ソラを駆ける衛士   作:タリズマン

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明けましておめでとうございます。

年明けなので初投稿です。


第三十九話

「それで、説明してもらえる?」

 

昼になり食堂で相川と昼食をとりうどんを啜ってるオレの前にラーメンを持って現れた。

なんのことを言ってるのかさっぱりわからず首を傾げながら咀嚼する。

相川は「あー」と何か思い当たる節があるようにコチラを見る。

 

「何キョトンとしてるのよ!この子のことよ!」

 

そう言って指をさされたのは鈴の隣に座ったクロエだった。

当のクロエは自分が話に上げられていることに全く気が付いておらずパスタを頬張っていた。

 

「何ってオレの娘だが。」

 

既にクロエが自己紹介で説明してるだろうに何を言ってるんだろう。

そう疑問に思いながら簡潔に答えてうどんを啜る。

前を見ると鈴の表情は軽い驚愕で固まっていた。

 

「......アンタ結婚してたの?」

 

「は?オレに嫁なんていないぞ。」

 

「じゃあこの子は何よ!」

 

生まれてこの方独身なんだがコイツは何を言ってるんだろう。

しかしながらなおも噛み付いてくる鈴を不思議に思いつつも答える。

 

「だから娘だが?」

 

「そうじゃなくて!」

 

これ以上何を言えと?

そう疑問に思い首を傾げていると相川が横からオラに耳打ちをしてきた。

 

「ねぇ、ひょっとして義理の娘ってこと知らないんじゃないの?」

 

「そんな馬鹿な。クロエにはそう説明するように念を押して....」

 

そう言いかけてふと実技の時と朝のクロエの様子を思い出す。

まさか....。

 

「なぁ、クロエ。」

 

「何ですか?」

 

「お前ちゃんと義理の娘って説明したか?」

 

「............あっ。」

 

これで全て察した。

コイツ、学園が楽しみすぎて完全に忘れてたな。

なんかとんでもない噂を立てられてそうだななどと他人事のように思考を巡らす。

 

アレ....ひょっとしてオレ詰んでる?

 

ちなみにオレが軽く絶望している正面では鈴が「え?義理?え?」とひたすら困惑していた。

 

「凰さん。」

 

「鈴でいいわよ。」

 

「じゃあ私も清香でいいよ。....それで多分クロエちゃんが言い忘れてたんだと思うけどクロエちゃんはセンドウくんの"義理"の娘だよ。」

 

オレが軽く絶望している間に相川が代わりに説明してくれた。

これであの好奇な視線の意味がわかった。

まずいまずい、まずすぎる。

この学園の連中は大の噂好きの集まり。

ということは既に各方面に誤情報が広まってる可能性が高い。

オレは思わず頭を抱えた。

 

「すみません、お父様。」

 

頭を抱えるオレにしょんぼりとしながらクロエが謝ってきた。

少々遠くて頭は撫でられないができる限りの笑顔を浮かべる。

 

「大丈夫だからあんま気にすんな。」

 

オレがそう言うとクロエは申し訳なさそうな表情ではあるものの表情が少し柔らかくなった。

そうは言ってもどうしたものか。

オレが言ったところで焼け石に水だろうし。

 

「アタシの早とちりもあったし何か手を貸せるなら貸すけど?」

 

今後の対応を考えていると鈴からありがたい言葉があった。

 

「それなら取り敢えず2組での火消しを頼めるか?」

 

「任せなさいっ!」

 

オレが2組ので誤解を解くように頼むと鈴は無い胸を張りながら元気よく答えてくれた。

思考を読まれたのか軽く睨まれたがふんっ、と軽く息を吹くと大人しくラーメンを食べ始めた。

鈴の隣座るクロエも「私も頑張ります」と息巻いていた。

 

2人の気持ちは嬉しいが....本当にどうしようか。

 

 

カズキが頭を悩ませている頃。

1組では....。

 

「ねぇ聞いた?あの噂。」

「なになに?」

「2組の転入生の子、センドウくんの娘さんなんだって。」

「え?」

「年齢合わなくない?」

「センドウくん既婚者なのっ!?」

「しかもその子の義理の母親になるかもしれない人がいるみたいで...。」

「え?浮気してるかもう離婚してるってこと?」

「いやだから歳が....。」

 

などと混迷を極めていた。

その場に弁明ができる人間などおらずその情報を耳にしたセシリアは紅茶を溢し、箒は咽かえり、一夏は何もない場所で躓き転んだ。

状況が読み込めないシャルルは一夏たちの心配をし、ラウラは拳を固め「やはり、奴にクラリッサを任せたのは間違いかっ.....!」などと冤罪をかけつつ憤っていた。

 

