ソラを駆ける衛士   作:タリズマン

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お久しぶりです!
当直の合間に一話分はなんとか仕上げきりました。
いやぁ、色んな風景を見られて楽しかったですがいかんせんきつかった....。
というか機関室暑い....。


前回の後書きでセシリア戦と言ったな...

アレは嘘だ。


第十八話

同郷と出会えたことへの嬉しさのあまり飲みすぎてしまい酷い目にあってから数日。

ついに決闘の日が来た。

オレたちは格納庫で機体の最終チェックを行なっていた。 

横に目をやるとそこに佇むのは灰色の機体。

英国を中心とした欧州諸国が作り上げた第三世代戦術機、「EF-2000 タイフーン」。

それをそのままスケールダウンしたような機体だ。

 

「まさか欧州の戦術機を生で見ることができるとはな...」

 

そういうとヤンは苦笑いした。

 

「そういう僕だってビックリさ。まさかシラヌイとはね。そういえば噂ではタイフーンは開発時に日本から技術提供を受けてるらしいからひょっとしたら姉妹機かも知らないね。」

 

「その話は知らなかったな。」

 

帝国が技術提供したという話は初めて聞いて素直に驚いた。

改めてタイフーンに目をやるとやはり特徴的なのは機体各所に取り付けられたカーボンブレードにハルバートタイプの長刀フリューゲルベルデだろう。

機体各所に取り付けられたカーボンブレードは不知火でなく近衛が運用している武御雷を思わせる。

技術提供に関する話もなんとなくあり得そうな気がしてきた。

フリューゲルベルデに関しても日本の刀を思わせる74式近接戦闘長刀やイギリスの大剣型の近接戦闘長刀であるグレートソードよりも大きく、かつトップヘビーで重い一撃を食らわせることができる近接武器の中でも最大威力の装備だ。

 

「そのフリューゲルベルデはオレには扱いきれんな。」

 

「そんなこと言うなら僕だって74式は振れないよ。それを扱い切れるのは君たち日本人ぐらいだろ。」

 

「そんなことはないぞ!中国人とか韓国人とか、あとベトナム人もうまく使ってたぞ!」

 

「全部アジア人じゃないか...」

 

呆れた顔でこちらを見てくる。

日本人に限定したのはヤンだろうに...。

まぁ、半分くらい冗談だが。

 

「実際のところ在日米軍の連中の中にも長刀を気に入ってぶん回して、下手な日本人衛士よりもよっぽど扱いの上手い奴はいたぞ。」

 

「ああ〜、なるほど。実際に使ってるところ見て使いたくなったのかもね。親日家の人って結構刀とか好きだし。」

 

「ふーん。親日家とかはよくわからんがそんなもんなのか。」

 

「そんなものさ。」

 

そんな話をしつつ武装や機体のチェックを終わらせる。

最終チェックが済んだことを千冬に報告して時間になるまで待機することなった。

ヤンと二人で歩いているとそこにはどこか目が死んでいる状態で黄昏ている一夏が箒と共に座っていた。

 

「一夏はどうしたんだい?」

 

「それが....」

 

「聞いてくれよ!」

 

たまらずヤンが箒に状況を尋ねた。

箒が気まずげに状況を話そうとすると、横の一夏がガバッとこちらを振り向き事情を説明しだした。

 

「オレはISの知識がないからオレよりは確実に知ってるであろう箒に教えてくれるように頼んだんだよ!」

 

「妥当な判断だな。」

 

「だろ!」

 

どうやら一夏はすごい妥当な方法でこの1週間の間に付け焼き刃でもなんとかしようとしていたようだ。

だがそれならこうはならんだろ。

 

「でも、それならどうしてそんな死にそうな顔をしていたんだい?」

 

「今日までの1週間の間はひたすら箒と剣道してたんだよ!」

 

「は?」

 

「箒になまりきってるなんて言われてずっと剣道してたんだよ!」

 

「いや、そうはならんだろ...」

 

真面目にISについて学ぼうとしたにも関わらずこうなるのは、さすがに同情するとともに呆れた。

あのヤンがすごい呆けた顔で一言で聞き返したぐらいだし。

 

「...........(フイッ)」

 

「目 を 逸 ら す な!」

 

男たちの呆れた目に耐えかねた箒は目を逸らすが一夏の叫び声が響く。

するとこちらを振り返った箒は弁明を始めた。

 

「仕方ないじゃないか!ISは借りれないし実践的に学ぶなら剣道しかなかったんだ!」

 

「その言い分は分からんでもないが基本的な知識を教えてやるぐらいはできただろ...」

 

