ペルソナ3 if ─Chronos─   作:イソフラぼんぼん丸

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#14 湯煙の天国

「影時間までまだ時間がある。が、ただ漫然と時を無駄にするのも忍び無いな」

「あ、ならやっぱり温泉入りましょうよ! 決戦の前に、スッキリと心と身体を整える事も大事ですからね」

「悪くはないが……湯に浸かるだけの利用でもいいのか?」

「ええ。ここの旅館は温泉施設だけでも利用出来ますよ。宿泊客以外にも気兼ね無く入れるようにと、解放してあるみたいですね」

「そうだな……では、夜まで少し休むとするか」

「やった!」

 

 汐見の言う通り、今はなるべく休息を取るべきか。シャドウワーカーを預かる身として、日々業務に明け暮れていたから、温泉なんて修学旅行以来かもな。

 我々は再び旅館に再び立ち入る。事情を把握した旅館は、我々を快く受け入れ、コロマルの面倒も外で見てくれる事に。至れり尽くせりだな……素晴らしいサービスだ。有り難く寛ぐとしよう。

 

 

 ──── 

 ──

 

 

「ほう……中々の広さだ。露天風呂じゃなくても、貸切だとこう心躍るものがあるな。シンジ、どちらが先に根を上げるか勝負だ」

「だからしねーよ」

「わぁ、広いですね」

「お前もこい……ん? そういえば、お前の名前を聞いてなかったな。名前、覚えてるか?」

「あ……あの、それが……覚えてないんです。自分が何者だとか、そういうの全部……」

「そりゃ難儀なこったな。テメェの事何も知らねェのに、この旅についてくるなんざ、お人好しがすぎるぜ」

「仮にでも、何か欲しい所だよな…………うむ……ん……そうだ! うみうしでどうだ?」

「正気かアキ。オメーの頭はどこまで肉なんだっ」

「う、うるさいな……じゃあシンジ。お前が何か考えろ」

「……ミナトでいいだろ」

「ミナト? 何故だ? 突発で思い付くには、随分凝った響きに聞こえるが」

「うるせえな。オメーのうみうしより何百倍もマシだ」

「ミナト……ミナト……いいですね。気に入りました! ありがとうございます!」

「む……なんだか敗北感があるな。だが湯船我慢勝負には負けんぞシンジ!」

「しねーっつってんだろっ。勝負だとしても、昔っから我慢できねえオメーには負けねえよ」

「言ってろ──」

 

 

 ────

 ──

 

 

「それで……この2人はどうしたんだ?」

「まるで茹でダコですね」

「はは……」

 

 困った様子で、2人の中央に立って肩を支える少年。なんとなくは想像つくが。どうせ意地の張り合いでの、無益な勝負の結果だろう。

 

「情けねェ……くそっ」

「ミナト……すまんな……」

「いいんですよ。これくらい」

「ん、ミナト?」

「あ、はい。僕の……仮の名前です。荒垣さんがつけてくれたんです」

「ミナト……いい響きだね。似合ってるよ!」

「ありがとうございます」

 

 偏屈なき笑みを見せるミナト。眺める程に不思議な少年だ。面識など無くとも、遠い友人に久しぶりに会ったかのような……自然と惹き付けられる。刹那に見せる瞳の奥には、何か圧倒されるような闘志がある。少し……彼や汐見に似てるかもしれない。

 

「では、影時間まで各自自由に過ごすように。くれぐれも時間厳守でな」

 

 私の呼びかけに、各々返事をする。私は私で少しやる事がある。貸して下さった自室へ戻り、作業をしながら影時間を待つことにした。

 

 

 ────

 ──

 

 

 旅館内を散策する美鶴を除く一行は、小角に設置されたゲームコーナーで足を止める。

 

「お、射的ゲームじゃねえか。ガキん頃よくやってたぜ」

「何故老舗旅館に、こんな最新鋭のガンシューティングがあるんでしょうか……普通置くのは、レトロゲームなのでは」

「折角だし試してみるか。俺達は銃の扱いには長けているからな」

「まあ、使ってるっちゃ使ってますけどね……自分に対してですけど……」

「お、銃に関しちゃ直斗も負けてねーぜ。なんなら勝負しないスか? 丁度2人用みてェだし」

「べ、別に僕は……」

「よし、受けて立とうじゃないか。白鐘、本気で来い──!」

 

 直斗に真田は勝負を仕掛けるが、直斗の銃の腕は凄まじく、真田、荒垣、汐見と3人続けて見事に撃沈した。

 

「負けた……! 直斗君強い……!」

「ピンチなった時、何回か自分に銃口向けそうになってたぞオメー」

「お前だぞシンジ。いや、俺もだが……」

「どうよ! これが直斗の実力だぜ。これぞベンケイの泣き所ってヤツだ!」

「それを言うなら弁慶に薙刀です……」

「頼むミナト! 俺達の仇を取ってくれ!」

「ぼ、僕ですか……」

 

 渋々銃を持つミナトだったが、トリガーに指を掛けた瞬間、顔付きが変わった。直斗に勝るとも劣らず、次々とスコアを重ねていく。

 

「同点……! すごいじゃないかミナト!」

「マジかよ! 射撃で直斗と並ぶヤツがいるなんてよ」

「向かってくるゾンビに対して、迷いのない正確な射撃。お見事でしたよ。僕も久々に熱くなってしまいました」

「その冷静な判断力は、付け焼き刃で身に付けれるもんじゃない。立派なものだぞミナト」

「あ、ありがとうごいます」

 

 そんな一時の休息を嗜んでいる内に、時間はあっという間に深夜を回る。美鶴達は旅館屋上で静かにその時を待つ。時刻は──深夜0時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──やはり来たか」

「グルルル……」

「影時間……!」

「おぅわ!? 空が急に変わりやがった!」

 

 0時を回った瞬間、空が深緑色に染まる。ここまでは想定通りだな……後は──

 

「あ、あれを見てください!」

「あれは──!」

 

 白鐘君が指差す方角に、それは存在した。闇夜に佇む影の迷宮──タルタロスだ。あの場所以外に本当に現れるとはな……信じ難い事だが、これも歪みの産物か。蝶の言葉を鵜呑みにするのであれば、あの頂に我々がよく知る人物が囚われている。こうなっては一刻を争う──早々に乗り込まねばな。

 

「待てよ……ありゃ学校がある場所じゃねえか……!?」

「ええ、どうやらそのようですね。あの時と非常に良く似ている……急ぎましょう」

「ああ──準備は整った。これよりタルタロスへ向かう。行くぞ!」

 

 

 

 

 

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