ソラを駆ける衛士   作:タリズマン

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第三十八話

SHRが終わると次は実技の授業だ。

デュノアの性別に関しては着替えてる時にでも確かめればいいだろう。

そう考えつつ一夏に話しかけているデュノアに声をかける。

 

「おいお前ら。次は実技だから更衣室に行くぞ。」

 

「あ。そうだったな。場所わかんないだろうし一緒にシャルル行こうぜ。」

 

「う、うん。」

 

近づいてるとやはり喉仏もないし肩幅も細く女にしか見えない。

一夏とは既に名前で呼び合うようにしてるらしい。

廊下に出て歩きながらオレも自己紹介をしておく。

 

「自己紹介が遅れたな。オレはカズキ・センドウ。カズキで結構だ。」

 

「ボクはヤン・ウォーカー。ヤンでいいよ。」

 

「よろしくねカズキ、ヤン。僕もシャルルでいいよ。」

 

平和的に挨拶を交わしながら更衣室に向かっていると多数の女子生徒が立ち塞がっていた。

しかもネクタイの色を見るに上級生ばかりだ。

 

「ふっふっふ。待ってたよ!」

「そこの守りたくなるイケメンを置いてきなさいっ!」

「ついでに一夏くんも!」

「歳上って良いよね!」

etc....

 

まぁ中々にふざけた発言をかましながら手をワキワキさせている。

長らく女子校の寮に居たせいで頭がやられてしまったようだ。

オレはそんな女子たちを横目に静かに窓を開ける。

 

「ヤン!」

 

「了解!」

 

オレは一夏を俵のように担ぎ窓から飛び出す。

ヤンも呆然としていたデュノアを横抱きにして窓から飛び出した。

 

「うわあぁああああああああああ!?」

「きゃああああああああああああ!?」

 

一夏の悲鳴と女みたいなデュノアの悲鳴が響き渡る。

着地の寸前でISを部分展開させてゆっくりと着地する。

 

「撒けたみたいだね。」

 

「そうだな。...おい一夏、いつまでも固まってないでさっさと行くぞ。」

 

降ろしてやってから心ここに在らずといった感じで固まっていた一夏に声をかけると我に帰った一夏から抗議の声が飛び出す。

 

「お前なぁ!やるならせめて一言軽い説明ぐらいしろよっ!」

 

「そんな時間なかったし声はかけたぞ。」

 

そんな抗議の声を無視してしれっとそう言うと諦めたようなため息を吐かれた。

シャルルの方を見ると完全に腰が抜けてるらしくヤンが横抱きで抱え直していた。

ちなみにシャルルはその状況が恥ずかしいようで顔を真っ赤に染めていた。

 

「おんぶでいいでしょ....。」

 

「腰抜けてる君が僕の背中にくっつけるのかい?」

 

「うっ.....。」

 

なんとか体勢を変えてもらおうと抵抗を試みたようだがアッサリと論破されシャルルは横抱きにされたまま更衣室に向かうこととなった。

ちなみにこの時の状態は薫子にばっちりと撮影されており後日ヤン×シャル本というものが出来上がる原因の一つなる。

結果としてヤンがキレることになるのだがそれはまた別のお話。

 

 

「遅いぞ!」

 

雲一つない晴天の中スパァーン!と乾いた出席簿の音が響き渡る。

あの後、無事更衣室に辿り着き着替えてきた訳だが。

オレとヤンとシャルルは制服の下にISスーツを着ており上を脱ぐだけでよかったのだが、一夏は馬鹿正直にISスーツに着替えていたために遅れブッ叩かれてるのだ。

もはや我がクラスの名物となっている一夏への出席簿アタック。

オレは悶絶している一夏を可哀想なものを見る目で見つめているのだが....。

 

「「「「「............。」」」」」

 

なんだかオレへ複数の視線が突き刺さってる気がする。

理由がわからん。

何かした覚えはないぞ?

