ペルソナ3 if ─Chronos─ 作:イソフラぼんぼん丸
「甘い!」
「ギャオゥ……」
俺の速攻の拳がシャドウに直撃する。その一撃によって影は爆散し、跡形も無く消滅する。弱い……弱すぎる。ペルソナを使うまでもない。トレーニングバッグの方が遥かに殴り応えがある。
「手応えのない奴らばかりだな。緊張感の欠片もない。もう20階は上ってるが、ずっと逃げるヤツを追う単純作業になってるぞ。まるでつまらん」
「ワオーン!」
「確かに変ですね。階層をある程度進めていけば、敵の種類が変わってきたり、フロアの内装なんかが違ったりするはずなんですけど。なんだか、ずっと同じ階を上ってるみたいですね」
「オイ美鶴。まだ何も見えないのか?」
『ああ。依然、反応は無い。妙だな……確かに階は進んでいるんだが、既定の階層にいる番人シャドウも存在しないとは……ん? 待てよ──この反応は……』
「どうした?」
『間違いない30階に反応アリだ。かなり巨大な反応だ……それに、妙な反応がもう一つ──』
「30階か。まだ影時間が明けるまで猶予はある。一気に行くか?」
「はい! もう止まらずに、ばばーんっと行きましょう!」
「ワンワン!」
────
──
「ここは……」
30階層を駆け上がった。目の前に現れたのは──薄気味悪く変色した空だった。亀裂が入ったようば白い模様が特徴的な床。遠景には、黒い燭台に篝火が灯されている。ニュクスとの決着を付けた彼の場所だ。妙だ……もう最上階だと? かつては250以上階層があったはずだぞ。やはりこのタルタロスは何かおかしい。
「美鶴、反応は?」
『む、まだ上だな……遥か上空に反応がある。間違い無く最上階のはずんなんだが。どういう事だ?』
「これ以上はただの空だぞ。何があるって言うんだ。全く、久しぶりで感覚が鈍ってるんじゃないのか?」
『そんなはずは──な、これは……!?』
「ん、オイどうした美鶴」
『反応が急速に下降している! 近いぞ!』
「……!? 先輩、上です!」
「何!?」
頭上を見上げたその刹那。雨と見紛う程の無数の針が飛来して来る。俺は咄嗟の判断で飛び退き、なんとかそれを躱す。
俺がゼロコンマ前までいた場所に、1m強の黒い槍のような針が刺さる。この堅い地面を貫通するとは……汐見の警告が無ければどうなっていたか。クソ、油断した。
「ほう、避けたか」
複数の男の声が交じったような不気味な声が上からゆっくりと降りてくる。見上げれば、刺々しい鎧を身に纏った3つ目の巨人が宙に浮いていた。その巨体な足を地に付け、携えていた槍を地面へ突き立てる。
なんだコイツは? 見るからに敵だが。シャドウの類いか? 今までの雑魚とは違う威圧感がある。ただ者じゃないのは確かだ。
「我の名はグラーキ。この世俗の塔テベルを守護する、這い寄る混沌の使者が1柱なり。時層の歪みより無意識の奥より出でし者。汝、真実を欲するならば、我を地に伏せてみせよ」
「何?」
要は、真実を知りたければ倒せって訳か。シンプルだな……いいだろう。雑魚処理にも飽き飽きしてた所だ。ここからが第一ラウンドだ! 拳を叩き気合いを入れる俺を尻目に、グラーキと名乗った巨人は首を横に降った。
「……まだ先客の相手が終わっていない故、暫し待たれよ」
「先客だと?」
先に来ていた奴がいるという訳か? その姿は見えないが……一体どこに──
「逃げてんじゃねェぞ! まだ終わってねェ!」
そう頭を捻っていた時。突然、上空から人影が降ってくる。衝撃波と共にやってきたそれは、持っていた斧を肩に担ぎ、そのボロボロの身体を起こす。
「ハァ、ハァ……いちいち逃げやがって面倒くせェな……」
「なん、だと……?」
その姿を見た瞬間、俺は一瞬で息が詰まる。口が塞がらず、膝を突いてしまう──その可能性は汐見と蝶の話を聞いた時点で、頭の片隅に存在していた。時空が交わり、過去と並行世界が集結する。それを示唆していたのだ。頭で否定しようが、微かな期待があったのだ。もしかしたらアイツも……と。俺は唇を噛み締めて、その名前を呟く。
「シンジッ……!」
「んだァ? な、アキ!? んでお前がこんなトコいんだよ!」
「こ、こっちのセリフだぞ! お前、お前……!」
「あ、荒垣先輩!?」
「キャウン! キャウーン!」
「コロに……汐見も……! 何がどうなっていやがる」
『荒垣……まさか荒垣なのか!?』
「この声は……美鶴か? なんでお前がサポートしてんだ?」
『情報の整理が追い付かんが……詳しい話は後だ! 来るぞ!』
敵はこちらを待ってくれる訳ではないようで、緩急無く槍を飛ばしてきた。先ずはコイツを倒さねば始まらないようだ……俺達は戦闘態勢をとる。
「汝らは仲間であったか。ではまとめて相手をしてくれよう。真実を探求せし者共よ。さあ、来るがいい!」
「来るぞ、ボサッとすんな! 集中しろ!」
「援護します! はぁ、オルフェウスッ!」
「ワォーンッ!」
「やるしかないか……カエサールッ!」
眉間に銃口を向け、引き金を引く。心の強さ、覚悟の証。かつてシンジに誓ったそれを顕現させる。
「あ? んだそのペルソナ?」
「フッ、いつまでも
「ケッ、言ってろ……カストールッ!」
シンジも引き金を引いてペルソナを出現させる。カストール──俺のかつてのペルソナ、ポリデュークスと対を成すペルソナ。懐かしいな本当に……お前は──荒垣真次郎なんだな…………いいや。感傷に浸るのはよそう。今は目の前の敵に集中だ。ペルソナを出した俺達は、グラーキと向き合い武器を構えた。
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