やってやったぞ!
本音にスイーツを奢ること以外は特に問題なく食事を済ませ、いつも通りに勉強して楯無にわからないとこを教えてもらいシャワーを浴び寝た。
そして翌朝。
朝飯を食いに行くと眠そうにしてる本音を担いできたシャムロックと機嫌の悪そうな箒に謝り倒してる一夏という訳のわからん状況に出くわし、流石のオレと楯無もこめかみを抑えてため息を吐いてしまった。
朝食の鮭定食を受け取り席に着く。
「さっきから篠ノ乃の機嫌が悪いが、一夏、お前なにした?」
「いや...ちょっと...」
向かいに座っている一夏に箒の機嫌が悪い原因について尋ねるが、一夏は口籠る。
それを見たシャムロックは冗談めかして横から入ってくる。
「ひょっとしてノックしないで入って篠ノ乃さんの着替えを見ちゃったとか?」
「本人いるんだからそんな冗談やめと...け...」
シャムロックの冗談を諌め同意を得ようと向いを見ると、そこには気まずそうに目を泳がす一夏と顔を赤くしている箒がいた。
「え?ひょっとして正解だった?」
「うっそだろ一夏」
男2人がドン引きして一夏がうぐっとダメージを喰らう。
そして本音がのほほんとトドメを刺す。
「おりむー、ノックは人類の偉大な発明だよ〜。それに女子と同室なのは事前に知ってたんでしょ〜。普通はノックするでしょ。」
「オグっ!」
大ダメージを受け死んでいる一夏を放っておいてさっさとメシを食い出す。
うん、メシがうまい!
最近はコッチのメシにすっかり慣れ舌がみるみる肥えていってしまっている。
かつていた世界に今戻っても食生活に耐えられない気がする。
「ホントに一樹くんって美味しそうにご飯食べるわね。」
「そりゃ美味いからな。こっちに来て一番よかったと思ってるのはメシだし。」
不意に楯無がオレの顔を見ながらそんなことを言って微笑んできた。
正直な本音を伝えてやる。
本当にここのメシは美味い。
もちろん孤児院のメシも美味いがあっちでは中々食べられない日本食を味わう事ができるのは大きい。
そんなこんなで味わって食べていると千冬の声が食堂に響いた。
「いつまで食べている!遅刻でもしてみろ!グラウンドを10周させるぞ!」
軍隊じゃないんだからメシぐらいゆっくり食わせろよ。
残っていたメシを掻き込む楯無やシャムロックと席を立つ。
ちなみに一夏はまだ食べ終わっておらず、後ろから何やら聞こえてきたが、やらかしたことがバレてダメージ食らってたバカが悪いので先に行く。
結局、寮を少しゆっくりめに出てなんとか一夏も合流して登校した。
♢
授業が始まったが全くもって予想外の事態が起きた。
軍人から見たISに関して講義をしてみろという無茶振りを千冬に食らったのだ。
しかしながら彼女たちに危機感や緊張感が足りないからそれを少しでも理解してもらうためだといわれ酒を対価に渋々引き受けた。
「諸君が知っての通りISとは宇宙空間での活動を目的とし篠ノ乃束が開発したマルチフォーマル・スーツだ。」
オレは教壇に立ち何故か生徒として混ざっている山田先生や千冬を見ながら話す。
「しかしながら白騎士事件を契機に兵器としての有効性に気付いた各国が研究を始め戦術兵器としての側面が大きく出てきたわけだ。」
彼女たちは頷きながらひとまず真面目に聞いてくれている。
「しかし、ISが最強無敵な兵器ではないことをしっかり認識して欲しい。」
驚きに染まる生徒たち。
1人が手を上げ質問してきた。
「でもISに対して戦闘機や軍艦も蹂躙されたんじゃないの?」
「確かに白騎士事件の際、領空侵犯を犯した国籍不明機に対するスクランブルがかけられ白騎士の鹵獲もしくは撃墜のために自衛隊や在日米軍が動いた。そして返り討ちにあった。」
「なら最強なんじゃ...」
「あの事件は何年前だ?」
「10年前です。」
「10年も前に出てきたもので、各国が保有しているんだ。いくらでも研究できる。軍事ってのは昔から試行錯誤を繰り返して最適化された兵器や戦術、戦略を運用してきた訳だ。その道のプロの連中が新しいだけの兵器に敗北を認めると思うか?」
