ありがてぇや。
ついに今日、クラス代表戦が行われる。
オレはISの装備を確認した。
装備しているのは模擬弾などではなく実弾装備だ。
何も起こらないことを願ってはいるが、相変わらず首の後ろはピリピリと嫌な予感が無くなることはなかった。
いつも通りのSHRを終わらせ、アリーナへ向かう。
ヤンとは手はず通り別れ丁度オレの席とは反対の位置に向かった。
オレは相川と谷本に挟まれる形で座る。
「カズキくんは今日の試合はどうなると思う?」
ふと相川に聞かれる。
「そうだな。鈴が勝つと思うな。」
「鈴って最近噂になってるカズキくんと仲の良い2組の子?」
「多分、相川が思い浮かべてるやつであってる。....というか噂ってなんだ?」
オレが自分の予想を伝えると怪しげな単語が聞こえたためそれについて問いただそうとすると「あっ。」と明らかにやってしまったような声を上げて目を背けた。
オレは反対にいる谷本に目を向けるも下手くそな口笛を吹きながらコチラも目を背けた。
コイツら....。
ここまで来るとどんな噂かかなり気になり、どんな噂か思い当たる節を必死に探す。
すると背後から声をかけられた。
「私が教えあげようか?」
その言葉に従い後ろを向くと黒髪のショートカットの女子がいた。
「鷹月、教えてくれるのか。」
「別にいいよ。」
「ちょっ、静寐!」
焦ったような声を谷本が上げるがこの際無視だ。
「今度、買い物に付き合ってくれる?」
「背に腹は変えられん。許可が降りれば構わんぞ。」
「ならば教えてあげよう。」
約束を取り付けられてしまったが、このムズムズ感が収まるのなら構わん。
仰々しくする鷹月に態とらしくかしこまり噂について聞く。
「出回ってる噂はね。カズキくんとその2組の鳳さんが付き合ってるっていう噂だよ。」
「は?」
思わず聞き返す。
オレの耳がおかしくなったのか?
「だから、カズキくんと鳳さんが交際してるのではっていう話だよ。」
「なんで?」
何故そうなったのかさっぱりわからん。
すると鷹月さんはジトっと呆れたような目線を向けてきた。
「自覚ないの?」
「自覚って何が?」
「ハァ...。まさか織斑くんと同じパターンかこれ...? 」
ため息の後は聞こえなかったがかなり失礼なことを言われた気がする。
すると両隣の2人まで呆れたような目をこちらに向けていた。
オレは1人で困惑していると「しょうがないな。」というか相川が口を開いた。
「ここのところカズキくんと鳳さんが2人でいるところをよく見るし、泣いている鳳さんを慰めながらどこか行ってたし、いつもヤンくんといる屋上に鼻歌歌いながら向かう鳳さんを見たっていう話も聞くんだよ。そんなの...ねぇ。」
「いやいや、それだけでオレと鈴がどうこうってのは....。」
相川の言葉に鷹月と谷本はうんうんと頷いているが納得いかない。
そんなことで交際関係にあるとか言われたらたまったもんじゃない。
それにアイツの好きな人を知ってるし、オレとどうこうってのは流石に可哀想だ。
「カズキくんはわかってないなぁ。女子高生の恋バナ好きさ加減を見誤ったね。」
心底呆れた感じで肩をすくめ、すごいドヤ顔でそんなことを谷本は抜かしてくる。
コイツ.....っ!
