東方新天地 〜 Forgotten Memories in the New World. 作:ぽよい
因みにだが、外の世界ではニホンオオカミはかつて凶暴な妖怪だとして追い払われ、絶滅した。
殴り飛ばした犬はほとんどダメージを受けていない様子だった。ヤツは空中で体を捻って体勢を立て直し、見事に受け身を取ったのだ。魔法で強化しつつ、物理的にもかなりの力を乗せた箒スイングだった筈だ。今までの犬なら全身複雑骨折で即死だろう。何かがおかしい。私の背中側で戦っているカービィもかなり苦戦している様子だ。あの犬は竜巻の暴風に突っ込み、その中に居るカービィを確実に噛んで攻撃している。
しまった、よそ見していた。顔スレスレに犬の爪が…しかし犬が爪を使うか?この感じ、まさか、絶滅したはずの妖怪か?
「コイツ、犬じゃない!ウルフだ!」
バンダナワドルディが槍で爪の斬撃を受け流しながら叫ぶ。成る程、コイツは狼だったのか。だとすると寒いのも平気だろうな。西洋の狼の弱点はたしか銀だったと思うが、外の世界の狼に銀など効くのだろうか?それ以前にこんな場所に銀など無いだろうが…というかコイツ、西洋の狼には見えないな…
コイツら全然攻撃が効かねえ。殴っても魔砲ぶっ放してもうまく受け流しやがる。おまけに素早くてすぐ距離詰められちまうし…クソっ、勝ち筋が見えねえ。
カービィがさっきまで被っていた竜巻の帽子が落ち、砕け散る。カービィは狼に噛まれ、悲鳴を上げて暴れていた。ヤバいぞ、このままだと一番の戦力がダウンしてしまう。どうすればいい?こうなったら一か八かだ。
魔廃「ディープエコロジカルボム」
カービィを咥えた狼めがけて爆発物が入った魔法薬瓶、要は強力な爆弾を投げつける。味方を巻き込んでしまうがこの距離でこの威力なら避けられまい。受け身は取られてしまうだろうがそれでもカービィを離してはくれるだろう。と、そう思って投げつけたのだがいつの間にかカービィが脱出し、狼はカービィから距離を取っていた。身体が柔らかいからか、それとも爆弾にビビって狼の方から離したのか。それより爆弾だ、アレじゃ無駄撃ちじゃないか!カービィの顔面に直撃したら…どうしたらいい?もう走馬灯は終わってしまうぞ。
「カービィ、その薬瓶を吸い込んで!」
バンダナワドルディがそう叫ぶと、カービィは大きな口をあけた。そうか、その手があったか。カービィは銀色に凶々しく輝く王冠を被っていた。
「げっ…クラッシュじゃん…魔理沙さんどんな薬を瓶に入れてたんですか…」
バンダナワドルディはどこか嫌そうな顔をしていた。
「魔法を作るときに出たゴミを、強力な火薬として…でクラッシュってなn…」
カービィが両手を上げるのを見たバンダナワドルディは血相を恐ろしく変えて叫んだ。
「早く伏せて!」
と、次の瞬間、辺りは眩い光に包まれ、灼熱と化した。慌てて伏せた私達を襲うチャンスだと思ったのか飛びかかった狼達は…一瞬で骨と灰だけになってしまった。なんと恐ろしい能力だ。駅は大火事となってしまった。疲れたのか倒れてしまったカービィを抱きかかえて煙が充満する火の海から脱出する。一体何なんだこの能力は…小さな核ミサイルか?
「あー、槍がダメになっちゃったや。あんな狭いところで地獄の業火なんか使われたらこうなっても仕方ないか…新しいのを買わなきゃいけないなあ…」
バンダナワドルディが持っている槍は木製部分が炭になり、刃先は熔けて変形していた。バンダナも所々燃えた跡が付いている。私の服もだいぶボロボロになってるな。しかしこれ程に燃え盛っているのに崩れる様子がない、やはりこの駅は結界のコアにされていたか。いつものようにスキマを繋げると、いつもの掛け声と共にワドルディがゾロゾロとやってきた。一体どういう訳か大きな消火器を持ってきて。私のミニ八卦炉でも消火できるんだが、折角なのでワドルディに任せるとしよう。消火、そして解体はすぐに終わり、拠点へと帰った。
ワドルディの町は一段と賑やかになっていた。ワドルディだけでなく、人間や妖怪も大勢来ている。ワドルディと取引しに来たヤツや勉強しに来たヤツ、格闘大会に参加しに来たヤツに観戦しに来たヤツ、カフェでゆっくりしているヤツにただ単純に遊びに来ているだけのヤツもいる。烏天狗が一匹も来ていない点を除けばイベント開催時の守山神社のような繁盛っぷりだ。一旦仮住まいの家に戻り、カービィをベットで寝かせるとバンダナワドルディは新しい槍を買いに武器屋へ、私はボロボロの服を仕立て直すために香霖堂へとそれぞれ別れた。