「あっ...........................(フイッ)」

 

「目 を 逸 ら す な!」

 

弁明の穴を突いてやると情けない声とともにしばし静寂が続いた。

するとまた気まずげに箒は目を逸らした。

 

最終的にやれやれと首を振っていたヤンが

 

「一夏のことを思ってやってくれたことではあるのだからこの辺にしておこうか。」

 

と言い、取り敢えず場は収まり一夏も箒に礼を言った。

 

 

「織斑くん織斑くん!」

 

場を収め駄弁って待機していると、山田先生が胸についた凶器を揺らしながら織斑を連呼してこっちに走ってきた。

.....思わずガン見してしまった。

 

「ハァ、ハァ、ハァ....。織斑くんの専用機が届きました!すぐに準備をお願いします!」

 

どうやらようやく一夏の専用機が届いたらしい。

しかし、初期化(フィッティング)と最適化(パーソナライズ)に時間がかかるらしい。

そのためすぐに一夏が出ることは出来ないらしい。

加えてオルコットもビットの調整に手間取ってるらしく少し時間がかかるとのことだ。

そして白羽の矢が立ったのが最終チェックも済ませてある俺たち2人だった。

 

「準備運動にちょうどいいだろ。慣らし運転を済ませてこい。」

 

とニヒルと笑みを浮かべた千冬の言葉により、オルコットととの戦いの前にオレとヤンがやることになった。

 

え?オルコットととの決闘じゃなかったの?

あ、クラス代表決めるためだから総当たり戦。

なるほど。

 

 

『それでは第一試合としてヤン・ウォーカーくんとカズキ・センドウくんの試合を行います!実況は私、放送部2年の名倉優子がお送りします』

 

どうやらクラスだけで終わらせるのではなく全体で見た方が学びになっていいとの判断らしく多くの学生がアリーナに入っていた。

しかもご丁寧に実況入りだ。

 

「カズキ・センドウ、不知火出る!」

 

アリーナの中央に向け飛び立ちシャムロックを見据える。

 

「まさかスタークと一騎討ちができるとはね。」

 

「いいじゃねーか。そうだ、負けた方がメシを奢るってのはどうだ?」

 

早速シャムロックに賭けをふっかけてやる。

 

「いいとも。美味そうなステーキがあるのを見つけたんでね。君に奢ってもらうとするよ。」

 

即座に乗ってきたシャムロックはシャリアピンステーキ(ビーフ)3900円を奢ってもらうと宣言した。

 

「それならオレは本マグロ定食を奢ってもらうとするかな。」

 

取材を受けた時、薫子に奢ってやった本マグロ定食4100円を奢ってもらうと宣言してやる。

互いに笑みを浮かべながら睨み合う。

互いの武器を構える。

オレは74式長刀を。

シャムロックはGWS-9突撃砲を。

 

『それでは、スタートッ‼︎ 』

 

「「ッ」」

 

シャムロックは合図と同時にコチラへ発砲してくる。

対するオレはすぐに急上昇する。

上昇し弾幕を避けながら二つほどモノを落としてやる。

 

カッ

 

フラッシュバンだ。

コチラを見上げていたシャムロックは閃光をモロに受け視界が奪われる。

これを見逃すオレではない。

長刀を握りしめて一気に距離を詰める。

それ対しシャムロックはフリューゲルベルデを取り出し近接戦に備える構えのようだ。

 

今さら近接戦の準備をしたって遅い!

そう思い瞬時加速(イグニッションブースト)で一気に距離を詰めにかかる。

しかし、首筋がピリつき途端に嫌な予感が迸る。

シャムロックはフリューゲルベルデを出してはいるが構えてはいない。

しかもコチラには未だに完全にではないが突撃砲が照準されたまま。

フラッシュバンが効いてないのか...?

いや、キレイに決まってるはず。

それとも牽制射か?

 

....まさか⁉︎

 

瞬間スラスターの向きを変え無理やり軌道を逸らす。

骨が軋むのを歯を食いしばり堪える。

直後オレがいた場所には80mmのキャニスター弾がばら撒かれた。

なんとか間一髪避け切ることができた。

 

「あれ?当たらなかった?」

 

「クソが!当たりつけてキャニスター弾ぶっ放しやがったな⁉︎ 」

 

「正解。当たったと思ったんだけどなぁ。」

 

コイツはオレの近接特化なのを知って、瞬時に距離を詰めると考え突撃してくるであろう方向にキャニスター弾を撃ってきやがった。

 

だが、依然シャムロックとの距離はかなり近い。

あまり好きではないが左手に追加装甲をコールする。

 

