青色サヴァンと戯言遣いの娘、誇らしき盾……いや、
そうしたら成長した盾ちゃんに付いてるのが「戯言遣い」「元青色サヴァン」「殺し名序列二位」「『少女趣味』の後継者」になるのか。こわ。
後感想では無いですがメッセージが来たので言いますと、この作品での八幡のヒロインに関しては「いるけどまだ決まってない」状態です。自分は仮にハーレムするならそれをするだけの理由をちゃんと立てたい人間なのでヒロインが一人になるか複数になるかすらも未定ですね。
そういえば戯言シリーズでは各章の最初に何らかのフレーズがありますよね。『すきすきだいすきあいしてる』だとか『信じるものは巣食われる』だとか。あんな感じで行くなら、今回はこんな感じでしょうか。
人に平等なのは不平等だけ。死すらも望んだ形で来るとは限らないのだから。
剣術部の一件が起きてから数日。
俺と司波のことは『一科生大勢を相手に無傷で無力化した一年コンビ』として学校中に広まってしまった。
俺はそれと同時に何処からか『入試実技満点』であることも広まったためにさしたる影響は無かったが、問題は司波の方だ。
『二科生だから』という理由で嫌がらせが多発している。
正直やってるとこ見かけたら止めるようにはしているが、個人的に一番大変なのは兄が嫌がらせされてることを知ってキレ散らかす司波妹を制止することなんだよな。北山と光井との三人がかりで毎回止めてるが、このままだとクラスメイトがコールドスリープされて一世紀先までクール便で送られてしまう。
いやまあ俺としても知り合いが嫌がらせされてんのは思うところがあるので寧ろやっちまえって言いたいけど、これでも風紀委員なので。流石に知り合いがやばい事やらかそうとしてるのは止めなきゃならない。
1-Aの連中には「悪いこと言わんから凍結処分されて現代の浦島太郎になりたくなきゃ辞めとけ」って言いまくって大分減ってきてはいるが……それでも多いのが現状だ。
しかも鎮静効果のある曲を演奏しても『そもそも怒りで耳に入ってない』から効果が薄いんだよな。ほら、シンジュク・ディビジョンの三番手の
「ってな訳で大変だよ」
「……深雪がすまないな」
「や、別にいいけどよ。良い妹じゃん。兄貴の為にあそこまで怒れる奴って今日日希少だぜ?俺にも妹がいるけどあそこまで俺のためになんかしてくれるかって言われると多分やらねぇし」
「そうか。仲が悪いのか?」
「や、悪くはねぇんだけどさ。親が非魔法師でな、魔法師差別する人間主義者って訳じゃないが……それでも魔法師になった俺を怖がってるんだよ。妹自身は魔法師に対しての偏見とかは無いが、本人が非魔法師だから俺に関わると親が嫌な顔すんの」
「……お前も苦労しているんだな」
「そのお陰で一人暮らしが楽で仕方ねえ」
一挙手一投足にビビられない生活ってめちゃくちゃ気が楽だぞ。
「ま、兎にも角にも漸く勧誘期間も終わって少しは落ち着くだろ。お前への嫌がらせ以外は」
「可能ならばそれも終わって欲しいんだがな……」
自力で充分対処出来ているが、だからこそ余計に反感を買うんだろうな。こういうとこカスよな人間って。どの目線だよ俺は。
「さ、今日は非番だし俺は帰るよ。お前はどうする?何もねぇんなら労いも込めてコーヒーでも奢るが」
「……そうだな。深雪を生徒会に送り届けたら馳走になろう」
そんな改まらなくても。アイネブリーゼのコーヒーだぞ。良いやつでも4桁手前程度なのに。これでコピ・ルアク*1とかブラックアイボリー*2奢られたら改まるし畏まるかもしれんが。
そうして司波兄が妹を送り届けるのを待っていると、レオ*3やエリカ、柴田に北山と光井……司波兄妹を除いた『いつもの面々』と出くわして共にアイネブリーゼに行くことに。……司波遅いな。
後に聞いたところ、先日の……なんだっけ、壬生先輩だっけが司波に用があったみたいで少し話していたらしい。
「……比企谷」
「ん?」
「砂糖とミルクを入れ過ぎじゃないか?」
その後、アイネブリーゼに来た俺たちは店のコーヒーを飲んでいた。女性陣はケーキも食べているが。そんな中、俺のコーヒーを見て司波が呟いた。
「そうか?普段からこんなもんで飲んでるからな」
「角砂糖幾つ入れた?」
「5」
「ミルクはどれだけ入れた?」
「んー……コーヒーの黒が薄い茶色になるまで?」
