面戦争!
  • 他の競技に出て格の違いを見せてやれ!
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