ソラを駆ける衛士   作:タリズマン

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お久しぶりです。
航海が終わり本土に帰ってきました(降りれてはいない)

航海中に書き上げましたのでどうぞ。


第二十話

クラス代表決めの決闘が終わった翌日。

 

オルコットは教壇に立ちクラスの全員に誠心誠意謝罪をしていた。

 

「皆様の祖国を侮辱したことを謝罪させていただきます。本当に申し訳ありませんでした。自分の未熟さと不徳の致すところを恥いるばかりですわ。」

 

この言葉と態度に最初は皆目を丸くして困惑していたが最終的には謝罪を受け入れた。

そしてオルコットが席に戻り入れ替わるように山田先生が教壇に立ちクラス代表を発表する。

 

「という訳で最終的にクラス代表は織斑くんに決まりました!」

 

「おめでとう!織斑くん!」

「代表おめでとう!」

 

クラス代表が一夏に決まり祝福の声が上がる。

その渦中にいる一夏はポカンと状況を飲み込めていない様子だ。

 

「ちょっと待ってくれよ!オレ全敗したのになんでクラス代表になってるんだよ⁉︎」

 

混乱している一夏は抗議の声を上げる。

オルコット戦では単一仕様能力による自滅。

ヤン戦では遠距離からボコボコにされ、一樹戦では近距離に寄られた上で叩きのめされた。

これだけ聞くとなぜクラス代表になっているのかわからないのも無理はない。

理由を説明すべく千冬が口を開く。

 

「それは「わたくしが説明致しますわ!」....。」

 

説明しようとしてすぐにオルコットに遮られる。

少しばかりこめかみがひくついている。

しかしそんな事には一切目もくれず胸を張り大仰なポーズを取りながらオルコットが説明する。

 

「それはわたくしが辞退して一夏さんにクラス代表になる権利を差し上げたからですわ!」

 

知らぬうちに一夏をファーストネームで呼んでいる事に気がつくが全員今は取り敢えずスルーする。

一夏はそんな事に気付くことはなく一樹やヤンを指差し吼える。

 

「じゃあ一樹とヤンはどうなんだよっ⁉︎」

 

指名が飛んできた一樹は顔を上げるとニヤッと笑みを一夏に向けて浮かべる。

 

「残念ながらオレとヤンは生徒会に入ってんでね。クラス代表なんてできんのさ。残念だが一夏に譲るさ。」

 

「悲しいけどしょうがないから一夏に譲るよ。」

 

隣でヤンは目元を手で覆い態とらしく泣き真似をする。

その口元は緩んでいるが。

 

「安心しな。遠距離戦の対策をしたいならオルコットが手伝ってくれるさ。」

 

ニヤニヤしながら一樹がそう続ける。

するとその言葉を聞いたオルコットがさらに声を上げる。

 

「そうですわ!わたくしが手取り足取り教えて差し上げますわ!」

 

その言葉にたまらず箒が立ち上がり反論する。

 

「待ってもらおうか!一夏は近距離戦を磨いているんだ。それなら私が剣を教えるのが適当だろう!」

 

その言葉にオルコットは口に手を当て高笑いする。

 

「おーほっほっほ!今回の試合で一夏さんの最大の弱点は遠距離から攻撃だとわかりましてよ。それが故に遠距離専門のわたくしと対策を考えていくのがベストなのですわ!それがわからないのに教導役とは片腹が痛いですわ!」

 

正論だがお前はオレに負けただろと苦笑いしていると千冬が手を叩き声を上げた。

 

「小娘ども!私から見れば貴様らはまだ優越をつけられる段階ではない。そんなくだらない争いをしてる暇があるなら自分を磨け!」

 

思うところがあるのか、それとも千冬にビビったのか二人とも言い合いをやめて席についた。

取り敢えず千冬のおかげで場は収まり、授業が始まった。

 

 

そしてこの日は待ちに待った飲みの日であった。

なにやら壮行会とクラス代表決定の祝いを兼ねてパーティーをしようとしていたようだが、予定が合わず翌日の土曜日に行われる事になったのだ。

そして金曜の今日はフリーであり、教師陣も仕事が落ち着いてきたらしく行けるとのことでオレ、ヤン、千冬、真耶(学校以外では同年代だし教師としては扱ってほしくないらしい)の4人でモノレールに乗り横浜の街へ繰り出した。

 

「おー、ここが行きつけの居酒屋か。」

 

少々路地に入ったところに中々に趣のある店構えをした居酒屋があった。

名前は「たつのや」。

 

