第十三話どーぞ!
危うく学生とヤっちまうところだったがすんでのところで千冬の「面倒ごとは起こすな」という言葉を思い出し冷静になれた。
お陰でハニトラ掛けようとした癖に処女だったバカを簀巻きにして耐え抜くことができた。
ちなみに今のオレが何をしてるのかというと
「お前さんな。オレが人にしっかりしろとか言える立場ではないがな、もう少し自分を大事にしろ。さっきのでよく分かったと思うが悪戯するにも相手を選べよ。というか生娘が無茶してハニトラなんざやるんじゃねえよ。大体、耳元で囁かれたぐらいで顔赤くして涙目になるやつがなんでハニトラすんだよ明らかな人選ミスだろ⁉︎」
簀巻きになって転がっているバカにキレていた。
♢
なんで私はハニートラップに失敗した挙句、処女か確認されて簀巻きにされその上で説教されてるのだろう。
最初は普通に怪しんだ。
アメリカ合衆国大統領直轄部隊。スウェーデンやロシアで実践運用され現地部隊などと合同で非人道的な研究の行われていた研究所を襲撃した部隊。
ことの始まりはドイツのキームゼー襲撃事件から始まるドイツによる政治的混乱。
篠ノ乃束とCIAにより暴かれたという研究所の襲撃。コレを行なったとされるのがハウンドドッグ。篠ノ乃束の猟犬。
そしてテロと取れるこの事件をアメリカのフリーガン大統領は支持、後日正式に篠ノ乃束を保護した旨を全世界に伝えた。
その上で彼女と協力し非人道的な研究をやめさせるように様々な手段をもって働きかけると発表した。
こうして編成されたのが長距離戦略打撃群。
そこのIS部隊の内一機は例のハウンドドッグの乗っていたとされるフルスキンのIS。
そして部隊編成時に急に現れたのがカズキ・センドウ。
それ以上の情報は得られなかった。
特に長距離戦略打撃群の内情はほとんどが不明。共に戦ったFSBあたりからも掘り出そうとしたが無駄だった。
彼らは恩のある連中を裏切れないといい調査に向かった担当官を隊舎から追い出すまでに至った。
そしてそんな男がISを動かせたから学園に来る?
怪しすぎた。
だから私と同室にして直接探りをいれようとしたのだ。
その一環でハニートラップに引っかかるか試したのだが....。
予想以上に簡単にかかり困惑してるうちに普通にヤられそうになった。
センドウが正気に戻り事なきを得たが、簀巻きにされ放置されたと思ったら、そのまま説教されてる。
.......なんでそうなるのよっ⁉︎
危うく処女を散らしそうになって泣きそうになったけど襲おうとしたヤツに説教されなきゃいけないのよッ!?
しかもぐうの音も出ないほどの正論だし!
「オイッ!聞いてんのか!」
あーもう、誰か代わって‼︎
♢
一通り説教を済ませ解放する。
簀巻き状態からずっと睨まれている。
ぶっちゃけ生娘のくせにハニトラしようとして失敗したバカの睨みなど全く恐ろしくない。
「ま、こんな状態では嫌だろうが同室らしいからな。よろしく。」
「なんで危うく襲われそうになった相手の握手に応じると思うのよっ!」
そう言って差し伸べた手を叩く。
正論だがハニトラした奴のセリフとは思えんな。
「恨むなら、誰の差し金かは知らんがコレを仕組んだ奴を恨めよ。人選ミスかましてお前に恥かかせた奴をよ。」
そういうと、「うぐっ」とくぐもった声をあげ気まずそうに視線を逸らした。
まさかコイツが自分で仕組んでこんな目にあったのか?
流石にそんなマヌケなことはねぇよな。
そんなことを考えていると携帯にメールが来たらしくバイブした。
「すまん、メールが来たわ。」
そう言って携帯を出しメールの内容を確認した。
『かーくんへ
もうIS学園に着いた頃かな。
ちーちゃんとどんな話で盛り上がったか色々と聞きたいけど言い忘れてたことがあったから伝えておくね。
IS学園には生徒会長の更識楯無っていうのがいるんだけど、ソイツは日本の暗部である更識の頭領で色々と情報を漁ってた連中なんだ。
ハニトラとかなんらかの接触があるから注意してね。
以上、頼れる束さんからの情報だよ!
またね〜 』
ふむ。
「もう遅いわッ!」
しかも結局、自分の差し金で勝手に恥かいてるだけじゃねーか!
何が日本の暗部の頭領だっ!