その言葉に教室は静まり返る。
「そういうこと。」
オルコットあたりは凄い反論したそうにしていたが論理的な反論が浮かばず震えているだけだった。
「そんじゃ実際のISの恐ろしさについて説明していこう。シャムロック交代。」
「OK、それじゃここからは僕が説明していこう。」
そういうと画面に赤外線カメラの画像が出てきた。
「これは実際の戦闘の映像だ。サーモ越しとはいえ人体が吹き飛ぶ映像があるから無理に見る必要はないよ。」
そういい教室を見渡す。
何人かは目を伏せたが多くはしっかりこちらを見ていた。
それに満足げに頷いたシャムロックは動画を再生した。
動画では敵拠点に対しAC-130による攻撃を行なっていた。
この動画はAC-130のガンカメラの映像のようだ。
『ノーチラスへ地上部隊より支援要請、友軍部隊前方に斉射せよ。』
『了解。友軍部隊正面の敵に対し斉射を行う。地上部隊は注意されたし。』
『2-1了解』
すると画面に見える人間が20mmバルカンをモロに喰らい吹き飛んだ。
逃げ惑う敵兵も関係なくただそこには死があった。
『斉射完了。攻撃評価を送れ。』
『2-1よりノーチラス。前方に敵影見られず。これより前進する。ノーチラス対地支援に感謝する。』
『こちらノーチラス。給料分の仕事をしたまでさ。のんびりコーヒーを飲みながら挽肉を作る楽な仕事さ。』
そうして動画が終わった。
敵とはいえ人間をズタズタにして笑ってる光景に彼女達は戦慄していた。
「いいかい。今の映像で20mmバルカンを用いて敵を撃ったものだ。それが命中したら人間なんて簡単にミンチになるんだ。君たちの扱うISはこれを簡単に振り回して取り扱うことができる。」
「それだけISは脅威なんだ。君たちの扱うものだって模擬弾などを使用してるとはいえ生身の人間ぐらいなら簡単に挽肉にできる。それをよく理解して扱ってくれ。」
するとおずおずと一人手を上げた。
「でもそれならISを倒せないんじゃ?」
「いや倒せるとも。」
その疑問にシャムロックは即答した。
「動きが速いなら追尾性を求めずひたすらに面制圧をして仕舞えばいいし、圧倒的物量で叩き落とせる。それだけじゃない。ISにだって補給が必要なんだから、最悪倒せなくとも補給拠点を叩いて仕舞えばISは動けないし戦えない。」
ISといえど数はない。
ならば数を持って叩き潰せばいいというなんともアメリカらしいドクトリンだ。
「正面から戦って負けるなら搦手で叩き潰す。昔変わらない戦い方さ。」
その言葉を最後に授業は終わり、千冬や山田先生が話をまとめてくれた。
♢
「織斑先生や、授業させんのは構いませんがね。事前に言ってくれないと何も準備できないんですよ。わかります?」
「........すまん」
「ええ、わかってくださるならいいんですよ。今後はこのようなことがないように、くれぐれもお願いします。」
千冬に詰め寄り文句を言ってやってる。
無茶振りを命じられても取り敢えずやれそうならやっちゃうのが悲しい軍人の性だよね。
まぁ後からきっちり文句は言うし追加報酬を要求するんですけどね。
「まぁ、貴重な体験もできたしいいじゃないか」
「シャムロックは優しすぎんのさ。こういうことに対してはしっかり文句を言って対価を要求しないといかん。」
相変わらずお優しいシャムロックを叱り千冬に対価を要求する。
「次の呑み会は奢りな。」
「くっ.....仕方ない。」
「うし!シャムロックも来るだろ?」
「そうだね。折角だし参加させてもらうよ。」
その後、日程や場所を決め呑み会は例の決闘後に千冬のオススメの行きつけの店に行くことになった。
次の日が祝日でちょうどいいのだそうだ。
♢
千冬に呑み会での奢りの約束を取り付け昼休みになってオレは買ってきておいたサンドウィッチを取りだしメシを食べようとするとオルコットが話しかけてきた。
「すみませんが、あなた方は専用機をお持ちなのかしら?」
「オレとヤンは持ってるが。なぜ?」
「私は代表候補生ですので専用機を持ってますの。決闘でありながら汎用機では不利があるかと思いまして私の気遣いですわ。」
