ソラを駆ける衛士   作:タリズマン

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乗船しておよそ1週間になりましたが執筆できる隙間時間に気分転換も兼ねて書き上げました!
おかしな点がひょっとするとあるかもしれませんが楽しんで頂けると幸いです。




第三十四話

オレが目覚めた翌日、襲撃後の被害や事後処理に関してオレにつけてもらった従卒の稲山伍長から報告を受けた。

被害としては

・SAMやAAgun(対空砲)といった対空火器は壊滅。

・戦死18、重症22、軽傷46という人的被害を受けた。

・その他、航空機や車両にいくつかの被害。

・格納庫は壊滅。

である。

そして今のところ決まっている対処は

・基地の拡充と駐留部隊の増強。

・対潜装備の拡充

・司令部施設を地下へ移転

・情報流出の可能性があるため中央より監察官の派遣

・IS部隊の増員

などである。

なおグリーヴァス中佐は今回の襲撃に関する責任について軍法会議にかけられており、国連軍アジア・太平洋方面軍の司令部の置かれているハワイに滞在している。

また、IS部隊の増員に関しては国連軍の所属では足りないので各国から募り2人ほど増員し4人部隊の一個小隊とするようだ。

そしてオレに関してはアリーナ内の警備に関しては一任されてたとはいえ、他国の洋上で無許可で敵機を爆破したことの責を問われ謹慎処分が命じられた。

とはいえどのみち入院してる身、実質的にはお咎めなしと言ったところだろう。

 

続いて医師によって傷に関する説明を受けた。

絶対防御のおかげで死にはしてないが怪我は大小多々あるそうだ。

まず左腕、まぁそれはそれは綺麗に折れてるらしく、固定しとけば結構早く治るそうだ。

そして肋骨は2本折れていて危うく肺に突き刺さるところだったらしい。

刺さるまではいかなかったものの肺の表面を結構しっかり傷つけてしまったらしく止血と縫合のために軽く開いたそうだ。

そして自爆時に誘爆した突撃砲のパーツが脇腹に突き刺さっていたらしくそれが一番重症そうだ。

全て合わせて全治1ヶ月、1週間もすれば登校を許してくれるらしくしばらく暇となる。

どのみち謹慎中の身ではあるのだが。

 

取り敢えずしばらくは強制的に休暇となるようだ。

 

 

目を覚ましてからというもの、連日色んな奴らが見舞いに訪れた。

途中からCPを務めてくれたリカルド少佐をはじめとした基地の連中や共に戦ったシエラの連中、他にもクラスメイトたちが見舞いに訪れ騒がしくも穏やかな時間が流れた。

 

そして現在の時刻は深夜。

オレは束から事前に知らされた時間に起きている。

なぜって?

 

『ほんっとに!無茶はしないでねってアレほど言ったでしょ!』

 

この話をどこからか知った束がそれはもう大層激怒されたようでお叱りを受けるためである。

 

「いや、無茶はしたが仕方なくでな...」

 

『かーくんは絶対こーいう無茶を私の知らないところでしれっとしてくるんだからっ!前もそうだったし!』

 

必死に言い訳をするも問答無用で突っ込まれ前例を出された以上言い返すことはできず言葉に詰まる。

米軍にいた頃も少々無茶をして大怪我を負ったことがありワンワン泣かれてしまい"美女を泣かした羨ま...もといクソ野郎"というとてつもなく不名誉な噂が立ってしまったことがあったのだ。

まぁ、それは置いといて。

画面の向こうの束はあの時のように泣いてはいないがかなり本気で怒ってるようで怒気が伝わってくる。

 

『お父様...。』

 

そして何より心苦しいのは束の隣で涙目でこちらを見ているクロエの存在だった。

娘には勝てないよ....。

 

『くーちゃんだって本当に心配してたしディーくんとかティーちゃんは少し不安そうにするぐらいだったけど、フーちゃんとかシーちゃんの普段しっかりモノの2人がかなり動揺して大変だったんだからねっ!』

 

ディーダやティファはお気楽そうにカズキだから兄さんだからどーせ無事という感じのノリだったろうが、ファナやシャクティがしょぼくれてる様を容易に想像できたのでさらに胸が痛くなった。

 

「....すまん。」

 

もうここまでくればオレにできるのは頭を下げ心配をかけた事を素直に謝るしかなかった。

 

『まったく....。まぁ、そうやって誰かのためにすぐに無茶をするから私やくーちゃんも助けて貰えたんだけどね...。』

 

