ソラを駆ける衛士   作:タリズマン

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お久しぶりです!
前話からかなり空いてしまいましたが、失踪はしませんよ!



第二十六話

結局、昨晩は逃げ出した本音を捕まえることはできず勘違いをされたままである。

過ぎたことはもうしょうがないと諦めるしか無いか。

 

「しょうがなく無いわよっ!虚ちゃんに言われたりしたらどうするのよっ⁉︎ 」

 

朝食を食べに食堂に向かっているとどうやら考えが少し漏れていたようで、楯無が横で怒りだす。

 

「諦めて訳を話した上で折檻受けるしか無いだろ....。」

 

オレの言葉にため息をこぼしながら頭を抱える楯無。

小さく「どうしよう....折檻される....いや、本音ちゃんを甘いものとかで釣れれば.....?」などと呟いているところをみると未だに抵抗を試みているようだ。

そんな様子を横目で見ながらオレは観念したようにため息をこぼした。

 

「ん?」

 

「あっ⁉︎」

 

目線を前に向けると食堂に入ろうとしているヤンと本音がいた。

ほぼ同タイミングであちらも気付いたようで本音はこちらに気付くと同時に顔を赤くしながらヤンの背中に隠れて裾を掴んでいた。

ヤンは不思議そうにコチラと本音を見ると首を傾げた。

 

「ねぇ2人とも、本音と何かあったのかい?」

 

その言葉に本音も含めた3人が一斉にビクッと跳ね上がる。

目を逸らしながら「えっと.....」などと言って言葉を出せないでいるオレたちに業を煮やしたヤンは背後にいる本音に尋ねた。

 

「本音....何があったんだい?」

 

「えっと.....その.....」

 

本音はヤンの思わぬ低い声に人差し指をツンツンさせながら言いにくそうに吃る。

 

「と、とりあえず....メシ....食おうぜ。」

 

自分が関与、というか元凶でもあるし流石に哀れに思ったカズキが助け船を出し、ヤンはそれに応じた。

 

 

結局こんな場所では言いにくいと本音が言いこの場は収まった。

まぁ、生徒会室で詳しくは聞くなんて言われたため自動的に虚さんに知れることとなることが確定した。

楯無は絶望して膝をついていたが....。

 

兎にも角にも朝食を済ませ学校に向かう。

そして平凡ながら平和な一日が今日もまた始まった。

 

まぁ平凡な一日と言ったとおり特に何かあったわけでもなく時間は放課後へと移る。

生徒会室に移って折檻かと思ったが、2年生は1年より授業のコマ数が多いらしく遅れるとのことだ。

そのため先に真面目な話をしておくことにした。

 

応接用の椅子に座りインスタントのコーヒーを一口飲み話を切り出す。

 

「話ってのはだな、今度のクラス代表戦の警備に関することとオレたちのエレメントに関することだ。」

 

「警備に関することはわかるけどエレメントに関することって?」

 

怪訝な顔をするヤンに司令から預かった命令書を渡す。

ヤンが驚く顔を想像しつつも、少しある不安を感じながら渡した。

書類を受取り中を見ると彼の顔は驚愕に染まる。

 

「これはッ....⁉︎ 」

 

「驚いてもらえたようで何よりだ。」

 

驚くヤンに満足しつつも、形式として口頭にて辞令を伝えるべく咳払いをして立ち上がる。

オレが立ち上がるのを見てヤンも慌てて立ち上がる。

 

「ヤン・ウォーカー中尉、貴様は本日付で第16特務小隊、ガルーダ小隊に配属となる。貴様のコールサインはガルーダ2。2番機としてオレについてもらう。武神さえも下した神鳥の名に恥じぬ働きを期待する。」

 

ヤンは顔に喜びを貼り付けながらオレの言葉に対してお手本のような敬礼を返す。

オレは喜んでくれている様子に少しホッとしながら返礼した後ヤンに手を差し伸べる。

 

「改めてよろしく頼む。」

 

「こちらこそ、よろしく。最高のサプライズに感謝するよ。」

 

がっしりと握手を交わしオレたちは改めて相棒となったことを確認した。

そして改めて座ると警備に関して話し始める。

 

「それで代表戦中のアリーナ警備に関してだが、アリーナ内部での緊急対応の指揮はオレに一任された。それに加えて人員の少なさをなんとかするために学園の警備部から人員を補填するつもりだ。」

 

ふむ、と口元に手を当てヤンは考えに耽っている。

それを見つつ話を続ける。

 