なるほど。
まぁ、確かに見下してる相手で経験の差という不利があるがそれは外見ではわからない。
だが汎用機と専用機では外見で差が明らかだしわかりやすすぎるってことかな。
本当に気遣いなら楽だかな。
「そういえば一夏は持ってんのか専用機?」
シャムロックは軍から提供された専用機を持ってるはずだが一夏に関しては知らない。
「え?専用機ってなんだ?」
そこからか....。
その回答にオルコットは唖然として固まっていた。
まさか専用機の概念を知らないとは思わんだろうしな。
「いいか。ISってのは篠ノ乃博士にしか作ることのできないコアが467個しかないから467機しか生産できないんだ。だから基本的には国が管理してる。」
「ふむふむ。」
「そして限られた機体の中で専用機、要はワンオフ機を使ってコアを個人に貸し与えるという形で供与される場合があるんだ。」
「へー。」
「オレたちみたいな特殊な人間だったり国家代表やその候補生が主に持ってるってわけだ。」
「なるほどね。サンキュー、一樹。」
「わかってくれたなら何よりだ。」
取り敢えず一夏は理解してくれたようだ。
「それで、お前専用機は?」
「そんなの貰ってないけど。第一貰ってるなら今の説明されなくてもわかるだろ。」
「それもそうか。」
そう一夏と話しているとち 千冬がその話に気付いたようでこちらにきた。
話を聞くとどうやら開発に手間取っていてまだ供与されていないらしい。
例の決闘には間に合わせるらしいが大丈夫か?
「てな感じみたいだぞ、オルコット。」
「そ、そうですか。それならいいですわ。」
これで一先ず納得したらしく帰って行った。
コイツ衝撃的すぎてしばらく意識飛んでたろ。
なんでどもってんだよ。
ツッコんだらめんどくさそうだからツッコまんが。
すると先ほどの会話を聞いていた女子の一人がおずおずと手を挙げた。
「あの、織斑先生。ひょっとして篠ノ乃さんって篠ノ乃束博士の関係者なんでしょうか?」
「そうだ。篠ノ乃はアイツの妹だ。」
その言葉に教室は一気に騒ぎ出す。
「えええーっ!すごい!このクラスってIS関係の有名人の身内が二人もいるってことじゃん!」
「すっごい!篠ノ乃博士ってどんな人なのっ⁉︎」
「篠ノ乃束の妹」という肩書きは凄まじく彼女の周りにクラスメイトが集まっていく。
そんな光景を横目にサンドウィッチを頬張ったその時、
「あの人は関係ないっ!」
箒が突然大声を出して、その声に驚いた女子たちは固まっていた。
そしてオレはびっくりして喉にサンドウィッチを詰まらせた。
「......っ.....っ⁉︎」
「....大声を出してすまない。だが私はあの人じゃない。だから教えられるようなことは何もない。」
そう言って彼女は教室から出て行き、心配した一夏がその後を追って行った。
教室には呆然としている女子たちと胸を叩いて苦しんでいるオレが取り残された。
「大丈夫⁉︎ 仙洞くん!」
クラスの相川さんがそんな様子のオレに気付いたらしく水を手渡してくれた。
一気に飲み干し一息ついた。
「はぁあああ。くだらない事で死ぬかと思った。ありがとう相川さん。」
「いいよ気にしないで。」
「ほんと助かった。オレは借りを作りたくないタイプの人間だからな。今度なんか手伝えることがあれば手伝うよ。」
「....じゃあわかったよ。何かあったらお願いするね。」
オレが何かしてあげることを約束して相川さんは学食に行った。
その後はメシを食べ、午後の授業は特になんの問題もなく終わった。
♢
放課後になりオレはシャムロックと生徒会室に向かった。
シャムロックは一夏が箒に剣道場へ連れて行かれたのを見て一人あぶれてしまうからオレに着いてくることにしたらしい。
生徒会室の前につきノックする。
聞き慣れた声で「どうぞ」と聞こえる。
中に入ると中央に楯無が座りその斜め後ろにいつぞやの食堂で見たメガネをかけた三つ編みの女子が立っている。
そしてふふっと小さく笑い声をあげると楯無は堂々と言葉を放つ。
「ようこそ生徒会へ」
............