 

......あっ、クロエか。

 

多分クロエの養父ってことで注目が集まってんのか。

なるほどな。

オレが突き刺さる視線に関して自分の中で結論づけていると慌てたような声がどこかから聞こえてきた。

 

「ああああっ!ど、どいてくださーいっ!」

 

「ん?....どわぁ⁉︎ 」

 

その声に反応し顔を上げるとすぐそこまでラファールをまとった真耶が近づいてきていた。

周りの悲鳴じみた声が耳を叩く。

慌てて不知火を展開させ受け止める。

しかし受け止めると言っても追加装甲を展開できたわけでもないしキャッチなどではなくて目を前に手を出し無理やり止めることしかできなかった。

 

「どわぁあああああああああああああっ!」

 

なんとか止まり一息つく。

 

「はぁはぁ。ああ、びっくりした。」

 

「......あの。」

 

流石にびっくりしたのもあって少し切れた息を整えているとふと受け止めた真耶から声がかかる。

 

「ん?どした?」

 

「手が....胸に....。」

 

「え?ああ、悪い。」

 

どうやら慌てて出したガッツリ力を入れていた右腕は普通に装甲をつかめていたのだが、まだ治り切ってない左腕は力を入れ切れておらず最初掴んでたところからズレていった。

結果として左手で真耶の胸に手がズレていっていたようだ。

謝って手を離す。

真耶は「あうぅ。」と顔を真っ赤にして涙目にしながら胸を押さえた。

 

ま、そもそも操縦ミスって突っ込んできた真耶が悪いし多少役得でもないとね。

にしてもオレの知ってる女の中でもトップクラスなだけはあるな、何がとは言わんが。

 

「カズキ....。君は.....。」

 

「そんな残念な奴に対する目を向けるな。オレは受け止めてやったんだ。役得ぐらい許せよ。」

 

「はうっ!」

 

ヤンからは残念な奴を見るような目で見られたのでそう言い返してやる。

ただ、その反論が原因か真耶の悲鳴が聞こえた。

....オレ知らね。

 

いや、現実逃避はやめよう。

この突き刺さってくる冷たい視線。

うーん、仇を見る目だね。

あ、そっかあ。(察し)

今のオレ女の胸揉んでケロッとして役得とか抜かしてるクソ野郎じゃん。

ははっ。

..............やっべ。

 

「ねぇ、カズキ。」

「センドウくん?」

 

ひえっ。

振り向くとそこにいたのは鈴と相川の2人。

しかしその目に映るのは殺意。

相川に関してはひたすらニコニコしてるけどただ恐怖しか感じない。

 

「なぁ、ヤン。」

 

「なんだい?」

 

「この状況から入れる保険って知ってる?」

 

「ボクの知る限りはないね。諦めな。」

 

「そっかあ。ははっ。」

 

最後にいたヤンに助けを求めるがバッサリと切り捨てられ、諦めたように乾いた笑い声を上げる。

色々と覚悟を決めたその時、グラウンドに手を叩く音が響く。

 

「授業中だ、その辺にしておけ。」

 

千冬の鶴の一声により渋々と言った感じで2人は引き下がる。

というかアレだなただでさえ襲撃時の一件でオレの評価は落ちてるのに今回ので更に落ちていきそうだな。

 

「休み時間にでもゆっくり話すといい。」

 

めのまえが まっくらに なった。

 

 

取り敢えず眼前の危機を脱した後、デモンストレーションとして鈴とセシリアが真耶と戦い、見事な当て馬とされ麻耶の実力に関して一年に知らしめられることとなった。

このデモンストレーションはもう一つの意味があったのだと思う。

それは量産機でも専用機に勝てる、ということを周知するということである。

要するに向上心のある学生に向けた発破をかけたのだろう。

 

そして現在は各専用機持ちが補助しつつISの搭乗訓練が行われている。

彼女たちは座学にて優秀な成績を収めてきてはいるが実機の数が限られていることもあり触れる機会は少ない。

せいぜい何回か乗ったことある程度の登場経験しかないだろう。

その為、乗り慣れた専用機持ちが補助を行うという訳だ。

 

そしてオレのところにいるのは1組と2組の混合メンバーであるのだが、やはり変な視線を感じる。

そして気遣いなのかは知らないがクロエもコチラにいる。

スゴイ目をキラキラさせながらこちらを見ている。

 

「さて、オレらも始めようか。」

 