「入れ過ぎだろう」
そんな入れ過ぎだろうか。
「いくら医療も進歩しているとはいえ、その歳でその摂り方をしていれば糖尿病になるぞ」
「『膵臓のインスリン分泌機能を活性化させる』曲で血糖値下げてるから大丈夫だ」
「何でもありだな音使い」
実際色々出来るからな。すると、ふと疑問に思ったのだろう。北山が素朴な疑問を投げかけてくる。
「……実際、どんな曲があるの?」
「本当に多種多様だぞ?『イラつかせる曲』『やる気を無くさせる曲』『下痢が止まらなくなる曲』『足をもつれさせる曲』『眠くなる曲』……果ては新陳代謝を活性化させて『痩せる曲』なんてのもある」
「詳しく」
「めっちゃ食いつくじゃん……」
「や、まあ良く運動する私ならともかく普通の女子は食いつくわよ。『痩せる曲』なんて」
「にしても、悪用出来そうだよな。音を利用してるから何か起きても証拠残らねぇだろ?」
「ああ。中学ん時に嫌がらせされたのにムカついて音使って仕返ししたら学校が一週間閉校になったし」
「お前何した……?」
やー、2年の文化祭後でかなり酷かったからな。一部の交友のあるやつ除いたクラスメイト全員に『中学生にもなって学校で下痢便漏らす』という特大の黒歴史を植え付けてやった時は死ぬほど気分が良かったぞ。
その後、暫く談笑した後解散の運びとなった。
次の日。俺は放課後という直帰か風紀委員としての仕事をするかしかない時間帯に、ある先輩に呼び出されていた。
「……昨日は司波に用があったみたいっすけど、今度は俺っすか。なんか知らないけど見境無いっすね、"壬生先輩"」
……そう。俺を呼び出したのは先日の剣術部の乱入事件でいざこざがあり、昨日も司波に何らかの話をしたらしい壬生紗耶香先輩だった。後に司波に聞いたところ色々と前置いてはいたそうだが、俺に対してはその前置きが不要だと考えたのだろう。下手なことを言わず、直球で本題に入った。
「……比企谷君は、この学校の制度についてどう思う?」
「制度、ですか」
そこからの壬生先輩は熱かった。暑苦しいくらいだ。熱く、暑く、厚く、篤い。言葉に籠った熱。ヒートアップした暑さ。学校のシステムすらも変えたいと考えるほどの想いの厚さ。そして、同じく無碍に扱われる級友らへの情念の篤さ。途中から演説じみてきたソレを聴いて──────俺は、
「ねぇ比企谷君、一緒に手伝ってくれない?一科生でありながら二科生とも分け隔て無く接しているあなただったら、他の一科生達に“模範的な姿”を示すことができるんじゃないかしら?」
「やだ」
ばっさり。端的に、たった二文字でぶった切った俺に、壬生先輩は目を白黒させる。
「ど、どうして……?」
「まず大前提として、俺は一科生二科生という区別に対してさほど価値を求めていない。二科生である司波たちとつるんでいるのも、『つるんでいる奴が二科生である』というだけでしかない。気に食わないやつであれば二科生であろうと一科生であろうと嫌うし排斥する。気に入ったやつなら歓迎する。褒められたものではないだろうが、まァ立場で手のひらを変えるよりはずっと健全だろうよ」
「それなら、どうして……」
「続いて、俺は『顔も名前も知らん他人の為に動いてやる』ほど善人じゃない。短い付き合いではあるが、俺の知り合いの二科生──────司波やレオ、エリカや柴田は『二科生という理由で向けられる悪意』に対して先輩の見てきた同級生のように屈するほど弱い人間じゃないということは見てわかる。勿論あいつらが『二科生への悪意』を受けて耐えられないようなら守るし助けるし力になるが……『そうでない』なら、動く気はない」
「……友達というごく一部が平気なら、他はどうなってもいいってこと?」
「ああ」
冷たく切り捨てる。生憎俺の手は二本しかないんだ。友達でもなんでもないやつに割いていられるほど、俺は器用じゃないし余裕もない。あっても助けないけど。
「そして、先輩はそもそも勘違いをしてる」
「……勘違い?」
「そう。競争社会ってのは何も学校内の話だけじゃない。例えば大人だって『同一労働・同一賃金*4』なんてものがある。勿論『初めから扱いが違う』のならば不当になり得るだろうが、『成績や大会などの結果』に応じて待遇が変わるのはごく当たり前のことだ。極端な話だが、テストも赤点まみれで授業態度も最悪。果ては暴力事件などの問題を頻繁に起こす生徒と成績優秀品行方正な生徒が居たとして。アンタはその二人に対して『全く同じ態度で接する』ことが出来るか?」