素直に謝り画面に視線を戻すとため息を吐きながらも少し寂しげな目をした束がいた。

 

「すまんな。いつも心配かけて。」

 

オレがそう言うと束は目をぱちくりさせていた。

 

『....かーくんが素直にそんな事を言うなんて明日は槍でも降るのかな?』

 

さっきまでの寂しげな表情はどこに行ったのか少しニヤつきながらそんなことを言ってきた。

人が素直に謝ったと言うのにコイツはっ....。

 

『取り敢えず今回は許してあげる。ただし、無理はしないでね。皆心配するんだから。』

 

着々とオレの帰る場所を作り上げて生きる理由を作り上げる様に思わず苦笑いが溢れる。

人に散々言うがオレのように怪我しないだけでコイツもそうとな無茶をする奴だ。

実際、身元不明な奴を逃亡している身でありながら拾って看病までするお人好しなのだから。

 

『むっ、何さその顔は。』

 

「なんでもねえよ。ま、できる限り気をつけるさ。」

 

『その言い方は絶対無茶するやつじゃないか!』

 

まったくと呆れたように言っているがコイツも心配はしているが半ばオレの無茶を止めることは諦めているだろう。

すると、不意に思い出したようにとんでもない爆弾を落とした。

 

『あ、そうそう。』

 

「ん?」

 

『くーちゃんIS学園に入学するから。』

 

「は?」

 

コイツは今なんて言った?

クロエを学校に入れる?

 

「ああ。アメリカに新しく学園設立の話でもあんのか。」

 

こっちに来る訳がないと思考を回しなんとか答えを出す。

 

『え?そんな話ある訳ないじゃん。日本の学園だよ。』

 

しかし帰ってきたのはあっさりとした否定。

思わず思考が止まり固まってしまった。

 

『おーい。大丈夫〜?そんな口をポカンと開けてさ。』

 

コイツは本当に何を言ってるんだ?

 

「待て待て!そんなのフリーガンのおっさんが許したのか⁉︎ 」

 

『確認とったに決まってるでしょ。かーくんの監視役って言ったら普通にGOサイン出してくれたよ。』

 

何やってんだあのおっさん⁉︎

一応重要人物だぞっ!

それにこっちだとCIAの目も届ききらないかだろ!

 

「....決定事項?」

 

恐る恐る確認を取ると満面の笑みで答える。

 

『当たり前じゃん!』

 

思わずこめかみを抑えため息を零す。

すると画面の隅に映っていたクロエが悲しげな表情を浮かべていた。

 

『....迷惑、ですよね。』

 

少し涙ぐんでいる様子であまりにも悲しげな声でそう言うクロエに慌てる。

 

「そんな訳ないだろっ!娘と一緒に入れるのは嬉しいさ。でも心配でな。」

 

『それなら普段から私達に心配をかけてるかーくんは文句言えないよね!第一無茶するかーくんの監視も兼ねてるんだから文句は言わせないよ!』

 

「うぐっ.....」

 

思わず言葉に詰まる。

無理....か....。

 

「....わかったよ。降参だ。こっちにいるならオレが守れば良いしな。」

 

オレがそう言うとクロエは表情緩め顔を綻ばせる。

 

「ありがとうございます!お父様!」

 

やれやれ。

本当に娘には敵わないもんだ。

 

 

「娘ぇ⁉︎ 」

 

病室で素っ頓狂な声を上げるのは楯無である。

目の前で愕然とし大声を上げるもんだから医務室の先生が顔を覗かせてきており、楯無は開く平謝りしている。

状況としては急に入学することになった少女の姓がオレと同じだから妹なのかと確かめにきた楯無に事情を話すや否やすぐにこんな有様だ。

 

「そんな驚くなよ。」

 

「驚くに決まってるでしょ!アナタまだ21なのにこんな大きな娘がいたらびっくりもするでしょ!」

 

せっかく妹を持つモノ同士話ができるかと思ったのに、なんてぶつくさ文句を言う楯無を宥める。

 

「色々と事情があんのさ。詳しくは言えんがな。」

 

「はぁ、通りで調べてもダミーとしか思えない経歴しか出てこないわけね。」

 

「そういうこった。詳しく調べんのは諦めな。」

 

どうやら多少調べてはいるらしいがクロエの事情はCIAだけではなくドイツの情報機関BNDも関わっており情報の規制はファナやディーダたちの比ではない。

そうそう調べがつくようなことではないだろう。

 

