ソラを駆ける衛士   作:タリズマン

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ようやくオルコット戦です!


第十九話

一夏の戦いはかなり白熱したものであった。

それはそうだろう乗ってまもない素人が代表候補生をあと一歩のところまで追い詰めたのだから。

そう"あと一歩"。

零落白夜という単一仕様能力を発動させたはいいもののデメリットを理解してなかったようだ。

結果、あと一歩のところでSE(シールドエネルギー)がなくなり見事な自滅を決めた。

モニターではオルコットとの試合が終わり何が起こったかわからないといった表情をしている一夏の姿が映っていた。

 

「うーん....?」

 

「結構上手くいってたから調子乗って自滅とかいう新兵にありがちなやられ方だな。」

 

一夏の負け方に納得のいってない顔をして首を傾げる本音。

その隣で率直な感想を俺が呟く。

新兵にありがち、というのは所謂「死の8分」を超えれたことに夢中になり警戒を怠って死んだり、初陣で生き残れたからといって調子に乗り二戦目で戦死するやつがそれなりにいた事を思い出し出てきた言葉だ。

 

「まぁ初めてにしてはかなり動けてたし、しっかり鍛えれば強くなるんじゃないかな?」

 

とのヤンの意見に頷く。

アーカイブを探して情報を集める程度の下調べすら足らんが、戦いの中でオルコットの弱点を見抜きそこを突こうとした洞察力には素直に感心した。

加えて一次移行も済ませていないのにも関わらず戦い、瞬殺されなかっただけでも素人としては破格だろう。

そんな事を考えていると隣から「おっ!」という声が聞こえ顔を上げる。

 

「次は一樹の番みたいだね。」

 

そこには「カズキ・センドウVSセシリア・オルコット」という文字がデカデカと浮かんでいた。

 

 

『先ほどの試合は少々残念な結果に終わってしまいましたが、第三試合に移りましょう!続いての試合は第一試合で見事な勝利を見せてくれましたセンドウさんと、対するはイギリス代表候補生のオルコットさんです!』

 

実況の声を聞きながらピットで最終チェックを行う。

 

「一樹さん、機体のチェック終了。問題はないようです。」

 

虚さんから問題ない旨が伝えられる。

 

「了解。虚さんありがとうございます!」

 

「いえ、仕事ですから。」

 

オレの礼に対して虚さんは微笑みながらそう言った。

そして横でオレを見ていたヤンが口を開く。

 

「僕を負かしといてオルコットさんに負けるなんて無様を見せるなよ。」

 

「誰が負けるかよ。小娘に灸を据えてくるだけさ。」

 

そう軽口を叩き左腕の装備を解除してヤンと拳をぶつける。

管制室からの発進許可を確認し左腕の装備を整える。

 

「それじゃ、行ってくるわ。」

 

ヤンや虚さん、本音にサムズアップして発進する。

 

オルコットの眼前まで来ると、オルコットはこちらを睨みながら言葉を放つ。

 

「どうやら逃げずに来たようですわね」

 

「そっちこそ危うく素人に負けそうになったのに逃げないんだな。感心したぜ。」

 

「......ッ」

 

挑発に対して軽いジャブを入れてやると忌々しげにこちらを睨みつけてきた。

その様子に鼻で笑ってさらに続けてやる。

 

「流石は代表候補生様だな。素人相手にギリギリの戦いをさせてあげて観客に魅せる戦いをするなんてな。」

 

「アナタはどれだけ私をバカにするのですかッ⁉︎」

 

半笑いで挑発してやるとオルコットはキレてくる。

最初に散々オレのことを侮辱したことが頭の中からすっぽ抜けてるらしい。

わざとらしく肩をすくめやれやれと首を振ってやる。

オルコットが歯を食いしばったのを見てさらに煽ってやろうと思ったが、放送が入り中断する。

 

『それでは両者揃ったようですし、試合を始めましょう!第三試合はセシリア・オルコットさんVSカズキ・センドウさんです!』

 

長刀をコールして手に握る。

とある"小道具"も取り出す。

対するオルコットも大型のレーザーライフルであるスターライトmkIIIを構える。

 

