ペルソナ3 if ─Chronos─ 作:イソフラぼんぼん丸
「おおぉぉ……らァ!」
「フッ!」
シンジと俺のコンビネーションアタック。が、それは寸での所で回避される。見た目に反して素早い奴だ。全く攻撃が当たらない。
「クソ、拉致があかねェぞ」
「物理攻撃は通りにくいな……ならば、これでどうだ!」
俺は引き金を引いて再びカエサルを出現させる。意識を集中させ、敵の頭上目掛けて、彼方より雷撃を呼ぶ。
「ジオダインッ!!」
俺が得意とする電撃属性の魔法。激しい落雷の音と共にそれは命中する。グラーキの身体から閃光が迸り、その巨体を一瞬痺れさせた。効いているのか否か、よく分からん反応だ。
『いいぞ明彦、かなりのダメージだ!』
「弱点とまではいかないか。が、物理攻撃よりはマシか。魔法戦法は趣味じゃないんだがな」
「魔法は効くみてェだが……チッ、俺は魔法使えねェからな」
「……分かりました。では、先輩2人は敵を引き付けて下さい。私とコロマルが魔法で援護します!」
「ワンワンッ!」
「分かった!」
俺とシンジはグラーキに詰め寄り、後方に注意がいかない様に圧をかけて牽制する。奴の動きのクセが読めてきたぞ……俺はその攻撃を次々と躱し、翻弄させる。シンジは持ち前の物理カウンターで隙を突き、敵の攻撃リズムを崩す。
いいぞ。タフなシンジと、素早さに長ける俺なら十分な囮になれる。いい判断だ汐見。この個々を生かした指揮能力……やはりお前はリーダーだよ。
「オォォォッ!」
「ぐっ!」
ガードしても、奴の攻撃が身体に重くのし掛かる。強いな……大型シャドウに勝るとも劣らない。少なくとも、この塔にいるシャドウとは比べ物にならんくらいだ。
「へっ。お前、いつんな慎重な戦い方するようになったんだ? アキ」
「シンジ……」
そういうお前は本当に変わらないな。その豪腕で、武器を片手で軽々しく扱う戦闘センス。いや……考えるのは後だ。今は、目の前の敵をノックアウトする事に専念するとしよう。しかし……状況は一進一退だな。このままではただ気力を消費するだけだ。弱点でも突いて責めれればいいんだが。
「フッ、フッ……美鶴! コイツの弱点はないのか!?」
『今探っている! 少し待ってくれ、こうも久しいと感覚が──』
「私に任せて下さい!」
「汐見!?」
汐見は前線へ上がると、目を瞑って召喚器を構える。何をする気だ?
「物理を初め、真田先輩の電撃、コロマルの火炎、私の氷結と疾風も効かない……光や闇も言わずもがな……それなら──!」
汐見は目の前に現れたタロットカードをスライドさせ、召喚器のトリガーを引き再びペルソナを出現させる。オルフェウスでは無い別のペルソナ。そうだったな……あの力に何度助けられたか。
「ペルソナチェンジ……ターラカ!」
汐見はグラーキの目の前に立つと、4本の刀を携えたインド神話の神を顕現させる。ペルソナを自由に変えるあの規格外の力。弱点や魔法相性なんかも、全て無効化するんだからな……敵にとっては反則もんだろうよ。
「動揺ブースタがあるターラカなら──フラッシュノイズ!」
辺りに目映い閃光が煌めく。遠くにいる俺達も、思わず腕で視界を覆いたくなる程の強い光。薄目で確認した時は、グラーキはその巨体を震わせていた。明らかに動揺している。近くにいたシンジは、その隙を逃さず一気に詰め寄る。その場から飛び上がり、グラーキの顔面目掛けて自らの頭を打ち付けた。
「ようやく大人しくなりやがったな……おらァッ!」
シンジの渾身の頭突きがグラーキにヒットする。あれは痛そうだ……アイツ、昔から石頭だからな。俺も何度もくらった事か。どんな巨大な生命体でも同じなのか、グラーキはシンジの頭突きで体勢を崩した。ようやくだな。
『よし、よくやった! 敵体勢が崩れたぞ。今なら一掃できる!』
「ああ、今ならボコれる。やるぞ」
「フッ、この瞬間を待っていた!」
「ワンワンッ!」
「よーっし! 皆、総攻撃っ!」
汐見の号令で、俺達は一斉にグラーキを攻める。総攻撃チャンス。これで終いだ!
「ぐ、ぬぅ……!」
グラーキは膝を突き、その巨大をゆっくりと地面の方へ沈ませていく。これで
「グラーキと言ったか。お前は一体なんなんだ? この影時間、タルタロス。全てお前の仕業なのか?」
「私がこの未来の世界に来た事も、関係あるの?」
「……!」
「フフ、質疑は止まぬか。まあ、当然であろうな」
グラーキはユラリと巨体を起こすと、再び宙に浮く。敵意はもう無いようだ。試練は終わったという事か。
「我を生み出したるは、世界を崩壊へ誘う数多の個の意志である。時の狭間より出でし、終末の化身なり。希望断たれし絶望は、その者の世界を破壊した。故に、破滅を望んだ。集束せしこの世界は、その者の願いなのだ」
「……」
俺とシンジ、汐見までも言葉を失っていた。全く意味が分からない。少し海外にいたから日本語の感覚が鈍ったか? そう思わずにはいられない。一体何の話をしているんだ。
「……汝らに、失われし時の記憶を見せよう」
グラーキが手を突き上げると、辺りは光に包まれる。その刹那、またあの耐え難い頭痛が俺を襲う。立っている事すら不可能な程だ。なんだ……これは。何か……声のようなものが流れ込んでくる──
愛していた
守りたいと思っていた
皆を、そして世界を
うん、分かったよ
愛する君の為なら
それで皆が幸せなのなら
僕は──
私は──
────
──
知らない誰かの記憶。哀しみに溢れたその決意の言葉が、酷く胸を蝕む。なんだこれは……この刺されたような……負の衝撃。胸クソ悪い気分だ。やがて頭痛も治まり、俺は情けない足取りで、なんとかその場に立ち上がる。
「……残す記憶はあと5つ。これで我の役目は終えた。さらばだ人の子よ」
「な……オイ待て!」
制止する俺を無視し、グラーキは天へと上り、闇の夜空へと消えていく。勝手な野郎だ。奴は敵だったのか? クソ……なんなんだ一体。
『明彦……聞こえているか? 情報を整理したい所だが、悠長にしている暇は無い。間も無く影時間が明ける。門が閉じる前に、一先ず戻ってきてくれ』
「ああ、分かった」
「ふぅ、色々一辺に起きて、混乱しそうなんですけど……とりあえず、お疲れ様でした!」
「ワンワンッ!」
「行くぞシンジ。お前に聞きたい事は数えきれんからな」
「……そうかよ」
俺達は傷付いた身体をなんとか動かして、タルタロスを下っていく。
戦いは終わった。これで何か変わったのか? 分からない事だらけだ。だが、まだこれからだという事は分かる。俺はただ突き進む……褌を締め直さなければな。
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