ペルソナ3 if ─Chronos─   作:イソフラぼんぼん丸

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#13 霧消の町

 (美鶴)達は旅館へと辿り着く。天城屋旅館──かつて私達と共に戦った、天城雪子の実家の老舗。

 落着きのある赤と漆の塗装と、主張しすぎない麗しい装飾品の数々がなんとも荘厳だ。稲羽の山々を一望出来るこの場所も、風光明媚な景観と言えよう。成程……地元民のみならず、県外からも大勢の客がやって来るのも頷ける。

 

「うわぁー、やっぱ綺麗な旅館ですねえ! 期間空けずに来れるなんて、なんかお得かも」

「ほう。中々に見事だな。この匂いは温泉か? よしシンジ。どちらがより長く湯船に浸かれるか勝負だ」

「しねーよバカ。ガキかてめえは」

「ワンワンッ!」

「あ、そういえばコロマルどうするんですか?」

「そうだな……流石に中は入れてもらえんだろう」

「クゥーン……」

 

 コロマルは耳を畳んで項垂れる。流石にペット同伴が許される訳ないだろうからな……かといって外に置いていく訳にもいかない。

 

「どうします? ぬいぐるみだって言い張って中入れます?」

「いや、バレんだろうが」

「えぇっ、私それで先月の映画祭り、コロマル連れて映画館入ったんですけど」

「何!? 気付かれなかったのか?」

「いえ……すんごい引きつった顔の受付の人に、つまみ出されました……」

「どんな肝っ玉してんだオメーは……つーか、ぬいぐるみだとしてもおかしな話だぞ、ソレ」

 

 まだ宿泊すると決まった訳ではない。コロマルには外で一旦待機してもらい、一先ず天城君の無事を確認する事にする。

 中も美しい空間が広がっていた。鏡面磨きされた床材からは、常日頃の手入れが、非常に良く行き届いているのが窺える。やがて奥から、着物を来た妙齢の女性がやってくる。

 

「ようこそ当旅館へ。ご予約のお客様でしょうか?」

「いえ……我々は天城雪子を探しておりまして。彼女は御在宅でしょうか?」

「あら、雪子ちゃんの知り合いでしたか。すみませんねえ……彼女は今、ご友人達と一緒に海外旅行に行ってるんですよ。何か御用でも?」

「旅行……いえ、御在宅でないのならいいんです。失礼しました」

 

一つ会釈をし、我々は旅館を去る。彼女が無事ならばいいが……何かがおかしい──今朝、白鐘君は稲羽に不可解な建造物があると言っていた。白鐘君が見た建造物をタルタロスだと仮定しても、影時間外で出現するのは妙だ。あれ程巨大な塔を見逃すのも考えにくい……どういう事だ? それに、何故白鐘君は天城君達と行動を共にしていない?

 私の理解を越える不可解な状況。不明瞭な禍根を抱えたまま、タルタロスへ赴くのはナンセンスだ。

 

「情報共有をしたい所だが……彼女と連絡が取れないものか」

「もう一度かけてみたらどうですか?」

「ん、そうだな……そうするか」

 

 私は念の為、再び白鐘君に通話を試みる。

 

『──もしもし、桐条さん?』

「……! 白鐘君か!」

 

 電話口から鮮明な声が聞こえてくる。繋がったか! 通信手段は閉ざされていると勝手に認識していたが、どうやら特定の条件ではその限りではなさそうだな。またいつ遮断されるか分からない。時間が惜しい……私は彼女に要件を簡潔に話した。しかし、返ってきた言葉によって、また状況が一変する。

 

『──待って下さい桐条さん。僕は不可解な建造物なんて見ていないし、元より貴女に電話もしていません』

「何……?」

『……何かあったんですね?』

 

 やはり通信に異常があるようだ。この混沌とした世界では、電波が不調になるのも致し方ないのかもしれないが。あの時のように、互いに認識の齟齬が生まれると厄介だ。

 

「白鐘君。これ以上は会って話をした方がよさそうだ。我々は今、天城屋旅館にいる。君は今どこに?」

『分かりました。僕がそちらに伺いますので、少し待っていて下さい』

 

 

 ────

 ──

 

「あ、誰か来たみたいですよ」

 

