すみませんリアルが忙しかったのと軽いスランプのような状態に陥っていました。
計3回書き直してできたもので大変な難産でした。
飲み会の翌日。
しっかりと酔いを覚ましてから寝たのもあって二日酔いになることはなく普通に起きることができた。
朝イチで起きていつも通りランニングをする。
「センドウくんおはよう!」
ランニングの格好をして外に出ると相川に挨拶される。
彼女はハンドボール部で毎日のランニングを欠かしていないらしく、たまたま会ったのをきっかけに一緒に走るようになっているのだ。
「少し眠そうだけど夜更かしでもしたの?」
「まぁ...少しな。」
昨日は結局、深夜二時ぐらいに寝たため少し眠い。
それに嫌な考えはオレの頭の中に残り続け、なかなか寝付けなかったことも原因だ。
「夜にパーティーあるのに眠くて楽しめなかったじゃもったいないよ。」
「それもそうだな。せっかくの休みだし久々に少し昼寝でもするさ。」
そう言い二人で並び走る。
驚いたことにかなり体力があるようで平気な顔でオレのペースについてくる。
彼女曰く最大の長所らしい。
♢
相川とのランニングを済ませシャワーを浴びて楯無と共に朝食を食べる。
「おはよう、一樹。」
「かずっち、おはよ〜。」
いつも通りヤンと眠たげにしている本音と合流する。
いつも通り和食系モーニングから適当なものを選び注文する。
定食を受け取り席に着こうとすると珍しく相川にお呼ばれした。
「センドウくん!こっち来なよ。」
チラリと楯無の方を見ると肩をすくめていたので許可が取れたと認識してそちらに向かう。
「おっはよー!」
「おはよう谷本」
挨拶を済ませ相川の隣に座る。
すると谷本が楯無の方を見ながら「ナルホドね」と小さく呟いた。
「あれがセンドウくんと同棲してるっていう例の生徒会長か〜。」
「あれ?オレってその話したっけ?」
「されてないよ。知ってる理由知りたい?」
ニヤッと笑みを浮かべながらそんなこと聞いてくる谷本に少しイラッとしたため、あえてメシを食べすすめながらそっけなく返す。
「別に。」
「そう言われたら話が広がらないでしょ!」
「まぁまぁ癒子、わざわざ煽るみたいに言った癒子だって悪いんだからさ。」
そっけなく返され言い返してくるものの相川に瞬殺され「清香ぁ〜。」と情けない声を上げてきる。
お茶を一口啜り本題に戻す。
「んで、結局なんで知ってたんだ?」
そう聞くと、その言葉を待っていたと言わんばかりのスピードでスマホの画面を見せてきた。
見てみるとそこには「特集!IS学園に現れた男性操縦者 センドウ・カズキに迫る‼︎」と銘打たれた校内新聞があった。
「ああ、薫子が書いた記事か。」
「そうそう。それでさ、ぶっちゃけ会長とはどこまで行ったの?」
またその手の話か...。
思わず呆れつつ答える。
「あのなぁ。よしんばオレがアイツに惚れてたとしても1週間程度でどうこうなるわけないだろ。」
「ふーん。つまんないの。」
「お前はオレに何を求めてんだよ。」
「うーん。なんか面白いこと?」
思わず大きなため息が出る。
面白いことってな...。
いや確かに速攻で問題起こしたけどさ、アレは一夏の流れ弾だろ。
「あ、そうそう。」
気を取り直し卵焼きを口に運ぶと相川から不意に声をかけられる。
「今日のパーティーの準備は私たちでやるからセンドウくんたちは休んでていいよ。」
「んぐっ....それは流石に...」
「朝のランニングのとき眠そうにしてたでしょ。しっかり休まないと。」
「そうそう。主役に働かせる方がダメでしょ。今日はゆっくりして夜楽しまないと!」
流石に悪いので慌てて飲み込みオレも手伝うように伝えようとするも、二人に止められる。
特に相川は心配そうに言ってくるため強くは言えそうにない。
「........わかった。今日はゆっくり休ませてもらうよ。ヤンと一夏には伝えとくよ。」
手伝うことは諦め今日はもうゆっくり休むことにした。