『それでは、試合開始ぃぃいっ!』

 

声と共にオルコットの機体から4機のビットが分離しオレを囲むように展開する。

 

「踊りなさい! 私、セシリア・オルコットとブルーティアーズが奏でる円舞曲で!」

 

オルコットのセリフと共にレーザーが四方から放たれる。

だが、その攻撃は正確にオレを狙っており狙いはかなり分かりやすかった。

 

「なっ⁉︎」

 

機体を逸らし回避すると、驚愕の声を上げるオルコット。

しかし、そこは代表候補生。

すぐに修正してずらしながら退路を塞ぎ誘導した上でライフルで仕留める方針に切り替えた。

 

しかし、その狙いもわかりやすい。

レーザーと言えばオレの頭に浮かぶのは光線級だ。

奴は照準されるとほぼ死が確定しているというふざけた性能を誇る。

そんな奴とやりあってきたオレにとってまだ回避ができる人間の取り扱うライフルなんてよけやすいものであった。

 

「なぜ当たらないのですか⁉︎」

 

オルコットの悲鳴のような声が響く。

オレはその間にひらりひらりと躱しつつちょうど良い位置につく。

そろそろいいか。

 

「サービスはおしまいだ。これからは全力で反撃させてもらうぜ、小娘。」

 

「なっ⁉︎」

 

オレは追加装備として持ってきておいた。円筒状のものを4つほど投げる。

するとそれぞれスモークを吐き出す。

 

「目眩しなんてハイパーセンサーを使えば....ッ⁉︎」

 

コイツはただの煙じゃない。

対センサー用の欺瞞を行える最新のスモークチャフ。

主にISや対無人機用に開発されたものでロシアでは大いに助けられた。

そしてオレは最後に見えた位置目掛けて瞬時加速する。

 

「インターセプターっ!」

 

オレが長刀を握っていた為に近接戦に備えて近接武器をコールするオルコット。

だがちょいと見込みが甘い。

オレが目指したのはオルコットの正面ではなく横だ。

 

「よぉ」

 

ダンッ!ダンッ!

 

オレは接近はするつもりだったが馬鹿正直に正面に出て斬り結んでやるつもりはなかった。

マウントされている突撃砲で右からは80mmのキャニスター弾を、左からは時間差で粘着榴弾をオルコット目掛けて撃った。

 

「きゃっ!」

 

キャニスター弾を至近で受け思わず悲鳴を上げながら仰け反る。

さらに粘着榴弾が時間差で腕に張り付き5秒後に起爆。

そしてそこに追撃として瞬間加速で近づき斬りつける。

その上でキャニスター弾や30mmの通常弾を叩き込む。

 

「きゃあああああああああああ!」

 

 

なぜこんなことに?

 

彼女、セシリア・オルコットの頭の中はこの言葉で埋め尽くされていた。

 

彼女は男という存在に良い感情を持ってはいない。

婿養子という立場の弱さから卑屈になる父親のせいだった。

ひょっとしたら何か真意があったのかも知れないが数年前に両親が列車事故で他界してしまいわからずじまいだった。

挙句亡くなった両親の遺産目当てに寄ってくる親戚筋の連中。

特に自分のことを嫌らしく眺めてきた叔父には嫌悪感以外何もなく、男嫌いを助長した。

そんな彼女はクラスの代表を決める決闘で理想の姿を見た。

先ほど戦った一夏の、その圧倒的不利な中でも諦めず自分を貫く姿はまさしく彼女が父に求めていた姿であり、彼女の理想そのものであった。

だが今戦っているこの男は違う。

 

最初は男の軍人でISを扱えるという興味から声をかけた。

次はクラス代表を決める場で男だからと私を差し置いて選ばれそうになって反発したところでコケにされた怒りを覚えた。

 

気に入らない。

 

結局この男は自分のことを正面から侮辱されても気にするそぶりも見せず怒りすら見せなかった。

 

気に入らない。

 

何を言われても頭を下げる事しかしなかった父親を思い出してしまう。

 

気に入らない。

 

現実を思い知らせてやると宣言したのに思い知らされているのは自分。

 

気に入らない!

