ソラを駆ける衛士   作:タリズマン

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ついにUAが20000を超えました!
ありがたや、ありがたや。




第二十八話

最近ヤンの機嫌がかなり良い気がする。

いや、気のせいではないだろう。

鼻唄を歌ってる時もあるし、まるでスキップでもしてるかのような軽い足取りでどこかへ向かう姿を見かけるようにもなった。

 

「そんな訳なんだが、どう思う。」

 

俺は目の前にいる呆れたような目を浮かべる鈴にそう問いかける。

 

「はぁ、深刻そうな顔で話があるって言われたから何事かと思えば....。アンタにわからないのに私にわかる訳ないでしょ。」

 

そう言い紅茶を飲む鈴。

 

「いや、まぁそうなんだけどさ...もう少し考えてくれたっていいだろ。」

 

俺の言葉に対ししょうがないとため息を吐き少しそぶりを見せた。

 

「あ、好きな人ができたとか、気になってる子と仲が進展したとか?」

 

なんとも現在進行形で色恋してる鈴らしい考えだ。

アイツが恋?

 

ニコニコしてるけど何か抱えてるだろうあいつが、恋?

 

「流石に....それは....」

 

「そうよねぇ。なんだかアイツが色恋沙汰ってのは想像しにくいわよね。」

 

再び鈴と考え込む。

そこで不意に一人の女が浮かんだ。

 

「あ、簪。」

 

そうアイツ軽い足取りで向かう先は知ってる限り全て整備棟だった。

そして毎日足繁く通っているのは簪のところだ。

 

「簪?」

 

簪のことを知らないであろう鈴は首を傾げている。

 

「簪っていうのは自分でISを組んでる奴で、ヤンがよく弁当作って持って行ってやってるんだよ。」

 

「え?なにそれ恋する乙女?」

 

簪に関して説明するとヤンの行動に対して素直な感想が飛び出して来た。

確かに青春マンガとかで弁当を気になっている人に渡すようなシーンはあるが、そう言われるとそうにしか見えなくなって来た。

 

「お前も見習ったらどうだ?」

 

「一夏の場合、受け取っても100%の善意でくれたとしか思わずに恋愛には行きつかないわよ。」

 

そんなことで振り向いてくれればどれだけ楽か、そう呟く鈴はどこか哀愁が漂っていた。

 

哀れ、恋した相手が悪かったな。

惚れた弱みってやつかね。

 

 

結局あの後もアレじゃないかと話が出ても「でもヤンだぞ」の一言で振り出しに戻るという流れを繰り返すだけだった。

最終的に結論は出なかったが、悪どい笑みを浮かべて面白そうだから何かわかったら報告しろという鈴とはやはり仲良くできそうだ。

 

場面は変わりここはIS学園の会議室。

この日のオレはIS学園の制服ではなく国連軍の黒い軍服に身を包んでいた。

議題はもちろんクラス代表戦の警備に関してだった。

議長席に座るのは学園の理事長でおやっさんの奥さんである轡木理事長。

他の参加者には学園側から千冬、警備部のISチーム隊長であるソフィア・イアハート、大会運営のアルマ・ノルシュトレーム。

国連軍側からはオレとグリーヴァス中佐、七瀬大尉が出席してる。

 

「さて、今回集まってもらったのは今度行われるクラス代表戦の警備に関して話し合うためよ。センドウくんは学生としてではなく国連軍の警備担当者として来ていることには留意すること。」

 

轡木理事長の言葉で会議が始まる。

 

「それではアリーナ内の警備責任者であるセンドウ大尉。アナタから具申があるのよね。」

 

早速来た。

オレは立ち上がり学園側の担当者に向け一礼をする。

 

「はい。私からの具申として、まず現状ではアリーナ内の緊急時に対応できないというものがあります。具体的にはお手元の資料の4ページを開いてください。」

 

そう言い開いておいた資料に目を落とす。

そこにはアリーナの全体図と当初の警備配置が書かれていた。

 

「ご覧のとおり、アリーナ内には私たち2名のガルーダ隊しか配置できておらず歩兵の警備小隊は皆、アリーナ外に配置されています。今までならばコレでよかったのかもしれませんが、現在最も狙われるであろう織斑一夏がいます。」

 

一旦呼吸し、周りを見渡す。

 

