「なろう」の方で東方を書いているのですが、少々煮詰まったので息抜きがてら前から気になってた二次物を書きます。
気まぐれ更新で文章短めになるかもですがご容赦ください。
あと、原作知識があまりないので他の方々の作品とWiki頼りです。設定や舞台に矛盾などがあれば遠慮なく意見いただけるとありがたいです。
第一目 『ツイてない』
彼がその場面に遭遇したのはまったくの偶然だった。
今日も今日とて男女比の偏っている職場で淡々と仕事をこなし、いつものようにコンビニで二人分の夕食を購入した帰り道――何気なく、何ともなしにぶらりと立ち寄った近所の公園で、事もあろうに凄惨な殺害現場を目撃してしまったのだ。
しかも、自分と無関係とは言い難い人物の。
ツイてない、とコンビニの袋片手に一部始終を傍観しつつ彼は思う。
「本当に……ツイてない」
それは居合わせた自分自身と、そして光の槍で刺殺された兵藤一誠に向けての言葉であり、同時に一誠を殺して悠々と立ち去った――飛び去った奇妙な女に対する嘲りでもあった。
まったく、目撃者がいないかどうかくらい確認してから帰ればいいものを。死体を処理する仲間がやって来る様子もないし、これでは逃げるに逃げられないではないか。
「人気のない公園で死体と二人きりとは、やれやれ恐ろしいな」
一つ嘆息して、彼は顔見知りの死体に歩み寄る。
夕日に染まる公園の中、腹から流れ出た自らの血で衣服を真っ赤に染め上げた一誠。顔には絶望の表情が深く深く刻み込まれ、見開かれた両目は既に光を失っている。昨日、廊下で挨拶を交わした時はあんなにハーレムだのおっぱいだのと真面目に熱弁を振るっていたのに。
そこでふと、一誠が『悪いな、明日はデートだ!』と女っ気のない悪友たちに勝ち誇った笑みで自慢していたことを思い出す。ついでに『ギャルゲ展開!』だの『モテ期キター!』だの『祝・脱童貞!』だのと学び舎に相応しくない単語を喚いたので蹴り飛ばしたことも思い出す。
しかし、デートしていたとなると。
様子からみて、刺し殺したあの女が一誠の逢引相手となる訳だが、
「……いくら女好きでも恋人は選ぶべきだったな、兵藤」
常日頃の言動が原因で女運が最底辺に落ち込んでいた一誠だが――『どんな少年でしたか?』と聞かれて浮かぶ記憶が下心丸出しの一幕では魂も浮かばれまい。いくら学園で悪名高いエロ三人組の一人だとしても、流石に同情する死に様だった。
とはいえ、あんなボンテージファッションの空飛ぶ痴女を追いかけて仇を討とうなどという考えは彼にはない。兵藤一誠は知人であり会話する回数も比較的多い方ではあるが、突き詰めてしまえば結局のところ
それに何より――恐ろしい。
あの黒い翼の女が。
あの光り輝く不可思議な槍が。
怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて仕方がない。
「ひぃぃぃ……ああ怖い。怖い怖い、怖いなあ」
あれで刺されたらどれほど痛いのだろうか。
もし死んでしまったら自分の意思は何処に行くのだろうか。
想像しただけで寒気がする。怖気が走る。肩が震え、膝が笑い、歯がカチカチ鳴ってしまう。
「
一誠の亡骸の傍らにしゃがみ込む彼は、人形にでも話し掛けるように言葉を紡ぐ。第三者が見たら彼こそが殺人者なのではと錯覚しそうなほどに、常軌を逸脱した態度と狂った声音で。
それは死者への問い掛け。返って来るはずのない一人きりの問答。
時間だけが刻々と過ぎていき、やがて彼は亡霊の如く立ち上がると、
「……さて帰ろう。折角買ったアイスが溶けたらブレアに怒られる」
彼にとって、アイスが溶けるのも知人が惨殺されるのもあまり大差ない。むしろ、まだ食える価値がある分アイスの方が優先される。
死体にはもう見向きもせずに、その場をふらふらと後にする。
まるで、明日も何も変わらない日常が来ると信じているように。
まるで、兵藤一誠が明日も元気に登校すると分かり切っているかのように。
「ああ、しかし腹が減った。仕方がない……アイスには悪いが少し
救急車も警察も呼ばず、魂感知に引っ掛かった
◆ ◆ ◆
彼は人間ではない。
悪魔でもない。
天使でも、堕天使でもない。
ただひたすらにソコにある――ただひたすらに底にあって弱きを導き、ただひたすらに
彼は根源。
彼は恐怖。
彼は鬼。
名を――阿修羅。
最強のビビリであり、最狂で最凶の神である。