一般人(特典ヤバめ)が転生したお兄様   作:排他的

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始まりのRebellion

魔法科高校の劣等生という作品がある。

 

その作品は劣等生の兄と優等生の妹が織り成す学園物語ではなく、政治に世論に裏社会にと色々な障害を自称劣等生の頭脳チート、戦闘チート、メンタルチートの三拍子が揃った化け物兄貴がバッタバッタとなぎ倒していく物語である。

 

そんなチートお兄様に転生してしまった少年がいた。少年は鉄骨が空から降り注いで来たのを回避し、転生トラックと呼ばれる居眠り運転トラックを華麗に避け、通り魔殺人を華麗に捌くという転生イベントをいとも容易く回避したのだが、その激しい運動のせいで持病の喘息が悪化してそのまま死に至ったのだ。

 

それを不憫に思った神様が少年にとんでもないものをたくさん特典として渡して、転生させる世界で最も安全な身体に転生させたのだ。

 

この物語はそのとんでもないものを使って転生お兄様がありとあらゆる障害を突破する物語である。

 

尚、とんでもないものの中には地球を簡単に吹っ飛ばせるものがいくつも入っているということをご了承ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年、司波達也は今年で6歳になる。四葉家というアンタッチャブルとかいう痛々しい2つ名を付けられた家の分家に生まれた彼は生まれてからずっと蔑まれて生きてきた。

 

皆が言うには魔法師として出来損ないと。

 

原作通りの司波達也なら我慢は可能だろう。だが、この世界の司波達也は違う。元が一般人なのだ。我慢は限界に達していた。

 

使用人に親戚、親や妹にまで馬鹿にされてもう我慢の限界だった。達也は仕返しを決意した。

彼には固有魔法というものがある。再生という万物を文字通り元に戻す魔法と分解という全てのものをこの世から抹消する魔法だ。

 

それに加えて転生特典として色々なとんでもないものを達也は文字通り自由に使えた。達也は堪忍袋の緒が切れたとアンタッチャブルと言われた四葉家を混乱の渦に叩き込むことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ない、ない、ない!?葉山さん、一体全体何が起きているの!大事な書類が全部消えているのだけれど!」

 

四葉真夜、四葉家の当主であるその女性は朝っぱらから大騒ぎをしていた。暗殺すべきターゲットを纏めた書類や裏社会に関しての情報を纏めた書類などが全て消え去っていたのだ。

 

「こちらは調理器具に食材に車にCAD……生活に必要なものが全て消えていました」

 

真夜の執事である壮年の老人、葉山は表向きは冷静に事態を真夜に伝えたが、心の中では焦っていた。今まで起きることがなかった珍事である。仕方の無いことだろう。

 

「……一体どう言うことなのかしら」

 

真夜は途方に暮れていた。何が一体どうなっているのか、こんなこと四葉家で生きていた中で起きたことがなかったのだ。

 

「きゃあああああ!?」

 

「……今のは深雪さんの声!?」

 

また別の部屋、達也の妹である深雪の部屋では深雪が大声で泣き喚いていた。

 

「……冷静になりなさい、深雪さん。私たちの家具と服が全部消えているなんてこと有り得るわけが…………」

 

「お、お母様、一体これはどう言うことなんですか!?」

 

深雪と達也の母である四葉深夜と深雪は目の前の光景に呆然としていた。ベッドなどを含めた全ての家具が朝起きたら全て消えていたのだ。

 

屋敷のあちこちから悲鳴が出ている。とある一点以外全ての場所で同じようなことが起きているのだ。

 

「……計画第一フェイズ、終了」

 

達也の部屋では達也がニヤニヤ笑いながら手をワキワキさせていた。達也は自身の固有魔法、分解を使って地道に屋敷中の資料や服、食べ物に生活必需品、車や連絡端末などを分解させて行ったのだ。無論水道管に電気、ガスなども使えないように分解済みだ。

 

「計画第二フェイズ、開始」

 

達也は手を挙げて合図を下した。計画第二フェイズの始まりである。

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃあああああああああ!?」

 

執事の青木が気絶した。顔には黒いカサカサと動く虫が大量に張り付いていた。青木は達也を常日頃から馬鹿にしている性悪執事だった。

 

「今度はゴキブリが大量に出現したですって!?早く駆除しなさい!」

 

真夜は迅速に指示を出した。この世で1番見たくないものトップ3には入るであろうゴキブリを四葉家から無くすために。だが使用人達は動かなかった。

 

「いやちょっとゴキジェットもないのにあれを駆除するのは……」

 

「新聞紙も棒も何もかも消えているんですよ?ちょっとさすがに……」

 

ゴキブリに対しての嫌悪感は皆同じだった。真夜は仕方ないと思ってCADなしで己の得意魔法であり、2つ名の由来ともなっている流星群(ミーティア・ライン)でゴキブリを勇敢な使用人とともに駆除する羽目になった。

 

深雪と深夜は部屋に閉じこもっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴキブリ騒動から5時間ほど経ち、ゴキブリを全て駆除した真夜達はお腹を空かせていた。食材もお金もなくなって食べるものを調達する術がないのだ。お腹が空いても仕方ないだろう。