「アジア地域で活発に動いているテロ組織としてはアジア人民解放戦線やISの存在そのものを否定しているイスラム過激派のアーモウ・ディーエも存在しています。織斑一夏や我々男性操縦者が入学したことで注目度が跳ね上がっているIS学園は、テロ組織からすれば格好の獲物でしょう。」

 

「それらテロ組織に狙われると?あなた方国連軍はそれらの脅威から学園を守りきれないと?」

 

イアハート教諭が挑発をしてくるが意に返さない。

左右を見てもグリーヴァス中佐は目を瞑っているだけで七瀬大尉も気にすることなくコーヒーを啜っていた。

 

「そうは言っていません。ただ我々は最悪の事態を考えねばなりません。警備において想定外は言い訳にはなりません。我々国連軍はその命を賭して学園を守っています。くだらない挑発はやめてもらいましょう。」

 

最後の言葉にイアハート教諭の眉がピクリと動いた。

あなた方は最悪を想定していないんですね、とオブラートに包んで差し上げたのだがどうやらお気に召さなかったらしい。

 

「本題に入りましょう。疑いたくはありませんか最悪、学生の中にスパイが紛れていたり警戒網を突破され敵がアリーナ内部へ侵入してくる可能性もあります。その場合、2名では到底カバーしきれません。そこでIS学園警備部のISチームにアリーナ内の警備に加わってもらいたいのです。」

 

オレの言葉に驚いた様子のイアハート教諭とノルシュトレーム教諭の2人。

特に警備部のイアハート教諭はこちらに警戒感丸出しの様子である。

その中で驚きはしたが比較的冷静なノルシュトレーム教諭が恐る恐る手を上げる。

 

「ノルシュトレーム教諭どうかしましたか?」

 

「その、仮にISチームをアリーナ内に配置したとして指揮の重複が発生すると思うのですが...。」

 

この質問に隣に座っているイアハート教諭はそうだそうだと首を振っている。

 

「ええ。確かにその通りです。そのため指揮系統は統一する必要があります。」

 

 

オレのセリフからある考えに至ったのか熱り立ったのはイアハート教諭だった。

部屋にはガタンっと椅子が倒れる音が響き渡った。

 

「まさかISチームの指揮権を渡せと言うつもりか⁉︎ 」

 

熱り立つ彼女に対しオレは極めて冷静に返す。

 

「ええ。その通りです。」

 

「ISの指揮権を寄越せだと⁉︎ 貴様は自分の言ってることがわかっているのかっ⁉︎ 」

 

確かに自分達の持つ最高戦力の指揮権を寄越せと言われれば正気か問い正したくなる気持ちはわかるし、今まで学園内部の警備を行なって来た自負とプライドがあるのもわかる。

だが、彼女たちは内の警備であって外敵は担当していない。

 

「貴方の言いたいことはよくわかっています。しかしながら実際に戦闘となった時にあなた方は冷静に判断することができますか?学生同士の揉め事ではなく本気で殺そうとしてくる"敵"を前にね。」

 

オレが言っていることは理解してるのだろうが納得はできていないようでイアハート教諭は口を開く。

 

「貴様はっ....! 」

 

「その辺にしたらどうかしら。」

 

しかし全ての言葉を吐き出すことは叶わなかった。

轡木理事長に遮られたからだ。

理事長は諭すように続けた。

 

「イアハート先生、貴方もわかってるでしょ。彼の言ってることが正しいと。」

 

「っ.... 」

 

「私たちのやるべきことはプライドを守ることじゃない。どんな事があっても生徒を守ることよ。そうでしょう?」

 

「......はい。」

 

イアハート教諭は悔しそうに下唇を噛み締めながら座った。

その様子を見たあと中佐が「ちょっといいか」と手を挙げた。

 

「グリーヴァス中佐?....構いませんよ。」

 

「それでは。....一応補足しておくと警備要員としてISチームをお借りするが、攻撃に対処するのはガルーダで学園側のISには避難する生徒の直掩に当たってもらうつもりだ。」

 

こちらとしては敵との交戦に際し役に立つと学園側のISチームが役に立つとはハナから考えてないのだ。

 

