東方新天地 〜 Forgotten Memories in the New World. 作:ぽよい
余談かもしれないが、当時の富士山は現在と比べると火山活動は活発であった。
私が率いる奇妙な集団はカフェへと向かった。正直、泣きじゃくった賢者と病人みたいに運ばれるヒーローが付いてくるこのカオスな状況が絶望的に恥ずかしい。
「いらっしゃいませ~!5名様ですね。イートインですか?テイクアウトですか?」
「イートインで。あと会計は別々にしてくれ。」
「かしこまりました!」
屋上の席に案内され、お冷やとメニューを渡された。それから、それぞれ少し悩んだあと、私、隠岐奈、紫、バンダナワドルディ、カービィの順で注文をした。
「カービィバーガー1つと」
「カービィバーガー1つと」
「カービィ…バーガー…1つ…」
「僕もカービィバーガー1つで、」
「ぽよ…zzz」
「かしこまりました!少々お待ちくださいね!(珍しくカービィさんの注文が少ないなあ。カービィさん、食欲不振なのかなあ。)」
店の厨房の方から「バーガー5つ!」と言う声が聞こえた。カービィもカービィバーガー選んだのか。というか寝てる癖に食うのかよ。贅沢なヤツだなスリープカービィは。
しばらくしてバーガーが届いた。プレートには1人2つずつ、全員カービィバーガーしか頼んで居ないのにワドルディの顔のバーガーがセットで付いてきたのだ。しかもこのバーガーはカフェのメニューに存在しない。
「常連さんとそのお連れと言うことで、試作品のワドルディバーガーのプレゼントです。是非食べ比べて感想を聞かせてください。では、ごゆっくり。」
どうも新メニューの開発に巻き込まれたらしい。嬉しい誤算だ。カービィバーガーは王道のチーズバーガーという感じだ。ボリューム満点で、肉の脂をほのかに甘いレタスが受け止め、旨味はガツンと来るがしつこさは一切無い。トマトの酸味もいいアクセントになっている。チーズとの相性も抜群で、いくら食べても食べ飽きない味だ。カービィみたいな胃袋を持っていたら今頃財布は空になっているだろう。おいカービィ、いくらなんでもこのデカいバーガーを一口で食べるのはないだろ、お前の顔とほぼ同じ大きさだぞそれは。ワドルディバーガーはチーズの代わりに緑色のねっとりした果実のスライスが何枚か挟まれていた。それ以外は特に変わりは無さそうだが。この果実はなんだ?野菜なのか?果物なのか?
「アボカドよ。森のバターとも呼ばれる果物で栄養価が高いわ。」
「すっかり元気になったな。スキマで考えていることを覗くのはやめて欲しいが。」
「にしてもここまで美味しいバーガーは初めて。本当に美味しいわ。」
紫はワドルディバーガーにかぶり付きながらそう言う。この緑のが森のバターだと聞いてしつこそうに思ったが食べてみると実際そんなことはなく、ちょうど良い濃厚さだった。カービィバーガーにも負けない美味しさだ。アボカドのことを考慮してなのかお肉があっさりしたものになっていてバランスもしっかりとれている。脂の少ない鶏肉や赤身を使っているな。
「それ、お肉じゃなくて大豆よ。」
「え?紫よく分かったな。いや、言われてもやっぱ大豆とは思えないんだが。」
やはりこれは肉だ。肉の味がして美味い。
「私も大豆だなんて信じられないわよ。でも厨房を覗くとちゃんとレシピには大豆が使われているのよ。一時期外の世界で流行った大豆ミートって物があるんだけど、アレは美味しくないからねえ。」
なるほどな。つまり一歩間違えば紫の機嫌が戻らなかったかもしれないということだったのか。しかし何故ここまでして大豆を使う必要があったのか。店員のワドルディを呼び、感想を伝えた後に何故大豆なのか聞いてみた。答えはシンプルだった。ダイエットしている人向けだという。大豆にすることでカロリーを抑えつつ高タンパクに、チーズをアボカドに変えてヘルシーな脂肪酸も摂取できるというコンセプトらしい。
「しかし大豆だと見抜かれてしまうとは、まだまだ改良の余地がありますね。」
「いや、見抜けなかったんだ。厨房を覗くまでは。というか答えを知っても見抜けなかったがな。」
「あ、なーんだ、そういうことかあ。」
それからカフェで働くワドルディ達とお喋りで盛り上がっていると、突如後ろから禍々しい気配を感じた。そして次の瞬間、肉が撲られるような鈍い音がなった後に甲高い金属音がワドルディの町に響き渡った。
サブストーリー 月の都
