超昂大戦 二次創作SS 着任! ビートスナイパー・エイム、そしてもう一人の中途採用者 作:環 藍河
アラサーおねいさん東剛影夢とダイビート中途採用枠を争う泣き虫男は、過去にトレーラー事故を起こし、とある少女を巻き込んでいた。
…
酒酔いも、過労運転も、無かった。
その日も、港にコンテナを下ろし、帰るはずだった。
閂市内の小さな交差点。左折で普段より少しヘッドを出しすぎた。右ミラーを奥の街路樹に当てそうになり、点滅信号に駆け込む、左の横断歩道の子どもに気づくのが遅れる。
停車し駆け寄った車体の死角。子どもは庇われ無傷だった。代わりに犠牲となった少女が、足をあらぬ向きに捻られ、激痛に顔を歪めながら、『もう大丈夫だよ』と子どもに微笑む。
病院への謝罪訪問は、会社の弁護士に禁止され、叶わなかった。示談も成立したと聞かされた。
免許は停止。取消処分や交通刑務所こそ免れたものの、謹慎ののち懲戒解雇。
陸上部のホープだったらしい。全国も狙える逸材だったらしい。
示談金では戻らない、一瞬が奪った希望の未来。
求職の日々は心の懲罰房の日々だった。
履歴書の途中で万年筆が震える。
面接日はネクタイを締める手が止まる。
同居の親に八つ当たりを始め、無気力のまま4年が過ぎていた。
迎えたその日。
地球人類の存亡を賭した決戦を、ネット越しに虚ろに眺めていた。
背後からの凶刃に貫かれ、希望の戦士は変身を解かれる。その映像に心引き裂かれたのは、アカリの知己だけでは無かった。
「園崎…さん? …何で?! 何で!! だって、あの足は、もう走れないって…!!」
後悔に囚われ針を止めた彼の時計が、再び動き出す。
…
「失礼だが、アカリの足が完治したことを、君はあの映像で知った。君を縛る罪悪感が無くなったから、君は就活を再開した。違うかな」
「えっ…? あっ…!」
トキサダは冷酷な仮説を突きつける。だが。
「違う! 違います! あの事故で、俺なんかより万倍苦しんだあの子が、ずっと前を向いて頑張って、体を張って戦って…!」
堰を切る激情。
「なのに、俺が…五体満足で、アカリさんよりも何かできるはずだった自分が、いじけて引きこもって不幸だと4年嘆き続けて…今はそのことを悔やんでいます。アカリさんを不幸にした事実を背負ってでも、できることをダイビートで尽くしたいんです…!」
「…ということらしい。あとは君に一任する。」
インカム越しに話すトキサダ。
扉から響くノック、続く「失礼します。」の声。
「もう、長官。これって圧迫面接ですよ。」
入室者は最高権力者をたしなめ、きびすを返す。
「お兄さん、お久しぶりです」
「…あっ…!」
いつか会う可能性も覚悟して臨んだはずなのに、男は目線を背ける。
「…許してもらう資格が、俺にはありません。たとえアカリさんの怪我が治っても、俺があなたの青春を奪った事実は…消えないから…」
「じゃあその分、これから誰かをいっぱい助けて、トータルでプラスにしてほしいな、ってことでどうでしょうか?」
男の手を取り、アカリが続ける。
「あのときお兄さんは、救急車もパトカーも全部自分で呼んで、私の応急手当もして、運転ミスも正直に認めて…だから、お兄さんは自分より他の誰かのために動ける人だって思います。ダイビートでは最重要のスキルですよ」
自分の未来を奪った相手に、一切の憎悪や怨嗟を口にせず、ただ良さを認めてしまう。
ああ、だからこの子はエスカ・ルビーなのだ。
「ダイビートのロジスティクスは、平時の物資輸送だけでなく、戦闘時の兵站、ときに戦士の拠点輸送も任せる要職だ。安全運転は新人研修で叩き込むから、心配せず、君の力を貸してほしい。」
零れる涙も拭わず、雇用契約書に署名を入れた。
…
「ありがとう、ございました…っ!」
(…はあ〜っ、とうとうガチ泣きキメちゃったか。…でも、あやつ何か嬉しそう…と言うか、憑き物が落ちたみたいな…?)
退室する競争相手を評する影夢だった。
なお、この後の自身の最終面接で、東剛影夢は戦士枠採用を告げられる。守秘義務契約に一筆入れた後、Dチャージの説明にたじろぎ、それでも雇用契約書に一筆が入った。
「や…やっちゃうの? もとい、やられちゃうの、私?! そっ、それより…ば、バレちゃった…アラサーおねいさんが、ば、ば、ばっ…バージンて…泣きたい…」
奇しくも中途採用枠2名、涙の最終面接であった。
あとがきは、エピローグの後で。
続きもお楽しみください。