 

自分はあの卑屈な姿を晒していた父や大好きだった母の遺したものを守る為に今の地位にいる。

先ほどの戦いで理想を見せてもらったばかりなのに。

それなのにただ諦め無様を晒すわけにはいかない。

せめて一矢報いてやりますわ!オルコット家の当主として!

 

そう決心しミサイルビットを好き勝手にボコスカ撃ってくる気に食わない相手に向けて叩き込んだ。

 

 

いくら代表候補生とはいえ所詮は現実を知らん小娘だと思っていた。

油断があったかと聞かれれば間違いなくあっただろう。

だが....

 

ミサイルビットを至近距離でぶっ放してくるとは...!?

 

「正直侮ってたよオルコット。」

 

思わず口から出た言葉。

 

「お前が高貴だのなんだのと言ってた割に泥臭いやり方するじゃねーか。」

 

素直な感想だった。

コイツは高貴だのエリートだのと言ってたが自爆なんて手段に出るとは思わなかった。

だが今までのオレの攻撃でSEを散々削られ、さらに今の自爆攻撃でもはや勝ちの目は完全に消えただろう。

 

「そうですわね。この戦い方は高貴な振る舞いではありません。」

 

今までの頭に血が昇っていたオルコットの姿はなく、淡々と冷静に話している。

 

「ただ、このまま一方的に負けるのは代表候補生として、いえオルコット家の当主として晒していい無様ではありませんわ!せめてアナタに一矢報いて負けますわ。」

 

その静かだが確かな宣言にオレは思わず笑みを浮かべる。

いい。実に良い。

武家の、近衛の連中の言いそうなセリフだ。

その誇り高い姿勢には報いでやらないといけないな。

 

「そうか。認識を改めようオルコット。お前は小娘じゃないな。一人の戦士としてお前を倒そう。」

 

そういうと少し驚いた表情を浮かべたがすぐに淑女らしい微笑みを浮かべる。

そしてライフルを構え直しこちらへの攻撃体制をとる。

 

「参ります!」

 

オルコットは先ほどと同じようにビットによる攻撃をしてくる。

四方から迫るビームに対し回避行動を取る。

誘導されているのは間違いないがそんなことは気にしない。

ただ一撃を与える為にオルコットへ向かうビットを新たな迎撃位置に動かすのを見て回避行動が取れないことを確信する。

 

今がチャンス!

 

瞬間加速で近づく。

 

取った‼︎

 

そこにオルコットの姿は無くハイパーセンサーが捉えたのはこちらを照準しているビット、そしてオレをかわしライフルを構えてこちらを狙うオルコットの姿だった。

 

「うおっ!」

 

慌てて急旋回を行うが瞬時加速中の旋回は体にかなりの負荷がかかる。

骨がミシミシと軋むような感覚に襲われ、かなりのGがかかる。

それでも二発当たってしまった。

 

「この土壇場でビットの操作と並行して戦うことができるようになったのかよ...!?」

 

息を切らしながら驚愕する。

まだ未熟だろうがそれでもビットの操作と並列して通常戦闘をこなせるようになるのはかなりの脅威だ。

なかなかに大変なようで命中率は下がっているが、元々の射撃技術もあり普通に当ててくる。

出し惜しみはしてられんな。

 

オレは改めて長刀を構える。

 

そして正面からオルコットに突っ込む。

無論オルコットは迎撃のためにビットやライフルを撃ってくる。

何発かは耐えられるが、自爆や先ほどの被弾で地味に削られてるためSEの残量はなかなかにキツい。

そのためにこの突撃は賭けに等しいものだった。

だが分の悪い賭けではない。

 

「なっ⁉︎ ビームを剣で⁉︎」

 

大ダメージになりそうな位置への攻撃を長刀で弾く。

オレの長刀にはある細工がしてある。

それはビーム攪拌膜によるコーティング加工が施してあるのだ。

試験的な意味合いの強いこの装備を正直練習不足だからあまり使いたくは無く出し渋っていた。

だがここに来て出し惜しみなどやっては失礼というもの。

 

「こっちばっか驚かされるのは癪なんでねッ!」

 

何よりも衛士としてパイロットととして負けず嫌いな一樹にとってはこれがこの試製長刀の使用に至った最大の理由なのだが。

 

ビームを弾かれ動揺で命中精度の下がった隙をつき一気に近づく。

 

「インターセプt「遅えッ!」っ⁉︎」

 

オルコットは慌てて近接武器をコールしようとしたが一歩間に合わなかった。

先に出し一気に近付いたオレの方が速い。

 

ビーーーーーー!

