ペルソナ3 if ─Chronos─   作:イソフラぼんぼん丸

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#6 病室

 影時間明けの深夜。辰巳記念病院地下病棟。表の世界に決して露見する事の無い、特異な精密機器が並ぶ医療研究施設。現在は桐条グループ内の秘密組織、シャドウワーカーが研究部を設立し、警視庁公認の元で運営している。

 ここはその一室。無機質な白で統一された特別病室のベッドの上で、病衣を着た汐見琴音と名乗る少女が座っていた。彼女は少し不安そうに俯いている。無理も無い……端から見れば、何かの実験体のようにも見える長い検査を終えた後だ。いい気分ではないだろう。

 マジックミラー越しに彼女をじっと観察する美鶴に、(真田)は声をかける。

 

「何か分かったのか?」

 

 美鶴は振り返る事はせずに、手元の大型端末に視線を移す。

 

「ああ、身体に異常は検出されなかった。影時間の耐性、脳波正常、ペルソナ適正true(アリ)──概ね予想通りだな。至って健康的な肉体だ」

「なんだ、何もないのか」

「いや、一つ明らかに異常なものが分かった。彼女のDNAだ」

「何?」

「詳しく説明すると複雑になるが……"彼"との染色体の一致率の誤差が、1/10000以下だった。これは親兄弟レベルと同一の数値だ。親がいなかった彼との一致率を計るのは、困難を極めたが……彼女は90%を上回る確率で、彼と同じDNAを持っている」

「そうか、やはりか……」

「ああ、同一性をデータが物語っている。これは確証だろう」

「別世界のアイツ、か……本当にそんな事があるとはな」

 

 目の前のテーブルに置かれた、彼女の所持品である召喚器をじっと見つめる。時が止まったままの状態で、この世界にやって来たんだな……何故だろうか。以前にもこんな事があったような気がする……白い女……映画館……クッ、思い出そうとすると頭痛がする。

 

「そういえば美鶴。あの少年はどうした?」

「隣の病室で寝ている。幸い、無気力症のようなものは見受けられなかった。影時間による疲労で、気を失っていただけのようだな。外傷も無い……ん?」

「どうした?」

「いや、一瞬彼のモニターにペルソナ反応が……む、消えた?」

「隣の彼女による誤作動じゃないか?」

「ああ……反応が一瞬だけ現れるのはあり得ない。そのようだな」

「それよりどうするんだ。彼女に全て話すのか?」

「そうだな……これ以上、気を負わせるのは心苦しいが……事実は事実として伝えなくては──」

 

 今日は一度に色んな事が起きすぎた。休息がいるだろう。彼女も疲労が溜まっているはずだ。俺達は、朝に改めて話す事にした。

 

 

 ────

 ──

 

 

 日が明けた朝。俺と美鶴は、彼女が起床したのを確認して病室へ入る。寝起きのせいか、うつらうつらと、ゆっくり顔を上げる汐見。目を擦りながら俺達に軽く会釈をする。

 

「おはようございまーす……ふぁ」

「朝早くにすまんな」

「あ、そっか、私……」

「現状を直ぐに理解してくれとは言わない。だが、混乱しているのは我々も同じだ。事態は一刻を争う。話してくれるか? まず、君の世界の西暦と月日を教えてくれ」

「はい。えっと、2009年の9月10日です。新しくタルタロスの階層が開いて、それで探索しようって話になってました」

「……シンジの奴が丁度いた頃か。フッ、懐かしいな」

「あの、聞くのすごーく怖いんですけど、今って何年なんですか……?」

「2013年の春だ」

「やっぱり!? 変だと思ったんです! 先輩達が妙に大人びててるし、私の事知らなかったり、来る途中で見た町の景色がすごい変わってたり……別世界に飛ばされたんだ私。タルタロスでの異変は夢じゃなかったんだ……」

「異変?」

「はい。115階辺りを攻略中に、皆が急にいなくなってしまって。出口も無く、風花も反応無しで、もう本当に怖かったんですけど……私の前にひらひらーって赤い蝶々が出てきて、そしたらその蝶が光りだして、目の前に突然扉が現れたんです──」

 

 光る蝶……俺が見た青い蝶と同じか。その後の汐見の話の内容は、俺と似たようなものだった。扉の中はベルベットルームになっており、イゴールという老人から世界が歪んでいると警告を受ける。ある程度現状を受け入れるのが早かったのは、イゴールに話を聞いていたからかもしれない。

 そして、部屋を出たら別世界で、見知らぬ少年が倒れていたと。美鶴は彼女の話を聞き終えると、腰に手を当てて、顔を俯かせる。

 

「世界歪み、交わる……やはり、そこにひっかかるな。タルタロスに、影時間──この場所で一体何が起きているんだ? 情報を得ようとも、未だに本部と繋がらない。深夜でも、この端末からなら数秒経たずに出るはずなんだが……」

「直接行ったらどうだ? そこまで遠くはないだろう」

「そうだな。現状を把握する為にも、一度帰るとしよう」

「私も行きます!」

「汐見? しかしだな……」

「私にも帰るべき場所があるけど……でも、先輩が困ってるなら、私にも手伝わせて下さい! その、世界は違うかもしれないけど……大事な仲間なのは同じなんですから」

 

 汐見が胸に手を当てて、そう頼み込む。俺も美鶴も、今全く同じ事を思っただろう。そうだ──重なるんだ。容姿や性格に差違があっても、心の奥底にある信念はアイツと全く同じだ。リーダーとして、いつも俺達を近くで助けてくれる。そうだったな……こんな奴だったよ。そのあまりにも真っ直ぐな目を見てると、思わず口角が上がってしまう。

 

「……ありがとう。変わらないんだな、君は」

「フッ、どちらにせよ、帰る方法なんてまだ分からんだろう。ここにずっといるよりは良い」

「あ、そうか……あはは」

「では行くとし──なんだ!?」

「え、何!?」

 

 俺達が一歩踏み出した直後だった。俺達の回りに突如として、金色に光る蝶のようなものが羽ばたいてくる。それは段々と数を増やしながら現れる。

 次第に蝶から発せられる光が強くなっていき、包み込まれるような感覚と共に、視界を奪っていく。目の感覚が戻ってきた時──俺達は全く知らない場所にいた。上下左右、どこも見ても白い光。その空間を、蛍のような燐光が漂っている。自分が立っているのか、横になっているのか、妙な平衡感覚に襲われる。脳震盪を起こした時のように……クソ、頭が混乱する。

 

「どこだここは」

「眩しい……先輩達、大丈夫ですか?」

 

 

『ようこそ、過ぎ去りし時の狭間の世界へ』

 

 

 その時だった。どこから話かけているのか、男の声が光の空間に響き渡る。脳内に直接話してきてるような、薄気味悪いものだ。だが不思議と、悪いヤツじゃないと分かる声をしていた。

 

『私は、全ての人間の意識と無意識の狭間に住まう者──』

 




DNAのくだり知識無さすぎてすっごい適当なので、有識者の方誰か是正して欲しい

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