「ゴリ押しは困るな。」

 

「うるせえ。こういう時はゴリ押し一択だ。」

 

追加装甲を構え突撃する。

無論アチラは全力で火力を集中してくる。

一応の近接戦に備えたままではあるが、右手とマウントされた突撃砲の計三門が火を吹く。

近すぎる為回避は諦めたようだ。

だが、ただでさえ近い距離を瞬時加速で詰めるため有効なダメージを与えられる前に一気に接近した。

シャムロックは目の前に来ても一向に速度を落とさないオレに驚きの声を上げる。

 

「なっ⁉︎」

 

「オラァ‼︎ 」

 

シャムロックの目の前に来ると、二次加速(ダブルイグニッション)を行い更に加速する。

シールドバッシュだ。

数発被弾しつつも振り上げた追加装甲を叩きつける。

追加装甲の下部には稼働部があり、これを展開すると土木用のドーザーブレードにもなるし打突武器としても使えるのだ。

 

「グハッ⁉︎」

 

たまらず苦しげな声を出して地面へ吹き飛ぶシャムロック。

吹き飛んだシャムロックに追撃を与えるべく、追加装甲を投げ捨て長刀を両手で持ち突撃する。

 

「舐めるなぁ!」

 

シャムロックは叫びながら土煙の中フリューゲルベルデを構える。

オレを視認する横に振り切る。

オレは冷静にスラスターをふかし勢いを少し殺した上で長刀でその力を受け流す。

流石に知りうる限りで最大威力の近接武器であるフリューゲルベルデの一撃を受け流すのには少し苦労したが受け流し切る。

受け流され大きな隙が生まれたシャムロックを下段から上段へと斬る。

 

「ぐっ⁉︎」

 

切られてうめき声を上げるシャムロック。

しかし、斬られたにも関わらずシャムロックはスラスターを吹かし勢いそのままで、さらに遠心力の乗った一撃を繰り出してきた。

まさかもう一撃が来るとは思ってなかったオレはフリューゲルベルデの一撃を受ける。

 

「なっ⁉︎」

 

たまらず吹き飛ぶ。

慌てて姿勢制御を行い

シールドエネルギーの残量を見ると、結構ごっそり減らされていた。

 

「流石はフリューゲルベルデだな。一撃が重い...。」

 

「まさかフリューゲルベルデの一撃をあんなキレイに受け流されるとは思ってなかったよ。」

 

「よく言うぜ。一撃もらっておきながらそのままもう一撃食らわせてきたくせに」

 

二人は再び睨み合い拮抗状態となる。

 

 

「すげぇ...」

 

二人の戦いを見ている。

優勢なのは一樹の方であるのが見て取れるが千冬姉が感嘆の声を上げてる辺り、千冬姉から見てもレベルの高い戦いなのだろう。

 

「お二人とも凄いですね。あの動き1ヶ月しか訓練期間がないとは思えないです。」

 

「全くだ。」

 

ぶつかり合い笑いながら互いの技を出し尽くして戦う。

男として凄い燃える戦いだ。

いつかオレもあの中へ...。

 

「織斑。」

 

「なんだよ千冬姉。」

 

千冬姉に呼ばれたから振り向くと頭を小突かれた。

 

「織斑先生と呼べ。全く...」

 

呆れるようにため息をこぼす。

 

「いつつ...。それでどうしたんですか織斑先生?」

 

「貴様、さっきアイツらの様になりたいと思っただろう。」

 

「えっ、ああ。思ったけど。」

 

内心を言い当てられて驚く。

 

「アレにはそう簡単にはなれんぞ。」

 

「どういう事ですか?」

 

千冬姉の言葉に隣にいた箒が尋ねた。

 

「アイツらの動きはどう考えても1ヶ月では無理だ。何を隠してるかは知らんが少なくとも相当の修羅場を経験している。」

 

「修羅場....。」

 

修羅場って一体どんなものなんだろうか。

一樹もヤンも軍人だ。

命のやりとりをやってきたのだろうか。

でも平和なこの世界でそんな事って?

 

「そうだ。それこそ命をかけて戦ってきたんだろう。どちらとも確実に仕留めるために急所やISのスラスターといった致命傷を狙っている。無意識だとすればタチが悪いな。」

 

殺す技術を使って試合をしてるってことか!

 

「だが奴らは引き際を弁えてるだろうし手加減もできる。あくまで本気でやりあえる相手だからこそやってるのだろう。貴様はISという力を持ってしまうわけだが"ああ"なりたいのか?」

 

"ああ"っていうのは人を殺せる様になりたいか?ってことなんだろう。

オレは....