少しカチンとしたが一呼吸置いて落ち着く。
「あのなぁ、アイツとはそういう関係じゃないからな。恋愛相談受けたりするような気の知れた友人だよ。」
そう言ってやると谷本は唇を尖らせる。
「なーんだ、つまんないの。」
デコピンでもかましてやろうか本気で悩むが、時間になったらしく放送がかかる。
『これよりクラス代表戦、1年生の部を始めます!第一試合は大注目の男性操縦者を擁する1組対中国から送り込まれてきた代表候補生を擁する2組の試合です。それでは両クラスの代表は入場してください。』
ちっ、命拾いしたな。
そんなことを考えながらアリーナに目を向けると両側からISが1機ずつ飛び出してくる。
それに合わせて完成がアリーナ中から響き渡る。
ついに試合が始まる。
♢
空に浮かぶ2人。
どちらも第三世代の最新鋭のIS。
特徴的な2振りの青龍刀「双天牙月」を持ち2機の浮遊ユニットを装備して堂々たる佇まいでいる鈴。
それに対するは白くそして唯一の武装である雪片弐型持つ一夏。
両者は互いに向き合い不敵な笑みを浮かべる。
「逃げずに来たのね、一夏。」
「誰が逃げるかよ。お前こそ逃げなくていいのか?」
「威勢だけはいいわね。」
「言ってろよ。」
お互いに笑みを浮かべたまま挑発し合う2人に緊張は全く見られなかった。
そこに放送がかかる。
『それでは両者構えて下さい!』
放送に従い互いに構える。
その表情は真剣そのもの。
『それでは!第一試合、開始ぃ‼︎ 』
開始の合図を受け先んじて動いたのは鈴だ。
「はぁあああああああっ!」
双天牙月を一気に振り下ろしとにかく攻め続ける。
一夏の駆る白式の最大の武器である零落白夜は一撃必殺の技である。
一夏は乗って間もないとはいえ油断ならない相手であると鈴は判断しており、下手に隙を見せ零落白夜を受ければ負ける可能性があると考えた。
そして彼女が至った考えというのは"攻撃の隙すら与えなければいい"というものだった。
「くっ⁉︎ 」
一夏は凄まじい勢いの攻勢を受け一先ず距離を置くべくなんとか弾き飛ばして後ろへ下がる。
「どうしたの一夏?さっきまでの調子はどこにいったのかしら?」
ニヤリと笑みを浮かべながら一夏を煽る。
しかし負けじと一夏も不敵な笑みを浮かべる。
「鈴ががっつき過ぎるからびっくりしただけだ。ここからだよ。」
「あらそっ!」
またしても先に動いたのは鈴だ。
一夏は鈴の攻撃を避けるでも受けに行くでもなく待った。
少し訝しむも鈴は攻撃をするべく双天牙月を振るう。
すると最初に振り下ろした右の刃を雪片弐型で受けそのまま体をずらし逃された。
一夏のことだから正面から受けると思っていただけにそのままの勢いで体勢を崩してしまう。
「なっ⁉︎ 」
「うおおおおおおお!」
そのまま鈴の背後から斬りかからんと零落白夜を発動させ上段から振り下ろす。
「とった!」
しかし鈴は双天牙月を振り下ろした勢いで前傾姿勢になった状態スラスターをふかし回避する。
「なっ⁉︎ 」
「そんな簡単にとれるわけないでしょ!」
鈴はそう叫ぶと両肩の浮遊ユニットを一夏へ向ける。
すると白式はロックオンアラートを吐き出す。
慌てて身を捩るも被弾し弾き飛ばされる。
「なんだっ⁉︎ 」
一夏は弾き飛ばされるもののすぐに体勢を立て直す。
直後、嫌な予感がしたため急いで回避行動に移る。
「いつからこの甲龍に遠距離装備がないと言ったのかしら?」
鈴のその言葉と共に何かが降り注ぐ。
そう感じた直後、また弾き飛ばされ今度は地面に叩きつけられる。
「うぐっ!」
何が起きたのかさっぱりわからず一夏は混乱に陥っていた。
ただ何か見えない攻撃を受けたことはわかったし、攻撃を受ける前に両肩にあるユニットが動いたのは見えたからあれが射撃用の武装であることは理解していた。
「(取り敢えず体勢を立て直さないと嬲り殺しだ。)」
一夏は取り敢えず白式の機動性の高さを利用しひたすら回避に専念する。
取り敢えずセシリアとの模擬戦の中でひたすら遠距離対策の訓練をしていたためどういう動きが狙い辛いかは体が覚えている。
「ちっ、ちょこまかと!」
一夏は勘の良さもありうまく避け続ける。
何より連射性能が高くない武装である事も一夏に有利に働いていた。
「見えないっ、攻撃でもっ、当たらなきゃ、なんともないぞ!」
笑みを浮かべ攻撃を回避しつつ鈴へ挑発する。
「避けてるだけじゃ勝てないわよっ!」
負けじと鈴も吠え攻撃を加える。
しかしその瞬間向きを変えて鈴へ向かって突貫する。
そのまま回避を続けると考えていただけに鈴は一瞬対処が遅れるも、一夏へと砲を指向して放つ。
一夏は砲が指向されてから一拍置いて体を捻る。
「なっ、避けた⁉︎ 」
「おらぁああああああ!」
避け切ると同時に瞬時加速で一気に距離を詰め零落白夜を起動させる。