「はぁ、なんかカズキくんって山ほど爆弾抱えてそうね。」

 

「さて、な...。」

 

ボヤく楯無にオレはニヤリと口角を上げる。

 

「それはそうと、学園はどんな感じだ?」

 

オレがそう問いかけると楯無は再び大きなため息を溢した。

 

「国連軍とかカズキくんへの根も葉もない噂とか中傷が多いわね。」

 

「やっぱそうなるよな。」

 

「少なくとも風当たりは強いわ。」

 

あちらから見れば守ってくれた教員と自分の身すら守れなかった軍だからな。

こっちにヘイトが向くのはしょうがないだろう。

特に情報規制が敷かれほとんど情報が入ってこない学生にとっては。

 

「まったく、ままならんな。」

 

思わずニヒルな笑みをこぼしてしまう。

 

「カズキくん....。」

 

そんなオレを見て心配そうな声を上げる楯無。

 

「ま、嫌われ役は慣れてんだ。気にすることはねえよ。」

 

実際アッチで1001部隊の時なんてオレたちは戦線を支えていたという感謝をお上からはされたが、現場からは"死神"だの"周りの命を吸い取る悪霊"だの散々な言われようだったこともあり嫌われ役は慣れていた。

そう言うこともあり問題はないのだが楯無はそんな事情知らないし誤魔化しと受け取ったようで悔しそうに唇を噛み締めていた。

 

「年下だけど...先輩だし、会長なのに。」

 

「ホントに気にしなくて良いんだよ。いつも通り憎まれ口の一つぐらい叩いて見せろよ。」

 

「わぷっ」

 

楯無の頭に手を置きわざと頭をぐしゃぐしゃにしてやる。

 

「ちょっと、やめっ!やめなさいよっ!」

 

必死細い腕でなんとかオレの腕を引き剥がした楯無はオレに抗議をする。

 

「人が心配したらすぐこんな調子になって....私は心配してるんだからねっ!」

 

「それでいい。」

 

「え?」

 

「それぐらいオレに言えりゃ大丈夫だろ。それに、オレに対して暗い顔するお前なんてなんか気色悪いしな。」

 

「きしょっ⁉︎ ....アナタねぇ!」

 

コイツはこれでいい。

正直しょげてる様なんざ見たくない。

いつも通り場を引っ掻き回してニヤニヤするなり虚さんにしごかれとけ。

 

「ずいぶん楽しそうですね。」

 

ギャーギャーいつも通り騒ぎ出すと意識外から急に声がかかった。

とても冷ややかで聞き覚えのある声だ。

 

「あら?虚ちゃん、どうかした?」

 

冷静を装いながらその表情は明らかに焦っている様子の楯無。

やっべ、忘れてたとでも思ってるのだろう。

おおよそ、オレに確認することがあると言って出て行ってから中々帰ってこなかったか、医務室の先生が苦情でも入れてこっちに来たのだろう。

 

「どうかしたではありません。...確認したらすぐに戻るのではなかったのですか?」

 

「ええ。そろそろ帰るつもりだったの。じゃ、お大事にね。」

 

虚さんの言葉を聞くと早口で捲し立てさっさと帰ろうと踵を返し虚さんの横を通り出ていくもしっかり肩を掴まれた。

 

「誤魔化せてませんからね。仕事をしに出て行った上司の苦情を聞く身にもなってください。お仕事はたんまりありますのでさっさと帰りますよ。」

 

それではお大事にとコチラに声をかけると楯無を引きずりながらそそくさと帰って行った。

.....もう虚さんが楯無引きずって行くのが様式美みたいになったな。

 

 

退院の見込みが見えてきた頃、一夏が訪ねてきた。

 

「調子はどうだ?」

 

「ギプスはつけたままだがある程度くっ付いたらしくて様子を見て退院だそうだ。」

 

「そっか。これで一安心だな。」

 

一夏に退院が近づいていることを伝えると安心したようにホッと一息ついた。

そんなどこかありきたりな言葉で話を始めたがそこで会話は途絶える。

一夏はなんだかそわそわしてるし。

一体なんだ...?

