ソラを駆ける衛士   作:タリズマン

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筆が乗ったので二つ目!


第九話

脱出のために少女を抱え地上を目指していたのだが問題が発生した。

ドイツのIS部隊であるシュヴァルツェ・ハーゼがこちらに接近しているとのことだ。

しかもこのままでは撤退中の背後を取られる可能性が高い。

 

『どうしようか?』

 

「正直、複数のISを相手できるような状態じゃない。」

 

先の戦闘で左腕は折れ、装甲も中々にひどい状態なのだ。

とても戦闘ができるような状態ではないのだ。

 

「いっその事、堂々と出て行ってやるのも手か?」

 

『なに言ってんのさ。敵判定されて叩き落とされるのがオチだよ。』

 

確かにそうかもしれんが手がない。隠れてバレる方が厄介だ。

それになんの策もなくこんなことを言ったんじゃない。

 

「この子はどうやらシュヴァルツェ・ハーゼに所属している隊員のプロトタイプの様な存在らしい。そんな子を抱えている人間を警告なしに撃つと思うか?」

 

『確かに....』

 

研究所にあった資料によればこの子はシュヴァルツェ・ハーゼに所属するはずだったプロトタイプだそうだ。

シュヴァルツェ計画では眼にナノマシンをいれIS操縦時の視覚補佐を行うようにしており高機動戦闘を得意とする操縦者の育成を行うものである。

「それにだ。襲撃開始からIS部隊の到着までに時間がかかり過ぎてる。予定された即応部隊じゃない。つまり、ここの実態を何も知らない可能性が高い。」

 

即応部隊ならここが襲撃された時点でスクランブルで上がってくるはずだが、連中はだいぶ時間が経ってから上がった。

即応部隊なら指揮官クラスはここの実情を知ってるかもしれないが、そうでない部隊ならおそらく把握してない。

というか、そんな情報を把握させる事はないだろう。

"need to know"という訳だ。

 

『その可能性に賭けるってこと?部の悪い賭けじゃないかな?』

 

「どうせ現状打つ手はない。それなら賭けに出るさ。そろそろ蒔いた"芽"が顔を出す頃だろうしな。」

 

心配そうな束にそう言う。どうせ打てる手は打ち尽くした。それならなとは賭けに出るぐらいしかない。

そしてもう一言、束と抱えられてる少女を安心させる為に付け加える。

 

「それにな...オレは賭けに負けた事は無いんだ」

 

 

 

 

暗闇をスクランブルで上がった4機のISが飛んでいる。

彼女たちはシュヴァルツェ・ハーゼ。黒兎隊と呼ばれるIS部隊だ。

アラスカ条約で軍事利用の禁止が書かれているが、ISによるテロが発生したことをきっかけに限定的軍事利用が認められる改訂がなされた。

そして生まれたのが黒兎隊だ。

しかし、実際に運用する機会は少なくマスコット部隊として扱われることがほとんどであり実戦部隊としての認識は薄かった。

それがようやく実戦となり彼女達の士気は高かった。

 

「ハーゼ1より各機。間も無く戦闘空域へ突入する。警戒を怠るな。」

 

そう言うのは指揮官のラウラ・ボーデヴィッヒ少佐。彼女はかつて目に移植したナノマシンをうまく扱えず出来損ないとされてきたが、織斑千冬との出会いやそこからの絶え間ない努力でこの地位にいる優秀な軍人である。

 

「ハーゼ2より1へ。私が前へ出て接敵時に警告を行います。隊長はもしもに備えて3と4の指揮を願います。」

 

「わかった。2は前へ。3と4は私の後ろにつけ。全機セーフティ解除。交戦用意!」

 

「「「了解」」」

 

黒兎隊副官でありハーゼ2のクラリッサ・ハルフォーフ大尉が前へ出て他3機はバックアップ可能な後方へ着く。

セーフティ解除の指示のもとに緊張が走る。

 

 

やがて前方に青色のフルスキンタイプのISが見えてきた。

人質だろうか少女を抱えた状態でこちらを待っていたかの様に佇んでいる。

 

「こちらドイツ国防軍航空機動作戦師団所属シュヴァルツェ・ハーゼ。人質を解放した上で武装を解除し投降せよ。繰り返す。人質を解放し、武装を解除した上で投降せよ。」

 

国籍不明機に対し投降を促す警告を行う。

 

『こちらは....ハウンドドッグ。好きに呼んでくれ。残念ながら投降の意思はない。』

 

ハウンドドッグと名乗る不明機は投降を拒否した。

ならばと、銃口を向け最後の警告を送る。

 

「投降の意思がないならば撃墜する。再度警告する。人質を解放し投降せよ。」

 

『投降はしないが交戦する気もない。こちらは目的を果たした。』

 