やはり状況は混迷を極めていた。

 

そしてさらにこの状況に拍車をかける事態が起きる。

たまたま暇があった千冬と真耶が教室に顔を出したのだ。

この2人は1組に入ってきた転入生2人(特に男(笑)のシャルル)に気を取られクロエに関する情報はほぼ皆無であった。

そんな状態でその情報を耳にした。

その結果、千冬は主武装である出席簿を取り落とし真耶は今まで見たこともない真顔で固まった。

彼女達は呑みの席で聞いた「心に決めた女がいる」発言を覚えており思いある節があったのだ。

混乱している状態で一夏に何か知らないかと問いかけられた千冬はついポロッとその話を漏らしてしまった。

 

結果としてカズキは「クロエという娘を産んだ女に逃げられ娘に再婚を勧められているが断り続けている」という新たな設定が出来上がり瞬く間に他クラスへと拡散されていった。

無論、他学年にも。

挙句耳にした新聞部がそれを記事にすべく取材に着手し始めていた。

薫子は前回聞いた話(第十三話参照)があるため所詮噂と切り捨てていたため記事にする気はなくむしろ止めようとしていたが、噂好きのIS学園の学生はそれしきの事で止める事は叶わなかった。

 

結果、当人を置いてけぼりにしながら作られていった噂話は新聞部のゴシップ記事の拡散能力により瞬く間に学園全体へと広まっていった。

 

 

1組に戻ってきたヤンはそんな状況に愕然とした。

一緒に食事を摂っていた本音と簪にクロエに関することを尋ねられ答えてた時点でなんとなく嫌な予感はしていたのだがかすかに聞こえてくる言葉から予想を遥かに上回る悪い状況ということを理解し頭を抱えた。

 

「まさか....ここまでとは....。」

 

「やっくん⁉︎ 大丈夫⁉︎ 」

 

力なく項垂れるヤンを本音は心配するが彼の心労はこの混迷した状態をなんとかしない限り無くなりはしない。

 

「ヤン!いいところに!」

 

ヤンが心労から項垂れているとヤンの帰還に気がついた一夏が駆け寄ってくる。

 

「噂聞いたか?カズキの娘の話なんだけどさ!」

 

「クロエちゃんならカズキの義理の娘だよ...。」

 

「え?」

 

何を言いたいのか察していたヤンは皆まで言うなと言わんばかりに話をぶった切って結論から話した。

予想外の答えが飛んできて一夏は固まってしまう。

 

「はぁ....面倒くさがって説明を省くからこんなことになるんだよ....。」

 

思わずカズキに対する愚痴をこぼしつつ遠い目になるヤン。

 

「じゃあ、カズキがバツイチってのは?」

 

「ないよ。そもそもカズキに結婚歴はないからね。」

 

このヤンの断言に1組は一気に騒つくことになる。

無理もないだろう。

憶測と完全なデマ情報に踊らされ噂を広めることの片棒を担いでしまったのだから。

その騒つきからなんとなく察したヤンは対応を考えていると背後から声がかかった。

 

「お前ら何してんだ?」

 

声をかけたのはクロエ達と別れ相川と一緒に戻ってきたカズキであった。

 

「カズキ!」

 

「ん?」

 

不思議そうにするカズキに相川があのことでしょと、つま先立ちをしながら囁くと少し気まずげにしながらも口を開いた。

 

「多分、お前らの視線と騒ぎの原因はクロエのことだろ?」

 

「ああ。」

 

「アイツは確かにオレの娘だが色々と事情があってオレが引き取った孤児なんだよ。勘繰るのは構わないがあまり変な噂を立てたり追求しないでくれると助かる。」

 

カズキの事情説明と純粋なお願いに対して1組の人間の心はマッハでダメージを負っていた。

挙句、孤児を引き取ったというあたりから重い事情があることが察せる為、罪悪感が一気に広がった。

無論カズキはそんな事情を全く知らないため首を傾げている。

谷本や鷹月などよく絡む女子を含むクラスの全員は言いづらそうに口籠もっていたが、一夏が凄まじい勢いで頭を下げた。

 

「すまんカズキ!もう手遅れだ...。」

 

「は?」

 

「色々と流れてきた噂の真偽を確かめるべく情報を集めてたんだけど千冬姉の発言もあってもう邪推した上にたぶん外に漏れてる。」

 