ただのマヌケなもいいとこじゃねーか!
思わず叫んで携帯をベットにむけて叩きつけてしまったが、その奇行に楯無はビクッとしていた。
深呼吸をして気持ちを落ち着ける。
ふぅ...。
「更識。とりあえず服着ろ。チキって中に水着着てるみたいだが裸同然な痴女みたいな格好ってことには変わらんからな。」
そう言ってとりあえず服を着るように促すと無言で時計が飛んできた。
危なっ!
♢
ちゃんと服を着た楯無と食堂に向かう。
グリーヴァス中佐からもらった命令書によれば基本的に軍務はなく学生として暮らすように書いてあったから設備を知らねばどうしようもないのである。
「ここが食堂よ。あそこにある券売機で券を買って注文しなさい。丁度いい時間だし夕飯にしましょ。」
「賛成だな。さっきまでドタバタしてて気付いてなかったがもうメシの時間だからな。」
楯無に賛成しメシを食うべく食券機に向かう。
鯖の味噌煮定食に、唐揚げ定食、こっちには丼物があって麺類もあって、ハンバーガーみたいなジャンクなものまである。
「すっげえ豊富だな。」
「ええ、IS学園は国際色豊かな学校だし自ずとメニューは豊富になるの。メニュー豊富な食堂はIS学園の売りの一つよ。」
「すげぇ、生徒会長みたいだな」
「正真正銘、私は生徒会長よ!」
豊富なメニューに思わず感嘆の声をあげると胸を張り楯無が解説してくれる。
そんな楯無に感心して褒めてやるが、ツッコミを入れてくるが何を言ってるかはわからん(すっとぼけ
「んじゃ、オレはこの鯖の味噌煮定食にしよっと」
「話を聞きなさいよっ!」
そんな風にわちゃわちゃしながら出来上がったものを受け取り席に着く。
さっそく頂こうとするとメガネをかけた三つ編みの少女と、同じくメガネをアップスタイルで髪を纏めている少女が近づいてきた。
「お嬢様。お食事中失礼します。簪お嬢様のことでお伝えしたいことが。」
「分かったわ。薫子は?」
「私はそっちの男の人に用事が。」
「そう。じゃあセンドウさんちょっと席を外しますね。」
アイツってやっぱいいとこの出なんだななんて思いながら楯無の背中を見送る。
楯無に変わり前に座ったのは薫子と呼ばれていた少女だ。
「私は黛蕪子って言います!新聞部に所属してる2年生です!」
「元気だな。メシ食いながらでいいなら話し相手になるが。」
「ありがとうございます!」
メシ食いながらでいいとのことだったからさっそく鯖に手をつける。
こういうしっかりした日本食は久々だからかなり嬉しい。
「早速なんですけど新聞部としての取材にして学校始まってから記事にしてもいいですか?」
「ん?ああ、捏造したり悪意を持って変な書き方しないなら問題ないぞ」
「そんなことしませんよ〜。」
ホントか?
まぁ書かれたらその時だな。
この鯖うまっ!
「では始めに出身とお名前を。」
「一応出身はサンフランシスコだ。お袋の関係で京都に住んでたこともあるが日系アメリカ人だ。名前はカズキ・センドウ。」
そうカバーストーリーの方の自己紹介し、ペンを借りて紙に自分の名前を漢字で書く。
「今おいくつなんですか?」
「21だよ。誕生日は9月16日。」
「思っより上⁉︎ 敬語とかしっかりした方がいいかな...?」
「不安に思うなら敬語を使えばいいが別に気にしないから好きに喋ってくれていいぞ。」
そんなに怖いかなオレ。
いや予想より上で驚いただけだろ。
オプションで変えてもらったこの豚汁美味えな。
「ありがとうございます!えっと、じゃあアメリカでは何をされてたんですか?」
「空軍士官さ。詳しくは言えないがとある秘密部隊でレーダー手をやってたんだ。ある作戦に参加したおかげで若いうちに中尉に昇進でたんだよ。」
「ヘェ〜、昇進ってそんなにしにくいんですか?」
「しにくいって程じゃないがやっぱりある程度の軍歴がいるんだ。その辺すっ飛ばして昇進できたのはデカかったな。」
「ある種のラッキーってことですかね?」
「ラッキーと言えばラッキーだな。」
ずずっと緑茶を啜り、一旦区切る。
「でも、見なくていいものまで見ちまうし実戦を経験したっていい事はないさ。」
「...深くは聞かないことにします」
「賢明だな」
うん、久しぶりだけどキレイに鯖を食べれたな。