そういうと今回割り振られたラファールを指差す。

 

「んじゃ、まずは軽いおさらいから。コイツはラファール。フランスのデュノア社が製造している第二世代機で優れた汎用性と操縦性が特徴だ。現状、欧州といえばコイツが主力になつている。それだけに初心者から玄人まで、様々な層から好まれてる機体だ。近接戦より射撃戦が得意な機体だから、戦い方を知りたいならラファールの改造機に乗ってるシャルルか射撃戦が得意なヤンにでも聞いてくれ。」

 

ラファールに関して軽い説明をしながらふと思い出したが、そういえばシャルルはデュノア社の社長であるアルベール・デュノアの子供か。

戸籍を遡って調べれば色々と情報が出てくるな。

そんなことを考えながらも最初に乗り込む奴を決める。

 

「最初に乗りたい奴はいるか?」

 

そう言うとピンと手が伸びた。

クロエだ。

 

「はいっ!乗りたいです!」

 

「そうか。じゃあクロエ、まずはお前からだ。」

 

オレが手招きをするとテテテっと小走りで駆け寄ってきた。

 

「それじゃまずは乗り込んでコイツを起動させてくれ。起動の仕方はアイツから聞いてるな?」

 

「はい、たば....お母様から教わっています。」

 

(((((お母様っ⁉︎ )))))

 

「アレは母ではないぞ。」

 

「そうでしたね。普段からディーダたちが母ちゃんと呼んでるのでつい...。」

 

一応のことがあるし束の名前は口に出さないように言い含めてある。

まだ慣れていないようで名前を呼びかけたが途中で修正が効いた。

束は母っぽくはないだろうに、せめてファナかアリスさんだろ。

アリスさんはCIAだからどちらかって言うと外様だけども。

....というか一瞬2組の連中がざわついた気がするのは気のせいか?

まぁ、いいか。

 

オレもよじ登って起動したのを確認したら離れて不知火を展開する。

 

「よし、それじゃ歩いてよう。コイツの動かし方は基本的に考えることだ。イメージすることでコイツは動く。まずは歩くことだけを考えろ。」

 

オレがそう言うと「歩く....歩く...。」と呟きながらラファールは一歩ずつ歩み出した。

 

「よし。次はジャンプしてみろ。」

 

「はいっ!」

 

クロエの返事と共にラファールは勢いよく飛び上がった。

あそこまで感情豊かに目を輝かせるクロエはなかなか見れない。

オレの不知火のハイパーセンサーを利用してしっかり録画してあるから後で束に送ってやろう。

 

「それじゃ、最後に少し飛んでみよう。オレが手を掴んでサポートしてやるから好きにしてみろ。」

 

「はい。」

 

クロエの駆るラファールは少しふらつきながらもジャンプなしで浮き上がる。

 

「よし。地面から離れてるぞ。高度制限はあるから達そうになったらオレが言うし最悪引っ張って降ろすから好きに飛んでみな。」

 

すると思っよりも勢いよくラファールは空を駆け出した。

クロエはとても嬉しそうに顔を綻ばせながら空を駆けた。

 

「これが!お父様の見ていた景色なのですね!」

 

「そうだ。もう少し経ったら後退するぞ。」

 

「はいっ!」

 

この後2分ほど空を楽しませた後地上へと降ろす。

少し着地が不安だったがオレのサポートもあって無事に降り立った。

 

「クロエちゃんスゴイ!」

「スゴイ綺麗に飛んでたよ!」

「さっすがあ!」

 

クロエがISを解除して降りるとオレの班のメンバーが駆け寄ってきてクロエはもみくちゃにされていた。

ただ、興奮でしゃがませるのを忘れていたようでラファールは綺麗に直立している。

クロエはそこそこ身体能力も高いので普通に飛び降りた。

....これは抱えて乗せるしかないか。

 

「はいはい。じゃ、次行くぞ。」

 

手を叩き次を促す。

次に乗るのは相川のようだ。

 

「よろしくね、センドウくん。」

 

「あいよ。....そんじゃちょいと失礼。」

 

「え?」

 

オレは相川に一言告げると横抱きにする。

 