「……それ、は」
俺のその返しに、先輩は言い淀んでしまう。
「無理だろう。俺だって無理だ。何だって、誰だって何処かで差は生まれる。出来てしまう。生まれてしまうものだ。先輩の掲げる思想は立派だよ。正しく理想だ。人の夢と書いて『儚い』と言うように、『論理的じゃない思想』と書いて理想と言う。先程の例えをもう一度出すが、粗野な問題児にも品行方正な生徒と同じ接し方をすれば第三者からすれば『問題児にも優しく接する善人』に見られるだろう。でも品行方正な生徒からすれば『どうしようもない問題児と自分が同じ扱い』となりムカつくことこの上ない。逆に品行方正な生徒にも粗野な問題児と同じ扱いをすれば第三者からも品行方正な生徒からも『正しいやつに理不尽に接する悪人』だ。……気付けよ。テメェの思想は理想論。砂上の楼閣ですらない朽ちたあばら家だ。テメェの願いを叶えるためにやることは恵まれねぇ奴に恵んでやることじゃねぇ。恵まれねぇ弱者が恵まれるように弱者に努力させることだろ。努力すら許されないならともかく、許されてる努力を放り投げておいて結果だけ欲するなんざ思い上がりも甚だしい」
俺は嫌いな奴と好きな奴を平等には扱わない。好きな奴には優しく、嫌いな奴には厳しく。そんな不平等な扱いこそが、誰にでも与えられるからこそ逆説的に平等だろ。
「……もういいわ!見損なった。比企谷君なら理解してくれると思ったのに」
「調子乗んな。見損なうなら見られた側が機嫌を損なうくらい見てから出直せ」
肩をいからせて、立ち去る壬生先輩。……アレだな。
「なんつーか、いーちゃんのようには行かなかったな」
これじゃ
「……にしても。
何も俺は興味が無いからってあそこまでこき下ろすような非人道的な人間じゃない。……え、非人道的な人間だろって?キレそう。違法薬物キメたみたいなバッドトリップ体験させてやろうか。
まあいいや。俺がここまで辛辣な物言いをしたのは壬生先輩にかけられたちゃっちぃ催眠に気付いたからだ。……マジでしょぼいな。小6の頃の俺でももうちょいまともな催眠かけるぞ。これかけた雑魚は本当に精神干渉の何たるかを理解してないど阿呆なんだろうな。この程度の腕前ならカスだカス。
俺はそんなことを考えながら軽くため息をついて、その場を後にするのだった。
「比企谷」
「ん?」
そしてまた次の日。俺は風紀委員本部にて、端末を弄り欠伸をしながら春の陽気に微睡んでいたところを同じく風紀委員本部にて渡辺先輩に
「昨日、壬生先輩に勧誘されたらしいな」
「勧誘?あー……そんなこともあったな。何、聞いてたの?」
「偶然話が聞こえてきたらしいエリカ経由でな。それで、勧誘を受けたお前の耳に入れておきたい情報がある」
司波はそう言って数瞬だけ口を噤んだが……改めて意を決したように口を開いた。
「比企谷、お前は"ブランシュ"という単語を聞いたことはあるか?」
「ない」
その言葉に頷くと、司波はその"ブランシュ"という単語に対しての説明を始める。
曰く、ブランシュとは魔法師が政治的に優遇されている行政システムに反対し、魔法能力による社会差別を根絶することを目的に活動する反魔法国際政治団体である。スローガンとして"社会的差別の撤回"を掲げ、魔法師の所得水準が一般より高いことを非難し、市民活動と称して様々な反魔法活動を行っている。
だが実際には"魔法師が政治的に優遇されている"という事実は無い。確かに魔法師を輩出する家系の中には強大な権力を有している場合もあるが、それは権力と引き換えに様々な"義務"を請け負っているが故のものであり、寧ろそういった後ろ盾の無い魔法師はまるで道具のように使い潰されることが多く、それに対して非人道的だと非難の声があがっている程だと言う。
「まァ資格持ちは給料良くなるに決まってるわな」
「お前魔法のことを簿記とかと同列に考えてるのか?」
「ユーキャンで通信講座やってたりするだろ」
「しないが……」
更に続けて説明されたのは、若年層向けのブランシュの下部組織"エガリテ"。司波によると、そのエガリテの構成員が学校内に紛れ込んでいるらしい。