♢
休むことにしたとはいえ眠る気にはならなかった。
昨日眠れなかった理由である嫌な考えはまだ解決してないし、部屋に一人でいるとなんだか落ち着かなかった。
加えて緊急招集がよくあった身としては一度起きると結構目が冴えてしまうのだ。
こういうこともありヤンや一夏に女子が準備をする旨を伝えた後、取り敢えず学園の敷地内を軽く散歩することにした。
IS学園の敷地面積は膨大であり、その広さは羽田空港にも匹敵する。
無論、警備隊の駐屯地も含んだ面積である。
学生の使うアリーナに学寮、校舎、整備施設に小規模とはいえ港湾施設も保有しており、加えて警備隊の防空施設にレーダー施設、輸送機やヘリを飛ばせる滑走路も持っている。
そしてその外周は遊歩道が整備されており散歩をしたり運動ができるようにできている。
なぜこんな事を長々と説明したかというと、その遊歩道を歩いて気分転換に勤しんでいるのだ。
軽く摘めるようなサンドウィッチと紅茶を作り、本と一緒にバックに入れる。
無論紅茶を飲むためのコップを入れて。
歩き出すと春真っ只中の陽気は気持ち良く海から吹く潮風も心地よかった。
空を見上げれば雲一つない晴天であり散歩をするには最高の天気である。
海を見ていると気分が紛れる。
横浜にほど近いIS学園は浦賀水道が目前にあり多くの船が行き交う主要航路がよく見える。
そのため大海原を見ることはできないが海の日常を見ることができる。
人が当然のように日常を過ごす姿はオレにとってなかなか見る機会がなかったもので、ここには人が生きているのだという実感を持たせてくれるのだ。
海を眺めながら散歩を続ける。
たまに女子生徒とすれ違うと奇異の視線を向けられるがスルーして歩く。
すると道から外れたところにいい感じの木があるのを見つけた。
葉が広がっているため木陰がいい感じにできており、のんびりするのにちょうど良さそうだ。
吸い込まれるように木に近づき根元に腰を下ろす。
サァーという葉の擦れる音と小鳥の鳴き声が心地の良い風と共に聞こえてくる。
あまりの心地良さに持ってきた本のことなど忘れて呆けてしまう。
思わず襲ってきた眠気に身を任せ船を漕いでしまう。
いくら目が冴えるようになっているとはいえ極限状態でもない現状ではもはや眠気に身を任せるしかなくオレは眠りに落ちた。
♢
ここは?
眼前に広がるのはどこまでも暗くあちらこちらが赤く染まった町。
オレの生まれ育った町。
千年の都と謳われた雄大で古き町。
周りを見渡すも、そこに人影はなかった。
歩く、歩く、歩く。
歩き回っていると、やがてよく■■との待ち合わせ場所として行った京都駅の近くにたどり着く。
何故だか震えが止まらない。
冷や汗もじっとりとかきだした。
嫌な予感が止まらない。
音が聞こえた。
この音は戦術機⁉︎
空を見上げるとそこには二機の白い瑞鶴と一機の山吹色の瑞鶴が要塞級との戦闘を行なっていた。
戦闘というよりひたすら回避しているようだ。
武装がないのか⁉︎
あっ!
必死に回避していた白の瑞鶴が同じ白い機体にぶつかり墜落していった。
オレは走り出した。
どこかで聞いたことのある状況だ。
何で聞いた?
どこで聞いた⁉︎
誰から聞いた⁉︎
あの白い瑞鶴は、衝突された白い機体は⁉︎
京都駅にはBETAが大量にいた。
兵士級に戦車級、人を喰らい殺すクソどもがウジャウジャといたがオレには目もくれない。
走る。
あの機体を必死に探す。
すると見覚えのある山吹色の強化装備を身につけた背中を見つけた。
■さん⁉︎
彼女に走って近づく。
冷や汗が止まる気配はなくどうしようもなく寒い。
そして■さんの目線の先にいたのは、
え......?
頭から血を流し、
やめろよ......
手足が曲がってはいけない方向に曲がり、
やめろ....
自決もままならないまま戦車級にたかられている■■の姿であった。
やめろぉぉおおおお!
