-先頭はいまだにドンケツシンボリー!しぶとい!しぶとすぎるぅぅぅ!!-
いよいよ最後の直線、可憐なウマ娘バ群の
必死に逃げる。
もはや半バ身と離れていない所から追い回すウマ娘達も、さすがに先程の大食い障害が
響いてか、なかなか抜き去る事が出来ない。
「うぷ・・・きっつい・・・吐きそう。」
「あーもう、お腹が重くてフォームが安定しない!」
「誰よあんな障害考えたのっ!」
ある者は真っ青な顔で、別の者は口を両手でふさぎつつ、それでもウマ娘として走る。
彼女らの使命は走る事にこそあるのだから。
「うーん、中華もいいがフルコースも食べたかった・・・もっかい戻るのはアリか?」
「なわけないでしょう!その余力があるならさっさとシンボリーを捕まえなさいっ!」
一人だけ余裕のオグリキャップに他のウマ娘がツッコミを入れる。オグリはうむ!と頷いて
走りながら前傾を深くすると一気にスパートをかけ、他バをゴボウ抜きして
並走に持ち込む。
『行けーオグリー!シンボリーをぶち抜けーっ!!』
『頼むぅぅっ!オッサン馬を勝たせるなあぁぁぁーー』
観客から悲鳴にも似た絶叫が飛ぶ。だがそれは逆に
なかった。
「観客どもめ!さんざんワシを馬鹿にしてくれたな・・・絶対に負けんぞ!ワシが勝って貴様らの
馬券を紙くずにしてやるぞ!!」
ここにきて両津は確信していた。どうやらこのイベントは競馬同様、本格的な公営ギャンブル
として運営されているのだと。そうでなければこの大観衆や、彼らの必死な声援の理由がつかない。
ならば今悲鳴を上げている観客どもはワシの馬券を買っていないのだ。つまりワシが
一着を取れば奴等に大損をさせてやれるのだ!散々罵声を浴びせてくれた借りを返してくれる!
「バケン・・・おいシンボリー、なんだそれは?」
並走しているオグリキャップが不思議そうに問いかけてくる。
「あん?馬券は馬券だよ!着順予想して買って配当を返す、男のロマンじゃねぇか!」
知らんのか、という顔で返す
「それって・・・ギャンブルか?ウマ娘競技は
「・・・へっ?」
思わず表情を無くす両津。こんだけの観客を集め、この広い場所を使って行われるレースが
ギャンブルじゃないって言うのか?
「じゃ、じゃあ・・・この客たちは・・・なんでこんな必死に・・・?」
「そりゃまぁ、レース後のウイニングライブがお目当てだろう。」
走りながら呆然顔をする
「一着になればセンターだしね!歌うの気持ちいいんだー!!」
「メイクデビューに失敗はしたが、ここでダービーを獲れば一気にヒロインや!」
「てかシンボリー知らなかったの?」
「じゃ、じゃあ・・・コイツらはそのライブ目当てに、あんな必死になって応援してるのか?」
「「あったりまえじゃん(ですわ)(じゃないか)」」
・・・
-おーっと!ここでドンケツシンボリー失速ーっ!-
『いやったあぁぁ---っ!』
『ざまみろいシンボリー!』
『可愛いは正義!美しいはジャスティスーっ!!』
歓喜する大観衆。
空を仰ぐ。
(そらワシがこの姿で、周囲に美女をはべらせてステージで歌ったら怒るわなぁ・・・
ワシが客でも怒るわ。)
まるで電池が切れるように、一気にやる気をなくす両津。
「ちょっと
「ちゃんと走って下さいよ、わがトレセン学園カメアリ支部の代表なんですから!」
ハナをほじりながらグチをこぼす。
「いや、だってワシ勝ってもメリット無いし・・・」
「・・・一着賞金は1億円ですよ?」
がばっ!
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉおおおっ!!!」
中川のセリフを聞いた途端に跳ね起きて、ありえない速度でゴール目掛けてミサイルのように
猛突進する
「大丈夫?あんな嘘ついちゃって・・・」
「先輩をやる気にさせるにはああ言うしか無いしね・・・もし勝ったら僕が何とかするよ。」
-どどどどどどどどどどどどどー
「どけどけどけぇいっ!!」
猛然と土煙を上げ、他のウマ娘たちを蹴散らしながら爆走する
本来なら明らかに違反、降着や失格の対象なのだが、金に目が眩んだ両津にそんな理屈は通らない。
伝説の名馬の名を冠したウマ娘たちが、まるで普通の少女のように蹴散らされ吹き飛ばされていく。
「1億!1億!!いちおくえんんんんっ!!」
目をむいて歯を剥き出し、執念の塊となって突き進む
トップに躍り出る、あと100M!
「こらあぁぁぁぁっ!