思念派の影響は地球だけでは収まらなかった。とはいえ、地球外で影響が出たのは地球の衛星だけなんだが。地球の衛星はほとんどが霊長が打ち上げたゴミだが、それに紛れて大きいのが一つ、現存する中でもっとも古い地球の衛星が月だ。月には海があり、特殊な結界も張られている。しかし、幻想郷の例を見れば分かる通り、思念派は結界を貫通するのだ。何が言いたいかだって?そりゃもちろん、月の都も思念派の悪影響を受けたってことだよ。ま、規模は小さいがな。玉兎は波長を操る能力を持っているから思念派にある程度対応できるのだ。とはいえ所詮は兎、ただの動物だ。対応が遅れた玉兎は操られてしまっているがな。そんな月にも一人のワドルディが迷い込んでしまった。逆に言えばたったの一人だけだが。一応トレジャーロードも発生しているのだが、主人公はここには来ないだろう。来たとしても直接トレジャーロードに入りそうだしな。何が言いたいかだって?要はその一人のワドルディの話って事だよ。
「なんか変なところに来ちゃったなあ。仲間はだれ一人来てないし、海には魚どころか貝も居ないし。あるのは桃だけ。なんで浜辺に桃があるのかも分からないけど、まあいいか。」
変わった桃を噛りながら回りを見渡す。変な味、本当に桃なのかなあこれ、不味くは無いけど。ボクにとってはプププランドの桃のほうがやっぱ好きだな。少し向こうでは大きなウサギさんが銃を持って暴れている。よく見るとウサギさん同士で撃ち合ってるな。内戦かなあ。物騒だなあ。その向こうに街があるのは見えるけど、これじゃ何にもできないや。せめて傘や槍の一本でもあれば戦えるのに、いや戦ってもどうしようもないかもだけど。でもやっぱ護身用に傘か槍が欲しいなあ。
結局、数日間浜辺で桃だけで生活する羽目になってしまった…カービィさんが助けに来てくれればなあ。そんなことを考えながら今日も浜辺を散策していると、如何にもサボっていそうな人が桃の木の上で桃を採って食べているのを見つけた。どう考えてもあの街の住人だが、内戦中にそんなことしてていいのだろうか。まあでも人と逢えたのはラッキーかもしれない。武器らしきものも所持しておらず、穏やかそうだ。攻撃されることはないだろうし。とりあえず話し掛けてみよう。
「こんにちは、あの、ボク迷子になっちゃったんですけど…ここは何処ですか?あとなんで内戦が起きているんですか?」
豊姫と名乗る人から色々話を聞いた。どうも地上っていう場所で起きたなんか良くない出来事が原因で一部のウサギさんが暴走状態らしい。大事というほどではないらしく、別に放置でもなんとかなるのだとか。因みに豊姫さんはただのサボりらしい。ボクの勘だけど、多分これカービィさんが首を突っ込んでいると思う。地上に向かえばきっと、カービィさんに会えるはずなんだけど、今は地上に行くための道も壊されちゃっているんだって。そういうわけで暫くここに住むことになったんだ。ケガレがどうこうのと話をしていたり、地上に行くよりもここで暮らすことをやたら勧められたりしたんだけど、どういうことなんだろう?でも、操られちゃっているウサギさんが可哀想だなあ。タダで住まわせてもらうのも性に合わないし、戦場に向かうことにした。こう見えてボク、デデデグランプリで上位の成績を残したんだ。カービィさんには負けちゃったけどほぼ互角にやりあえた。だから怖がる必要はないし、それによく見ればあのウサギさんたち、敵も味方も銃の撃ち方がなっていない。傘を貰い、戦場に足を運んだ。全く、重火器に頼る必要も無いのに何こんな戦闘で手こずっているんだか…まあ、あんなエイムじゃ長引くのは当然か。
なのだけれど、僕が戦場に入るとウサギさんたちの目の色が変わった。まるで最初から僕を狙っていたかのように、一斉に敵全員が僕の方を見て、生捕りにしようと銃を捨てて追いかけていたのだ。結局僕は数の暴力に負け、あっけなく捕まってしまい、檻に閉じ込められてしまった。そして禍々しい何かを持ったウサギさんに渡され、気が付けば目の前に担架の上で眠るカービィさんの姿があった。なんだ、最初から丸腰で戦場に入ればよかったんだ。いや、もしかしたらタイミングによってはカービィさんに逢えなかったかも知れないから躊躇してて正解だったのかもしれないけど…とにかくボクは運が良い。檻の隙間から傘を突き出してウサギさんの首を突いて気絶させた。それからカービィさんに檻を壊すように頼んだ。
「報告します。戦場にてワドルディが拐われました。ワドルディを拐った玉兎は操られたモノだけが通れるルートで地上に向かった模様です。地上にある敵の拠点に連れていかれたものと思われます。」
「え?ワドちゃんが…だから戦場に行くのは反対したのに…」