この後どうなるのかが読めたオレは必死に叫ぶが、それ以外何もできない。
そして奴らに持ち上げられ今にも引きちぎり貪り食われんとしてる彼女と目が合う。
うそつき。
♢
「うわぁああ!」
跳ね起きる。
寝る前はあんなにも心地よかった風すら気持ち悪く感じる。
冷や汗をかき汗でベタつき気持ち悪い。
息も荒くかなりうなされていたのだろう。
思わず頭を抱え深いため息をつく。
胸ポケットからタバコを取り出し火をつける。
こんな時ぐらいは許してもらおう。
タバコをふかし一息つく。
全くもって最悪だ。
あの夢は今までも何回か見てきた。
まさかこのタイミングで見るとは...。
あれは京都から撤退した後に篁さんから教えてもらった上総の最後だ。
あの日から何度も見る悪夢。
まるでオレに忘れるなと言わんばかりに見せられる。
「クソッタレが...。」
最悪な気分のオレは弱々しく呟くことしかできなかった。
♢
起きた時には昼を過ぎていたので持ってきたサンドウィッチを食べ昼メシ済ませた。
その後は寮に戻り嫌な汗をシャワーで流した。
質の良い睡眠ではなくとも寝るには寝れたのでもう一眠りなんて気にもならず、暇をしていたヤンとチェスを指して時間を潰した。
無論、悪夢のことなどおくびにも出さずに過ごした。
そして呼ばれてる時間になり一夏とも合流し会場に向かう。
パーン!
「「「「「織斑くん代表就任おめでとう!」」」」」
「「「「「ウォーカーくん、センドウくんIS学園へようこそ!」」」」」
扉をくぐると三方からクラッカーの音と共に女子達の声が響いた。
周りを見るとしっかりと飾り付けがされており、かつ食べ物やジュースが所狭しと並んでいる。
というかどう考えても人数が多い。
絶対1組だけじゃ無くて他のクラスの奴らもいる。
そんな事を考えていると手を掴まれ、さぁこっちへ、と三人は中心へと連れていかれる。中心へと着くとコップを渡されジュースを注がれる。
「じゃあ始めようよ!織斑くん音頭お願い!」
「ええっ⁉︎」
谷本から急に音頭を任せられ困惑するもコップを掲げて咳払いをする。
「みんな!オレ達のためにパーティーを開いてくれてありがとう!最後までみんなで楽しもうぜ。それじゃ、乾杯っ!」
「「「「「カンパーイっ!」」」」」
♢
パーティーが始まると一夏は箒とセシリアの二人に連れて行かれた。
取り残されたオレとヤン、それに女子学生数人で飲み物(酒ではない)を飲みながら一夏が箒やセシリアの争いに巻き込まれているのを遠目に見ていた。
「全くあの二人は...。」
そう呆れながら苦笑いを浮かべるヤン。
その隣にはアハハ〜と笑う本音がいる。
なんだか最近は本音とヤンの二人がセットいることが増えた気がする。
「ってか、本音はケーキ何個目だよ....。」
「甘いものは無限に吸収できるのだ〜。」
ずっとケーキを食べている本音に呆れてツッコミを入れるも胸を張って受け流される。
(というか脂肪分は全部胸に入ってるのでは?)
そんな失礼なことを考えているとギロッと睨まれた。
慌てて目線を逸らし他の女子に目を向けると本音を羨望の眼差しで見つめていた。
あちこちから羨ましい!という声が聞こえる。
「いいなぁ....。あんなに食べてあのスタイルなんて....。」
羨望の眼差しを向けているのは隣にいる相川とて同じであった。
「しっかり運動してるしいくらか食べても大丈夫じゃないか?」
「わかってないね。油断するとすぐに太っちゃうんだから。油断大敵だよ!」
太ってるようにも見えないし何より毎日ランニングを欠かしてない相川には無用の心配に思える。
しかし彼女にとってはそうではないらしくかなり語気強めで言い返されてしまう。
「...そんなもんか?」
「そんなもんだよ!それと女の子に太るとか体重の話はNGだからね!」
「そっかぁ...」
少し怒られたが理由が理由だから力が抜ける。
チラリとヤンに目を向けると同じようなことを言ったのか谷本と本音に詰め寄られていた。
一つため息をつくとせっかくだからと取っといたエクレアを相川に渡す。
「え?」
「普段頑張ってんだからたまにはいいだろ。太っちまったらオレのせいだ。せいぜいランニングに付き合うさ。」
「....」
相川は少し赤くなりつつも悩んでいる。
なんか赤くなるようなことをオレは言ったか?