 

「オレは守りたい。守る力が欲しい。千冬姉や自分の大切なモノを守る力が欲しい。そりゃ殺したくなんてないさ。だから殺さなくて済むだけの力が欲しい。」

 

そうだ。それなりに戦える奴は殺してしまうことがあっても達人なら生かして倒すことができる。

そこに至るまでどれだけ掛かるかはわからないけどやるだけやってやる。

アイツらはきっとそれができる。

だから学べる所はアイツらから学ぶ。

戦う術を学ぶ。

その上でアイツらに並んでやる!

 

そうオレの思いを伝えると千冬姉は久しく見ていなかった姉らしい笑顔で

 

「そうか。精進しろよ。」

 

と言ってきた。

千冬姉の言葉に嬉しくなると同時にまずはこの試合でやれるだけやってやると覚悟を決めた。

 

「そろそろ決着がつきそうですよ。」

 

山田先生の言葉にモニターに視線を戻すと、そこには手に持っていた銃を斬り飛ばされ上段から斬りおろされているヤンの姿があった。

 

 

オレは上段からシャムロックを斬り伏せトドメにゼロ距離でマウントされた突撃砲で80mmの榴弾を叩き込んでやる。

 

ビーーーーーー!

 

ブザーが鳴り響きオレの勝ちが決まる。

長刀掲げ雄叫びを挙げる。

 

するとアリーナは歓声に包まれる。

歓声が響く中、地上に向かい倒れたシャムロックを起こしてやる。

 

「負けたよ。遠距離専門だから前衛がいないと流石に厳しいものがあるね。」

 

「そりゃ、言い訳ってもんだ。オレだって後衛がいないんだからキツかったぜ。」

 

互いに何が辛かったか言い合う。

すると思い出したかの様にシャムロックはため息をつき肩を落とした。

 

「はぁ、本マグロ定食ってかなり高かったろ。」

 

「おう。4100円だ。ゴチになるぜ。」

 

「ハァ....。」

 

再び深いため息をつくシャムロックの肩を笑いながら叩きピットに連れて行く。

 

「お疲れ〜。」

 

「あれ?本音さんに虚さん?なんでここに?」

 

ピットに戻るとそこには何故か本音と虚さんがいた。

 

「私たちは整備士志望で腕が立つということで手伝いに回されたんです。」

 

「それで私たちがここにいるのだ!」

 

そう虚さんが説明すると横にいた本音が胸を張る。

虚さんが言うってことは確かなんだろけど本音がねぇ...。

胡乱な目で見ていたのを察した本音が抗議の声を挙げる。

 

「む〜。ホントなのに。そんな目で見てくるなら整備してあげないよ!」

 

「あっ、すまん。」

 

「つーん。」

 

そんな様に虚さんがため息を吐く。

 

「本音はヤンさんの機体の整備をしなさい。私は一樹さんの機体をやりますから。」

 

「はーい。」

 

虚さんの指示を素直に聞き本音はヤンの方に向かう。

虚さんはコチラに近づいてきた。

 

「軽く点検しますので見せてもらってもよろしいですか?」

 

「ああ。....よっ、と」

 

不知火を展開させたまま降りる。

すると「失礼します」と一言断りを入れると、手際良く関節部を中心に点検を始めた。

 

「ああ、オレも点検ぐらいならできるんで手伝いますよ。」

 

そう言って点検を行い出すと虚さんは驚いたようにコチラを見ていた。

 

「これでもパイロットですよ。パイロットなら自分の機体の状況確認ぐらいできますよ。」

 

「あ、すみません。」

 

驚いた表情を見せたのが恥ずかしかったのか仄かに赤くなりながら謝ってきた。

あとは普通に点検を行い弾倉交換や長刀の交換などを行った。

 

次はオルコットと一夏の試合だ。

一夏の腕をじっくりと見させてもらおう。




相棒の機体はユーロファイターことタイフーンでした。
欧州の機体といえばやっぱこれでしょ!

頑張って書き上げた戦闘描写はいかがだったでしょうか?
余談ですが
近接装備に関して最初はグレートソードでもいいかなと思ったんですが、シャムロックはどちらかというとインパクトガード(砲撃支援)、要するに後衛の人間で考えていてグレートソードって前衛の熟練衛士が好き好んで使うような武器なのでカッコいいしフリューゲルベルデを近接装備にしました。
ちなみに一樹はストームバンガード(突撃前衛)という前衛のポジションという風に考えています。

次回こそはセシリア戦です!
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