零落白夜の作動を確認した鈴は慌てて双天牙月で受け流す。
「まだだっ!」
一夏はそのまま連続で斬りかかる。
一気に一夏が攻勢にでる。
鈴は不可視の砲弾である龍咆を土壇場で避けられた事により動揺したものの一旦防勢に努め動揺から立ち直っていた。
「やるな!鈴!」
「ったら前よ!こちとら代表候補生なんだからっ!」
そう叫ぶと振り下ろされた雪片弐型にタイミングを合わせ右の双天牙月で弾き返す。
そして左の双天牙月の柄のできる限りの端を持ち遠心力を乗せた強力な一撃を食らわせる。
そもそも重量のある武器なのでかなりの威力が出る。
「ぐっ!」
「近中距離が私の間合いよっ!懐に潜り込めばいいってもんでもないのよっ!」
まともに一撃を喰らい少し距離を取られた瞬間にさらに龍咆を叩き込まれ完全に引き離された。
「クソッ!」
思わず悪態をつきつつ一夏は逆転の一手を考えるべく頭をフル回転させていた。
鈴は龍咆を指向させつつも攻撃をやめ一夏に目をやる。
一夏もそれに気が付き雪片弐型を構えつつも鈴と目を合わせる。
「正直ここまで粘った挙句、ヒヤッとされるとは思わなかったわ。」
「お前こそ流石は代表候補生だな。骨が折れる。」
「ただサービスはここまでよ。アンタの力量はわかったし本気でいかせてもらうわよ。」
「来いよ。もっと早く本気出しとけばって後悔させてやるよ。」
鈴と一夏は改めて武器を構える。
互いに見つめ合い攻撃のタイミングを見計らう。
辺りを静寂が包み緊張が走る。
そして....。
♢
少し時間を遡って観客席。
「織斑くんすごい...。中国の代表候補生に喰らい付いてる。」
「もしかしてイケるんじゃない?」
1組の生徒たちは浮き足立っていた。
無理もないだろう。
成長していると聞いていても、クラス代表を決めるための決闘で全敗しているところしか知らないのだから。
「カズキくんはどう思う?」
不意に右に座っている相川に声をかけられた。
ふむ。
「確かに思ったより喰らい付いてるな。」
「思ったより高評価じゃん。」
「事実だからな。」
左側の谷本が茶々を入れてくるが流す。
「だが、やはり鈴が有利だな。」
「なんで?」
「見たところ近中距離が鈴の間合いなのに対して、一夏が近距離特化ということに変わりはないからだ。」
結局のところ手数に差があるのに加え経験に大きな差がある。
龍咆とやらを突破されたなんてことは今までも何度かあっただろうし対応は十分できるだろう。
セシリアは遠距離、せいぜい中距離だったために懐に飛び込めれば勝ち目はある。
だが鈴では懐に飛び込んでも普通に間合いであるし、一撃が重い青龍刀では弾かれてしまえらすぐに龍咆を叩き込まれ距離を稼がれてしまう。
そのため一撃を喰らわした後の追撃が容易であるのだ。
「じゃあ、やっぱり織斑くんが負けちゃうの?」
「さぁな、そいつは一夏次第だ。運が向けばもしかしたら....。」
すると谷本は胡散臭いものを見るような目でこちらを見てくる。
「.....なんだよ。」
「結局、運任せなのかって思ってね。神頼みでもして祈っとけばいいのかね。」
「運も実力のうちってのは結構マジだぜ。....だからその胡散臭げな目をやめろ。」
「ほーい。」なんて軽い返事をしながら前を向くも、態とらしく神に祈るように手を組んでいる。
ほんとコイツ一回デコピン叩き込んでやろうか。
そう思い軽く素振りをしながら前を向く。
「えっと....カズキくん?」
「どうした?」
オレの素振りを見てか少し怯えながら相川が恐る恐る話しかけてきた。
「いや、なんで、デコピンの素振りしてるのかなって....。」
「ああ、安心しろよ。相川がターゲットじゃないから。」
「ひょっとして癒子?」
「......正解。」
ヒソヒソと相川に話し、チラッと谷本の方を向くと呑気にコーラを啜っていた。
それを確認した相川は姿勢を正して合掌した。
すると合掌している相川に気が付いた谷本が茶化すように声をかけてきた。
「ちょっと清香、負けたと決まったわけじゃないんだから合掌するのは可哀想だよ!」
それでも合掌し続ける相川に首を傾げた。
そしてその数秒後、鈍い音が響いた。
「っ!........っ⁉︎ 」
額を抑え声にならない悲鳴を上げながら悶絶している谷本。
「「うわぁ....。」」
そしてそれを見て引いている相川と鷹月。
「まったく...。」と息を吐き溜飲を下していると耳につけていたインカムから連絡が入った。
『HQよりガルーダ1。付近で異常を検知、警戒されたし。』
両隣の2人にジェスチャーで無線が来たことを知らせ少し離れる。
異常ってなんだよ。
「HQ、異常とは何か。具体的に願う。」
あまりにも具体性のない連絡に戸惑いつつも具体的な情報を求める。
しかし返事は返ってこない。
なんだ?