「中々にリーズナブルだがメシも酒も美味い私の行きつけの店だ。たまに真耶とくる店でな。」

 

千冬が少しドヤ顔をしながら店の紹介をしてくれる。

その後ろでは欧州出身のヤンが物珍しそうに店を眺めていた。

 

「へー、日本の酒場ってこんな感じなんだ。」

 

「居酒屋って言う、いわゆる大衆酒場ですね。」

 

真耶の解説を聞き相槌を打ちながら提灯や暖簾について質問をしていた。

店の前で時間を潰していても仕方ないので千冬を先頭に店に入った。

 

中はそんなに広くはないがカウンター席と奥に四人掛けの座敷が3組分あり、手前側にはテーブル席が3組分隙間があまりない状態で設置されており店内になんとか入れたという感じがする。

しかし居酒屋特有のこのなんとも言えぬ狭さに懐かしさを覚える。

 

カウンターにいる大将らしき人が千冬に気付き声をかけてきた。

オレはその大将の顔を見て驚き、固まる。

 

「いらっしゃい、織斑さん!予約の呑みだろう?テーブル席の一番奥のとこを使うといい!」

 

「ありがとう辰さん。」

 

どうやら予約を済ませておいたようだ。

気の知れたようた様子で話す千冬から出た名前にさらに固まってしまう。

 

あの、オレの知ってる人よりも年を取ってはいるが、彫りの深く目つきが悪い顔つき。

オレの人違いでなければこの人の名前は「阿南辰之助」。

かつての"世界"でのオレの恩人であり最初の隊の隊長だった人。

性格は豪傑と言える人で笑い声を上げながら仲間を鼓舞し戦う人だった。

残念ながら京都防衛戦の終盤の撤退戦の最中に戦死したが、家族の死に絶望してたオレを殴り「死のうなんざ考えるなよ!テメェは生きて生き抜いて死んだ奴に胸張れるぐらい戦い抜いてから死ね!ただで死のうなんざ思うんじゃねぇ‼︎」と檄を飛ばしてくれた。

そのお陰で生き抜いて死に場所を見つけることができた。

まぁ、生き残ってしまってるわけだが。

 

懐かしい人物の記憶を思い出し固まっていると、不思議の思った辰さんから声をかけられる。

 

「どうしたんで、兄ちゃん。オレの顔になんか着いとんのかい?」

 

「あ、いえ。古い知り合いに似ていたもので...。」

 

慌てながらそう返すと納得したようだ。

 

「そうかい。その知り合いはさぞ男前だったんだろうな。」

 

「ええ。大将によく似てね。」

 

「はっはっはっ!嬉しいこと言ってくれんねえ!オレを煽てたって酒しかでねぇよ‼︎」

 

「なら厚かましく酒をいただきましょうかね。」

 

笑い声を上げながらバンバンと背中を叩いてくる姿を見てやはり阿南大尉そのものだ。

ひょっとしたらオレの知ってる人達もここでは平和に生きてるのかも知れない。

そう考えつくと嬉しさと共に少し寂しさや虚しさがチラリと顔を出した。

 

「ほら、席に着こう一樹。」

 

「ああ。」

 

そんな考え事をしているとヤンに声をかけられ着席を促される。

席に着くと男女でキレイに向かい合う形になりなんだか話に聞く合コンのようになってしまった。

 

 

「全員酒は持ったな。....それでは乾杯!」

 

「「「乾杯!」」」

 

全員が一杯目のビールを頼みお通しといくつか簡単なツマミが出てきたところで千冬の短い音頭と共に乾杯する。

簡単なつまみと言っても用意してくれていたらしく枝豆に冷奴、だし巻き卵。

久々のビールはあっという間に飲み切ってしまう。

他に頼んでいた鉄板焼きや餃子、刺身盛りなど、どんどんくる料理に合わせて焼酎や日本酒、チューハイなど各々酒を飲む。

全員がほろ酔いになってきたところで麻耶が切り出す。

 

「前回の試合はお二人とも凄い戦いぶりでしたね。一ヶ月しか訓練してないとは思えませんよ!」

 

「いやぁ、教官がよかったんですよ。」

 

ほろ酔いになり頬を仄かに赤くしている麻耶に褒められて、少し謙遜する。

麻耶は代表にはなれなかったとは言え代表候補生の中でもトップ争いをしていたほどの腕らしくそんな彼女に褒められるのは素直に嬉しい。

あと敬語はデフォルトらしい。

 