 

「ハァ....ハァ......」

 

辛くもオレはオルコットに勝利した。

ビット兵器は思いの外、対処が面倒だったから後でしっかり上にレポートを上げよう。

ホントに。

あとスモークチャフの増産を要請しよう。

装備してる数が少なすぎた。

 

そんなことを考えていると目の前にいるオルコットが話しかけてくる。

 

「まずは謝罪を。センドウさんへの侮辱と教導を行った方を侮辱したことを撤回した上で謝罪させていただきます。」

 

そう言うと頭を下げてきた。

 

「謝罪を受け取ろう。いつまでも引きずる気はハナから無いしな。」

 

オレの返しに少し驚いたようだが穏やかな笑みを浮かべさらに続けた。

 

「加えてセンドウさんには感謝を。アナタとの戦いでまだ未熟とはいえビットの扱いに関して上達することができましたわ。」

 

「そりゃお前の自力だろ。驚かされたよ。小娘に灸を増えるだけだと思ったら思わぬ強敵だったんだからな。」

 

そう言うとオレは手を差し出し握手を求める。

意味を理解したオルコットが手を取りがっしりと握手をする。

それは和解でもあり互いを認めた証でもあった。

 

手を離すと互いにピットに戻っていった。

 

 

その後はオルコットの機体に異常が見つかりオルコットはこれ以上試合ができない状態となってしまった。

その為あとは一夏VSヤン、一夏VSオレとなるのだがかなり一方的に叩きのめしたのでダイジェストで説明しよう。

 

〜〜〜〜〜〜〜

VSヤン

 

「ヤン、あんまり舐めてかかるなよ!」

 

「もちろん舐めるなんてことはしないよ。」

 

カシャン(肩のミサイルポッドが開く音)

ガチャガチャ(大量に向けられる突撃砲)

 

「へ?」

 

「僕は本来後衛だからね。遠距離から叩き潰させてもらうよ。」

 

バババババババババッ!

ダンッ!ダンッ!

 

「ぎゃあああああああああああ!」

 

結果、一夏は大量の弾幕とミサイルによってあえなく撃墜。

 

〜〜〜〜〜〜〜

VS一樹

 

「さっきは酷い目に遭ったが一樹は近接だからまだ勝ち目が...」

 

ガチャガチャ(大量に向けられる突撃砲)

ゴンっ!(リアクティブアーマー付きの追加装甲)

 

「なんでオレがお前の土俵で戦う必要があるんだ?」

 

「へ?」

 

「オラァ‼︎」

 

「ふべっ!!!!」

 

弾幕を張られた挙句、接近してリアクティブアーマー付きの追加装甲によるシールドバッシュで撃墜。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

散々である。

ヤンは主に一樹に奢ることなったフラストレーションを一夏に叩きつけるという理不尽で何より大人気のない理由でボコボコにした。

一樹はオルコット戦で予定よりも消耗してしまい正直面倒になり雑に叩きのめした。

 

こんな理由で一夏はボコボコにされたのだ。

不憫である。

 

まぁ、ともかくこれでクラス代表戦は終わりを告げた。

そしてクラス代表決めが終わるということは、ようやく千冬と飲みに行けるということだ。

タダ酒が楽しみだ.....。




いかがだったでしょうか?

ようやく代表戦が終わりました。
尺の都合上、一夏とセシリアの試合はカットしましたが無事セシリアは一夏に惚れています。ご安心?ください。

あ、ついにお気に入り登録数が100を超えました!
皆さんありがとうございます!
次回で飲みに行けたら嬉しいなぁ...。

お知らせ
14日から再び航海が始まり忙しくなる、というか電波が消え失せる可能性が高いのでまた更新が遅れることとなるかも知れませんが、どうかご了承ください。
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