『こちらHQ、すまない。こちらの勘違いかも知れない。』
「何やってんだよ...。」
思わず愚痴りながら席に戻る。
そして席に着く。
「なんだったの?」
相川は少し不安そうな顔で聞いてくる。
「大丈夫だ。あっちの勘違いらしい。」
「そうなんだ。よかった。」
ホッとした相川は脱力して椅子にもたれかかった。
それを見て少し笑みがこぼれた。
アリーナに目を向けると少し距離を取られてしまい膠着している2人がいた。
武器を構え、タイミングを測っているようだ。
その試合に注力し始めた。
ゾクっ!
『caution! caution! 』
オレの首筋に嫌な予感が迸ったと同時に、どこからという頭に置く言葉すらない警報がインカムから耳に鳴り響いた。
「伏せろっ!」
オレは気付けば声を上げ素早くISを展開し両手には追加装甲を構えて前へ出た。
刹那
爆音と共に閃光が迸る。
『こちらHQより全隊へ。我々は現在不明勢力より攻撃を受けており、基地は既に交戦状態である!各個に判断し交戦を開始せよ!なお、アリーナの警備部隊は以降ガルーダ1の指揮下に入れ!』
オレの耳には勘違いなどと抜かしやがったボケHQからのクソみたいな指令が聞こえていた。
同時にあちらこちらから聞こえる悲鳴がこのクソみたいな状況が現実であると教えてくれた。
「お前ら大丈夫かっ⁉︎ 」
オレは周りの奴らに声をかける。
「う、うん。カズキくんが守ってくれたし無事だよ。」
「清香に同じく。」
「私も大丈夫だよ。」
取り敢えず相川たちに怪我はないようで一安心だ。
だがその表情は不安と恐怖に塗り固められていた。
だが、一先ずオレは仕事をしなければ。
「ガルーダ1より、ガルーダ2並びにイージス隊へ。訓練通りだ。メインはガルーダ隊で対処しイージス隊は生徒を避難誘導。敵がいれば蹴散らせ。外にいる歩兵部隊はイージス隊を支援しろ。...何度も言うが訓練通りだ。いいか、訓練通りにやれ焦らず素早く確実にだ。」
『ガルーダ2了解。』
『イージスリーダー了解。』
『ロメオ1-1、コピー。』
『シエラ1-1、コピー。』
オレの飛ばした指示に対してレスポンスがあったことを確認すると周りにいる生徒を見る。
「聞いてくれ!これから君たちには避難してもらう。学園のISチームの避難誘導に従って避難してくれ!俺たちが必ず守り抜くから安心して落ち着いて避難してくれ!」
オレがそう言うと谷本が心配そうにこちらを見ていた。
「カズキくんは?」
「オレは仕事があるからな。」
そう言って笑顔を見せる。
視線を感じそちらを向くと鷹月も不安そうに見ている。
「大丈夫だよね...?」
「安心しろ。お前らのことは守り抜くし犯人をぶっ飛ばしてくるさ。」
「無事で戻ってきてね。買い物に付き合ってもらう約束なんだから。」
「任しとけ。約束は守るさ。」
今できる精一杯の笑顔を見せる。
少し安心したようで顔の険しさがマシになった。
するとオレの近くに別のISが降りてきた。
「イージス4です。あとは任せてください。」
「ああ。あとを頼む。」
オレはそういい緊急時にアリーナ内に侵入するためのルートへと移動を始めた。、
背後からは頑張れといった声が聞こえてきたため片手を上げて返事をする。
さて。
「どうしてくれようかクソッタレ共。平和に生きてるやつな顔をああも曇らせやがったんだ、タダじゃ済まさんぞ。」
オレは怒気を迸らせながら足を早めるのだった。
さぁ、ついにクラス代表戦への乱入事件が起きましたね。
次回にHQで何があったのか、ヤンはどうしたのかなど書いていくつもりです。
ホントにお気に入りに登録が増えたりっていうのは喜ばしいことです。
急ぎ目で200記念の話書き上げなきゃ(使命感
まぁ、番外編まとめみたいな感じで本編から脱線した内容を書いていこうと思います。
なお募集している要望は今のところ0っていうね。
用語解説
HQ
要するに本部のことでここではIS学園駐留部隊の司令部を指しています。
イージス隊
学園のISチームのこと。防衛がメインのためこの名称。、
ロメオ1-1とシエラ1-1
1-1は第一分隊隊長つまりは小隊長を指しています。ロメオは第一小隊、シエラは第二小隊でアリーナの外で警備を行なっている歩兵部隊です。