にげきれドンケツシンボリー   作:三流FLASH職人

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両さんの1人称は「わし」ですが、文章にすると他のひらがなに埋もれてしまうので
あえて「ワシ」にしています。


第2話 障害を乗り越えろ!

 -今日もまたやらかしました、さすがに汚いドンケツシンボリー!-

 

「こらウマ親父!てめぇ何てことしやがる!!」

「ひっこめー!」

「みんなー頑張れー!シンボリーをぶち抜けーっ!!」

 

 観客のブーイングと場内アナウンスの毒舌をBGMにして猛然と逃げに入る両津(シンボリー)

 

「がはははは!これでワシのぶっちぎりだ!ざまぁみやがれ!!」

 所詮コスプレ女の体力、この広いトラックでここからワシに追いつける者などいるか!

直線を走り切り、第1コーナーに差し掛かる・・・ん?なんだあの壁は。

 

 -さぁ先頭のドンケツシンボリー、1コーナーの障害にかかります!-

 

 ずるぅっ!

 

 思わず踏み出した足を滑らせ、前後に股割りをした状態でそっくりコケるワシ。

 

「こら!ダービーっつっただろ、なんで障害があるんだよ!」

しかも普通の競馬で見るような高さの障害ではない、目の前にあるのは遥か上まで

そびえ立つ板張りの壁、オリンピックの馬術などで見る壁障害の巨大版だ。

 

「今年から変化を付けるためにこうなりました。」

 コース脇にいる係員が表情なくそう告げる、黒の背広にスーツを着込んで度の強い

メガネとカイゼル髭を蓄えた、いかにも融通の利かなさそうな男だ・・・問答は無駄か。

 

 まぁよく見ると壁のそこかしこに突起物が見える、ポルタリングという奴だな。

ならばワシの得意分野だ!

「どりゃあぁぁぁぁぁっ!!」

 手を掛け足を掛け、まるでゴキブリのように壁を這い上がっていく。見た目が

レオタードを着込んだおっさんのそのキモい姿に、観客から悲鳴が上がる。

 

 30mもあるその壁を登り切った両津(シンボリー)が頂上をまたいで後ろを見下ろす、

さすがにこの壁を登ってこれる女などそうは・・・

 

「げぇっ!!?」

 

 追いついてきたウマ娘達は何とひとっ飛びでその障害の中段まで取り付き、そのまま

両津(シンボリー)に負けぬ勢いで駆け上がって来る、どんな身体能力だよこの女達!

 

 ベキィッ!バキッ、バキバキバキ・・・

 

 破壊音と振動を響かせて登ってくるのは怒りの表情の部長(ハイシチズン)だ。何とカベに足を蹴り込んで

埋め込ませ、そのまま体を地面に平行にして足を突き刺しつつディオ昇りでずんずん

迫って来る・・・美人が激怒している顔が怖い!

 

「こらぁっ!両津(シンボリー)、またとんでもない真似しおって、許さんぞ!!」

 

 これはヤバイ。部長もそうだがこのままでは追いつかれるのも時間の問題だ!さっさと

降りて先に進まんと、とコースの先に目をやる・・・

「ぶっ!!」

 降りる為のロープの先にあったのは50mはあろうかという水濠、いやもうプールだろこれ。

いつからダービーは鉄人レースになったんだ・・・いや、待てよ。

 

「これは使える・・・」

 ニヤリと顔をゆがめて笑ったシンボリーは、降りる為のロープのフックを外すと素早く

それを巻いて束にして、次の瞬間意を決してその身を下に踊らせる!

 

 ズリズリズリズリーッ!・・・

 

 障害を安定させるために斜めに据えられた添え木にロープを引っかけ、すべるように

下まで一気に降りる両津(シンボリー)

「よし、あとはこいつを・・・」

 摩擦ですり切れたロープをフン!と引っ張って引きちぎる、そしてそれを持ったまま

一気にプールに飛び込み、猛然と泳ぎ出す!

「うおぉぉぉぉっ!」

 

 同時に2番手グループが一斉に壁の頂上に到達する、標的であるシンボリーを眼下に

捕らえた彼女たちは皆一斉に「逃がさない」「さっきの借りは返すよ」とばかりに

ロープを握って直下に身を躍らせる。

 

「甘いなお前ら、ここはこう行くんだよっ!」

頂上から一気にプールに向かって身を躍らせたのは障害競走の名バであるキングジョイ、

マジェスティバイオにオジュウチョウサンの3バだ。一気にプール中ほどまで大ジャンプして

両津(シンボリー)との差を一気に詰める!

 

 ザッバアァァァァン!

 

 水しぶきと共に観客から歓声が上がる、よし、そのままあのシンボリーを一気に捕まえろ!

これ以上あのウマ親父の暴挙を許すな!!

 

「い・・・いやあぁぁぁぁぁっ!」

「きゃあぁ、なんで、なんでぇーっ!」

「ヘ、ヘビが、いっぱい・・・たーすーけーてー!!」

 

 飛び込んだ3人が一斉に悲鳴を上げる、彼女らの周囲には無数の蠢く線状の物体がうねうねと

漂っていたのだ。

「「ひ、ひぃっ!!」」

 降りて来たウマ娘たちが一斉にプールから、ずざざざざっ!と引く。

 

 競走馬と言う生き物は基本ヘビを何よりも恐れる、人間に守られた安全な牧場では、何より

ヘビこそが最も危険な生き物なのだ、最悪パニックで足をケガして引退に追い込まれる

ことすらある。ウマ娘となった彼女らもその遺伝子はしっかり受け継がれていたのだ。

 

 両津(シンボリー)水濠(プール)を泳ぎ切り、高笑いを響かせながらそのまま2コーナーに走り去っていく。

「がはははは、ざまぁみやがれ!お先にー。」

 

 その様を苦渋の表情で眺めながらも、ヘビを恐れてプールに踏み込めないウマ娘達。

ちなみに先に飛び込んだ3バは全員目を回してプールに浮かんでいる。

 

「うんしょ、うんしょ・・・ふぅ、追いついたよー。」

 最後尾からロープを伝って降りてきたのはハルウララだ。皆が止まっているのを見て

どうしたの?と首を傾げる。

 

「ぷ、プールに・・・ヘビが・・・」

 涙目で壁に寄り添うスペシャルウィークの声を聴いたウララは、逆に顔をぱぁっ、と

笑顔にして一気にプールに飛び込む。

「うわーい、ヘビさんだー♪」

嬉々としてプールに浮かんでいるヘビを両手でつかみ取る、さすが土佐女傑(はちきん)のウララだ。

 

「って、あれ?これ、ただのロープだよ?」

 そのウララの言葉に、プール脇に密集していたウマ娘たちが一斉に「へっ?」という顔をする。

確かにウララが掲げているのは、今しがた障害を降りるのに使ったロープの切れっ端だ。

 

と、いうことは・・・

 

 

「「「待ちやがれシンボリイィィィィっ!!!!」」」

 

 ナリタが、オグリが、シービーが、その他の伝説級の名バ達が、そして部長(ハイシチズン)

一斉に怒り心頭でプールに飛び込む!このまま逃がしてなるか!!

 

 

「今更気づいてももう遅いわ、このレース貰った!がはははははは・・・」

 

 ぶっちぎりトップを爆走するドンケツシンボリー、このまま逃げ切る事が出来るか!?

 

 

 勝負はバックストレッチへ、にげきれドンケツシンボリー。

 

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