今見ると強烈に恥ずかしいなこれ・・・
ちくり、ちくりと音が響く時計が時を刻むような、縫い合わせる音。
恒例になったひと月事の習慣。
家の前で雨に打たれて朽ちかけていた彼女を拾ってから数月立ったある日。
「立って歩きたい。自分の足で助けを借りずに。」
全身に傷を負い歩くこともままならない。
そんな彼女の願いを聞き届けて作ったモノ。
付与魔術にとある傭兵から教わった死霊魔術の応用で作った人造の義肢。
彼女にとっての「魔法の靴」とも言うべきモノ。
この義肢に自分の魔力を込めた糸を縫い込むことでこの義肢はその術式を発動する。
「強く、軽やかにその歩みを進める」たったそれだけ。
・・・我ながら陳腐でお粗末な代物だと思う。
家から落ちこぼれの烙印を押され、ほぼ勘当の形で家を出た自分。
付与魔術の名門に生まれながら、「脚部関連のみ」しか術を行使出来ない出来そこない。
幸いだったのは自分は次男坊であり、優秀な兄がいた事だろう。
そうして市井に降り、一般人と変わらぬ生活をして早数年。
まさか人ならざる妖精を拾って面倒を見るなど思いもよらなかった。
・・・・・・・
ゆっくりと慎重に縫う手を進めていく。既に片方は縫い合わせが終わっている。
ふと彼女が問いかけてきた。「いつまでつづけられるの?」
・・・これは期間限定の奇蹟だ。
自分が老いて縫う事が出来なくなるか。
あるいは魔術が出来なくなるか。
そうなればこの「魔法」は消えてしまう。
だから自分はこう答えるのだ。
「舐めるな。自分がくたばるまで続けてやるさ。」
そうだ。自分は今でも覚えている。
あの雨の降りしきる夜。家の前の街灯の下で倒れ伏す彼女の姿。
助け起こした際に見た、その眼。希望を、拠り所を失った生気の無い眼。
介抱してしばらくの彼女の狂乱ぶり。
きっとこの娘は多くに虐げられ、裏切られてきたのだ。
それを嫌というほど理解してしまった。
そうして、同時に心に思ったのだ。
「せめて自分位は生きている限り、彼女の味方であろう」と。
だから願いを聞いた。だから術式を組んだ。
なけなしの技術を振るい、義肢を作った。
初めて義肢を付けて立ち上がった時の彼女の喜びようを今でも思い出す。
大輪の花のような笑顔で何度もステップを踏みながらクルクルと回る姿を思い出す。
さらには「ありがとう!やさしい魔法使いさん!」などというのだから。
・・・思わず見惚れて呆けてしまったのだ。
きっと自分は彼女を大事に思っている。
恋か、愛か、それは解らない。
だが、あの時の誓いは今もこの胸の内にある。
だからこそ自分は嘯くのだ。
「最後の終わりまで」と口にするのだ。
彼女が踏んできた。顔の頬をふにふにと踏みつけてくる。
何か愛しい物を愛でるかのように。
「恥ずかしい事平然といってんじゃねーよ。」
どこか嬉しげに、幸せをかみしめるかのように。
「・・・ばぁーか///」