「あなた方の方が学園の内部は詳しいでしょう。そして今まで生徒を守ってきたという自負もおありでしょう。それが故に生徒の直掩として彼女たちを守ってほしい。あなた方は盾であり我々は矛です。役割を果たすために一時的に指揮下に入ってほしいのです。別に優位に立ちたいなどという邪な考えではないことをご理解願いたい。」

 

中佐は言葉を締め「以上です。」と一言いうとコーヒーに口をつけた。

その後は最大の難関を超えたことと中佐のフォローの甲斐もあったのか話は順調に進んだ。

大枠の合意で終わるかと思ったがかなり詳細を詰めることができた。

 

 

会議が終わり、今日は生徒会も休んでいいとのことだったのでグリーヴァス中佐や七瀬大尉に挨拶を済ませ帰路へ着くことにした。

堅苦しい会議なんて久しぶりに出たから肩やら首やらがかなり凝っている。

首なんて軽くひねればバキバキと音がする。

今までは一部隊員に過ぎなかったが2人しかいないとはいえ隊長になってしまったためにこういう機会は今後増えていくだろう。

全く持って面倒だ。

そんなことを考え憂鬱な気分になっていると、背後から声をかけられた。

 

「カズキじゃない。用事があるみたいだったけど終わったの?」

 

「ん?なんだ鈴か。用事に関しては終わったよ。」

 

声をかけてきたのは運動着に身を包んだ鈴だった。

 

「あらそ。というかなんだとは失礼ね。」

 

「そんなとこ気にすんなよ。ところでお前は何してたんだ。」

 

見たところ鈴は少し汗ばんでいるし何かしらの運動をしていたとは推測しているが。

 

「何をするにしてもまずは体力でしょ。だからランニングは元々欠かしてはいないんだけど、今日は時間もあったし長めに走ってたのよ。」

 

「なるほどな。熱心なことはいいことだ。」

 

「上から目線で偉そうにしないでよ。」

 

オレの言葉にジト目と共に低い声を飛ばしてくる。

「そういえば。」と彼女は不意にオレの姿を頭から爪先まで見る。

 

「それ、国連軍の軍服?」

 

「ん。ああ。コイツは支給されてる国連軍の制服さ。ちゃんとここに階級章も付いてるだろ。」

 

オレは階級章を指で指し示した後立ち止まって制服を見せびらかすように立つ。

 

「どうだ?」

 

「........馬子にも衣装?」

 

改めてじっくりと見てから出た言葉に思わず体勢を崩しそうになる。

 

「お前なぁ...。」

 

「軍服なんて見る機会ないし、知ってる中でも中々に奇抜な軍服じゃない?なんか肩の辺り尖ってるし。」

 

「まぁ、それは認めるが...。」

 

「そうでしょ。」

 

そう言われると反論できない。

国連軍の軍服は一般的に陸軍が使用しているカーキ色や緑ではなく、陸軍がメインでありながら海軍のように黒いものである。

加えて所々に青色の線があしらわれ、肩は尖ったような意匠となっているのだ。

一般的な軍服からすればかなり目立つ独特なデザインとなっているのだ。

 

「このデザインなのには色々と理由はあるんだがな。」

 

「よくわからないデザインなことを無理に擁護する必要はないのよ。」

 

「いや、ホントにあるからっ!」

 

本当である。

理由は色々とあるのだが、最も大きな理由としては一般的な国軍との差別化というものだ。

一目で見てわかることが重要で、国連軍は利益のために動くのではなく人々を守るために動く。

国家や民族に縛られることなく、守るために戦う。

これを最大の目的として動いており、国のために戦う一般的な軍隊との明確な差別化を図りたいという国連軍上層部の意図があるのだ。

 

「ま、要するに見た目から入りたいのさ。」

 

「なるほどね。思ったよりちゃんとした理由だったみたいね。」

 

「だからそう言ってんだろ。」

 

やっぱり疑いを持っていた鈴に呆れてしまう。

そんな話をしながら寮に帰っていると見覚えのある人影を見た。

 

「ん?カズキ!」

 

一夏はオレに気がついたらしくこちらへ向かってくる。

後ろにはいつも通りムスッとしてる箒とセシリアが着いてきている。

 

「おう一夏。お前は特訓の帰りか。」

 

「まぁな。...ところで鈴は何してんだ?」

 

鈴は一夏の声が聞こえた瞬間素早くオレの背後に隠れたのだが、隠れ切れていないしこちらを見た時点で見つかっているだろうに。

 