領空侵犯しドイツ軍人を殺傷しておいて舐めたことを抜かすハウンドドッグに殺意を覚える。

 

「ハーゼ2、これ以上は無意味だ。撃墜するぞ。」

 

「待ってください。目的を聞き出してからでも良いかと。なにもわからないよりも幾分かマシな報告ができるかと。」

 

撃墜しようとするラウラを諌め、敵の目的を聞き出してからでも遅くはないと意見具申を行う。

 

「........わかった。ハーゼ2に任せる。貴様の判断で撃て。我々はそれに合わせる。」

 

ラウラは優秀な副官であり度々助けてくれたクラリッサを信用して一任した。

 

「ありがとうございます、隊長。」

 

ラウラに感謝を述べクラリッサはハウンドドッグに向き直り問いかける。

 

「ハウンドドッグ、貴様の言う目的とはなんだ?」

 

『こちらの目的はこの少女の救出とこの研究施設の襲撃だ。』

 

研究所?ここの研究所に一体なにがあると言うのか。

 

「研究所の襲撃だと?ここに何があるというのだ?」

 

『ここでは人間の脳をそのまま利用する情報処理システムの研究が行われていた。他にもクローン技術で生み出した人間を利用した様々な人体実験が行われていた。故に襲撃した。データを参照したければ見せてやろう。』

 

「何だと...!? だが、そんなもの貴様のでっち上げに過ぎんのではないのか?」

 

確かに我々は試験管ベイビーだ。そうあれかしと作られた人間だ。

おそらく奴の言う事は事実なのだろう。

だがそれを認めてしまう訳にはいかん。

それに奴がドイツ軍を攻撃したことに変わりはないのだ。

すると奴はコチラを鼻で笑う。

 

『フッ...』

 

「貴様!何がおかしい!」

 

『いや、何。今言ったことは君たちの存在が肯定してしまうような事なのに否定するとはね。』

 

ドイツの機密でもある我々の正体を知っているのか⁉︎

 

『それにだ。この一件ドイツ政府も深く関わっていることだ。誇り高いドイツ軍人ともあろう物が政府の汚職のケツモチとはね。堕ちたものだ。』

 

「貴様ァ!」

 

あまりの侮辱に銃口を向け発砲しようとしたその時だった。

 

『HQよりシュヴァルツェ・ハーゼ。作戦中止。基地は帰投せよ。繰り返す作戦中止。基地へ帰投せよ。』

 

「ハーゼ1よりHQ。理由を聞かせろ。眼前に敵がいながら撤退など...!?」

 

『命令だ!作戦中止!速やかに撤退せよ!』

 

歯を食いしばりハウンドドッグを睨みつける。

すると奴は肩をすくめて、苦笑いを浮かべていた。

 

「貴様!一体なにを!?」

 

『簡単なことさ。ここは民主主義国家だ。そしてかつてのナチがしでかしたような非人道的なことを憎んでる。そんな民衆が人の命を弄ぶような実験の数々を政府が行っていたと知ってしまったら?』

 

こうなるのさ!と、こちらに送りつけてきたのはSNSの画面。

そこには数々の写真と資料、そして音声データが拡散されている。

挙句、ベルリンを含む都市部でデモに発展しているニュース映像まであった。

 

「なっ⁉︎ こんな短時間で!?」

 

『短時間?この情弱どもが!我々がデータの抜き取りをしてから情報の取捨選択を行い終わり次第ネットやメディアに流してたんだよ!』

 

その言葉に顔を歪ませる。

私たちがここに向かい出した時点でもう手遅れだったのだ。

こんなに屈辱的なことがあるだろうか。

 

「クソッ!.....ハーゼ全機、撤退する。」

 

「「「了解....」」」

 

ここに向かってきた時の士気はもはやなく、眼前の敵を撃つことさえ出来ない屈辱に体を震わせながらその場から離脱を開始する。

すると、背後のハウンドドッグから通信が入る。

 

『今回はお前さんらに運がなかった。オレだけならお前さんらで何とかなっただろうが、オレのバックには大天才たる束がついてた。其れが敗因さ。じゃあなウサギども。お前らの姉貴はオレらが保護させてもらうぞ。』

 

そう言うと通信を切りどこかへ飛んでいった。

奴がなぜ私たちの内情を知っているのか疑問だったが、あの抱えていた少女が我々のご同輩だったからか。

姉と言っていたが....。

聞こえているか分からんが通信を送る。

 

「同胞を殺したことを許す気はないが、姉を頼んだ。」

 

ハイパーセンサー越しにやつを見ると、驚いたようにこちらを振り向き手を上げていた。

ああ見るとやはりアイツの言っていた事は本当だったのだろうなと、確信めいたことを思いながら基地へと撤退した。

 

 

 

「ふぅ....、死ぬかと思った。」

 

