東方新天地 〜 Forgotten Memories in the New World. 作:ぽよい
大地に残った人々から
町へ戻るとワドルディ達はポップスターへ帰る準備を既にしていた。定住も考えていたらしいがワドルディの気質が幻想郷と相性があまり良くないらしい。いくら幻想郷に適応しようとも、居心地的には元いた星のほうが彼らにとってはいいのだろう。もちろん幻想郷に残りたがるワドルディも少数だがいた。紫が少数派のワドルディに混ざってデモを起こしているのが一周回って笑えてくる。現在の幻想郷のインフラと経済は殆どワドルディが整備したものだ。ワドルディが居なくなれば人手不足と技術不足が襲いかかり、ワドルディ景気は終わりを迎える。そうなれば少数派のワドルディも幻想郷に残れば居場所がなくなるか重労働が待っているかの二択となるので帰らざるを得ない。賢者の一人がワドルディ景気に頼るのも如何なものかと思えるのだが…そんな様子をメタナイトは呆れた顔で見ている。メタナイトは幻想郷に来てから実は町の警備を任されていたらしい。町が洗脳された妖怪や獣に襲われなかったのはメタナイトのお陰でもある。賢者達はメタナイトに警備を任せてからは黒幕の情報収集や私達の援護を優先したようで、メタナイトが裏で活躍していたのは間違いない事実だろう。最初はなんであの空間に来なかったのか疑問だったが、裏で活躍していたのなら納得だ。
そういえばデデデ大王はどうなっているのだろう?気になったので傍を通りかかる適当なワドルディに話しかけてみた。
「デデデ大王ってどうなっているんだ?」
「大王様ならあちらの病院でまだ目を覚ましていません。ライフアップでどうにかなるレベルじゃなかったらしく治療中とのことです。命に別条はないらしいので帰りの準備が終わる頃までには目を覚ますでしょう。」
ワドルディが指差す方向がワドルディの建てた病院だろう。他の建物は片付けが始まっているがあの病院だけその様子はない。
「なあバンダナワドルディ。その果物って?」
「大王様へのお見舞いの品です。目を覚ましたら真っ先に食べ物を要求するのは目に見えてますから、すぐに食べられる物をね。それよりその傷痕、大丈夫なんですか?」
「不老不死でも傷痕は残るさ、憑依されてた時に木っ端微塵にされたからな。まあでも大丈夫だ、痛々しいのは見た目だけだぜ。」
「そういうものなのかなあ?」
バンダナワドルディは首(?)を傾げたまま再び病院へと向かった。いつ目を覚ますかわからないので、冷める心配もなく、すぐに美味しく食べられる果物をチョイスしたようだ。やはりあっちの基準が分からん。昏睡状態から目覚めて早々に飯食えるものなのか?少なくともこの星の人間にはあり得ない話だ。
「腹が減ったー!メシはまだかー!ってここは?病院か?気絶してたのか…いやそんなのはどうでもいいぐらい腹が減っておる!早く何か食わせろ!」
病院からデデデ大王の声が聞こえてきた。目覚めて第一声がそれかよ…ヤバいなコイツら…
「大王様がお覚めになったぞー!早く暖かいゴハンを用意しろー!」
「了解!」
「あ、バンダナさんちょうど良いところに。その果物をフルーツサラダにしてオードブルとして出しましょう。」
「え、あ、ちょっと…まあいいか、そのサラダはボクが運ぶよ。元々大王様のお見舞いに来たんだし。」
病院がドタバタとし始めた。どうも早々にフルコースを作って食べさせるつもりらしい。大王…お前本当にそれで良いのか?お前の部下狂ってるんじゃないか?
不意に隣に異空間が開く。異変は解決しているはずだしこんなことする奴はアイツしかいないな。
「なんでスキマじゃないんだ?」
「こういうことが出来るからよ。」
「こういうことが出来るからよ、わあアレがウワサのワドルディちゃんね。ぎゃわいい~!」
バカが二人出てきた。ぎゃわいいとか喚いてるバカが平行世界から来たバカだろう。あれ?ちょっとまて、今デモに参加してる紫は一体誰なんだよ。アレも平行世界のバカなのか?お前まさか平行世界の自分で遊んでないか?しかし突っ込んだところでどうしようもないので言及しないことにした。
「まあ、それは半分冗談で、例の首折れた兎を月に送り返して来たのよ。今夜新月だから湖に映る月は使えないし。スキマでは無理だけど異空間ロードだと普通に繋がるのよね。まあ異空間ロードの中は入り組んでいるし、壁は迫ってくるしで結構面倒臭いけど。」
「なるほどな、でアイツの首の骨大丈夫だったのか?」
「結構荒療治だったけどワドルディ達が何とかしてくれたわ。」
「やっぱワドルディは怖いな…色んな意味で…」
「あ、それと魔理沙が妖怪になっている平行世界わりと多いわよ。不老不死になってる世界線は見つからなかったけど。」
「そこまで調べなくていいよ。平行世界の自分には興味ないしどうでもいい。」
食べ物の匂いに釣られたのかカービィが病院の方角へ向かっていた。が、私達の前で立ち止まりこちらを向くと、何故か泣きそうな顔になっていた。
「あの子、意外と察しいいのね。別れの挨拶ぐらいしておいたら?」
「そうだな。カービィにも、今回の異変にも感謝しなくちゃな。」
「あー!魔理沙がカービィちゃんを泣かせたー!」
「ひどーい!」
「サイテー」
「平行世界のバカ共は黙ってろこのクソババア!」
幼稚な揶揄いに思わず幼稚な悪口が出てしまった。
「カービィ、色々ありがとうな。お陰で異変も解決したし、漸く
もう
パチュリーとアリスはその夜、魔理沙の家を訪れていた。カービィがわざわざ彼女らの所を訪ね、慌てた様子で何かをパチュリーとアリスに伝えようとしていたからだ。
魔理沙の家に入るといつもは汚い筈が、机の回りだけ自棄に綺麗にされており、二ヶ所に束ねられた本の山の上にはそれぞれに置き手紙があった。そこには、「直接返しに行けなくてゴメン」とだけ。その部屋の奥には老婆のような姿のまだ暖かい遺体と一冊の異様に分厚い魔道書があった。
「これが魔理沙が最期に残した本か。しかし、誰にも看取られずにひっそりと亡くなるなんて。不老不死のままでよかったじゃない。」
「でも魔理沙は不老不死になって一時期は…いや、言わない方がいいかしら…」
「そう言われると余計気になるんだけど…」
「そうね…ヒントは、傷痕ね。不老不死なら本来残るわけがない傷痕。あればきっと、自分に呪いを掛けたってことよ。」
「そういえば傷だらけだったわね。特に首の回りとか…ずっと消えなかったわね。人間に戻るまで…ずっと……首の回り…」
首吊り自殺ではないのは明明白白だった。しかしその首をよく見ると、魔理沙が妖怪になってすぐにできた首の傷と全く同じ、首吊りの痕が残っていた。残された二人は魔理沙の願いが叶ったことを喜び、それを記念した墓を建てた。その墓石には魔理沙が大切にしていたリボンに付けられていた宝石が埋め込まれ、花の代わりに不思議な模様のトマトがお供えされていた。