トレセンカメアリ支部長の
今の両津は怒りの部長でも止められない、ひっ捕らえる前に奴はゴールに駆けこむだろう。
-いやあぁぁぁぁぁっ!シンボリーが、ドンケツシンボリーがあぁぁぁっ!-
『止めてくれえぇぇぇぇっ!シンボリーがセンターのライブとか見たくねぇー』
『ハイシチズンー!頼む頼む頼む抜いてくれーーーっ!!』
実況が、観客が絶望の悲鳴を上げる。もはや
それでもセンターが見目麗しい
完全に入場料返せの状況である。
「がはははは!喚け、呻け、ざまぁみやがれ!勝つのはワシ・・・だ!?」
ゴールまで30mの地点で両津は目にする・・・その決定的な、絶望の光景を。
「はっはっはっはっはっ、残念だったな諸君。1着はすでに私が頂いた!」
なんとゴールの向こうで”1着”と書かれた三角旗を掲げていたウマ娘が笑顔で立っていたのだ。
「そん・・・な・・・」
その場にばたっ!と倒れ伏す
「こら、お前最初から走ってないだろゴルシ!」
「スタートで立ち上がってそのまま止まってたじゃん!」
「ずっと追ってこないと思ってたら・・・ソレするためにここにいたの?」
てへっ、と舌を出して「バレたか。」と笑顔でこぼすゴールドシップ。彼女はスタートで
シンボリーが薙ぎ倒したゲートに驚き、思わず立ち上がって硬直したせいでレースに参加
し損なっていた。ならばウケを取るためにと、まるで運動会のような一着の旗を用意して
ゴールで待ち構えていたというわけだ。
「ちょ、ちょっと待・・・ぶっ!」
倒れた
踏み潰されていく・・・まぁコースのど真ん中で寝てる以上、同情の余地は無いのだが。
-ハイシチズンが一着です、ドンケツシンボリーはペケでした-
背中に無数の足跡をスタンプされて、まるでカエルのように潰れている両津の耳に
どこかで聞いたようなアナウンスが聞こえていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「ふぅ。ま、こんなもんかな。」
パソコンの前でテキストを書き上げ、ふっと息をつく男。彼は趣味でSS投稿サイトに
”三流FLASH職人”というHNで二次創作をいろいろアップしており、今も最新作の最終回を
ようやく完成させた所だ。
「こち亀とウマ娘のミックスはやっぱ無理があったかなー、まぁいいや、元々お遊びだし。
んじゃアップして・・・」
そう呟いたその瞬間、PCの画面が暑苦しいオッサンの怒り顔で埋め尽くされた!
「ひ、ひぃっ!!両さん!?」
『貴様が作者かあぁぁぁぁっ!よくもワシに恥ずかしい真似をさせてくれたなぁ!!』
なんとPCのモニタからぬっ!と抜け出して、作者の襟首を掴んで締め上げる両津。
『部長も本田も美人になってるのに、なんでワシだけ変態なんだよ!』
血管を浮かび上がらせて作者を睨め据える両津、対応を間違えたら最悪殺されかねない・・・
「じゃ、じゃあ書き直します。両津さんを絶世の美女にして・・・」
『こ・れ・は・連載物だろうが!もうすでに大勢の読者が見てるだろうが!』
「大勢じゃありません、私など不人気の底辺作者ですから・・・誰も気に留めませんって!」
大汗をかいて必死に両津のご機嫌を取る作者。両津もその情けない様を見て、まぁ
ぶちのめす程じゃなと思い直し、ならばとにやり笑って悪い顔をする。
『物は相談なんだがな、作者くんよ・・・』
「は・・・はいいぃぃぃ・・・」
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-それでは皆様お待たせしました、ウイニングライブの開幕です-
華やかな舞台に麗しきウマ娘たちがスポットライトを浴びて居並ぶ。そのセンターに
いるのはモデル体型に黒髪が美しい、まるで西部劇のヒロインのような風貌をした
高らかに歌い上げ・・・
ぼふっ!
その瞬間、突然ハイシチズンが煙に包まれた・・・ほどなく晴れた煙の中にいたのは、
勝負服であるレオタードを纏った中年男性、大原大次郎そのまんまの姿だった。
「なっ、なんだ!なんでわしの姿が・・・こんな!?」
固まる会場。長身の美女がいきなりこの姿になったら、しかもぴちぴちのレオタードを
纏った中年男性をいきなり見せられたら無理も無い事だ。
「きっと両ちゃんの仕業ね!」
「多分この世界の”神様”を脅しつけたんだろうね・・・」
「相変わらず発想が普通じゃない・・・」
あの両津の逆鱗に触れたらそりゃ神様でもこうなるだろう・・・
阿鼻叫喚のライブ会場。観客の罵声と事態を収めようとする役員をよそに、周囲のウマ娘達も
ドン引きし、
その針の筵な時間をもってダービーはお開きとなった・・・
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トレセン学園カメアリ支部。
その入り口のドアが粉砕され、四方のコンクリ壁が怒りの咆哮でコンニャクのように揺れる!
「
鉄トゲを無数に装備した、いわゆる”戦車馬”のヨロイをこれでもかと纏った
阿修羅の顔をして乗り込んできたのだ。
いつものパターンだと思いつつも、今日の怒りは格段だなぁと思いながら、
「競馬が賭けになる世界に行くと言ってましたが・・・」
おしまい。