ペルソナ3 if ─Chronos─   作:イソフラぼんぼん丸

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#3 群青の部屋

 

 

 扉の中を開けるとそこには──かつて見た景色が広がっていた。鉄格子の壁一面に、群青色で統一された部屋。旧式のエレベーターの内部のような、独特な雰囲気を醸し出す部屋だ。一瞬呆けてしまったが、俺はすぐに現状を把握する。

 

「待てよ……何故この部屋があの扉と繋がっているんだ?」

「ようこそ、我が"ベルベットルーム"へ。(わたくし)の名はイゴール。再び、お目にかかりましたな」

 

 部屋の中央、テーブル椅子に座っている老人が1人佇んでいた。俺は……俺達は、一度ここへ来たことがある。あの時(EP アイギス)の部屋だ。まさか、また訪れる事になるとはな。老人は腕を組み直すと、俺をじっと見据える。

 

「ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある場所……ここは、何かの形で"契約"を果たされた方のみが訪れる部屋。しかし貴方は……フフ、これはまた数奇な運命をお持ちの方のようだ」

「待て、説明してくれ。今何が起きているんだ? 何故あの扉とここが繋がっているんだ?」

「ご心配めさるな。この部屋は"交わった運命"による一時的なもの。貴方様の世界に影響はございません。しかし……どうやら貴方様の世界では現在、何者かの干渉により世界そのものが交わり、大きく時空が歪み初めておるようです。この部屋もまた然り」

 

 イゴールと名乗った老人は淡々とそう告げる。交わった運命? 大きく時空が歪んでいる……? 一体なんの話だ。状況が読み込めん。イゴールは怪訝な顔をする俺に構わず、どこから取り出したのか、カードのようなものをテーブルに広げると、それを一枚捲る。

 

「かつて……貴方様と"お客人"が築かれたコミュニティの力。アルカナが示す愚者のタロット。再び大いなる試練が始まるという事……世界が交わる時──この部屋もまた、上昇を始める事でしょう。貴方様がここへ訪れたのもまた運命。これ以上のお引き留めは出来ますまい。そろそろお暇いたしましょう。またお逢いするやもしれません」

「ま、まて! 時空が歪んでいるとはなんだ!?」

「くれぐれも、自らの選択に責任を持っていただきますよう……それでは、また逢うその時まで、ごきげんよう──」

 

 突然視界が暗転する。一瞬、意識の喪失を感受したかと思えば、俺は扉の目の前に立っていた。扉はもう光を帯びていない。ドアノブを捻っても、鍵がかかって開かなかった。一体なんだったんだ……やけに気になる単語を発していたが。時空……歪み……交わる運命……わからん。どういう意味なんだ。

 

「クゥ〜ン……」

 

 コロマルが心配そうに俺の顔を見上げる。恐らく、俺がずっと扉の前で立っているように見えたんだろう。

 

「心配するなコロマル。しかしどうするか……もう蝶は見当たらん。この一連の出来事、嫌な胸騒ぎは的中しそうだな」

 

 ブゥゥー……ン。マナーモードにしていた俺のスマホがポケットの中で震え出す。着信──美鶴だ。俺はすぐに通話開始ボタンをスライドし、スマホを口元に近付ける。美鶴か? そう俺が聞く前に、美鶴の声がスマホから響いてきた。

 

『明彦! 繋がったか……今どこにいるっ?』

『……訳あって厳戸台分寮の中だ。コロマルと一緒でな。何をそんなに焦っている?』

『グループの人間、そしてシャドウワーカーの隊員達と連絡がつかないんだ。ゆかりや菊乃、山岸やアイギスもだ……ようやくお前と繋がっ──』

『何? アイツらが……? ん、オイ美鶴。どうしたんだ?』

 

プツリ……と、突然通話が途切れる。なんだ? スマホの電源も落ちてしまった。時刻は──0時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに!?」

「グルルルル……ワン、ワンッ!」

 

 突如として廊下の明かりが消え、世界が暗い深緑色に染まる。過去に幾度と無く訪れたもの……間違いようもない。もう存在するはずの無い、一日の狭間にある時間──影時間だ。

 

「何故影時間が!? どうなっている!?」

 

 稲羽市で起きたヤツとは違う。この感覚は──間違いなく俺達がよく知る影時間だ。シャドウとの戦いの日々。俺の学生時代の全てと言ってもいい。常に運動をしているかのような、多少の息苦しさ。懐かしい感覚だ──どうしても脳裏に、かつての日々の情景が浮かんでしまう。

 

「焦っても仕方ないな。月明かりも無い……当然か。美鶴も気付いてるだろう。他のヤツらと連絡がつかないのは気になるが──なッ!?」

 

 窓から景色を覗いている時……俺の眼前に信じられんものが出現していた。辰巳ポートアイランド、月光館学園の方角。天高く、幾何学的にオブジェが積み重なった影の迷宮。見間違えるはずもない──タルタロスだった。

 

 

 

 

 

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