ソラを駆ける衛士   作:タリズマン

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土日投稿の有言実行じゃオラァ!



第三十一話

時間は襲撃が始まる前に遡る。

IS学園警備隊の司令部ではいつにも増して警戒を強化していた。

当直担当士官はリカルド少佐であった。

 

「そろそろ試合が始まってる頃か。」

 

「観戦でもしたいんですか?」

 

コーヒーを片手に時計を見てつぶやくと、近くで聞いていた通信士が素早く茶々を入れる。

 

「お前は気にならんのか?オレは是非ともビール片手にトトカルチョにでも興じたいものだが。」

 

「学生の試合で賭けですか...中々楽しそうですね。」

 

戯けた様子で話すリカルドになんだかんだと同調する通信士。

それを見て周りは少し呆れつつも耳を傾けていた。

この2人が当直で入るときは気を楽にして仕事ができるから気に入ってる兵も多いのだ。

 

「そういえばセンドウ大尉は結構警戒してるみたいですけど少佐はどう思います?」

 

「そうだな...。偉そうなことは言えんがアイツからは実戦を経たものからしか感じない凄みがあった。米軍に所属してた頃から実戦を経験していたのだろう。そんな奴がああも真面目に言うということはそれだけ信憑性があるものだ。」

 

通信士はリカルドの返しに驚いた様子だった。

それと同時に少し怪訝な顔でもあった。

 

「なんだ?」

 

「それは結局センドウ大尉の勘では?第一ISを多数保有していて、かつ国連軍も駐屯している上、攻撃するには日本の領域を突破する必要があるんですよ。攻撃なんて困難では?」

 

IS学園は東京湾にある上、近くには世界有数の船舶の航行数を誇る浦賀航路があるのだ。

加えて列強でもある日本の首都の目と鼻の先に位置する学園が攻撃を受けるというのは考えにくいというのは確かにそうだろう。

 

「お前の言ってることはわかる。」

 

「それならっ!」

 

「だがな。それならば世界有数の大国であるアメリカはなぜ同時多発テロを受けた。」

 

そう世界で一番の軍事力を持つ大国であるアメリカも第二の都市への大規模なテロ攻撃を受けている過去がある。

 

「加えて、この国の防衛体勢は異質だ。その状況で何もあり得ないとは言い切れるはずがない。それにだ、戦場で培われた勘というものは笑えんぞ。」

 

「....。」

 

リカルドの言葉に通信士は黙るしかなく、何も起こらないだろうという油断が生じていた司令部には緊張感が戻ってきた。

すると海底に敷設されたソナーを担当していたソナー手が何かに気がついた。

 

「...? 」

 

それを目ざとく見つけたリカルドはソナー手の席へと向かい何があったか尋ねた。

 

「ニンブル伍長。どうかしたか。」

 

「いえ、潜水艦の推進音と思われるものを検知しました。」

 

「なに?」

 

浦賀水道や東京湾では浮上航行が義務付けられているはず米軍や自衛隊とは考えにくい。

まさか....?

 

「通信士!至急横須賀の自衛隊、米軍の両司令部に潜水艦の所在を確認しろ!」

 

「了解!」

 

「一応警備各隊に警告を投げておけ。グリーヴァス中佐にも連絡しろ!」

 

速やかに各部署に連絡を取る。

なぜ東京湾に潜水艦の侵入を許しているのかはわからんが、敵潜であれば大問題だ。

 

「HQよりガルーダ1。付近で異常を検知、警戒されたし。」

 

慌ててガルーダに連絡を入れている通信士官は、我が軍の人材不足の象徴とも言える新米だ。

初任務がこんなことになって不安ではあるが仕方ない。

そう横目で眺めているとソナー手が声を上げた。

 

「これは....注水音?ミサイルか?」

 

「どうした。」

 

「注水音と思わしき音を探知。」

 

「ちっ。防空隊へ通達、対空戦闘用意!ただし指示があるまで待機。」

 

司令官の許可がないと打てない上にここは東京湾だ。

むやみに発砲などできない。

続いて米軍、自衛隊の両司令部に問い合わせていた通信士から報告が上がる。

 

「両司令部に確認取れました。東京湾を潜航中の艦艇はなし!」

 

「やはりかっ!防衛省と外務省、それと国交省へ直ぐにこの状況を報告しろ!あとマーチスに連絡して船舶の退避を要請!急げっ!」

 

リカルドは声を張り上げ指示を出す。

最悪だ!