「.......................えっ?」

 

ある意味男らしい一夏の言動に思わずカズキが固まるとクラスのほぼ全員が頭を下げた。

 

「「「「「ごめんなさいっ!」」」」」

 

「........................。」

 

この状況から全てを察したカズキは表情を失うと天を仰ぎ一言こぼした。

 

「終わった.......。それはそうと千冬はシメる。

 

 

 

 

 

 

 

ゾクっ

 

「どうしたんですか先輩?」

 

「いや、なんだか悪寒が。」

 

「疲れてるんですよ。最近忙しかったですし。」

 

 

「と、言うことで新聞部の予算削らないか?」

 

「急に独裁チックなこと言うわね。」

 

あの気まずい状況をやり過ごし千冬に一言「覚えとけよ。」と伝えたのち生徒会に顔を出し真っ先に楯無に提案を行うも一蹴されてしまう。

 

「独裁じゃないただの報道管制だ。」

 

「だからそれが独裁チックだって言ってるのよ。それに予算減らしたら恨み買ってさらにゴシップ書かれるわよ。最悪、部が消滅しても裏で勝手に発行されることになるわよ。」

 

「F◯ck!」

 

思わず汚い言葉が出てしまうが許してほしい。

あんなゴシップ書かれたらこうもなるのだ。

廊下に張り出されていた記事にはデカデカとこう書かれていた。

 

「2人目の男性操縦者!まさかのバツイチコブ付きか⁉︎ 」

 

キレても仕方ないだろう....?

 

「気持ちはわかるけど厳重注意ぐらいと次同じことしたら部費減らすという警告ぐらいかしらね?あとは誤報の訂正とかかしら。」

 

「......それが現実的な落とし所か。」

 

それに、と楯無が目を向けた先には申し訳なさげに応接用のソファに腰掛ける薫子の姿があった。

 

「訂正記事を書く適任者はそこにいる訳だしね。」

 

オレはため息を溢すと薫子の正面に腰掛ける。

すると薫子はすぐさま頭を下げた。

 

「すみませんでした!」

 

「まぁ、いいさ。お前は止めようとしてくれたんだろ。暴走した奴らが悪い。」

 

「でもっ!」

 

「オレが良いって言ってんだから良いんだよ。....な。」

 

オレがそう言うも申し訳なさそうな表情は変わらず普段は好奇心から煌々と輝く瞳は暗く力無さげに下を向いていた。

なんだかコチラが虐めているみたいで心が痛む。

 

「ほら、なんだ。この状況を打開する記事を書いてくれりゃオレとしては助かるんだが....。」

 

オレがそう言うと薫子は顔をバッと上げると気を取り直して元気よく答えた。

 

「もちろんです!私にできることがあるなら何でもやります!」

 

「そうか。何か案はあるか?」

 

「そうですね.....そうだ!確かクロエさんでしたっけ、彼女と一緒にインタビューをさせてもらってそれを記事にすると言うのはどうでしょう?」

 

ふむ。

クロエに関しては幾つか機密はあるが、あえて少し情報を漏らすのはアリだな。

 

「それで良いかもな。日程はクロエにも確認を取りたいから希望の日程がまとまり次第連絡する。」

 

「はい。これ以上暴走しないように目を光らせておきますがどれぐらい阻止できるかはわかりませんのでお早めにお願いします。」

 

「了解した。」

 

とりあえずこんな感じでいいか。

薫子の答えに満足しつつ仕事に戻ろうとするとヤンに声をかけられた。

 

「カズキ。」

 

「ん?」

 

「面倒くさがって手を抜くと碌なことにならないって理解できてよかったね。」

 

「うっせぇ。」

 

ヤンのからかいに対しぶっきらぼうに答えると今度こそ自分の席に戻り月末に行われるタッグトーナメントに向けた書類の作成に励むのだった。

 

 

自分に振り分けられた生徒会の業務を終わらせ、所々でサボったが為に残るハメになった楯無を放置してヤンと共に寮に戻る。

途中で部活帰りの相川とクロエを連れて学校を案内してくれていた鈴とも合流した。

 

「クロエ、楽しかったか?」

 

「はいっ!私の知らないものをたくさん見ることができてとても楽しい1日でした。」

 

「そうか。」

 

オレの隣を歩くクロエの頭を撫でる。

色々あったが取り敢えず楽しめたようでよかった。

クロエのサポートをしてくれた鈴には感謝しないとな。

 

「鈴、1日クロエの面倒見てくれてありがとな。」

 