皿には綺麗に少量の骨しか残ってない。
「そういえば、箸使うのお上手ですね。」
「ああ。さっきも言った通りお袋の影響でな。便利だし普段も箸で食うようにしてんのさ。」
「私より綺麗に食べてるかも...」
「何事も練習だよ。黛くん。」
「頑張ります!」
「うむ。」
なんともノリのいい子でついつい喋っちまう。
ま、変なことは言ってないしいいか。
「あっそうだ。今お付き合いされてる方はいるんですか?」
女子だもんな。気になるよな色恋沙汰。
「今はいないかな。」
「今ってことは昔はいたんですか?」
「好きだね〜。人の色恋沙汰。」
「そりゃあもう、大好物ですよ!うら若き乙女ですから!」
ふむ。
まぁ多少はいいか。
「昔な、日本人と付き合ってたんだよ。あんま詳しくは言わんがオレには勿体なぐらい良い女だった。家の事情が色々あって上へ登って行くために必死な奴だった。気が強くて何回もぶつかった事もあった。」
緑茶を啜る。
頭に思い浮かべるのは彼女の笑顔。
もう死んでしまった彼女の顔を。
山城上総の顔を。
「でも冗談もよく言う奴でな、よく笑い合ってたもんだよ。しかも、普段はお淑やかぶってるのになかなかのお転婆ときたもんだ。そんなアイツとの時間は楽しかったよ。」
「そんなに良い感じなのに別れちゃったんですか?」
「ズバッと聞くな...。うん、別れた。お互いに怖くなっちまったのさ。」
「怖い...?」
あの時、本土侵攻の前に最後に会ったときオレは帝国陸軍、アイツは外様の武家として衛士学校に通っていた。
だから怖かった。どちらかが死ぬことが。
「ああ、あの時オレは軍に入ろうとしてた。そして軍人を輩出してきた家の人間としてアイツも軍に入ろうとしてた。互いに死ってもんを強く意識しすぎたのさ。それで別れた。」
「そうだったんですね...」
「今の記事にしてくれてもいいぞ。」
「えっ⁉︎」
「オレのつまらん未練たらたらの話だしな」
「つまらなくはないですよ!思い出として大事に持ってるじゃないですか。さっき話してた時の仙洞さんの顔、なんだか愛おしそうな顔をしてましたよ。....私は今の話、個人的に聞いたってことで記事にはしません。」
コイツ...
なんだか色々喋って随分と気を遣わせちまったな。
「そうか。なんかすまんな。変なこと話ちまって。」
「いえ、いいお話を聞かせてもらいました。」
「つまらん話を聞いてくれた礼だ。メシ奢ってやる。好きなの選べ。」
「ええ、悪いですよ!」
「いいんだよ。お前らより稼いでんだから、貰えるもんは病気以外貰っとけ。」
押し売りみたいなノリで黛にメシを奢ってやった。
久しぶりに上総のことを思い出させてくれた礼として。
♢
「それじゃあ、簪ちゃんの機体は打鉄弐式は」
「はい、完全に凍結されました。」
「簪ちゃんはどうするつもりなの?」
「機体自体は粗方完成しているようで簪お嬢様が機体を受領し自分で完成させるおつもりのようです。」
「今は見守りましょう。」
「よろしいのですか⁉︎」
「よくはないわよ!でも企業に対して圧力を掛けるわけにはいかないわ。それに代わりに開発される機体は織斑くんのものよ!下手につつくと何が出てくるか分かったものではないわ!」
「出過ぎた真似をいたしました。申し訳ありません。」
「別にいいわ。本音ちゃんに注意してもらってちょうだい。」
「かしこまりました。お嬢様。」
♢
「美味しいです!」
「たんと食え」
黛が安くすませようとするもんだから、高いのいっとけと圧力をかけマグロ定食を選んだのでそれで妥協した。
マグロを頬張る黛を眺めながら、オレは食後のコーヒーを楽しんでいた。
「何やってんのよ...」
ようやく戻ってきた楯無がこちらを見て呆れ返っていた。
「何って。オレのつまらん昔話に付き合ってもらったからお礼にメシ奢ったのさ。」
「たっちゃん、おかえり〜。高いから食べたことなかったけどマグロ定食すごい美味しいよ!」
「薫子は餌付けされてんじゃないわよ。」
そう言うとため息をつき、すっかり冷めたメシに手をつける。
「なんだ、悩み事か?ハニトラ以外なら人生経験豊富なオレが相談に乗ってやろうか?」
「結構よ」
「あらそう」
