ペルソナ3 if ─Chronos─ 作:イソフラぼんぼん丸
君は、奇跡を信じるかい?
絶対の運命をも変える奇跡……
でもそれは、裏返せば、
奇跡すら運命だったかもしれない
さあ、始まるよ。もう一つの奇跡が──
2013年 3月5日早朝 厳戸台某所霊園
かつては、無気力症という正体不明の病気が蔓延り、この近辺の人々を恐怖させていた事件──影人間。だが、世間はとうにそれを忘れ去り、最早誰の口からもそんな言葉は聞かなくなった。
少し前に起きた、1人の機械少女を巡った
厳戸台。代わり映えのしない平和の世の中を人々は謳歌、または退屈に過ごしていた。そんな静かな厳戸台の夜。1人の"赤い衣服を着用した青年"が、幾つかの花が重なった簡素な花束を手に、厳戸台の霊園へ足を運んでいた。人気の無い冬の寒さが残る霊園。青年は線香に火を付け、花と共に供え手を合わせる。
「……もう、何年になったか」
青年は夜空を見上げ、白い息を吐きながら、そうポツリと漏らす。この墓に眠る人物は世に何を残していったのだろうか。誰にも知られる事はなく、時は移ろい流れてゆく。
「なあ、お前は……幸せだったのか?」
青年は歯噛みした。そして──恐怖していた。成年を向かえる事なくこの世を去ったかけがえのない人。そんな大事な人なのに。忘れてはならない人なのに。もう声や顔は──映像や写真で確認する事でしか思い出せないのだ。この耐え難い寂寥感……それを払拭する様に、青年は薄く笑みを浮かべる。
「アイツらも来たんだろうな。一緒に来ても良かったが、なんつーか……2人で話したかったんだ。俺はそろそろ行くぞ。また来る……じゃあな」
青年が墓石に別れを告げ、立ち上がった瞬間だった。1匹の"赤く光る蝶々"が、ヒラヒラと目の前を通り過ぎる。
「赤い……蝶だと?」
赤色に淡く輝く蝶々。そんな非現実的な光景に、青年は暫し放心する。が、すぐに我に帰り、事の異常性を察知する。
蝶々は青年の周りを浮遊すると、青年と一定の距離を保ちながら羽ばたく。近付けば遠退き、退けば近付いてくる。まるで何か道案内をするような動作に、青年は眉をひそめる。
「なんだ? ついて来いとでも?」
普通ならば些少の出来事と鼻鳴らし、無視をして帰っていたかもしれない。青年はこの程度ものは嫌と言う程見てきたからだ。不思議な体験も慣れれば日常になる。遥か昔に気付いた事だ。
けれど、この蝶を見ていると酷く胸騒ぎがする。青年の心の中に形容し難い感情が沸き上がる。これを見逃すと、大いなる運命の岐路を大きく踏み外す事になるだろう、と。直感していた。
青年は疑問を抱きながらも、蝶の後を追うのであった──
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