 

「.....なんか他に聞きたいことでもあるんじゃないのか?」

 

思い切って一夏にそう尋ねた。

 

「よくわかったな。」

 

「そりゃいつもならガンガン話しかけてくるお前が何も話さずそわそわしてりゃなんかあるに決まってんだろ。」

 

オレがそう言うと少し気まずげに顔を俯かせると、おもむろに出入り口に向かい外を確認した後に戸を閉めた。

そしてコチラへ戻ってくると何かを決心したかのように頷くとコチラを見てきた。

その表情はどこまでも真剣だった。

 

「カズキって鈴と仲良いよな。」

 

「まぁ、色々と相談を受ける程度にはな。」

 

「そこで相談なんだけどさ。」

 

その言葉に鈴の想いが通じたのかと期待する。

 

「鈴ってひょっとしてオレのこと好きだったのかなって。」

 

ん?

好き"だった"?

 

「好きだったってのはどういうこった?そういうのは現在系じゃねえのか?」

 

「まぁ、普通はそうなんだけどさ。...正直オレって恋愛とかの好きってのがよくわからないんだ。」

 

その鈍感さから考えりゃそうだわな。

 

「それでもアイツなんか最近ソワソワしてるんだ。昔はオレに対してだったのが別のヤツに向けての様に感じるんだ。」

 

「......。」

 

オレは黙って一夏の話を聞く。

 

「それで、ふと思ったんだ。鈴はソイツに恋してるんじゃないかって。そこからひょっとして昔のアレはオレに対する好意だったんじゃないかってさ。」

 

そう話す一夏の表情は少し曇ってはいるがどこかスッキリしているようにも感じる。

 

「.....良いのかよ?」

 

「え?」

 

「ようやく気がつく事ができた恋の意味での"好き"なんだろ。」

 

オレと言葉にあー、と頭をかきながら天井を仰ぎ見る一夏。

 

「良いんだ。なんだか鈴は最初は確かに俺のことが"好き"だったんだろうけど、昔に戻りたいっていう執着...とでも言うのかな。なんだかそんな感じな気がするんだ。」

 

だからさ、と一夏は続ける。

 

「鈴は過去を多少まだ引きずってるかもしれないけど、先を見れたんだ。だから、良いんだよ。」

 

そう言って笑顔を見せた。

それはとても良い笑顔で綺麗な笑顔だった。

オレはふっと軽く笑う。

 

「なんで笑うんだよ。」

 

それを見た一夏は真面目なこと言ってんのに笑うなよと抗議してくる。

 

「いや、お前は良い男だなってさ。」

 

「い、いきなり何だよ。」

 

一夏は急に褒められて困惑しているが、コイツは本当に良い男だ。

ようやく見つけた一つの愛を相手の幸せを願って笑って見送れるやつなんてそういるものではない。

周りの女が惚れちまうのも何だかわかる気がする。

 

「というかコレはもう相談じゃなくて確認だろ。」

 

「それは否定できないな....。」

 

苦笑いしながら頰をかく一夏を見てると何だかおかしくなってきて思わず笑ってしまう。

するとアイツも何だか可笑しくなったのかつられたように笑った。

ひとしきり笑うと一夏は目の縁に浮かんだ涙を指で拭う。

 

「久しぶりにこんなに腹の内を話せたよ。」

 

「そりゃよかった。今後とも頼むぜ一夏。良い男を友人に持つのは中々に良いもんだからな。」

 

そう言葉を交わし互いに拳を向けてぶつけ合う。

 

「改めて今後とも頼むぜ一夏。」

 

「そっちこそな、カズキ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで鈴が好きになったであろうヤツってのは誰だ?」

 

「.........それは内緒だ。」

 

カズキの言葉に一夏はカズキって鈍感なんだな、と他人事のように考えていた。

そしてカズキは「あの鈴がねえ...。」などとほざきながら鈴の想い人について想いを馳せていた。

 




お前お前!

はい、てなわけで今回は入院中のカズキの話でした。
次回でようやく退院します。
そんでもってその次ぐらいには新章に突入しようと思います。
ドイツとフランスからあの2人がやってきます。
どうなることか....。

現状報告
まさか乗船してすぐに荒れた海を航海するハメになるとは思ってませんでした...。
いやぁ、ほんと辛かった....。
取り敢えず今は落ち着いてますし執筆はできそうな感じではありますが、今後どうなるかは相変わらずさっぱりわかりませんので投稿ペースは相変わらず不安定になると思います。
仕事に早く慣れなくては...。
まぁ、こんな感じで元気にゲロ吐きながら頑張ってますのでゆっくりお待ちいただけると嬉しい限りです。
では!
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