「そうか、教官は誰だったんだ?」

 

「アメリカ軍所属のナターシャ・ファイルスだよ。知ってるか?」

 

「ナターシャか。奴に鍛えられたのであれば納得だな。」

 

「千冬にここまで言わせるとは君の教官は相当腕が立つみたいだね。」

 

教官について聞いてくる千冬に答えてやるとどうやら知っていたらしく何やら合点がいったようだ。

千冬が素直に誉めたことでヤンもなんとなく凄いと理解したようだ。

 

「そういえばこの日本酒っていうものは初めて飲んだけど呑みやすくて美味しいね。」

 

「ああ、呑みやすいが注意がいるぞ。うっかり呑みすぎやすいからな。」

 

「そうですよ。配分には十分注意してくださいね。」

 

「せいぜい注意するさ。」

 

話を区切り酒に口をつけたヤンは日本酒の素直な感想を言う。

それに対し千冬と真耶が呑みやすさの割に度数が高いことを注意する。

千冬は弟がいるからか絶妙に面倒見の良さを発揮している。

真耶はそういう性なのだろうが。

 

そんな感じで酒と話は進む。

酒が回り出したところで千冬の愚痴が溢れ始める。

 

「私だって、結婚願望はあるが相手がいないんだっ!」

 

「わかります先輩。本当にわかります。」

 

千冬の愚痴に隣の真耶も暗くなる。

 

「まぁ、ほら、とりあえず飲めよ。」

 

「そうそう。こういう時こそ呑んで愚痴を吐いてスッキリしなよ。教師なんてストレス溜め込みそうだしさ。」

 

そういい向かいにいる千冬に酒を注ぐ。

ヤンも同じく向かいの真耶に酒を注ぐ。

 

 

「女子校だから男の人はいないし!教師もみんな女性!いるとしてもひと回り年上の整備士の人ですし!」

 

「一夏が面倒事を起こすし、心配なんだ!女を引っ掛ける割には朴念仁のせいで付き合う訳でもなく、よくわからん関係に終始するんだっ!なんで弟の恋愛にこうもヤキモキせんといかんのだっ!」

 

酒を飲み干すと出るわ出るわ。

どんどん愚痴が飛び出す。

真耶は普段の鈍臭くともしっかりしてそうなイメージは完全に崩壊し、今や涙目になりながら出会いのなさを嘆き続けている。

千冬に至ってはもはや弟の愚痴しか言ってない。

ブラコンなのか、それとも本当に一夏が問題児なのか。

....いや、問題児か。

 

そんなことを考えながら話を聞いていると、麻耶からこちらに話を振られる。

 

「私たちばかり話したって不公平です!お二人もそういうのはないんですか⁉︎」

 

真耶の言葉に千冬も頷く。

カウンターにいる阿南さんに目線を向け助けを求めるが、

 

「...............(スッ)」

 

読んでた新聞を持ち上げ視線を切られる。

 

((逃げやがった....!!))

 

ヤンと共に内心で阿南さんの裏切りに憤慨しながらも視線で対策を話し合う。

 

(どうするんだいっ?)

 

(どうもこうもないだろ。ほら行けよ後輩!)

 

(ここは経験豊富な歳上に譲るに限るさっ...!)

 

ヤンと責任を押し付け合いメンチを切り合う。

しかし、そんな空白は認めないと言わんばかりに真耶からの攻勢が始まる。

 

「私が言うのは何ですが学園の教師や学生は中々にレベルが高いと思いますけどそう言うのはないんですかっ⁉︎」

 

その言葉にうんうんと頷く千冬。

クッソ...さっきから頷き続けやがって....!?

 

(どうすんのさ!なんて答えても死ぬ未来しか見えないよっ⁉︎)

 

(あると言えば掘り下げられ、ないと答えれば最悪ホモ扱い...。バカなっ、退路が無いだと⁉︎)

 

(ほら勇気出して飛び込みなよっ!元は死にたがりだったんだろ⁉︎)

 

(社会的な死じゃねえよ‼︎)

 

改めて責任の押し付け合戦を行う。

一つ閃いたオレはしれっと言ってやる。

 

「あー、そういえばヤンは同室の本音とはどうなんだ?結構可愛らしい子だが。」

 

「⁉︎」

 

すると、目を光らせた麻耶はすぐさまヤンをロックオンし攻勢を始める。

 

「確かに!同室の布仏さんとはどうなんですかっ⁉︎ なんかいい雰囲気とかなったりしたんですか?私なんて男の人と同棲なんてしたことないのに!」

 

....なんか漏れ出してる気がするが無視する。

ふと千冬に目を向けると隣で相変わらず頷いている。

 

....コイツ船漕いでんのか?