分の悪い賭けに勝てた。

蒔いておいた"芽"、それは研究所内の記録や音声データをあっちこっちにばら撒いておいたのだ。

実は束にSNSのアカウントを先に作っておいてもらっていた。

そこに束の私生活や研究していることなどを発信して本物であると分かるような情報を発信させた。

そして、そのアカウントを使いコレらの情報を呟かせたのだ。

結果としてそれらは拡散され都市部でデモが発生。

政府はそちらの対応に追われ、その様を見た国防軍はこれ以上無益な血を流さないために作戦の中止を命令。

結果として一樹は危ない橋を渡り切ったのだった。

 

「ホントだよっ!途中で煽りすぎて銃向けられた時は終わったと思ったんだからね‼︎」

 

そう怒りながら無事に保護した少女の身体検査を行う束。

 

「悪かったよ。つい興がのっちまって。」

 

「ついじゃないよ!全くこの子も抱えてたっていうのに!」

 

こうなるともう平謝りするしかなかった。

はぁ、と大きくため息をつかれ身体検査の方に意識を割かれた。

 

「....うん。ナノマシン以外に特に異常は見当たらないね。これならナノマシンの調整をすれば問題はないと思う。」

 

その診断結果にホッとし、束と共に少女に会いに行く。

こちらを見た彼女は頭を下げ礼を言う。

 

「...助けていただいてありがとうございます。失礼ですが本当のお名前をお聞きしても?」

 

ああ、ハウンドドッグって名乗ってたな。

 

「オレは仙洞一樹。好きに呼んでくれ。」

 

「私は篠ノ乃束。君たちを産み出す遠因になったISの開発者だよ。」

 

その自己紹介を聞き彼女は少し驚いた表情したが、改めて礼を言った。

 

「一樹様。束様。ありがとうございます。」

 

その言葉に束は少し困惑していた。

きっと恨み言の一つや二つ言われるつもりだったんだろう。

その様子を眺めていたオレはふと思い出して彼女に話しかけた。

 

「そういえば君の名前を聞いていなかったな。君の名はなんというんだ?」

 

すると彼女は少し悩んだ。

 

「私は.....前いた研究所の人にクロエと呼ばれていました。それ以外で名前と呼べるものは浮かびません。」

 

名前ではなく認識番号や記号です管理されていたのだろう。

前の研究所の研究者は恐らく彼女に情が移り名を与えたのだらう。

 

「そうか、じゃあクロエと呼ばせてもらうよ。よろしくな。」

 

そう言い彼女、クロエの手を取り握手をした。

 

「ほら束も」

 

「えっ?」

 

ぽけっとしていた束の手を取りクロエと握手させる。

 

「よろしくお願いします。束様。」

 

「!....よろしく!くーちゃん!」

 

「くーちゃん...ですか?」

 

束は手を握られ挨拶され驚き一瞬固まったが、少し感極まり目の淵に涙が見えるものの元気よく握り返し挨拶をした。

相変わらず変なあだ名をつけ、クロエを困惑させていたが。

 

 

取り敢えず腹ごしらえということでクロエと共に食事をとることになった。

食事といっても大層なものではなく事前にオレが作っておいたサンドウィッチとさっき淹れた紅茶という簡単なものではあるが。

 

「美味しいです。このサンドウィッチ。束様がお作りになられたのですか?」

 

「そーだとも!このたb「それはオレが作った。」遮らないでよー!」

 

「何だよ。嘘ついてまで見栄張ろうとすんなよ。片付けすらできんくせに。」

 

「んにゃー!なんてことを!くーちゃんの前でぐらい見栄張らせてよ!」

 

「うっせ。後からバレて引けなくなるよりマシだろ。」

 

嘘ついてクロエの前で見栄張ろうとするバカの嘘を暴いていつも通りの掛け合いをしていると、クスクスとクロエが小さく笑った。

 

「すみません。お二人のお話がおもろくって....っ」

 

笑いを噛み殺しながら謝るクロエ。そんなクロエを見ていると、なんだかこちらもおかしくなり笑った。

そんな風に笑いながら食事を楽しんだ。

 

食事を終えて紅茶を飲み一息着いているとクロエが少し不安そうに切り出してきた。

 

「あの、私はコレからどうなるのでしょうか。」

 

オレはその疑問に少し悩んだが答える。

 

「俺たちの協力者がアメリカにいるからそちらで保護してもらおうかと考えている。普通に暮らすにしても色々と準備が必要だしね。」

 

「....そうですか。」

 

クロエは残念そうに顔を曇らせる。

束はそんな彼女の手を握り続ける。

 

「ごめんね。私たちは危険なこともやってるし、追われる身でもある。そんなことにくーちゃんを巻き込む訳にはいかないんだ。」

 