「清香ズルイ!」

「そーだそーだ!」

「ひょっとしてそういうこと....?」

 

ブーブーと外野から講義が飛んでくる。

 

「しょうがないだろ。クロエが興奮のあまり立ったままラファールを解除しちゃったんだから。」

 

「あ。....すみませんお父様。」

 

「気にすんな。失敗は付きもんだ。同じ失敗を繰り返さなきゃいいのさ。」

 

「はい!」

 

オレが相川を横抱きにした理由を説明するとクロエは申し訳なさそうにしょんぼりしながら謝ってきた。

ま、どんなことでも失敗はあるものだからとフォローすると元気よく返事を返した。

ホントに元気な子に育ったなと思いつつ頭を撫でてやりたかったが生憎と相川を抱きかかえているため撫でることは断念した。

 

「悪い、待たせたな。」

 

「う、ううん。大丈夫だよ。」

 

そういえば相川を抱きかかえたまま話していた為、相川に軽く謝罪する。

大丈夫とは言うが顔は赤い。

やはりまだまだ女学生だし男に密着するという経験が少ないのだろうなと、思いつつ少し浮いてラファールに乗せる。

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫だよ!」

 

「ならいいが。よし、クロエが動かしたときのは見たな。」

 

「大事なのはイメージだよね!」

 

「そうだ。...よし早速歩いてみよう。」

 

相川に準備が出来たか確認して、先ほどのクロエのように始める。

そして相川の操るラファールもまた一歩ずつ歩み出したのだった。

 

 

「聞いたよね。」

 

「うん。確かにクロエちゃんが"お母様"って言ってた。」

 

「でも母じゃないって言ってたし他の人の名前も出てたよ。」

 

「兄弟でもいるのかな?」

 

「そうなると子供たちは母と認知しているけど母じゃないってコト⁉︎ 」

 

「何それ滅茶苦茶複雑じゃん....。」

 

2組に所属する5人の少女たちはカズキと転入生でありカズキを父様と呼ぶクロエの会話を聞き逃すまいと耳を研ぎ澄ましていたのだ。

ちなみにクロエは

 

「清香さん!頑張ってください!」

 

と、相川を応援するのに夢中でそんな様子に全く気がついていない。

全うしたと思ってるが故に養子であることを説明してないだなんて夢にも思っていないのだ。

そして1組の少女たちもまたクロエの"お父様"発言に大混乱に陥っていた。

クロエの発言から呆然として固まっていたのだ。

 

「クロエちゃん、お父様って言ってたよね?」

 

思い切ってそう切り出したのは長い黒髪と前髪を止める二つの髪留めが特徴の夜竹さゆか。

 

「言ってた。どう考えてもセンドウくんに向けてだったよね。」

 

そう返すのは赤い長髪を後ろでまとめている木山美琴。

 

「でも年齢が合わないんじゃない?」

 

そう冷静に分析する静寐。

この3人がこの場にいる1組のメンバーだ。

 

「これは詳しく調べた方が良さそうだね。」

 

「多分あっちの2組の子達も気付いてるはずだから情報をすり合わせに行こ。」

 

「それが良さそうだね。」

 

3人は2組と情報をすり合わせることに決め1組と2組の合同の話し合いが始まる。

そしてコレがカオスを加速させる原因となる。

 

というか早い話クロエ本人に聞けば全て解決した話なのだが、全員が見事な深読みを決め"痴情のもつれの末にできた複雑な事情がある"のではと邪推してしまい誰も当人に確認を取ろうとしなかったのだ。

 

無論、カズキは段々と加速するカオスに全く気がついていなかったのであった。

あまりにも哀れである。

 

この後カズキは更に増えた謎の視線に首を傾げながら役目を果たし実技を終え場面は昼休みへと移っていく。




いかがだったでしょうか。

最後の方にはしれっとオリキャラを登場させていますが物語の大筋にはほぼ関係ありませんのであしからず。
なお、相川さんはカズキにポロッと漏らしそうって事で最後の話は何も聞いてませんしクロエの事情も知ってる為何も混乱しておりません。
強いて言うなら横抱きにされて挙句滅茶苦茶顔近くて焦ったぐらいです。
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