「本当にテロなんて起きた場合基本的に戦闘はガルーダ隊で行う。警備部の人員には避難誘導と学生の直掩にあたってもらうつもりだ。ま、協力が得られればの話だがな。」

 

「やっぱり問題はそこだよね。」

 

そう、今いくら話したところで所詮は皮算用。

どうなるかは学園との交渉次第なのだ。

そこに関しては楯無頼りなのが辛いところだ。

 

「その辺の調整とか交渉はこっちでやっとくから詳細が決まり次第追って伝える。」

 

「了解。よろしく頼むよ、隊長。」

 

ニヤッとしながら"隊長"という単語を強調して言ってくる。

憎たらしいと思い、少しイラッとしたがタイミングよく楯無と虚さんが来たため深くは突っ込むことは出来なかった。

チッ、運のいいやつめ....。

 

2人が到着したことで椅子から立ち上がり入口の方を見ると、顔を真っ青にして震えている楯無と目を細めながら楯無の首根っこを掴んでいる虚さん、そして怯えた表情を浮かべる本音が立っていた。

 

あっ(察し)

 

全てを察し固まるオレの肩にポンと手が置かれる。

首を後ろに向けるとそこにはニッコリと笑みを浮かべたヤンがいた。

 

「それじゃあ、話を聞こうか......カズキ。」

 

「......はい。」

 

ヤンのゾッとするほど低い声にオレは縮こまってか細い返事をするしかなかった。

 

 

生徒会室の中央で硬い床に正座をしているのは我らが生徒会長、更識楯無と生徒会副会長のオレというこの学校の生徒の2トップ。

 

「「........」」

 

そしてその前に仁王立ちしているのはこめかみをひくつかせている虚さんとヤン。

それに加えて申し訳なさそうにかつ、2人の怒気に怯え肩を窄めている本音。

 

「お二人とも何か申し開きはございますか?」

 

明らかに怒気を孕んだ言葉にオレと楯無は思わず肩をビクッとさせる。

横をチラッと確認すると楯無は涙目になりつつ必死に言い訳を考えている様子だった。

そんな様子を見たオレは諦めを込め全部正直に話した。

こういうのは下手に誤魔化さずに正直に話す方が傷が浅くて済む。

 

 

 

 

「.........という訳なんですよ。」

 

途中、楯無に遮られそうになるものの虚さんのひと睨みで黙らされていた。

オレの説明に対し虚さんはこめかみに手を当て思わずと言わんばかりの大きなため息を零すと、楯無を問い詰める。

 

「....お嬢様、今のカズキさんの話に何か間違いは?」

 

「あの〜、その....」

 

目を泳がせながら必死に言い訳を考えているであろう楯無に対し睨みつけながら追撃をかける。

 

「まさか、歳上とはいえ後輩に罪を被せるような言い訳を考えたりしていませんよね?」

 

この言葉でようやく諦めがついたのか項垂れた。

というか、オレに責任おっかぶせようとしてたのかッ⁉︎

 

「本音から深刻そうな顔で"楯無お嬢様が大人の階段を登っちゃった"なんて聞いた時は驚きましたが、こんなこととは......」

 

この言葉に顔を赤くしながらしゅんと落ち込んだ様子の本音。

思わずヤンもため息を溢していた。

すると、不意に何かを思いついた楯無が零す。

 

「......つまり今回の騒動って本音ちゃんがムッツリで変な勘違いしたってことよね?」

 

楯無のこぼしたセリフに空気が凍る。

オレは慌ててバカの頭を引っ叩く。

が、時すでに遅くヤンと虚さんから向けられた視線も相まって、本音は顔をトマトの如く真っ赤にして涙目で俯いた。

 

 

「たっちゃんのバカァァアアアアア‼︎ かんちゃんに言い付けてやる!」

 

真っ赤な顔のまま本音は楯無に向かって叫ぶと生徒会室から逃げていった。

 

「えっ?本音ちゃん待って!ホントに待って!ぐえっ」

 

最後のセリフに慌てた楯無が止めようとするも虚さんに制服を掴まれ阻まれる。

周りにいるオレとヤンは自業自得どころか自ら罪状を増やしたバカを助けてやる義理などないためその有様を眺めるだけだ。

 

「お二人とも今日はもう上がってくださって結構ですよ。私はお嬢様とお話がありますので。」

 

「そんじゃオレはこの辺で...」

 

虚さんの言葉に身を翻しそそくさと帰ろうとしたがヤンに肩を掴まれる。

 

「こっちの話は終わったけど僕からも君に話があるんだ。顔、貸してもらっていいかな?」

 

「えっ?話は終わったろ?」

 