まさか海から、それも潜水艦が来るとは想定していない。

巡航ミサイルを持ってるならもっと遠距離から撃てばいいのにわざわざここまで接近する敵の意図が読めない。

上陸して白兵戦?

それなら注水音の意味がわからん。

必死に頭を回しているとグリーヴァス中佐が司令部へ入ってきた。

 

「状況は聞いていた。以降は私が指揮を取る。リカルド少佐はサポートをしてくれ、特にそこの新米とかのな。」

 

「はっ。」

 

グリーヴァス中佐に引き継ぎ新米の方へとホーランドが向かう。

それと同時にソナー手の悲鳴のような声が上がる。

 

「敵艦!何かを射出!」

 

「レーダー探知!数は3!」

 

「何!?」

 

ソナー手に続いてレーダー手が報告を上げる。

グリーヴァス中佐は何かを決心したように頷くとすぐに指示を出した。

 

「全部隊対空戦闘始めっ!タンゴは敵の上陸に備え対空戦闘には参加するな!」

 

「なっ!しかし海上の船舶はっ」

 

「問答などしてる暇はないっ!すぐに命令しろ!」

 

「っ...了解!」

 

司令部内は混乱に陥ってはいたがグリーヴァス中佐の命令をとにかく実行した。

この状況はまさしく国連軍の練度の低さが露呈していた。

 

「おい、ガルーダには伝えたんだよな。」

 

リカルドは確認のために新米の通信士に尋ねる。

すると彼は誤魔化すように「えっと...」などと繰り返した。

 

「まさかっ!馬鹿野郎っ!すぐにガルーダに!」

 

そう叫んだ時には遅かった。

 

「敵機別れました!基地に一機残し他2機はアリーナにっ!」

 

「まずいっ!直ぐにガルーダに伝えろっ!」

 

中佐の叫びも重なり更なる混乱に叩き落とされてしまった新米は完全に固まってしまっていた。

 

「よこせっ!」

 

直ぐに新米からヘッドセットを奪い取り連絡しようした瞬間、轟音が聞こえた。

 

「ア、アリーナに直撃弾....。」

 

「クソッタレ!」

 

リカルドは完全に固まった新米を殴ってどかし席に着いた。

 

「ここからはオレが担当する!新米っ!貴様は解析の手伝いでもしとけっ!」

 

新米に向けてせめて最後に指示を渡しガルーダを含た全部隊に連絡を取る。

 

「こちらHQより全隊へ。我々は現在不明勢力より攻撃を受けており、基地は既に交戦状態である!各個に判断し交戦を開始せよ!なお、アリーナの警備部隊は以降ガルーダ1の指揮下に入れ!」

 

命令を出したその時、外では轟音と共にSAMが吹き飛んだ。

我が軍の抗戦能力が失われるまでどれぐらい残されているのかは疑問だがやれる限りやってしまわないと死んでも死にきれん。

そう考えながら戦闘空域の情報を引っ張り出して渡すべき情報のピックアップを始めるのだった。

 

 

アリーナのカズキとは反対側にいたヤンは本音と簪に挟まれながら観戦していた。

 

「大丈夫かい?」

 

僕は耳に鳴り響いた警告音に反応してなんとか追加装甲を展開した。

取り敢えず両隣の2人に確認する。

 

「うん。大丈夫。ヤンが守ってくれたし。」

 

「大丈夫だよ〜。」

 

2人が無事でホッと一安心する。

しかし状況がわからない。

アリーナに展開されているシールドを抜いてきた以上敵の攻撃は凄まじい威力であることと、敵に攻撃を受けていることしかわからない。

辺りを見渡し死傷者がいないかを確認し、パッと見た限りでは軽傷者はいても重篤なものは誰もいなかった。

状況を確認すべく連絡を取ろうとしたところでカズキから連絡が入った。

 

『ガルーダ1より、ガルーダ2並びにイージス隊へ。訓練通りだ。メインはガルーダ隊で対処しイージス隊は生徒を避難誘導。敵がいれば蹴散らせ。外にいる歩兵部隊はイージス隊を支援しろ。...何度も言うが訓練通りだ。いいか、訓練通りにやれ焦らず素早く確実にだ。』

 

「ガルーダ2了解。」

 

指示を受け返答した。

ただ久々の実戦でもあり緊張が拭えない。

手のひらを閉じては開き感覚を確認して自分を落ち着かせ意識を兵士のものに切り替える。

 

「ふぅ。」

 