せっかく善意で相談に乗ってやろうと思ったのに。
まぁいいか掘られたくないことなんだろうし。
「そんじゃ、オレはコーヒー飲んだし部屋戻るわ。それじゃ」
コーヒーカップを持ってさっさと退散する。
「あ、カズキさん!ご馳走様です!」
そんな薫子の声に苦笑いしながら左手を上げて返事をした。
♢
部屋に戻ったオレは明後日から入学することになるIS学園の事前資料を読んでいた。
表紙に必読とデカデカと書かれている電話帳ぐらいの厚さの参考書である。
これを見た時は「六法全書かよ...」と思わず呟いてしまったぐらいには驚いた。
まぁ、内容は束に教えてもらった内容が多く全くわからないなんて事はなかった。
だが、わからない事もあるから纏めて明日、千冬にでも聞きに行こう。
ヒヤッ
「ほえっ!!!!!」
首筋が急に冷たくなり変な声をあげ驚く。
「ほえっ!だって。ぷっ、あはははははははは」
後ろを振り向けばそこにはお茶を持って笑っている楯無がいた。
「お前なぁ」
「そんな怒らないでよ。ほら、頑張ってるみたいだから差し入れよ。」
不満ではあるが貰えるのはありがたいから受け取ることにした。
すると机を覗き込んできた楯無はびっくりしていた。
「あなたって勉強できる人だったのね!てっきり...」
「アホってか?」
「違うわよ。じっとしてるのが苦手なタイプに思えたから。」
コイツ...
まぁ、間違ってないんだが...
「正直言うと苦手だよ。けど、誤った情報は自分を殺すし仲間も殺す。だから学ばないといけないのさ。少なくともオレはそれを学んだ。それだけさ。」
貰ったお茶のペットボトルを開け一口飲む。
「そう。ところでそのノートに書いてあるのはわからないところ?」
「まぁな、明日にでも織斑先生に聞きに行こうかと思ってな。」
「明日は織斑先生忙しくて応対できないと思うわよ。」
「嘘だろ...」
思わず頭を抱える。
どうしよう他に先生の知り合いなんていないし。いっそのこと束に頼るか?
いや、束は確かムーンベースモジュールの開発が大詰めって言ってたからやめとこう。
「私が教えてあげようか?」
「へ?」
「あら、これでも私2年生だし。学生最強のIS操縦者よ。」
神か?
純潔だし神々しいのか?
「ホントに...教えてくれるのか?」
「もちろんよ。ただし」
「ただし?」
「私のことを先輩って付けて呼ぶこと」
コイツを先輩?
いやまぁ、確かに先輩だし...?
いや、でもハニトラ失敗した間抜けだぞ⁉︎
だが背に腹は変えられんし正直普通に助かる
くそっ.....
「よろしくお願いします。楯無......センパイ」
「いいわよ。この楯無先輩が教えてあげるわ。一樹くん。」
「あんま調子のんじゃねえよ、簀巻き女。」
「その簀巻き女に教えを乞うてるのは誰かしら?」
「クソッタレ!」
絶対許さねえからな織斑一夏ァ‼︎(八つ当たり
♢
こうして楯無センパイに教えてもらいながら着実に理解していった。
癪だがめちゃくちゃ教えるの上手だった。
そんな風に楯無センパイに教え貰っていると1日なんてあっという間に過ぎ気付けば入学の日になっていた。
いかがでしたでしょーか?
今回の話では少し一樹の過去話を入れてみました。
彼のかつての恋人、山城上総。
マブラヴの帝都燃ゆにて登場した彼女は武家の一員として京都衛士訓練学校に通っており、そこでライバル視している篁唯依などとの青春を謳歌していました。
しかし1998年7月にBETAによる日本本土侵攻が始まり僅か2週間足らずで西日本一帯は壊滅。その後始まった帝都たる京都の防衛戦に訓練未了ながら後方の嵐山補給基地に配備されその後、撤退中に京都駅で戦車級に食い殺され壮絶な戦死を遂げました。
山城上総について気になる方はYouTubeにて「帝都燃ゆ」と検索してください。
上総と一樹の詳細は番外編を作るかいっそのこと一つの話として組み込むか悩んでいます。
それと一つ報告なのですが。
明日から本格的に忙しくなりそうなので、更新がかなり遅れる恐れがあります。
もちろん失踪する気はさらさらありませんのでご安心を。
私の状況だったり執筆状況は活動報告にて随時更新しますので気になる方はそちらを参照してください。