振り返り文句を言うも笑顔のヤンにビビりながらいつかに聞いた話を思い出した。

笑顔とは本来、威嚇の意味があるのだと。

 

「君からの話は終わっても僕の話は終わってないよ。虚さん、隣の部屋借りますね。」

 

「ええどうぞ。ご自由に。」

 

にこやかに虚さんとヤンが話し罪人のように右腕に関節技をかけられながら過去に楯無が引きづり込まれた部屋へと連行される。

 

「「ああああああああああああああッ‼︎ 」」

 

抵抗は無意味であり生徒会室にはオレと楯無の悲しき断末魔が響き渡るのであった。

 

 

結局あの後ヤンにしっかりと絞られ長く正座しすぎたせいで足はプルプルと震える無様な格好となった。

ヤンに肩を借りながら未だ怒られている楯無の助けを無視して帰路へとついた。

 

「ひどい目にあった....。」

 

「全部君の自業自得じゃないか。紛らわしいことをする君らが一番悪いんだからな。」

 

オレのぼやきにヤンはジト目でこちらを見てくる。

 

「それに前だって似たようなことあったろ。少しは学びなよ。」

 

呆れたように過去の話をほじくられる。

似たようなこととは入寮当初に起きたハニトラ(笑)事件である。

処女である楯無がオレにハニトラを仕掛け、色々と限界だったオレが危うく襲いそうになった事件のことである。

あの事が露見した時は楯無が虚さんに折檻され、オレもヤンに全力で弁明を図る事態になったのだ。

過去から学べと言う至極真っ当な言葉に何も言い返せないオレは気まずげに目線を明後日の方向にやることしかできなかった。

 

「夕陽が....綺麗だな。」

 

「そんな事で僕が誤魔化されるとでも思ったのかい?」

 

目線を向けた先にあった沈み始めている夕陽を見てボソッと呟くも、呆れたようなヤンの言葉でかき消される。

「はぁ...。」と大きなため息をヤンは零す。

 

「全く困った隊長だよ。」

 

「オレの部下は気苦労が絶えないぞ。ストレスでハゲないように気をつけろよ。」

 

「生憎と僕の家系でハゲは1人もいないんでね。ハゲる予定はないのさ。」

 

苦笑いしながらボヤくヤンと軽口を叩き合う。

なんとも楽しい日常だろうか。

折檻はもう勘弁願いたいが....。

 

 

そんなこんなで寮に戻ると見覚えのある人物がホールにあるソファで体操座りしているのが見えた。

 

「....何やってんだ鈴?」

 

オレが声をかけるとバッと顔を上げ目尻に涙を浮かべながらこっちを見てきた。

 

 

場所を移しオレの部屋へと向かった。

ヤンの部屋には本音が落ち込んでいるか錯乱状態の本音がいる可能性があるししばらくは楯無が戻ってこないだろうしオレの部屋になったのだ。

 

取り敢えずコーヒーを入れてやり3人分を机に置き話を聞く。

 

どうやら謝罪しに行くもどっちが悪いかで揉め、その際に出た一夏の貧乳発言に激怒し喧嘩したまま別れてきてしまったらしい。

 

「それは....なんというか....」

 

「あのバカは何やってんだ。」

 

オレとヤンは一夏に呆れる。

一方の話しか聞いてないから決めつけることはできないが話の通りならとりあえず一夏のバカは〆ないといけないな。

取り敢えずコーヒーを飲み落ち着きを取り戻したものの鈴は俯き落ち込んでいるようだった。

 

「やっぱり胸なのかな...。」

 

とても悲しげな声色だった。

好きな男に胸のことで言われればこんな感じになっちまうもんなんだろう。

コンプレックスを感じてれば尚更だろう。

しかしオレとヤンは顔を見合わせて大きな声で笑う。

 

「な、なんで笑うのよっ!私は本気でっ」

 

今にも掴みかかってきそうな勢いで怒る鈴に対して手を出して制する。

 

「すまん、お前をバカにして笑った訳じゃねーよ。もちろん胸がでかい方が良いとかいうのはあるかも知れないが、そいつは別にイイ女である絶対条件じゃねーのさ。な、ヤン。」

 

「そうだね。胸の大きさでしか女性を語れない男なんて大したことはないものさ。」

 

オレとヤンの言葉に困惑をかけせない様子の鈴を見て吹き出しそうになるものの我慢して続ける。

 

「まぁ、要するにだ。そんなこと気にしなくたっていいんだよ。第一、お前は別に胸がなくたってスタイルいいじゃねーか。」

 

「へっ⁉︎ 」

 