まぁいいか。
「いらないならオレが食っちまうだけだが?」
「そう言われちゃ仕方ないね!」
満面の笑顔で何かを誤魔化すように大声を出しながらエクレアを受け取り頬張る。
やっぱり女ってのは甘いものが好きなんだな。
「カズキさん!ちょっといいですか?」
エクレアを頬張る相川を見て癒されているところに背後から声がかけられる。
振り返ると新聞部の腕章をつけカメラとメモ帳を持っている薫子が立っていた。
「ん?薫子か。どうした?」
「取材をしようかと思いまして。カズキさんに関しては取材は前やりましたしウォーカーさんを紹介していただけないかなぁ、なんて。」
なるほど。
「ヤン!客だ!」
「え?僕にかい?」
取り敢えずヤンを呼び手招きする。
こちらに寄ってきたヤンに薫子を親指で指差しながら紹介する。
「ヤン、コイツは2年の黛薫子。新聞部に入っててな、お前の取材がしたいんだと。」
「キミは取材を受けたのかい?」
「ああ、入学の直前にな。最近張り出されてる記事を書いた奴さ。」
「ああ、アレか。」
前に受けた取材で出来た記事の話をすると合点が言ったようだ。
ヤンは薫子に体を向け手を差し出し挨拶する。
「はじめまして黛さん、ヤン・ウォーカーです。よろしく。」
「は、はい。新聞部2年の黛薫子です。よろしくお願いします、ウォーカーさん。」
そう言うと握手を交わす。
握手を終えると薫子の目を見据えて短く問いかける。
「それで僕に何が聞きたいのかな?」
♢
取材自体は当たり障りのないことが多くゴリ押しが少ないことに安心しつつ無事に終わった。
常にヤンの目が据わってたのも原因の一つではあるだろうが。
なんか新聞に嫌な思い出でもあんのか?
取材を終えると薫子の提案で写真を撮ることになった。
無論、新聞に掲載するためらしいがオレたちにも写真をくれるらしい。
試合を行った四人でまず写真を撮る。
当然のごとくセシリアは一夏の隣に立ち、一夏を対にしてセシリアの反対にオレとヤンが立っている。
セシリアは満面の笑みで一夏にくっ付いているため、女子からの羨望の声と箒の忌々しげな目線が飛んできている。
それを見てオレとヤンが苦笑いをしているという決闘した後だとは思えないほど和やかな写真ができてしまった。
「はい!じゃあ集合写真撮るよ!」
4人の写真を撮り終わった薫子の言葉に歓声が上がり女子が我先にと集まってくる。
しれっと相川や谷本がオレの近くに寄ってきて本音はヤンの隣に来た。
「はいそれじゃ、20678÷23は?」
「わかるかっ⁉︎」
写真を撮る時の掛け声が思ってたものと違って思わずツッコミを入れてしまう。
ニヤリと笑った薫子は
「カズキさんのツッコミ顔いただきぃ!」
と達成感あふれる声を上げながら写真を確認している。
「いやぁ、これは一面確定だねぇ。」
「ちょっと待てやぁ!」
「わぁ!それじゃ私はこの辺で!」
「薫子ぉぉぉおおお!」
不意に出ててきた薫子の蛮行を示唆する言葉を聞き大声を上げるも星でも出そうなウインクを決めて走り去っていった。
なお面白がった谷本にがっしり腕をホールドされていたため強引に振り解くわけにもいかず逃げ切られた。
その有様を見た写真を撮ってもらっていた全員が笑い出し会場は笑顔に包まれた。
「ふっ....ぐっ...諦めなよ。」
やられたと肩を落としているとヤンに笑いを堪えながら肩を叩かれたオレは耐えられなくなった。
「クソッタレがぁぁぁぁああああ!」
笑顔が広がる会場でオレは一人誓った。
薫子は絶対いつかシバき倒す、と。
♢
後日、カズキの部屋には写真立てが一つ増えた。
そこには多くの人が笑顔で写っている。
カズキにとって守りたいものの象徴となった写真がそこには入っていた。
いかがだったでしょうか。
ちょっとカズキくんのトラウマを掘ってみました。
それとパーティーの描写は少し短いですが許してください。
今話で名前だけ登場した篁さんについて少し紹介します。
篁唯依
日本帝国の帝国斯衛軍と呼ばれる征夷大将軍及び将軍を輩出する五摂家と呼ばれる家の警護を主任務とする武装組織で冠位十二階に基づいた色分けを行った戦術機を運用しています。
篁家は譜代の武家のため色は山吹色で、山城上総の山城家は外様の武家のため白でそれぞれカラーリングされています。
話を戻して篁唯依は上総の親友で初陣で京都防衛戦に参加し部隊と同期は自分以外が全員戦死。
その後はサバイバーズギルトを抱えながらも腕を上げ開発衛士となり不知火の改修機不知火弐型の開発主任となります。
これ以上話すとネタバレを含んでしまうので詳しくは「帝都燃ゆ」と「トータルイクリプス」にてご覧ください。