軽く息を吐き周りを見る。

すると雰囲気が変わった僕に驚いてるのかみんな僕をマジマジと見ていた。

 

「すぐにISを装備した教師がくるはずだから指示に従って避難する様に!焦って友達を踏みつけるなんてことがないように落ち着いて行動すること!いいね!」

 

「「「「「は、はいっ!」」」」」

 

僕としてはすぐに現場に向かわなければならないから取り敢えず最低限の指示を出す。

多少の混乱は見られるものの帰ってきた返事に満足する。

大丈夫だと判断して身を翻してシールドの内側へと向かうべく身を翻すと裾を掴まれた。

 

「簪、本音?どうかしたのかい?」

 

裾を掴んでいる2人に声をかけると不安げな表情を浮かべながらこちらを見ていた。

 

「やっくんは大丈夫だよね。」

 

「大丈夫さ。僕はこれでもエースパイロットだからね、2人は避難して戦いが終わったときに笑顔で僕を迎えてほしい。その為に僕は必ず戻ってくるから。」

 

安心させるように腕の装備を一旦しまって2人の手を取って話す。

 

「......わかった。」

 

「ヤン。怪我しないでとまでは言わないけど無事に戻ってきてね。心配させるほどの怪我なんてしてきたら高いスイーツ奢ってもらうからね。」

 

本音は頬をほんのり染めながら少し間が開いたものの返事をしてくれた。

簪も頬がほんのりと赤いが優しげな笑みを浮かべながらちょっぴり恐ろしい脅し文句をつけてきた。

 

「それは五体満足で戻ってこないとね。....それじゃ行ってくるよ。」

 

簪の言葉には思わず苦笑いが出たが今度こそ身を翻し僕は戦場へと向かった。

 

 

2人がこれからが本番だと言わんばかりに緊張が張り詰め向き合っていた中、ちょうど鈴と一夏の間に一筋のビームが降ってきた。

爆風と衝撃波で軽く飛ばされ、慌てて体勢を立て直し上を見上げるとそこには黒く丸みを帯びた人型のモノが浮かんでいた。

 

「何よ....アレ.....。」

 

鈴は思わずそう溢しながら浮かんでいる機体を見上げる。

するとコチラへ白い機体が近づいてきた。

 

「鈴っ!無事かっ!? 」

 

「一夏っ!アンタこそ無事だったのね。」

 

「まぁな。....それでアレはなんだよ?」

 

先ほどの爆発から立て直してコチラへときた一夏は鈴の隣に立ち同じく敵と思われる黒い機体を見上げた。

 

「アタシにもわからないけど敵であることには違いないでしょ。」

 

「だな。」

 

2人はそう言うと武器を構え眼前の"敵"を見据えた。

 

『織斑くん!凰さん!無事ですか⁉︎ 応答してください!』

 

しかしそこで山田先生から無線が入った。

 

「山田先生。どうしましたか?」

 

『今そちらに対応チームが向かってます!すぐに退避してください!』

 

一夏と鈴は互いに顔を見合わせて頷く。

 

「凰です。すみません山田先生、それはできません。」

 

「アイツのあの攻撃は天井のシールドを抜いてきた。ってことは観客席にアレを撃たれればどれだけの被害が出るかわかりません。だから足止めぐらいはします。」

 

『そんなっ....。ちょっと先輩⁉︎ 『聞こえるか2人とも』』

 

山田先生を2人で説得しようとしていると横から千冬がマイクを奪ったようだ。

 

『すまんが時間稼ぎをしてくれ。無理だけはするなよ。』

 

「「はいっ!」」

 

"あの"千冬が任してくれたという嬉しさから2人は大きな声で返事をした。

鈴は返事をした後に横目で一夏を見て挑発めいた笑みを浮かべる。

 

「一夏、逃げるなら今のうちよ。」

 

「冗談、お前こそ逃げなくていいのかよ?」

 

「アンタ1人に任せて安心できないし、アタシもやるしかないでしょ。」

 

「言ったな。」

 

互いに笑みを浮かべ改めて敵を見据えた。

 

「オレが先行するから合わせてくれ。」

 

「アタシが合わせるの?」

 

「鈴の方がISの扱いは上だろ。それに鈴だから任せれるんだよ。」

 

一夏に真剣な表情でそう言われ鈴は思わず顔を赤くした。

 

「......アタシに任せなさい!だからアンタは好きなように戦いなさい!」

 

「おう!」

 

そう言うと2人は眼前の敵に飛び込んでいった。

 