 数分もしない内に白鐘君がやってくる。が、1人ではないようだ。彼女の横には、見覚えのある身長痩躯な少年が並んでいた。あれは──巽完二君だ。

 

「すみません。お待たせしました」

「チッス!」

 

白鐘君は私達の姿を確認すると、すぐに顔を歪ませる。聡明な彼女は、どうやら異常性に気づいたようだな。

 

「桐条さん。その身体は……」

「フッ、出会い拍子で察するとは流石だな。詳しい経緯は順を追って話すが、私も明彦も、どうやら若返ってしまったようでな」

「白鐘も分かるのか……美鶴の変化。まさか俺が鈍感なのか?」

「先輩……自分が鈍感なの今更気付いたんですか?」

「な、なんだと!?」

「若返った……やはり何か起きてますね。僕も巽君も、実は同じ様に身体に異変が起きてるんです」

「おうよ。朝起きたらビビったぜ。せっかく黒髪にしたのに、金髪に戻っちまってるんだからよ。今年受験なんだからしっかりしろって、朝っぱらからオフクロに怒られたぜ……ったく」

 

 最早隠す必要も無い。私は彼らに、事の顛末を洗いざらい全て話した。巽君は頭を抱え、情報を復唱して必死に飲み込もうとしているが、白鐘君は悟ったように、精悍な面持ちで頷いて見せる。

 

「成程……それで貴女方は、僕の通話を聞いてこの町へやって来たと」

「ああ。だが君は掛けていないんだろう?」

「僕の名を騙った愉快犯……と言うには、塔出現の状況と一致している箇所がある。そもそも、着信履歴には間違いなく僕の番号が残されている」

 

 これを混沌による、通信機器の不具合と帰結するには、あまりにも軽忽な推理だったか。双方の履歴を鑑みれば、必然と疑いは白鐘君に向くが、無意味な行為する人物でない事は承知している。万が一にでもあり得ないだろう。

 

「桐条さん、僕以外に対しての通話は?」

「何度か試したが、皆不在だった。音信不通で行方不明のメンバーも多々いる。君達の中にも、そういったメンバーはいないのか?」

「先輩達はこの町にいませんよ。来月からの大学デビューを祝う……とかで、鳴上さんを始め、先輩達は皆、海外へ旅行へ行っています。それに時差でしょうが、早朝から皆さんで写っている多くの写真が送られてきています。先輩達は問題ないようですね」

「ったく冷てーよなあ、あの人らも。俺等も行きたかったのによ……クソ、こういう時クマ公が羨ましくなるぜ」

「まあ、僕達は学年末のテスト期間と被ってしまったし、学校も休めないから。それに、帰ってきたら春休み期間に、皆で旅行に行こうと言ってくれましたしね。埋め合わせは必ずしてくれる方達ですよ」

「ま、りせの野郎も、忙しいとかで行けずに喚いてたしな……けど好都合じゃねえか」

「巽君?」

「すんません──俺等もその塔を上るっつーのに、頭数加えてくんないすか!」

「何……? しかし、君達には学業が──」

「オレ、あの人らに心配かけたくねェんスよ。何も変わりねえ町で出迎えてやりてェ! お願いしゃっす!」

 

 巽君は拳を固めて頭を下げる。今回こそは、彼らを巻き込むまいと思っていたのにな……これもまたペルソナ使いの運命とやらか。

 

「僕からもお願いします。皆さんの手助けになるのなら、喜んで力を貸します」

「……ああ。君達が手を貸してくれると言うのなら心強い。今回もよろしく頼む。すまな……いや、ありがとう」

「あざっス! やってやろうぜ直斗! オレらだけで、混沌とやらを解決しちまおうぜ!」

「ええ。末席ながら、全力を尽くしますよ」

「はは、そう謙遜するな。お前達の力は折り紙付きだからな。頼りにしてるぜ、2人共」

「ウッス!」

 

 白鐘君も巽君も、強力なペルソナ使いだ。頼もしい限りだな。天城君達は海外にいる以上、際して影響は受けないだろう。厄災が及ぶ前に、なんとか解決したいものだな。あとは影時間が来るのを待つのみ。タルタロスが出現しないのなら良し……現れたのならば、再び身命を賭して、踏破するのみだ。

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  • 女神異聞録ペルソナ
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  • ペルソナ3 FES/portable
  • ペルソナ4/4G
  • ペルソナ5/5R
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