するとクロエは顔を上げてきっぱりと言う。

 

「それでも私は束様や一樹様と一緒にいたいです!危険なところに飛び込んで私を助けてくれたの、私がお二人を助けることができないなんて嫌です!」

 

その言葉にオレと束は顔を見合わせた。

 

どうしたものか....。

取り敢えず問題を先送りにしてアメリカでの話し合い次第だな。

あったが全面協力してくれるなら手があるかもしれないし。

 

「クロエの考えはわかった。」

 

そうオレが言うとクロエは嬉しそうに顔を上げる。

 

「だが!オレとしてはお前に危険な目に遭って欲しくない。取り敢えず考える時間をくれ。アメリカでの話し合いまでは少なくとも危険なことをするつもりはないし。考えさせてくれ。」

 

そう言うとクロエは嬉しそうに笑みを綻ばせた。

そんなクロエを見て束は嬉しそうに笑う。だがどこか悲しみが混ざっていた。

 

 

クロエが眠り、オレと束はクロエについて話し合っていた。

 

「クロエをどうする?」

 

「私としては一緒にいたい気持ちもある。でも....あんな、あんなところにいたんだ、こんな事に関わらせずに普通に暮らしてほしい。」

 

その言葉にオレも同意した。

あんな研究所にいてようやく解放されたクロエをまた巻き込むのは嫌だ。

 

「ああ。オレもだ。だが...他でもないクロエがオレたちといたいって言ってるんだ。クロエの意思を、自由を尊重するなら一緒にいるのがいいのだと思う。」

 

束は顔を曇らせた。

 

「うん。くーちゃんの自由を通すなら私たちと一緒にいるのがいいんだよね。....どーすればいいのかな?」

 

2人してため息を漏らし頭を抱えた。

そう頭を抱えているとふと一つの案が浮かんだ。

 

「なぁ、例のアメリカとの協力についてだけどさ。」

 

「?うん。」

 

「正式に協力を得られたら、アメリカに住まないか?」

 

「へ?」

 

束はきょとんとして変な声を出した。

 

「ん?私とかーくんとくーちゃんで、アメリカに?」

 

「ああ。」

 

「ふえ...」

 

「笛?」

 

束が顔を真っ赤にして変なことを言って固まった。

 

「どうした?」

 

「いや、なんでもない!続けて!」

 

「?わかった。」

 

なにに慌ててるかは知らんが話を続ける。

 

「アメリカの協力が得れたらアメリカに匿ってもらうのが一番楽だ。大統領とパイプがあるなら尚更だ。なんなら護衛だってつけてもらえるかもしれん。」

 

「確かにそうだね」

 

オレ達はアメリカとの関係次第でクロエに関して決めることにした。

クロエのためでもあるしアメリカとの交渉を成功させようと心に決めその日は寝た。

 

 

 

 

「そうか。ドイツは今、大混乱の最中か。」

 

執務室でフリーガンはドイツに関する報告を受けていた。

 

「はい。ドイツ議会は正式に内閣不信任案を提出し、これは過半数にて決議されるようです。」

 

ふむ。

ホーキンスの言っていた通りにことが運んでいる。

我が合衆国において最大の利益が出るように動く。

それには

 

「今回の件、我が合衆国から正式に声明を出そう。」

 

「何と声明を」

 

「我が合衆国は篠ノ乃束と協力しこの研究を暴いた。篠ノ乃束が今回起こした行動は我が国にも責任の一端がある。だが、人権を蔑ろにし、命を弄ぶ悪虐非道な行為を行ったドイツ政府の罪は重く、今回の篠ノ乃束の行動を我が合衆国は支持する。

そしてCIAはこのような実験を行なっている国を他にも把握している。コレを是正するために合衆国は篠ノ乃束と協力し、ありとあらゆる手段を講じる用意がある。とね。」

 

合衆国は篠ノ乃束に与すること。

コレがベストだろう。

 

同時に研究の是正を行う場合はその国に対する援助を行なうようにして国と研究所の切り離し工作もせねば。

取り敢えずはドイツ議会とマスコミに対しても根回しをしなくてはな。

彼らとの会談の前にできる限り仕事は終わらせるために、まずはCIAの仕事を増やそうと受話器に手を伸ばすのであった。




いかがだったでしょうか?

今回はラウラとの初遭遇だったのでラウラにもっと話させるつもりがクラリッサメインになってしまいました。どうして....

まぁ、そんなことよりようやくクロエが出せました。
クロエの扱いについては次話で確定します。

あとヒロインをどうするか、今のところアメリカ繋がりでナターシャさんはどうかとのご意見をいただきました。他にもこの人はどう?とかこの人がいい!などご意見がありましたら、活動記録のヒロインアンケートコメント欄か感想欄にてお願いします。
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