「別にいいわよ。私のクラスメイトなんだし、なんだか妹みたいに思えてほっとけないのよね。」

 

「鈴さん1日ありがとうございました。」

 

「気にしないでいいって言ってるでしょ。クラスメイトなんだしカズキに任されてるみたいだしね。」

 

事前連絡を怠ったことを根に持っているらしくコチラにジト目飛ばしながらもクロエに笑みを零す。

と、ともかく、鈴とクロエは仲良くやれてるようで一安心だ。

 

「連絡したか確認した時に間を開けて「あっ。」なんて言うもんだから私もビックリしたんだよ。」

 

「しょうがないよ。カズキは所々抜けてるからね。」

 

「ぬぐっ....。」

 

そして鈴のジト目から何かを察したらしい相川とヤンがすかさず揶揄ってくるが、全面的に悪いのはオレなので何も言い返せない。

 

「ま、まぁ、色々あったが楽しめてるようだから一安心だな。」

 

(((スッゴイ雑に話逸らしたな。)))

 

少し声が上ずってた気がするが純粋無垢なクロエなら乗ってくれるはず。

クロエを除いた3人からの視線が痛いが気にしない。

 

「そうですね。しっかり楽しめましたし皆へのお土産話ができました!」

 

「みんな?」

 

クロエがオレの思惑通り話に乗ってくれて内心でガッツポーズを決める。

そんな中、鈴は出てきた"皆"という言葉が気になったらしく聞き返してきた。

 

「ああ。ヒューストンにある孤児院に普段は間借りさせてもらってるんだよ。皆ってのはそこの子供達のことさ。」

 

「へぇ〜。じゃあ夏休み前にでもお土産を買いに行かなくちゃね。」

 

「その時は是非お願いします!」

 

オレが説明をすると鈴からのありがたい言葉がありクロエは瞬時に乗った。

確かに図々しくお土産をディーダやティファのわんぱく組に要求されていたし買いに行かなくちゃな。

 

「その時は僕もご一緒していいかな?」

 

「私も行きたい!」

 

ヤンや相川もその話に乗ってきた。

 

「もちろん、タイミングを決めたらみんなで行こう。鈴もそれでいいか?」

 

「アタシは別に構わないけど。アタシじゃなくてこの子に聞くべきじゃない?」

 

そう言い鈴がクロエを見ると、クロエは即答した。

 

「もちろんです!皆さんともお話ししたいですし皆さんのことをみんなに教えたいですし!」

 

元気よく答えるクロエについつい笑みが溢れてしまう。

それは他の3人も同じらしく一瞬でほんわかとした空気が広がる。

 

「ほんっとにクロエちゃんは可愛いなぁ!」

 

その可愛さに相川はクロエに抱きつく。

クロエは「わわっ。」と少し驚いていたようだが、束にも似たようなことをよくされているので慣れてるのか受け入れていた。

 

「清香は暴走しない。アンタらも微笑ましそうに眺めてるんじゃなくて止めなさいよ。」

 

「.......なんか姉というかははおやみたいだな。」

 

そんな相川を止め何もしないオレ達に注意をする鈴に思わずポロッと思ったことを呟いてしまう。

バッチリ聞こえていたらしくギロッと睨まれ目を逸らす。

そんな様子を見ていたクロエから笑いが溢れ、その笑いが伝播しその場にいた全員が笑いながら寮へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

俺、織斑一夏は現在、驚きのあまり固まっている。

新しく同室になった4人目の男性搭乗者、"シャルル・デュノア"に無くなってるボディソープを渡す為にシャワールームに入った。

そこには無論、裸のシャルルがいたわけだが。

 

 

下半身についているはずのご立派様はないのに、上半身には二つのご立派な胸部装甲があったのだ。

 

 

「え?は?お、女ぁぁあああああああ⁉︎」

 

「きゃああああああああああああああ⁉︎」

 

 

神様....これは俺が悪いのでしょうか?

 

そう考えつつも飛んできた平手を俺は甘んじて受け入れた。




状況は混迷を呈し続けていますが一体どうなるのか⁉︎
カズキの名誉は守られるのか⁉︎

てな訳で新話更新です。
初めて多機能フォームを使ってみましたがどうでしょうか?
苦手だやめて欲しい等ご意見があれば教えてください。

それと昨年末の投稿が間に合わずすみませんでした。
年末は忙しかったんや、酒盛りとか酒盛りとか酒盛りで。

ま、まぁ、忙しくとも何とか書き続けるつもりですので本年も拙作をどうぞよろしくお願いします!
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