 

あ、目は結構しっかりと開いてるから起きてるわ。

 

「いや、本音とは特にそんなことはないよっ!」

 

「本音さんは着痩せするタイプでかなりスタイルのいい子ですよ!なんもないってことはないでしょう!」

 

「ホントにないよっ!それなら一樹だって更識会長と同室じゃないか!あの人だってスタイルいいだろっ!」

 

しまった!

酔ってるせいで判断力鈍ってたのか絶対に飛んでくるであろうキラーパスについて何も考慮してなかった...!

 

「楯無とはそういうことはねぇよ!第一オレには今恋愛する気なんざねえよ!」

 

「恋愛する気ないってなんですか⁉︎」

 

「オレは心に決めてる女がいんだよっ!」

 

酔っていたのもあってつい口を滑らせてしまった。

無論その女とは上総のことだ。

いつぞやに折り合いはついたと言ったが正直未だに引きずっている。

その事もあって恋愛なんてする気には中々ならんのだ。

気まずげに顔を上げるとそこには顔を赤くした麻耶と固まっている千冬がいた。

 

「....どうしたんだよ?」

 

「いえ、なんかその....」

 

「お前からそんな純愛的なセリフが聞けるとは思ってなくてな...」

 

コイツら.....。

 

「オレをなんだと思ってんだよ....」

 

コイツらの失礼な態度に肩を落とし酒を煽った。

 

 

 

なんだかんだと酒を楽しみ千冬に奢ってもらいタクシーを拾って学園へと戻った。

結局あの後はあれ以上掘り下げられることはなく、騒ぎながらも楽しい時間が過ぎた。

 

二人が酔い潰れたためオレは千冬を、ヤンは真耶をそれぞれ担いだ。

真耶の住まいなど分からないなら取り敢えず千冬の寮長室に放り込んでおいた。

なお千冬の部屋は前に清掃業者(弟)が入ったことによりかなりキレイになっている。

 

そして俺たち二人はというと、

 

「ふぅ....。」

 

酔い覚ましも兼ねて外を散歩していた。

ついでにタバコを吸っている。

 

「禁煙はオレには無理だわ。」

 

「飴はどうしたのさ?」

 

「抑えにはなっても完全な代替品にはならんさ。合成のパチモンじゃなくて天然の美味いタバコだと特にな。」

 

かつていた世界ではモノの安定生産など出来なくなっていた。

特に嗜好品なんて後回しにされるのが常だった。

つまりはあんまり美味しくないタバコが出回っていたわけだ。

そんな中で吸うこの天然物のタバコは格別だった。

 

「ふぅ...。」

 

「ホントに美味しそうに吸うね。」

 

「本当に美味いからな。」

 

そう笑って返してやる。

すると少し寂しそうな顔をしながらヤンは空に昇る紫煙と共に星を眺める。

 

「ここは本当にいいところだね。細々とした争いはあれど数千万単位での死者が当然ではないし、食べ物も美味しい。」

 

「そうだな。」

 

「みんなと来たかったな...。」

 

「そうだな....。」

 

全くもってそうだ。

世界中でボヤはあれど大きな争いはない。

数百万、数千万単位の戦争による死者は第二次大戦以降ない。

無論悲劇はある。

人間同士の争いもある。

非道な研究も実験もある。

それらに少しの失望もないと言えば嘘になってしまう。

だが、あの世界に比べれば全然マシだ。

 

「連れてきたかったな...。」

 

ポツリと口から出てきた言葉。

死ぬ事しか考えてなかったオレが一体誰を連れてきたかったのだろう。

誰も彼も守れずにみんな死んでしまったと言うのに....。

不意に自分の吸っているタバコの煙が線香の煙のように見えてきてしまい、虚しくなって火を消す。

 

溢れ出したこの言葉を最後にオレたちは酔いが覚めるまで黙って星を眺め続けた。




いかがだったでしょうか。

最後はほんの少しシリアス風味にしてみました。
そりゃ死にたいと思って戦場にずっといた人間がいきなり平和なところには馴染めないですよね。
アメリカにいた時も軍隊生活でなんだかんだ出撃してましたし。

これからしばらくは航海がないので更新はいくらか早くなると思います。
忙しいことに変わりはないので遅くなる時もありますがその辺は勘弁してください。
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