「うんうん。別に裸だとか水着姿とかを見た訳じゃないから詳しくはわからないけど、制服姿を見る限りではキミは普通に良いスタイルしてるんだから、そんなに卑下することはないさ。」

 

「ッ⁉︎ 」

 

オレたち2人の言葉に顔を赤くして狼狽している様子の鈴。

 

「な、何よ2人して私を揶揄ってるの?」

 

「いやいや違う違う。オレが言いたいのはコンプレックスなんて気にすんなって言ってんのさ。特にそういうスタイルの話なら尚更な。」

 

「そうだよ鈴。ロリ(29)とか言われてた人だって、感情を失った男とか言われてた人を落としたりもしてたんだからさ。キミに関していえば心配はないと思うよ。」

 

「ロリ(29)は酷いでしょ!それに何よっ、胸小さいからって比較対象としてロリ体型の人の話を出す必要は別にないでしょ!」

 

揶揄われていると勘繰る鈴を宥めつつフォローしまくる。

コイツは変なところで自信を失うようだし、褒め殺す勢いで言ってやった。

それと少しの揶揄いを混ぜながらだ。

 

「ははっ!調子出てきたじゃねぇか。」

 

「?」

 

オレの言葉に対して少し息を切らしながら怪訝な表情を浮かべる。

 

「お前は暗い顔よりも元気な顔の方が似合うんだよ。自信満々に笑ってろよ。」

 

笑顔を浮かべながら言ってやる。

コイツは落ち込んだ顔よりもいつも通り自信満々でいる方がコイツらしい。

しょぼくれてる顔はなんだかしっくりこないのだ。

 

「カズキ...キミは鈴を口説いてるのかい?」

 

「は?」

 

突然ヤンが訳の分からないことを言ってきたので聞き返す。

 

「いや、なんか口説き文句みたいになってたよ?」

 

「えっ?」

 

ヤンの台詞を聞き鈴の方に目を向けると頬を染めて俯いていた。

その上で改めて自分の発言を振り返る。

 

「あっ!いや、そういう意図があった訳じゃなくてだな....。」

 

「わ、わかってるわよっ!」

 

慌てて言い訳を始め、なんとか鈴の勘違いを解けた....はず。

「勘違いが続いてたらどうしよう」なんて考えていると、落ち着きを取り戻した鈴が小さな声で呟いた。

 

「...その、励ましてくれて、ありがとう。」

 

フッ、と軽く笑って言ってやる。

 

「気にすんな。オレは約束しちまったしな、愚痴ぐらいいくらでも聞くってよ。」

 

「そんな約束してたのかい?まぁ、僕に関しても気にすることはないよ。年長者として相談とかには乗るさ。」

 

鈴はオレたちの言葉に顔を上げると、笑顔を浮かべながら改めて「ありがとう。」と呟くのだった。

 

「ま、そんなに気になるならクラス代表戦で優勝してオレらにスイーツでも奢ってくれよ。」

 

「それはいいね。甘党というわけではないけど少し気になってたんだよ。」

 

「私、一応アンタらの敵よ?」

 

オレたちの言葉に困惑を隠せない様子の鈴だが、オレたちは笑う。

 

「オレたちはどちらかっていうと運営側だからな。どっちが勝ったって別に気にすることはないのさ。」

 

「ぷっ、あはははははっ!クラスの他の人にバレたらシバかれそうな台詞ね!」

 

その笑い声を聞きながらオレはこんなにいい奴を二度も泣かした一夏はやっぱり一度〆ておこうと決意するのだった。

 




マジで色々あって遅くなりました。すみません。
まぁ、詳しくは活動報告を読んでいただけると助かります。
それと明後日から入社して社会人となるため投稿はかなりゆっくりなペースになる事が予想されます。
まぁ、しばらくは陸にいると思うので出来るだけ早く投稿しようと思っていますので、ごゆっくりお待ちいただけると幸いです。

補足
今回の話と前話で出てきた「ロッテ」と「エレメント」(以降はエレメントで統一)ですがこれは戦闘機の編隊でおける最小単位の2機編隊の事です。元はドイツ空軍で確立された戦術でこれを「ロッテ」と呼び、アメリカ空軍がこれを取り入れた際に「エレメント」という名称がつきました。

それと特務小隊という名称ですが、これは兵器としての運用が条約にて禁止されているISを兵器としてではなくパワードスーツとして運用しているという建前とその特殊性から特務、つまりは特殊任務という扱いを受けるためという設定です。
他にも何か質問があればコメントでどんどん質問してください。(露骨なコメ稼ぎ)
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