「うおおおおおおおおおおおっ!」

 

まず一夏が様子見を兼ねて上段から斬りかかる。

敵はそれを右腕から伸びてきた剣で受け止め左腕の下部に取り付けられているバルカンを向けた。

が、それを見た鈴が左から双天牙月で斬りかかるも肩に取り付けられたパーツが動くとコチラへと照準を向けてきた為衝撃砲で吹き飛ばす。

 

「色々出てくるわね。」

 

「ああ。ただ、動き自体はそこまで良くはないな。」

 

そう話していると完全にコチラをロックオンしたらしくコチラへバルカンを乱射しながら突っ込んできた。

 

「あぶねぇ!」

 

慌てて左右に分かれそのまま左右から攻撃を仕掛ける。

左右からタイミングを合わせ斬りかかると今度は左腕からも剣が伸びどちらも受け止められる。

しかしなんとなく予想していたことでもあった為双天牙月を双剣の状態にしていた鈴はまだ残した方で斬りかかる。

 

その瞬間ロックオンアラートが鈴の耳に鳴り響く。

 

「えっ?」

 

「鈴!」

 

上からあのビームが視界いっぱいに広がる。

 

「(油断したな....)」

 

1機しかいないと思い込んで2機目を見逃すなんて。

避け切れないと悟った鈴は自分が油断してこんなことになったのだと少し後悔し目を閉じてくるであろう衝撃に備えた。

 

しかし来たのは上からの衝撃ではなく横からの衝撃だった。

 

「あれ?」

 

なんで何ともないのかと目を開けると視界いっぱいにあったのはカズキの顔だった。

 

「無事か、鈴。」

 

「え、ええ。アンタのおかげで....っていうかいつまで抱えてるのよ!さっさと下しなさい!」

 

無事かと尋ねられ答えるも自分が抱き抱えられていることに気づいた鈴は暴れる。

「おお、すまんすまん。」と下ろすと浮かべていた柔和な笑みは消え眼光を鋭くさせあの敵を睨んでいた。

 

「チッ、クソが....。お前らは下がってろ。後はオレらに任せろ。」

 

普段のおふざけでやるような舌打ちではなく心の底から憎々しく思っているような舌打ちをし、普段からは考えられないような低い声で短い罵声を漏らした。

それに驚いて少し固まっていたが、下がってろという言葉に反発する。

 

「下がってろって2機いるのよっ!それにここまで戦ったんだから最後まで戦うわよ!」

 

カズキの目を見ながらそう言う。

 

「いや、スタークの言う通りだ君達は下がれ。」

 

声のした方を見るとそこにはISを装備したヤンがいた。

思わず睨んでしまうが、その様子を見ていたカズキが口を開く。

 

「まぁいい。好きにしろ。」

 

「スターク⁉︎ いいのかいっ⁉︎ 」

 

「こうなった以上コイツは引かねえよ。そういう女だ。....それに。」

 

カズキは一旦言葉を切る長刀を抜き敵を見据える。

 

「奴さんはいい加減我慢の限界みたいだ。」

 

片方の敵と一夏は必死に斬り結んでおりもう片方はコチラを警戒していたようでバルカンと肩のレールガンを向けていた。

再び耳に響くロックオンアラート。

 

3人は一斉に散開する。

 

今までいた場所にレールガンが叩き込まれバルカンが乱射された。

 

「シャムロック!今ぶっ放してきた早漏野郎をアルファ、一夏とやり合ってるやつをベータと呼称する!」

 

「OK!それなら先にベータを叩こう。」

 

「さっさと片付けて一夏を助けるぞ。」

 

「ウィルコ。」

 

2人は本当に鈴のことを意に介さずに敵に向かって行った。

散開した鈴は真っ直ぐにベータに向かい一夏の援護に向かった。

 

「そんな感じならアタシの好きにやらせてもらうわ!」




前書きで少し荒ぶってしまいました。
まぁご覧の通り今回もあまり話が進みません。
次で多分敵を堕とせるかな?
まぁそろそろ鈴のパートが終わり一旦閑話を挟んで2人の転校生の話に移ります。

解説
マーチスとは
緊急で連絡を入れる際にリカルド少佐がマーチスというところに連絡するように指示を出しています。このマーチスは正式名称をMARINE TRAFFIC INFORMATION SERVICEと言い頭文字をとりMARTISと呼ばれています。これは航行管制を行う機関で空港の管制塔の海バージョンと考えてもらえればわかりやすいと思います。
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