「なるほどな。それで俺は敵対するにしろ与するにしろ、色々な意味で目ェ付けられてるから気をつけろってことか」
「ああ。釈迦に説法かもしれんが……流石に知人が大変な目に遭ったら寝覚めが悪い。
「サンキュ。じゃ、俺は用事があるからここらで帰るわ。また明日」
「ああ、また明日」
そうして風紀委員本部を出て、帰路に着く。そして5分ほど歩いたところで。
「もしもし、潤さん?ちょっといい?」
数日経って。春の陽気に微睡んで……訂正。爆睡している八幡を見ながら、深雪たち3人が会話をしていた。
「ぐっすり寝てるわね……」
「……揺すっても起きない」
「風紀委員、そんなに大変だったのかな……」
3人は風紀委員の仕事の疲れによるものと勘違いしているが、この男は基本的に問題事を対話ではなく一度鎮圧してから解決しにかかるのでそこまで疲れていない。寝ている理由は普通にいい感じに眠気を誘う気温だからである。
「そういえば比企谷さんって部活には結局入らなかったのかしら」
「勧誘期間が終わって、ちょっとだけ勧誘があったらしいよ」
「勧誘期間って何だっけ。で、どうなったの?」
「『俺に勝ったら入ってやるよ』って言って代表者と勝負してた」
「治安……」
「ちなみに音使いの技術で開始と同時に動き止めて一方的にボコボコにしてたよ」
「本当に使われたくない
そんなことを話していると、突如校内放送が始まった。
『全校生徒の皆さん!僕達は学内の差別撤廃を目指す有志同盟です!』
その放送は差別撤廃という思想を掲げ、ある種のクーデターのようなものを引き起こすという宣言であった。
一科生、特に森崎のような選民思想がやや強い面々は怒りを顕にしているが……そんな時、深雪の持っている端末に連絡が入る。
『放送室を壬生紗耶香達エガリテのメンバーが不法占拠している。生徒会で方針を話し合うので深雪も比企谷を連れて来てくれ』
その内容を見た深雪が、寝ている八幡を起こそうと八幡の方に向き直った時。
「……って、あれ?」
八幡は既に目覚めていた。ああ、いや。ただ目覚めたわけではないが。クラスメイト全員に一切気付かれることなく目覚め、その上で立ち上がっていた八幡に、3人の視線が向けられる。
「……俺には我慢ならないモンが2つある」
「……比企谷、さん?」
「1つは『自分の作品が理解して貰えないことを見た側の無知のせいにするカス』。2つ──────」
「──────『安眠妨害』だ」
キレていた。少なくとも入学してからトップクラスにキレていた。どこぞのナゴヤ・ディビジョンのHeaven & Hellみたいな言い回しをするくらいにはキレていた。
「おい、司波。どうせ俺ら呼ばれてんだろ」
「え、あ、はい。集合命令が来ています」
「っし、さっさと行ってさっさとぶちのめして終わらすぞ」
「……暴力はなるべく避けてくださいね?」
「善処する」
口だけの善処なのは誰の目から見ても明らかだった。
生徒らでごった返すのを掻き分け、どうにか達也と合流しながら放送室の前で待機していた摩利と克人の元に八幡らはたどり着いた。
「遅いぞ」
「文句はあの野次馬に言ってくださいよ。邪魔だから失せろカスって」
「……お前口悪くないか?」
「そうすか?」
「……状況はどうですか?」
八幡と摩利の会話を遮るように達也が本題に入る。
「電源をカットしたので放送はもう出来なくなっている。が、連中は鍵をかけて立てこもっているな」
「鍵は?」
「既にマスターキーが盗まれていてな」
「犯罪じゃないですか……」
「その通りです」
目に余る強行ぶりに呆れた達也の言葉を鈴音が拾う。
「だからこそ、これ以上刺激しないように慎重に対処する必要があるでしょう」
「いや、慎重になったところで向こうの聞き分けが良くなるとは思えない。時間をかけず解決を図るべきだ」
「十文字会頭はどうお考えで?」
「……俺は、彼らとの交渉に応じてもいいと考えている」
2人と異なり、克人は交渉の場を作る方向で意見を固めていた。
「元より言いがかり、しっかりと反論して後顧の憂いを断つのも重要だろう。しかし、不法行為への対処こそ必要だが学校の設備を破壊してまで行うべきかという点で悩んでいるのもまた事実だ」
「ふむ……比企谷」
「あ?」