「.....そこに山積みにされた書類がなければいくらかカッコよかったんだがな。」
「んなっ⁉︎」
肘を机に乗せて手を組み、いかにも待ってましたという感じで堂々たる格好だったわけだが、机には山積みになっている書類があって台無しになっていた。
「お嬢様、ですから言ったではありませんか誘う前に仕事を終わらせてからの方が格好がつくと。」
「従者に言われちゃ形なしだな。」
「.........」
「あ、失礼しました。自己紹介してませんでしたね。私は布仏虚。生徒会では会計を担当しております。ウォーカーさんに関しては妹がお世話になってます。」
「いえいえお世話だなんて。本音のお姉さんだったんですね。どこか面影はあるんですが本音ののほほんとしてる感じを知ってるとどうもしっくりこなくて...。あ、知ってるとは思いますがヤン・ウォーカーです。」
従者にまで言われ落ち込みきってる楯無をそっちのけで虚さんとシャムロックが挨拶をしている。
流石に少しだけ同情した。
「じゃあ布仏先輩とお呼びした方がいいですかね。」
「あ、いえ。年下ですし本音と区別もつかないでしょうから虚で結構です。」
「わかりました。では虚さんとお呼びしますね。僕のことも歳上とはいえ後輩ですしヤンで結構ですよ。」
そんな謙遜合戦みたいなことをやってる二人の間に入り自分も改めて自己紹介をする。
「オレのことも把握済みだとは思いますが仙洞一樹です。オレも虚さんと呼びますから一樹だの好きに呼んでください。」
「わかりました。それでは一樹さんとお呼びしますね。」
「ええ、それで大丈夫です。」
そんな会話を聞いていた楯無はガバッと起き上がり一樹に詰め寄る。
「ちょっと!なんで私に敬語は使わないのに虚ちゃんには使う訳⁉︎ 」
「そりゃ出会い方だろ。センパイ。」
「私と虚の何が違うのよ⁉︎」
「初対面で生娘のくせにハニトラ失敗したバカと丁寧に挨拶をしてきた相手。どっちに対して丁寧な対応になると思われますか?センパイ。」
「取ってつけたようにセンパイって言わないでいいわよ⁉︎」
そんないつも通りの会話をしていると虚さんが凄い怖い雰囲気を出しながらこちらに来た。
「お嬢様?ハニートラップなんて初めて聞いたのですが?」
「えっ‼︎ あ、それはその....虚ちゃん違うのよ!聞いて!」
「ええ聞きますよ。いくらでも聞いて差し上げますよ。あっ、お二人には申し訳ありませんがそちらの来客用のソファに座って待っていてください。この人をシメ....もといこの方から聞き出さないと行けないことがありますから。」
そう言うと楯無の襟首を持ち隣の部屋へと向かう。
「ちょっと、虚ちゃん!私、主人!主人の襟首を持ってそんな風にひきずったらダメだと思うの!ねぇ!一樹くんたすk」
バタンっ
「「..........」」
「座るか」
「そうだね」
「それとスターク、ハニトラについて詳しく教えてもらおうか」
この後めちゃくちゃ弁明した。
いかがだったでしょうか。
なんとか今日中に書き上げました。
可能なら明日にもう一話上げる予定です。
ただその後は前話でも言った通りしばらく音信不通になります。
その辺りはご了承ください。
ひょっとして本作の進み遅い?