「まぁ、そっとしといてやれ。」

 

「カズキがそう言うなら...。」

 

そして、一夏の視線は隠れている鈴からオレの服装へと移る。

 

「ところでその服って軍服なのか?」

 

「ああ、国連軍の制服さ。」

 

「へぇー国連軍の制服ってこんな感じなのかぁ。自衛隊とか米軍のは何となく知ってるけど国連軍ってこんな感じなのか。」

 

やはり軍服というのが気になるのかオレのあちらこちらに視線を向けている。

 

「まぁ、日本じゃ珍しいわな。テレビで見るのも野戦服がメインだろうしな。」

 

「ああ!あの青いヘルメットと青い服のやつな。それならテレビで見たことあるな。」

 

どうやらイメージと合致したらしくうんうんと納得したように首を振っている。

 

「そういえば一夏。」

 

「ん?」

 

「特訓の調子はどうだ?」

 

オレはふと特訓の様子がどうなのか気になり尋ねた。

すると少し気まずそうに苦笑いしながら顔を寄せてきた。

 

「特訓つけてもらえるのは助かってるしありがたいんだけどさ。箒は根性と感覚すぎるし、セシリアの方は具体的な数字とかを出してすっげぇ細かく教えてくるからわからないんだ。」

 

「ああ...。」

 

正直言って同情した。

感覚派はハマるやつならハマるが違った途端わからなくなるし、擬音を多用する傾向があって何言ってるのかわからなくなるんだよな。

そして理論派が過ぎると呪文を唱え始めてくるから何を言ってるか分からないし頭がこんがらがるだけになるんだよなぁ。

まぁ、一夏はどちらかと言えば感覚派だろうしセシリアは一夏に教えるのは正直向いてないだろうな。

 

「大変だな。」

 

「わかってくれるか?」

 

「似たような経験はあるからな。」

 

思わず苦笑いを浮かべながら同意した。

するとオレの方をキラキラした目をしながら一夏くっついてくるが、背後の3人から嫉妬が由来と思われる殺気を感じるからそんなにくっつかないでほしい。

 

「....カズキさんが最大の敵では?」

 

「確かに....。一夏め、あんなにくっつきおって....。」

 

「相談相手が最大の敵.....? 」

 

聞こえてるんだが。

オレにはソッチの気はないので勘弁してほしい。

というか鈴がなぜオレを敵と認識しかけているのか。

これがわからない。

チラッと鈴に視線を向ける。

 

するとハイライトのない瞳がそこにはあった。

目が合う。

すると口が動いた。

口パクのようだが、えーと、

 

あ・と・で・は・な・し・を・し・よ・う

 

あっ....。

もう助からないゾ。

 

なんか変な電波を受信しつつもオレは大慌てで前を向く。

 

「どうしたんだ?」

 

一夏は他人事の如くオレにそんな言葉をかけてくるがコイツが原因なのだ。

くそっ、殴りたい。

 

「いや、お前のせいで厄介ごとができた。」

 

「え?オレのせい?なんかしたか?」

 

「したのさ...。」

 

「なんか、ごめん。」

 

すごい可哀想なものを見る目で見てきたがお前のせいなんだよ。

ホントに殴るぞ。

 

「はぁ、オレ最近はそんなに悪いことしてないはずなんだけどなぁ....。」

 

思わず出てきたオレの悲しみの乗ったため息と呟きは夕焼けの空へと消えていった。




前書きでも書いたようについにUAが20000を超えました。
お気に入り登録も197となり200まであと一歩となってきました。
いやぁ、見てくれるのはISとマブラヴのネームバリューのおかげもあるでしょうけどありがたいし素直に嬉しいですね。
それと誤字報告も本当にありがとうございます!今後ともよろしくお願いします。

国連軍の軍服が気になる方は「マブラヴ 国連軍 軍服」で検索してみてください。
変なやつが肩についてますから。
ちなみになぜそのデザインかはオリジナル設定ですのであしからず。

あ、次かその次の話でクラス代表戦に入ろうと考えています。
それと、お気に入り登録が200超えたら何か特別編書いた方がいいですかね?
アンケートをとるので回答して頂けるとありがたいです。
特別編が欲しい人で何か要望があれば感想欄か活動報告の方で書いて頂けると嬉しいです。
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