突如話を八幡に振る達也。
「お前の音使いの技術でどうにかならないか?」
「お前俺の技術のことなんだと思ってんの?」
半ギレで返答が返ってきた。
「……難しいか?」
「あのな、俺の技術って大前提として音を媒体としてるんだよ。だから、放送室の中だとか音楽ホールの中だとかの『防音設備がしっかりとしている場所』だと効果が薄い……っつーか殆ど無くなるんだよ」
それは音使いとしての技術の最大の欠点。……余談だが、もう一つ欠点として『使っているとクソうるさいので単純に隠密性がカス』という点が挙げられたりする。
「なるほどな……」
「まあ魔法使っていいならどうとでもなるけど」
「……渡辺先輩」
「ふむ。充分治安維持に対しての問題となるだろう。比企谷、気にせず使え」
「分かりました。……あ、じゃあやる前に一つ」
「どうした?」
「この前のアレより百倍うるさくするんで耳塞いで伏せてください」
「は?」
「じゃあやりますねー」
「ッ、深雪!伏せろ!」
「はいっ!」
鈴音や摩利が耳を塞いで伏せ、何も分からないもののとりあえず従っておいた方が良いと判断した克人が同様に耳を塞いで伏せる。その数秒後。
「作詞作曲、比企谷八幡」
「魔法複合型超高出力演奏」
「作品ナンバー、29」
「──────『悲哀』」
『───────────!!!!!』
今回使用した魔法は二つ。『振動系魔法』……そして、『硬化のための収束系魔法』である。
前者は直ぐにわかるだろう。単純に音量を上げるためである。
では、後者の魔法は何のために使用したのか──────それは、こういうことだ。
「ッ、地震!?」
「建物が揺れて──────」
そう。硬化魔法で、『一高の校舎そのもの』を単一概念としたのだ。音量を上げたのは放送室の中まで音を届かせるためではなく、『放送室ごと音波で揺らす』ことで強制的に内部に音を通させるため。単一概念としてはいるものの、校舎の質量は極めて大きい。だからこそ、音量を上げて『質量の大きなものを揺らすほどのエネルギー』を発生させる必要があったのだ。
……余談だが、この余波で生徒の4割が失神。また、音使いとしての技術に『周囲に影響のないように一定距離で音をカットする技術』があり、当然八幡も師からそれを教わっており使えるのだが……『めんどい』との理由で使わずに甚大な被害を齎している。今回の場合は一定距離でカットすると意味がないので仕方がない部分はあるが。
そして、数秒経過し……放送室の中から、ロックが解除される音が。
「じゃ、行きましょー」
返事はなかった。いや、ダメージで出来なかったと言うべきか。
その後、八幡一人で拘束された有志だったが、吐きそうな顔色をしながらやってきた真由美の指示により解放。改めて交渉の場を設けるために打ち合わせをすることとなり、その日はこれで解散の運びとなった。
比企谷八幡
余談だが中学の頃の強制下痢便事件でクラスメイトの数名が精神を病んで引きこもった。
司波達也
後日、『色々苦労してそうだし』とのことで八幡に『リラックス出来る曲』の音源を貰った。お前のせいだよ。『縮小する時空間異常』くらいにはお前のせいだよ。
北山雫・光井ほのか・柴田美月
後日、『痩せやすくなる曲』の音源を貰った。
渡辺摩利・十文字克人・市原鈴音・司波深雪
耳が死ぬかと思った。
七草真由美
「耳塞いで伏せて」の声が聞こえるほど近くはなく、かと言って一般生徒ほど遠くにいたわけでもなかったせいで耳に深刻なダメージが入った。そのため解散の後に八幡を割と本気でぶん殴った。碌にダメージを受けずにピンピンしていたのでもう一回殴っておいた。
次回は討論会とブランシュによる襲撃回。なんとここまで振動系魔法と収束系の硬化魔法しか使っていない。しかも不可視の罠だったりと地味な魔法ばかりというね。次回の襲撃回からはド派手な魔法を使う予定なので、暫しお待ちください。
九校戦……出場競技はモノリス・コードとどれ?
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氷柱倒しで一条将輝と全面戦争!
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他の競技に出て格の違いを見せてやれ!