 

「……なんでしょう、いい匂いが……」

 

一際お腹を空かせていた深雪が鼻を動かしながら匂いを嗅いで匂いの元を探ると、達也の部屋に着いた。何故この人の部屋の前でこんな匂いがするのかと疑問に思って部屋を開けてみると、そこには高級そうな牛肉を使って1人ですき焼きをしている達也の姿があった。

 

「あぁ、空腹で苦しんでる奴らを思い浮かべながら食う最高級黒毛和牛のすき焼きは美味いぜ……!しかも毎日毎日不味いものばっか食ってたからかな、こんな美味いもの食ってると涙が少し出てくる……」

 

「な……な、な……!」

 

皆が苦労して空腹を我慢しているというのに白飯に卵を絡ませた黒毛和牛の肉を乗せてご飯を口いっぱいに頬張っている達也を見て深雪は心底ムカついた。

 

一言言ってやると達也の前に進みでようとすると、達也が深雪の方へと首を回転させて顔を向ける。

 

「あれ、そこにいるのは深雪ちゃんじゃないか、食べる?」

 

「!」

 

いつもと違う達也の様子を見て少し違和感を覚えながらも達也が椅子を出してきて自分の箸と卵とお茶碗を出してご飯をよそってくるので深雪は一言を言わずにそのまま席に座る。

 

「……暖かい」

 

達也の部屋は暖かかった。どうやら他の部屋と違ってちゃんと電気が行き届いて快適に暮らせているらしい。

 

「勢い余って深雪ちゃんの家具とか色々分解しちゃったからね〜お兄ちゃんとして最低だったかな〜」

 

深雪は一連の騒動の犯人を見つけた。いつもの深雪なら達也を叔母や母親に突き出すだろう。だが深雪はそれをしなかった。

 

「貴方は何故こんなことをしたんですか?」

 

「何故って、そりゃあ鬱憤晴らしかな〜いつまでも馬鹿にしてくる馬鹿共をドン底に突き落としてやりたくてさ〜力を使わないようにさせてきたのはあっちなのにさ〜」

 

「……力とはなんのことですか?」

 

「……深雪ちゃんは知らないか〜、まぁそうだよね、アイツらが勝手に封印してきたんだから仕方ないか、力ってのは俺の固有魔法のことだよ〜」

 

「固有、魔法?」

 

深雪にとってその言葉は初耳だった。達也は牛肉を深雪の卵の中に入れて食べるよう勧めながら話す。

 

「そう、俺は精霊の眼(エレメンタル・サイト)って言う視覚能力と分解と再生って魔法が使えるのさ〜、だからほかの魔法は全く使えないの」

 

「分解と再生……」

 

その言葉通りに受け止めるなら、達也はとんでもない力を保有しているのだろう。それが己に向かずに家具などの生活必需品に向いてよかったと考える。

 

「深雪ちゃんもそれ食べたら帰りな、明日からはもっと酷いことになることも覚悟しておいてね」

 

「……貴方は何がしたいの?その力で何がしたいの?」

 

「自由になりたい。さ、早く帰りなよ」

 

深雪は動かない。意地でもこの居心地のいい空間なら動く気はなさそうだった。

 

「……あのさ、君は俺にとって妹だし、大事な存在ではあるんだ」

 

「……」

 

「でもさ、君が俺に向けてきた蔑みの目線やらなんやらが消えるわけないだろ?」

 

「……それは」

 

「俺はこれまで俺を下に見てきた奴らを絶対に許す気は無い。過酷な訓練を強いてきて、使用人以下の扱いをしてきた奴らを許すなんて……俺を馬鹿にしすぎてるよ」

 

「…………」

 

先程まで深雪に向けていた暖かい視線は消え失せ、魂が冷えるような冷徹な視線が深雪に向けられる。

 

「……」

 

「帰ってくれない?もうこれ以上居られると君を妹として見れなくなるからさ」

 

深雪はおもむろに立ち上がって達也の前に進み出る。達也は怪訝そうな目で深雪を見る。

 

「い、今まで、ご、ごめんなさい……」

 

冷徹な視線が効いたのか、深雪の目からは少し涙が出てきていた。深雪は今まで褒められて育ってきたのだ、達也が向けた冷徹な視線なぞ耐えられるわけが無い。

 

「……もうしない?」

 

「もうしないから……」

 

ブルブルと震える深雪の頭を達也はゆっくりと撫でる。

 

「ごめんね、深雪ちゃん。少し大人気無かったかもしれない。好きにしていいよ」

 

「い、いいの?」

 

「うん、謝ってくれたし、もうしないって言ってくれたからね」

 

そう達也が言うと、深雪はわッと泣き出した。余程怖かったのだろう。達也は深雪の頭を泣き止むまで撫で続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

「お兄様?」

 

「はい、これからはお兄様のことはそう呼ぶようにしようかと」

 

「ふーん、好きにしたら?」

 

「わかりました、お兄様!」




最初は始まりのRebellionなんて洒落た題名じゃなくて深雪ちゃん、即落ち二コマとかだったんですけどね。

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